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ファミリアエッセンス  作者: 玄亀
78/211

78ページ目 創剣祭

シャンタル視点


「クロー?いないのー?」

リーズが寮に居るのは確認済だから寮内にいると思うのだけれど、見つからない・・・。

「どうしたの?シャンタル」

「ミューズ。クロを知らない?ちょっと相談したいことがあるのだけれど・・・」

「クロなら【リリーフェイ武具店】に行ったわ」

「クロってリーズの使い魔(ファミリア)よね?」

使い魔が主を置いて何処かへ出かけるのはどうなんだろう。

「最近は大陸魔王(ヴァイアス)になって魔物(デモン)を使い魔みたく使えるようになったからソイツ等(魔族)に護衛は任せているみたいよ?命令無視もしないし、とても良いって」

それはどうなんだろう・・・。

リーズがOKならいいのかな???

しょうがない、クロが帰って来てから相談しようかしら。



クロ視点

「こんにちわー」

昨日は素材を渡してそのまま帰ってしまったので気になってリリーフェイ武具店に来ています。

いつもならすぐにリリー様が来て下さるのですが、どうされたのでしょう?

おばさんもいませんし・・・。

「ク、クロさ~ん」

「あ、リリー様。こんにちわ」

「コッチに来てください!」

わわ!?どうされたのですかリリー様、挨拶も無しに・・・。

連れて行かれたのは工房の前でソコには知らないドワーフの男性が一人と親方さんとおばさんがいました。

「アイツが今回の買い占めを行った【アーメッド武具店】の店主『ルドビッチ・アーメッド』です!」

そう言ってリリー様はアーメッド様を睨みつけています。

今来られたばかりなのでしょうか?言い争いなどにはなっていないようですが。


「フン、お前の慌てふためく様を見に来てやったんだが、案の定気に食わねぇ顔してやがる」

「ハン!残念だったな。こっちには娘が用意してくれた極上の素材があるんだよ!」

そう言って目の前に突き出した素材を見てアーメッド様は黙り込んでしまいます。

恐らく素材を鑑定し、材料を見抜き、状態を確認したのでしょう。


材料名:玉鋼

レアリティ:SR(R)

内包特殊能力:大精霊の加護(土)

効果:自動修復

説明:大地の大精霊(ノーム)の力の宿った玉鋼。


私の鑑定の結果はこんな感じです。

もしかすると他の方が見ると違うのかもしれません・・・。

レアリティが【SR】なのは加護のおかげでしょうかね?


「テメェ・・・何処でそんなモン・・・」

「言うわけねえだろ?言ったとしても取れるのは玉鋼よ」

「チッ。いいぜぇ。やっぱり最後に残るのはテメェだな、リリーフェイ。独占程度じゃあ無理だとは思ってたが、まさかそんなお宝持ち出してくるとはな!」

「ま、娘のおかげだがな・・・」

「面白れぇ、他の参加者は相手にならねぇ。真っ向からぶっ潰してやる!」

「望むところだぁ!」

「「ガハハハハハハハハ」」


あれれ?ライバル同士の熱い勝負の約束の場面から一気になごんでしまいましたよ?

「お2人は仲が悪かったのではないのですか?随分と仲がよろしいようですが・・・」

「ああん?悪いに決まってんだろ!コイツ、俺の惚れた女を掻っ攫ってるんだぜ?」

「そりゃ、自分好みのいい女がいりゃあ口説くだろ?晩熟(おくて)のお前が悪いんだよ!」

「んだとテメェ!表出やがれ!!」

「おお!上等だ!!」

あ、もしかしなくても私、地雷、踏みました?


ガイィィィィィィィン!!!


凄い音がしたので慌てて音のした方を見ると、ソコには笑顔のリリー様のお母様の姿が。

心なしか周りが蜃気楼のように揺らいで見えます・・・。

はぁ・・・・。

深いため息の後、

「それで?創剣祭のお仕事は?」

「「はい!直ぐに取り掛からせていただきます!!!」じゃあな!リリーフェイ!」

「おま、1人で逃げる気か!?」

そのまま逃げるように工房をでるアーメッド様を追いかけるように出ようとする親方さんですが、

「貴方はここで続きでしょう?せっかくフィーが用意してくれてんだから」

「・・・はい。・・・頑張らせていただきます・・・」


「フィー。店番よろしくね」

「はい!」

私達は逃げるようにカウンターへ移動して泣き声にも聞こえる槌の音を聞きながらカウンターに立っていました。

「リリー様のお母様、凄いですね」

「うん。私も、あんな母さんは初めてかな・・・」

「勝てると良いですね」

「・・・うん」

「私も頑張りませんと!」

不思議そうな顔をされるリリー様ともう少しお話をして、私も帰ることにしました。




─創剣祭当日─

今日は創剣祭!

大会に参加されていない鍛冶師の方や学生の鍛冶師見習いの方が造った武器・防具・装飾品などを街でたくさん売っているとの事なのでリーズお嬢様達と見に行こうと思ったのですが・・・


どうしてこうなった・・・。


寮を出る少し前にお城の方がいらっしゃって、そのまま連れて行かれて、気が付けば創剣祭の審査会場です。

国王様にお聞きしても「お前がいれば暗殺の心配もないからなぁ」と笑いながらおっしゃいました。

当然、護衛の依頼なんて受けていません。

完全にねじ込まれました。

職権乱用反対です!報酬はきっちりいただけるのでしょうね!?

などと悪態をついていると結果発表の時間となりました。

結果発表の為だけに護衛に呼ぶってどうなの?

今まで護衛していた人ではダメなの?

そんなに私とお嬢様の時間を潰したいの?


横でコリーン様が必死で私をなだめて下さっていますが、全く焼け石に水です。

ざっくりと流れを聞いた感じでは最終選考に残った武器を4本並べて、決まっている優勝者の剣を国王様が選んで終わりとの事。

あれ?

この作業のどこに私が必要なんですか?

私、私の必要性を全く感じませんよ?

帰っていいですか???


残った剣の内1本は親方さんの剣。

もう1本はアーメッド様の剣。

他の2本は誰が造ったか知りませんがあの2本には遠く及びません。

実質あの2人の一騎打ちですね。

会場に来られている他の方々も、それは分かっているらしく2本の剣を見比べています。

親方さんは玉鋼に大精霊の加護付きの剣。

アーメッド様はミスリルに何かのエンチャント付きの剣。

素材のレア度はミスリル、エンチャントでは加護に軍配が上がります。

装飾は両者譲らずといった感じですね。

アーメッド様は鉄の剣で勝負してくるかと思いましたが、まさかミスリルを使って来るとは!

あの日の出来事が起爆剤になってしまったのでしょうかね?

どちらも素晴らしいという事は分かりますが、素人目にはどちらの剣の方が優れているかなんて分かりません。


そんな事を考えていると国王様が入ってこられました。

「では!これより今年の創剣祭。最も優秀な剣の発表を、新たに大陸魔王(ヴァイアス)になったクロより発表してもらう!!!」

へ?

「へぇぇぇ~?」

会場も意味が分からないという感じでした。

皆さん疑問を口にしています。

「クロ殿、前へ!」

コリーン様に連れられて国王様の横まで移動します。

「ふむ、あまり魔王っぽい恰好ではないな。おい!誰か角とマントでも付けてやってくれ!」

その言葉で控えていたメイドさんが打ち合わせの通りの様に私に角とマントを付けていきます。


「ふむ、これで良し。さて、クロ殿。貴女を討てる剣をお選び下さい」

急な無茶振りに、私は周りに聞こえないように

「あの、どの剣を選べばいいのですか?」

「クロ、お前の好きな剣で構わん!お前がコレと言えばコレが一番になるのだ!」

あ!この国王。まさか自分で決められないから私に決めろと?

しかも自分を殺せる武器を選べと?

自分が殺される武器を選べと?なんという公開処刑!

少し考えると、王様が選ぶよりも魔王である私に選ばれた方が優秀そうな気がしますね。

しかも言いようではどっちでもOK的な感じです。

でも待ってください、どちらかを選べばもう一方から恨み、というか説明を要求されそうです。

まさか「適当に選んだので(ニッコリ)」なんて答えることも出来ませんし・・・。

どうする?どうする?他に良い剣はありませんし、あーもう!視線の端で安堵顔見せないでくださいよ#

国王様!


そもそもこの剣で私を倒せるはず来じゃないですか!

私の剣と打ち合えばポキポキ折れちゃいますよ!大精霊様の加護盛盛ですからね!

そうだ、私を私を倒すことは出来ないと不遜に、自信たっぷりに言えばいいのではないですか!

私は今、リッターさんを単騎で下し最強の魔王と呼ばれているのです。

ならば余裕ぶって2本とも、いえ4本とも剣をぶった切ってしまっても問題無いはずです。

会場の皆様も注目しておられます、これ以上引き延ばすのはよろしくありません。


「ふん、このような稚拙な剣で私の首を取れると本気で思っているのですか?だとすれば甘い!私の愛剣の前では小枝と変わりません!」

私は努めて雑に剣を上に放り投げ、()で破壊していきます。

全ての剣を破壊し、床に転がっている状態を確認した後に偉そうに宣言します。

「やはりこのような鈍らでは私の首を取ることは出来ませんね、勝者などいません。それでも、どうしてもというのであればこの、玉鋼の武器を作ってきたリリーフェイ武具店でしょうか?大精霊の加護は私でも無視できませんからね。まあ、運の勝利といったところですね」


どうだ!!!

このすべて否定してそれでもどうしてもと言うなら運が良かったからこの剣の勝利だよ。

と全てを曖昧に答えたこの回答。

これで納得いかないのなら、剣は直しますので満足するまでミスリルでも黒曜石でも何でも塊で出しますんでそれを叩いて優勝者決めてください。


しかし予想通り周りの視線が痛いですね。

こう、雑に扱いやがって許せねぇ的な視線が。

「国王様に私を討てる剣を選べと言われたので試させていただきました。確かにこの身に当たればどの剣でも討つことが出来ますが当然私も反撃します。なので武器と武器をぶつけさせていただきました。文句は国王様までどうぞ」


国王様の方を見ると顔が引きつっていますね、いい気味ですよ。自分に出来ないことを人にやらせようとした罰です。

私はそのまま引っ込もうと思ったのですが、待ったが掛かります。

親方さんです。

「じょう、コホン。【メイド】クロ様、私どもの剣を全て破壊したその剣をいただけないでしょうか?」

「何故です?」

「知りたいのです、我々の剣を一刀で破壊したその剣の秘密を」

見ると他の3人も真剣な顔で頷いています。

秘密も何も魔力強化で剣の切れ味を引き上げただけなのですが・・・。

素振り(訓練)用に貴方の店の鉄の剣の形を変えただけなのですが!

秘密=魔力の刃なのですが!


物凄くやる気に満ちた顔で懇願されています。

「魔力の刃のおかげだよ、物なんて何でも同じだよ」なんて言える雰囲気ではありません。

ここは一つ新しく剣を造って渡す他無いですかね?

スキル(アカシックレコード)で創れるかしら?

「コホン、では新しく()を造り、国王様に頼んで届けてもらえるようにしましょう。国王様、よろしいですか?」

「あ、ああ。その程度なら問題無い」

「では、優勝者はリリーフェイ武具店でいいですか?褒賞などは国王様お願いします」

そそくさと角とマントを外して大臣たちの列へ入りこみます。

皆さんコチラを凝視しておられますが無視です、ムシ。


「そ、それではこれにて創剣祭を終了する!皆、次回も素晴らしき一品を頼む!」

国王様の締めの一言で無事に?創剣祭は終了しました。

お城の外に出ればもう夕方、お嬢様たちとお祭り回れませんでした・・・。




イヴァン視点


俺の締めの言葉の後、クロは直ぐに帰ってしまった。

その方が俺としても都合が良い。

「リリーフェイとアーメッドは少し残ってくれ」

気になって残ろうとするギャラリーや位の低い大臣たちを追い出し、信用できる大臣、近衛たちのみとなったので本題に入る。

「お前たち、この剣をどう見る?」

帯剣していた1本の剣を見せる。


「国王様!?コレは!」

「コレは昨日俺への誕生日プレゼントだとある者が持ってきた。俺を含め城の鍛冶師たちは皆言葉も出なかったがお前たちはどうだ?」

「は!私たちも言葉が出ません、素材の出処に加工技術、その全てが我々では分かりません」

「そうか、街で様々な武具を見る其方等なら・・・・と思ったのだが」

やはり、分からんか・・・。

城の鍛冶師たちにも見せ、意見を聞いたのだが帰ってきたのは「変態の所業」という訳の分からん答えだった。

素材も、剣の加工方法も、その剣に仕込まれているエンチャントの技法も全てが途方もないものだという事だった。


「国王様、コレにおいくら出されたのですか?」

「プレゼントだと言って置いて直ぐに帰ってしまった。まあ、もう同じような事はしないとも言っていたが」

「タダって・・・。おい、リリーフェイ。お前、コレにいくらつけるよ?」

「国一国分は軽くするだろう」

「だよな・・・」

「更にまだエンチャントを付加する余裕すらある。コレは宝剣どころか神剣だろう」

「そうか、お前たちもそう評するか」

「鍛冶師でソレ以外の評価をする奴はモグリ以下のクソです」

「では、国宝として大事にさせてもらうか」

「それがよろしいかと」

「手間を取らせた。下がってよいぞ」


皆を下がらせた後カティと2人でこの剣について話していた。

今後この剣を家宝として継がせていこうと。

この剣を持つに足る人物になる様に努めようと。

「でも、この剣、継がせなくてもいいかもしれないわね」

「何故だ?これ程の剣、継がせないわけにはいかないだろう?」

「あら?アナタと娘たちどちらの方が好かれていると思っているの?」

考えるまでも無く娘たちだ。

そして、アイツは娘たちには自分の技術の粋を詰め込んだ武具を平然と渡すだろう。

つまり、この神剣は・・・


「義理でもこんな素敵な剣がもらえて良かったわね?」

「ああ。」

試作品といっても過言ないのである・・・。

「クロさん、お願いがあるんですけど」

「何ですかリリー様?」

「そのリリーっていうのをフィーに変えてもらえませんか?その、仲間外れにされているようで・・・」

「分かりました、ではこれからはフィー様と呼ばせていただきます」

「ありがとう!後、父さんがこれからクロさんの所で鍛冶を学べって言ってました!」

「へ?」

「何でも俺より腕がいいからだそうです」

「・・・」

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