82ページ目 港町までの道のりで
イヴァン視点
「お父様!私、シャルの国へ行ってみたいの!」
そう俺に懇願するのは最愛の娘、ティファニールだ。
珍しく正式に面会を求め、今話し合っている。
わざわざ正式に頼まなくとも娘との会話の時間などいくらでも作るというのに。
一緒に居るのは、その目的地の姫たるシャンタル王女、妹のイローナ、リーズ、ミューズのヘディの娘、後初めて見るカグヤという娘とイローナ付きのメリッサ、シャンタル姫付きのコーラル、それとクロのメイド組だ。
確かに俺は普段から色々な物を見て、聞いて、実際に行って自分を豊かにしろと言っているが、今回のお願いは流石に急である。
ジラール国で何かあるとは聞いていない。
それに、普段ならもっと早い時期から少しずつ話してくるはずだ、それなのに急にお願いしてきたという事は・・・。
「クロ?お前、何を企んでいる?」
怪しいのはコイツしかいない。
ついにジラール国も堕とす気になったのか?
俺の厳しい視線もまったく気にした様子もなく、
「どうして私が元凶みたいな言い方なのですか?」
「お前以外に考えられないからだよ!」
コントの様な問答を繰り返す。
「コホン、実はかくかくしかじか、まるまるうまうまで・・・」
「・・・理由は分かった。つまり、ジラール国の盗聴した会議の大臣たちが気に食わないから急に言ってビックリさせようぜ!っという事か?」
「いやー、お友達たってのお願いですしねー、しょうがないですよねー?本当はこんなに軽々しくティファ様をお誘いしてはいけないのも分かってはいるんですけどねー、ジラール国へ行っても面会していただけないかもですしねー、やはり確実に」
「分かった分かった。ティファニールは良しとしてイローナもか?」
歳の小さい娘に国外旅行など、流石にほいほい許可は出せん。
「私たちがしっかりとお守りします。護衛にはリッターさんを付けますので・・・」
確かにリッターなら護衛の問題は無いが、それでも・・・
「私も全力で姫様をお守りします!なのでどうかお許しを!」
お付きのメリッサも珍しく懇願してくる、だが、国外だぞ?俺の力も全く通じない場所に行かせるというのは・・・
「いじわるなおとうしゃまなんて・・・きらい・・・」
グッハァァァァァァ!!!
娘の涙目からの嫌い発言!まさかもう思春期なのか!?その内「寄らないで」とか「臭いからアッチ行って」とか言われてしまうのか!?俺は嫌われてしまうのか!?
いやいやいや、イローナは今まで我が儘もほとんど言わなかった聞き分けの良い娘だ、旅先で皆に迷惑を掛けることなどまず無いだろう。うん。俺を嫌いになる事も無いはずだ!
「わ、分かった。イローナも行くことを許可しよう」
「わーい!!!」
許可を出した途端に無邪気に喜んでクロとハイタッチをしている、まさか!?
「クロ、仕組んだな?」
「私はもし断られそうならそうしてみてはと提案しただけですよ?」
メッチャ仕組んでんじゃねえか!
何いい笑顔してんだよ!
コッチは愛娘に嫌われるんじゃないかと本気で心配したんだぞ!!!!
今まで受けたどんな傷よりも堪えたぞ。
「ウォッホン。それで、ジラール国で何をする気だ?ただ遊びに行くだけというなら流石に許可できんぞ?」
「はい、お父様。ジラール国は騎士・冒険者共に非常に高い水準にあると聞きます。なので彼方の国の方々とお手合わせ願えればと思っております」
「なるほど、武者修行の様なもの。ということか・・・。分かった、許可しよう。分かっていると思うがくれぐれも気を付けるのだぞ?」
「「はい!!!」」
「ありがとうございます、イヴァン陛下」
シャンタル姫の事はクロから少し聞いているが、クロがワザワザ動いてやるほどということか。
いや、クロは俺以外には優しいからな。
つまり、あの娘は気に入られたという事か、良かったな?ジラール王。貴殿の娘はしっかりと役目を果たしているぞ。
そして俺と同じ悩みを抱えようぜ。
自分と同じ悩みを抱える仲間が出来るというのは大歓迎だ!
時々何処にこの悩みをぶつければいいか分からなくなるからな。
ジラール国の内部が阿鼻叫喚になるのではないかと思いながら、俺は娘たちを見送った。
クロ視点
「予定通り皆さんでシャル様のお家にお邪魔できそうですね?」
「そうね、お父様。よくイローナも許してくれたわわね」
「父親にとって娘の涙目で【お父さんなんてキライ】は効果バツグンクリティカルなのですよ!」
イローナ様の様に可愛ければ特にね!
「流石にアレはイヴァン陛下が可哀そうだったわ・・・」
「陛下のあのように慌てふためくお姿は初めて見ました」
「まさに・・・悪魔の手口ね・・・」
「「マア、クロだもね」」
何故か私が悪役にされていますが、旅行の許可は取れましたので早速準備いたしましょう!
「では、クエストを受けに行きましょうか?」
「何でクエスト?」
「港町までの運搬のクエストがあれば丁度達成できますからね、お小遣いは稼ぎませんと!」
「「「なるほど!」」」
え?その理由で納得されるのですか?
一応、私的にはクエストを受ける日が減るので少しでもポイントを貯めようと思っていたのをふざけて答えたのですが・・・。
「クロさん、姫様達は完全に旅行モードですので・・・」
コーラルさんが優しく慰めてくれます。
一同ギルドへ向かい、移動の日に合う運搬系のクエストを受けました。
後は各自の準備だけですね!
ちゃんと向こうでもお勉強、訓練はしますからね?バカンスではありませんからね?
─出発当日─
「で、調子よく途中の街の運搬も受けたけど、コレ引ける馬いるの?」
私達の荷馬車には山の様に荷物が載っています。
港町までの街の荷物もあるので相当な量です。
ついでに言えば、サブリ様達のパーティーの分も荷馬車に乗っています。
クエストを受けた帰り、サブリ様達が悩んでおられたので理由を聞くと丁度私たちと同じ日に出発で荷物の配達が港町まであるそうです。
それで、私たちの荷馬車に載せていいよという事になったのですが・・・・。
この量は危険です明らかに過積載です。
しっかりと縛ってあるので崩れないとは思いますが、これを引ける馬はまずいないでしょう。
普通の馬なら・・・。
「大丈夫ですよ、シャル様。この日の為に新しく魔物を購入しておきました!出でよシャドウ・ホース!!!」
現れたのは漆黒の馬です。大きいのです。
何か魔王が乗っていそうな迫力満点の馬です。
「クロ、今日の為にわざわざ配下に加えたの・・・?」
「そうですよ、カグヤお嬢様。荷物を運び終わった荷馬車はアイテムボックスへ、馬は私の影へ!これだとジラール国で何か起きた時にも素早く移動できるはずです」
とうぜん、荷馬車も強化済みです。
事前にスプリングの仕組み等を調べて揺れに対する問題を解消!素材もドリアード様提供のありがたい木で作られているので耐久性も抜群!脱着可能な折り畳みの幌も付けたので雨が降っても大丈夫!
ただ、今は乗る場所がありません・・・。
「これは、歩いて行くしかないですね・・・。」
と、言うわけで一同は港町へ向けてデスマーチ?が開始されたわけです。
イローナ様とメリッサさん・コーラルさんは御者、他は徒歩です。
まあ、荷物は減る一方なのでそのうち座れますよ。ええ。
と、思ったのですが行く街々で港町への荷物運搬のクエストを受けざるを得なくなってしまい、どうしたかというと・・・
荷馬車・増・設!!!
念の為にもう数台作って置いて正解でした。
他の方々からはもっと早くそうしろとおしかりを受けましたが・・・・。
道中は魔物の襲撃という事はなく、のんびりと進みました。
何を隠そうこのお馬さん、かなりの高レベルモンスター。下手な魔人だって轢き殺せちゃう。
荷物の重さも全然余裕です。
心配なのは勇者さんに襲われないかというくらいです。大丈夫ですよね?ね?
あ、サブリ様。何か居心地悪そうですね?御者変わられますか???
夜の見張りはリッターさんに一任。
配下のシャドウ・ナイトさんやリッチさんもお手伝いしてくださるので防御は万全です!
シャル様は「こんなのは旅じゃない」と仰っていますが、より安全に快適に移動できるのですからいいではないですか。
安全に進むこと数日、問題発生です。
テンプレ通り、街道を何者かが塞いでいるようで、私たちの前にもたくさんの旅の方が並んでいます。
周りの方に話を聞いてみると、金品を要求するでもなく、襲い掛かるわけでもなく只々街道を占拠し封鎖している魔人がいる様です。
何の為にそんな無駄なことをしているのかは存じませんが邪魔なので、早急に退いていただきましょう。
「あの、すみません」
「なんだ?」
「アナタはここで何をされているのですか?」
「俺はこの街道を通る強者を倒して魔人としての格上げの最中だ!」
「普通の旅人には手を出されないのですね」
「はん。そんなモン倒しても何の箔もつかねぇよ」
魔人って人間みたいに色々な考えの魔人がいるんですねぇ、不良か何かですか?
素直に冒険者でも襲えば効率が良いものを、どちら側にしても・・・。
「ん?オマエ強そうだな、俺と勝負して勝ったらココを通してやるぜ?」
「分かりました。では」
「さあ!かかってきな!!!」
「錬成」
「ぬわ!?」
錬成で作った落とし穴に落として現在は首だけが出ている状態です。
「おい!コラ!ここから出せ!卑怯だぞ!!」
何か言ってますが無視です。無視。
「すみませーん、皆さん。馬車を走らせるので道を開けて下さーい。道をふさいでいる魔人を倒すのに必要なんです!お願いしまーす!」
皆さん魔人を倒す為ならとジブジブ道を開けてくれます。
コレだけ開けば大丈夫ですね!
「お嬢様ー、荷馬車に乗られましたか?少し早く走りますので気を付けて下さいねー。お願いしますよ、【シャドウ・ホース】」
私の声に応えるように走る準備を整える【シャドウ・ホース】。
向こうからはコチラが見えているのか、さっきの魔人がまだ何やら叫んでいます。
「では!全力でGO!!!」
【シャドウ・ホース】は直ぐに最高速に達し地面に首だけ出ている魔人の頭はお察しです。
良い子は絶対にマネをしてはイケナイお馬さんの乗り方です。
近くで魔人の最後を見た人はトラウマになっているかもしれません。
私達はそのまま一気に進んだので皆さんは何がどうなったのかは分かっておられません。
スピードを徐々に落とし始めて少ししたときです。
「ねえ、クロ」
「何ですか?リーズお嬢様」
「さっき魔人が道を塞いでるって言ってたわよね?」
「はい」
「でも魔人なんてどこにもいなかったじゃない?」
他の皆様も同じような意見の顔でコチラを見ています。
「ああ、勝負しろとか意味の分からないことを言ってきましたので、首だけ出して埋めてきました」
「え?でも今凄い勢いで走ったわよね?」
「はい、走りました」
「えっと、つまり・・・」
「そういう事です」
「・・・」
道を塞いでいた魔人の惨状が想像できたのか何も言わず荷台に引っ込まれました。
ようやく港町も見えてきましたし、納品をして早く別の大陸に向けて出発したいですねー。
─夜─
「いやー、ごめんね?完全に便乗でおまけに任せきりになっちゃって!」
「あの、凄く助かりました」
納品を終え、宿屋で夕食を取っています。
国外からの食糧の美味しい匂いがそこかしこから漂い、食欲を刺激します。
納品は量が量だったのでやはり夕方までかかってしまいました。
なので出発は明日の朝です。
「サブリ達は帰りはどうするの?」
「あ、ああ。俺たちはフェリアまでの護衛のクエストを探すか、一つ前の町までの運搬のクエストを順番に探してゆっくり帰るよ。どっちもいいポイントになるから。ミュ、ミューズたちも大丈夫だと思うけど気を付けろよ?」
「ええ。ありがとう」
サブリ様、ココで「俺も一緒に行ってやろうか?」とは言わないんですね?
言えないですね。横で魔王の様なオーラをお出ししておられる淑女の方がお2人。
他国の国王様にお会いに行くのにその国のお姫様の護衛で男一人(他女性、私除く)で一緒に行けばソレはソレで問題ありそうですね。
でもサブリ様主人公属性持っていそうですし無理ですかね?
「おっと、イローナ様がそろそろおねむの様ですね」
「では、私が。皆様はこのままどうぞ」
メリッサさんがイローナ様を連れて部屋へ向かわれました。
「私たちも明日から慣れない船旅になるから、今日はこの辺でお開きにしましょう」
シャル様の締めの言葉で各々の部屋へ移動しました。
私ですか?私は皆さんに特にメリッサさんに頼み込んでイローナ様と同室2人きりにしていただきました。
ロリコンじゃないですよ?
イローナ様は私にとってももう、妹の様な存在なので間違いなんて無いですよ。
リーズお嬢様の私を訝しむ目が何とも堪えました・・・。
一行はジラール国へ!!




