84ページ目 謁見 ジラール国王
クロード・プロルクス・ジラール視点
どうやら今日、シャルが友人を連れて帰ってくるようだ。
早馬が昨夜遅くに帰って来てそのように報告が入った。
今日の予定は全てキャンセルし、謁見の準備へと急遽入った。
まあ、以前から準備していたし手紙をもらってからは何時でも謁見できるように調整はしていた。
普段は非協力的な大臣たちも嬲る弱者が現れるという事で意気揚々と準備を手伝っている。
お前ら、いくら実力主義でももう少し隠すだろう。
流石に王として公平を示さなくてはならなくてもここまで露骨だと切れるぞ?
「陛下。只今もどりました」
「うむ、ごくろうである。バートよ」
息子の後ろにはシャルとティファニール姫、イローナ姫。
イローナ姫!?いくら何でも無茶をさせ過ぎだろうあの年で大陸間を移動させたのか!?
イヴァン殿の考えは読み切れんが残りは顔の似た娘、恐らくは双子だろう、物静かな感じの娘が一人後は女騎士が1人とシャル付きのコーラル、とメイドが2人。
片方は確か誕生祭の時にイローナ姫と一緒にいたな。
という事はイローナ姫のお付きだろう、もう1人も何処かで見たような・・・。
・・・・・・
・・・・
・・・
何故、あのメイドがココにいるのだ?
確かに俺たちは【冥土】クロと便宜を計れと言った。
友好が深まった証拠を出せと言った。
しかし、何故本人を連れてきた!
何か、適当な物で良かったのだ!直筆の手紙なりそれっぽいアイテムなりで!
ハッキリって大臣たちはクロを完全に侮っている。
あの化け物の事が何も分かっていない以上何処で逆鱗に触れるか分からない、何とか素早くこの場をまとめ個別に確認を取らなくては。
「しかし、こうやって生徒だけで来るとはまるで遠足か何かの様ですな」
「確かに、仮にも王城に入城するのに護衛の騎士が一人だけとは」
「まあまあ、コスカートは護衛も出せないくらいひっ迫しているのでしょう、何せ、新しく魔王が現れたところなのですから。まあ、我が国なら瞬間に滅ぼしていますがね」
ヤメロ、貴様等。挑発するな。
アレが切れたら我が国が瞬間で滅ぶぞ!
「しかし、フム。シャンタル様、お友達はもう少し慎重にお選びになった方がよろしいですよ?王族であるそちらの姫様はまあ、良いとしても他は一貴族ではないですか。王族たる者、交友関係にももっと気を配っていただきませんと・・・」
ああ、シャルたちの雰囲気がドンドン険悪なモノになっていく。
これはマズイ。
「うるさいわね!ここにいる皆は私が命を預けるに足る者よ!それをバカにするのはいくら叔父上たちでも許せないわ!」
おお、シャル!何とも立派になって・・・。
「命を預けられる?そこのメイドにもか?」
大臣は明らかに最後尾で待機しているメイド、クロに対して言っていた。
「そのメイドに何ができる?魔力も感じなければ、風格も感じられん!夜伽が務まれば上々だろう?」
ヤメロ、そいつ刺激すんな!
横の騎士が今にも切りかかろうとしているのが分からんのか?
「そこの騎士、どうだ・俺に仕えないか?満足させてやるぞ?」
この場でナンパかよ、やめてくれ。恥さらしが!
「我が主は既に決めております故」
「フン、えらそうに・・・」
ハァ~、ヤバイ。死ぬ、俺の胃が死ぬ。
確かあのメイドは双子の片方をやたら気にかけていたからな、ソッチにちょっかいを出す前に何とか
「しかし、貴様等も貴様等だな、王族でもないのに王城まで付いてきおって場違いだと思わんのか?」
「大方我らに取り入ろうというのでしょう?王族である我らの息子のに気に入られれば玉の輿ですからな!」
「ハッハッハ、違いない」
「オマエラ、少し黙れ」
「「!?」」
「オマエラの評価がどうなろうと知ったこっちゃねぇが、このままじゃあ俺の国の評価まで駄々下がりなんだよ。とりあえず黙ってろ。」
ああ、やっちまったな。
だが仕方ない、あのバカどもを黙られるにはコレが一番手っ取り早い。
あのメイドの笑顔・・・怖さしか感じないぞ・・・。
「まずは家臣たちの無礼を詫びよう。申し訳ない」
「何故陛下が頭を下げられるのですか、このような者どもに」
「俺は黙れと言ったぞ!」
何故って主にお前たちのおかげだよ!全く!
それに俺の軽い威圧にも怯んでしまうとは、情けない・・・。
「あ、あの・・・」
「ああ、すまない。驚かせてしまったな。それではシャル報告は別室でバートと共に聞こう。ココではまともに報告も受けられんからな」
「はい!陛下」
「バート、先にお客様方を案内しろ。俺も少ししたら行く。くれぐれも失礼の無いようにな!」
「はい、陛下」
さて、残るはコイツ等だが・・・
「で、では陛下。我々もこれで・・・」
いそいそとその場を後にする大臣たち。
全く、嫌になる。
「すまない、遅くなった」
「わあー、おじさん。さっきのくわってなったのやってー」
「こ、こらイローナ!申し訳ありません陛下」
この娘は怖いものを知らんな、大の大人である大臣ですら一瞬で怯んだというのに・・・。
「なに、気にせんよ。いくぞ、イローナ姫」
クワッ!
先ほどよりも強めだ、流石にやり過ぎたか?
「あははははは、すごいすごーい」
何故か爆笑された・・・。
「イローナ様、陛下が困っていらっしゃいます」
「はーい」
俺の何とも言えない顔を見てメイドが助け舟を出してくれたようだ。
バートは冷や汗をかいている。
それもその筈だ。
今の威圧、我が国の学生なら最上級生でも何人かは失神するし普通に威圧には飲まれる。
しかし、この場に居る者全員この威圧を少しも気にした様子は無い。
一番の不出来と言われていたシャルですらどこ吹く風だ。
バートの冷や汗の理由は威圧にではなくこの状況に、だろう。
「それで、シャルこの状況は一体どういうことだ?」
「?どうもこうもお友達を招待しただけですが?」
何を言っているのか分からないと言った感じで聞き返してくる。
ああ、確かにコッチにいた時は一人を好み、友達という言葉など聞いたことは無かった。
そのお前が友というのだ。本当に友達になったのだろう。
が、それとこれとは話が別だ。
アレは友になんぞなってくれんだろう、我々が調べているのは既にバレているはず。
それなのに友になるなどあり得ん!
「お父様!まずはお友達を紹介させてくださいな!」
「あ、ああ。そうだな」
「それでは・・・」
紹介は終わった。
人違いを期待したが、違うことなくメイドは「クロ」と言う名前だった・・・。
頭抱えたい、魔王の前であんな事連続で言いやがって・・・。
「あ、陛下。これを、お父様からです」
「イヴァン殿から?」
手紙を見てみると、お互い魔王の事で頭抱えようぜ。
要約するとこんな感じだった。
ワザワザ数枚に渡って書くことではないだろう、うちの大臣が何かやらかすのを確信して手紙を送ってきやがった。
目の前にはニコニコとした【メイド】。
まるでコチラが何かを言うのを待っているかのようだ。
いや、実際待っているのだろう。
ここで選択を誤れば、この国が、滅ぶ!!!
「クロ殿、改めて済まない。」
「父上、何を!?」
メイドの前で跪く俺にバートは焦っている。
「家臣の暴言は全て俺の責任だ、罰するというのなら、全て俺が受けよう」
「勝手にやってくれ、とは言わないのですね」
「俺が王だからな」
「分かりました。では・・・」
俺、死んだかな。
ベシン。
痛ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
額が、額があああ・・・
「貴様!」
「待て!良い、良いのだ・・・これで良いのだ・・・」
「まさかドMさんですか?」
「違うわ!この国に対する報復がこの程度ならコレでいいと言ったのだ!」
「分かってますよ」
コロコロと笑うメイド。
「報復?どういうことですか、父上」
「バートよ、コイツが【冥土】の魔王、クロだ」
「は?いや、確かに【メイド】の姿はしていますが・・・」
俺は手配書を見せてやる。
「同じ、顔・・・」
「分かったか?」
「は、はい。ですがどうして我が国に・・・」
そう、俺もそれが分からない。
どうしてワザワザ危険なこの大陸に渡ってきたのか。
「クロ殿、正直に尋ねよう。どうして娘と共に我が国に?」
「お友達に頼まれれば嫌とは言えないですよねー?」
友達?シャルは本当にこの魔王と友達になったというのか?
「ち、ちなみにシャルとはどのような普段どのようなことを?」
もしかすればシャルが騙されて情報を抜き取られているのかもしれない、ココは慎重にならなければ。
「お食事をリクエストされたり、お風呂上りにマッサージをお願いされたり、魔法の練習に付き合ってあげたりですね!」
ソレ、友達違う!最後の以外まんまメイド扱い!
シャル、何をやっているんだ!何をやらかしてくれているのだ!?
それは一緒についてくるだろう。
報復に来るだろう!!!
「あ、大丈夫ですよ?寮では皆さん、私に言いたい放題ですから」
「と、いうと他の方も?こう言っては何ですが、貴女はそれでよろしいのですか?」
「私はリーズお嬢様の使い魔ですから、寮の皆さんも疑似的にご主人様の様なものです」
そうかー、助かった。この国、助かったよ~。
「後、この大陸を見てみたかったのもあります。私、一応この大陸でも支配者の様ですし?」
「そ、そうか・・・」
つまり、油断すれば別の国で大暴れして大陸が滅ぶ危険性もあると・・・。
イヴァン殿の【苦労を分かち合おうぜ】という文章が頭をよぎる。
こういう事か!?
「あの、お父様・・・」
イヴァン殿に念を送っているとシャルから申し訳なさそうに話しかけられた。
「何だ?シャル」
「あの、お母様にお会いしたいのですが・・・」
おっと、そうだったな。シャルは俺よりも母親のフロリアーヌに懐いていたしな。
「分かった。着いてこい、しかし静かにしろよ?」
「あの、ご病気なのですか?」
「何、身重なだけだ」
「!シャル、良かったねお姉ちゃんだよ!」
「良かったわねシャル!」
「ずっとイローナ様可愛がってたもんね」
周りの者からも祝福されているようだし、良い友を持ったようだなシャル。
「お母様、ただいま戻りました!」
「あら、シャル。もうママって呼んでくれないの?」
「み、皆がいますので恥ずかしいです」
「そう」
良かった、フロリアーヌの調子もよさそうだ。
「調子がいいみたいだね?」
「いいえ、何だがさっきからこの子がお腹の中で暴れてもう大変」
そ、そうか。子供が元気なのは嬉しいが俺はお前の体が心配だよ。
「バートとシャルの母親のフロリアーヌよ。皆さんは?」
「あ、あの。触ってみてもよろしいですか?」
「ええ」
「わあ~」
「あ、動いた!またー」
「しゃるおねえちゃん、おねえちゃんになるの?」
「うん」
すっかり打ち解けて・・・。
皆我が子を祝福してくれているようだ。
最近はストレスの所為か少しふさぎ込みがちだったからな。
ん?クロは何やらオロオロしているがどうしたんだ?
「あ!ダメです。皆さん待ってください!」
「「「???」」」
クロの突然の叫び声に皆不思議そうに顔を向ける。
向けられたクロは顔に手を当て何かやっちまったみたいな感じだ。
「クロ、どうかしたのか?さすがに妻の前で待てと言ってそんな態度を取られては聞かん訳にもいかんぞ?」
クロは答えない。
「クロ?」
「はぁ~」っと長いため息。
一体なんだというのだ?
娘たちは何かハッとしてフロリアーヌの方を見ている。
何か分かったなら教えてくれ、不安になるじゃないか?
「ねえ、クロ。つまり、そういうこと?」
「はい。ミューズお嬢さま。やらかしました。」
「で、でもほら。悪い事じゃないし」
「そうですが・・・、そうですね。注意喚起も出来ますしね・・・。」
「おい!、どういうことだ?注意とは何だ?フロリアーヌと子供は大丈夫なのか!!」
「父上、落ち着いてください」
ハア、ハア。妻と子供の危機かもしれないのに落ち着いてなどいられるか。
「大丈夫です。今すぐにどうという問題ではありません」
「今すぐに!?」
「とても簡単に言うならば陛下の、今フロリアーヌ様のお腹の中にいるお子さんはイフリート様の加護を受けました。炎の大精霊様・イフリート様の加護ですので、炎属性に多大な才能を見せ、炎の使い手としては恐らく世界最高まで行くでしょう」
「イフリート様?は?冗談はよしてくれ、誰がそんな世迷い言を」
何を言い出すかと思えば・・・。
「皆さん、少しゆっくりと出てきてください」
クロがそういうとまずフロリアーヌの隣に人型の炎が現れた。
そして次々と属性魔法が人の形を取っていく。
「こ、れは?」
「大精霊様達です。家の寮に居ついているお偉いさんです」
クロが疲れ切った様な声でこぼした言葉は衝撃的だった。
『クロ。何でそんな疲れたような顔してんだ?。』
「あ、イフリート様、皆さん。少しはご自分の胸に聞いてみてください」
『クロはバカだなぁ。胸に聞いたって返事なんて帰って来ないぞ。』
「・・・」




