83ページ目 時間が余ったらー?
「やっと着いたー」
イローナ様の嬉しそうな声が聞こえます。
最初は船の中も海の上も何もかも初めてで全てが楽しかったのです。
何処までも広がる蒼い海に、時折飛び出す魚。
心地よい潮風に素晴らしい夕日。
普段は食べない美味しい食事。
そう、最初はとても楽しかったのです、最初は・・・。
当然、船の中ですから移動範囲も限定されます。
向こうの様に携帯やゲーム機もありません。
やることが無く、お勉強でもと薦めますがコチラの船はよく揺れるので直ぐに酔ってしまわれました。
しかも、酔い止めの様なお薬は船には存在しないとの事!?
そうですよね、この魔物の跋扈する世界で無駄に船で旅行する人なんていないですよね?
海の上とか逃げ場無いですし、極力行きたくないですよね?
そう考えるとシャル様はかなり無茶をされています。
まあ、そのシャル様達のおかげで酔い止めのお薬が確保でき難は逃れましたが、いかんせん暇です。
この世界の船旅で暇なのは最も幸せなことなのですが、お相手は幼年のイローナ様。
普段はお利口さんにしてくださるのですが、船の中では厳しいみたいです。
他の皆さんも暇なようですが、解決策はそうありません。
お嬢様たちもおしゃべりは大好きですが、流石にネタ切れの様ですね・・・。
私ですか?私は色々やっていましたよ。
ポーションの調合とか、配下の増員とか増員とか増員とか・・・。
そして、途中で私は閃いたのです。発想の神様が降りてきました。
配下に防御させればわざわざ自分で防がなくても良いのでは?
リッターさんの様に全身を変化させられる魔物!
ということで早速エスターさんに確認を。
「ああ、ミミックですね?」
「ミミック?あの宝箱の?」
「ええ。本来あの魔物たちはアイテムに化けて拾ったものを襲う魔物です。最近では宝箱というのが一般的ですが、昔は普通に剣や鎧なんかにも擬態していたんですよ?」
「じゃあ、リッターさんもミミック系?」
「リッターは鎧系モンスターの特殊進化系です」
「違いが分からないのですが・・・」
「申し訳ございません、私にも説明は・・・」
まあ、謎は残りますがいいでしょう。
「では、私のメイド服と同じ形で配下に加えられますか?」
「不安しかないのですが、何をなさるおつもりですか?」
「防御系のスキル・魔法を端から覚えさせて固くなって私を守ってもらおうかと」
「相変わらず配下の使い方が鬼ですね。まあ、配下となった者は命令を受けられることが無上の喜びですが・・・」
わ~お!考え方が社畜以上!?ブラック企業の経営者が聞いたら泣いて喜ぶね!
配下になった魔物たちはマスタークラスを突き抜けた社畜だったようです。
「あ、リッターさんみたいに体を自由に変化ってどの子でもできるんです?」
「えー、それはオプションになりますね」
「では付けて下さいね!」
「結構高くなりますよ?」
「今の条件で余っているお金ギリギリまで使ってください。強化は私が魔力垂れ流しますので、船の中やることないですし・・・」
「新しい配下は魔力酔いしそうですね・・・」
「はい。届きましたよ」
待つこと数分、直ぐに届きました。やはりファンタジー!発送速度もAMAZ●Nの比ではありません。
「おお!本当に私のメイド服と同じですね!」
「おう!お前が新しいマスターか?何でこんな弱そうな奴に俺様が・・・」
あ、手が滑った。
ビリ
「ギャーース、痛てえ!ヤメロ!千切るな!」
ビリビリ
無言でミミック(新入り)を破る私。
「彼女に逆らうと死にますよ?」
「わ、分かった。もう逆らわねえし、文句も言わなねえ。だからまだ引っ張るのヤメテクレー」
引っ張るのをやめると敗れた部分は直ぐに元に戻りました。
「貴方はこれから大陸魔王で在らせられる【冥土】クロ様の防具となって護衛するのですよ?そのことをよく肝に銘じておきなさい!」
「主殿!」
ドカンと扉を開けて入ってきたのはリッターさん。
「主殿!そんな輩を防具になど、どうか私めをお使いください!私なら防具としても問題無いはずです!」
「なんだテメェ?」
「彼女はリッター、貴方の先輩です。貴方を防具とするなら彼女は武器です」
「へ、つまり常に一緒な分、俺の方が重要度は上ってことか」
「何だと?」
「ちょっと皆さん寝ておられるのですから静かにしてください!」
静かにするように命令はしましたが、まだ小声で言い争っているようです。
「よくある事なんですか?」
「まあ、魔族でもアピールはしたいものなんですよ」
・・・。
「リッターさん」
「はい!」
「この子は私の最終防衛ラインです。呼ばれ方ではとても格好いい呼ばれ方ですが、そこまで攻め込まれるという事は詰んでいるという事です。そうならないように盾として剣としてお願いしますよ?」
「は、了解しました」
「貴方も、本当にヤバくなれば私は2人とも装備して戦いますからその時だけはケンカしないでくださいね?」
「主の危機にケンカするほどは馬鹿じゃねえよ。それより、俺にも名前をくれよ!他の重要な配下は名前持ちなんだろう?」
「そうですねー、呼ぶ時に不便ですね。それでは・・・(スケープ)ゴートさんで」
「ゴートって山羊じゃねえか何で山羊なんだよ」
「私への攻撃を代わりに受けてもらうのでスケープゴートから取りました」
「「・・・・」」
「やはりクロ様は鬼ですね。ここまでヒドイネームを付ける方は初めてです」
「名は体を表していてよいではないか!」
「文句を言いてえが、文句言ったら殺されそうだしな・・・。よろしく頼むよマスター」
「はい。では今から強制強化しますね?弱い防具はそれだけで罪です」
「へ!?」
「簡単ですよー、私の魔力をひたすら吸収するだけの簡単なお仕事です。あ、人が来てもしゃべらないでくださいね?」
ポーションも余ってますし、魔人クラスまで強化したいですねー。
気持ち悪いとか言いながらもしっかりと魔力吸収はしてくださいました。
私の影の中からも地獄の怨嗟の様な声が聞こえますが気のせいでしょう。
そして、長い【暇】という試練を終え、ようやく【ジラール国】のある【ジルベイユ大陸】の港町に着いたのです!
「まえと・・・あんまりかわらない・・・」
「イローナ様、港町というのは他の大陸の物を受け入れる場所です。ですから、置いてあるものをよく見てみて下さい。ほら、全く違いますよ?」
「わぁー」
メリッサさんの手を引いて駈け出そうとされますが、迷子になってしまいそうなので許可できませんでした。
船を降りて、街の中へ行こうとしたその時でした。
「お帰り。シャンタル」
「バー兄・・・バートランド兄さま!」
数名の護衛を連れて爽やかな方が歩いてこられました。
「全く、お前のその癖はまだ治らんのか、お父様も悩んでおられるぞ?」
「ごめんなさい、それで、兄さまが何故ココに?」
「ほぼ家出同然で飛び出していったヤンチャな妹が返ってくると連絡があったからな」
「・・・ごめんなさい・・・」
どうやらお兄さんの様ですね、シャル様を心配されて迎えに来て下さったのでしょう。
「あ、兄さま。向こうで出来たお友達よ!」
シャル様に紹介されて各々挨拶をしていきます。
「で、兄さまが」
「バートランド・ジェームス・ジラールです。一応次期国王候補の1人という事になっております。長いですのでバートとお呼びください」
「じきなに?」
「次期国王候補、です。次の王様になれるかもしれない凄い人という事ですよ、姫様」
「わあー、ばーとおにいちゃんすごおい!」
「こ、こら!イローナ!?」
「アハハ、構いませんよ」
軽く笑顔で流す、やはりイケメンは伊達ではありませんね。
馬車まで用意して下さったという事でそのままジラール国のお城まで向かうことになりました。
イローナ様は終始窓の外を見てはしゃいでおられましたし、皆さんも初めての国外という事でやはり期待に胸が膨らんでいるようです。
時間の都合上、途中の街で一泊して次の日のお昼前にはお城に着くことが出来ました。
「「「・・・・・。大きい・・・・。」」」
そう、大きいのです。
コスカートのお城も大きかったですが、ジラールのお城はその倍くらいはあります。
「一応、このジルベイユ大陸では1・2を争う大国だからね」
外観が大きいという事は当然、中も大きいのです。
「すごいわね・・・」
「兵の練度も凄く高いんだよね?」
「ぴかぴかー」
「さて、それでは早速で申し訳ないが父上、陛下に会ってもらえるかな?君たちが来てくれたという事はそういう事だろう?」
「あ、はい。分かりました」
私達はバートさんの先導で謁見の間へ向かうのでした。
イベントの間に強化は必須。
むしろしないと次のイベントで大変なことに・・・・。
ネトゲでもソシャゲでもプレイヤーが飽きないようにするためにドンドンイベント出すのは分かりますが強化が追い付かない今日この頃。
止めて、私がどんくさいだけとか言わないで、分かってるから!!!




