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ファミリアエッセンス  作者: 玄亀
74/211

74ページ目 やってきたお姫様

「はぁ!」

「ごめん、クロ。数匹抜けた!」

「援護は、任せて」


私達は今、近場のダンジョン(洞窟)に来ています。

目的はお嬢様方の戦闘経験を積む為です。

別にココの主をどうこうしようというつもりはありません。

最奥まで楽勝で進めたらどうこうなるだけです、ココの主が。


私がリッターさんと戦った日からお嬢様方の鍛錬の身の入り方が一気に変わりました。

私というよりはリーズお嬢様の戦いを見て、ですね。

皆さん、リーズお嬢様に負けまいと頑張っていらっしゃいます。

各々の強化はもちろんの事、たまにこうしてダンジョンに挑戦して連携の確認もしているのです。


あの日から私の周りは劇的に変化を・・・・起こす事も無くゆっくりと流れています。

分かりやすい変化とすれば、ティファ様とイローナ様、リッターさんとエスターさん、ローラさんが寮で生活すようになったことくらいです。

部下の配置などは国王様と相談しながらという建前の元、勝手にコッソリ増やしています。

お城ダンジョン化計画は失敗、寮の部屋の管理システムをお城でも使えないかと思ったのですが、学園長に断固反対されてしまいました。

理由は調整が面倒くさいからだそうです。

ケーキの食べ放題でも無理だと言ってきたので余程なのでしょう。


「連携、結構うまくいくようになってきたわね」

「あなたが前に突っ込まなければね・・・」

「まだましになった方よ」

「あははは・・・」

「リーズお嬢様も飛び出し過ぎの自覚はあるようですね。」

皆さん、自分の課題を見つけてドンドン克服されているので強さもうなぎ上りの様に上がっています。

そして、よくある自信の思い違いが起きないように毎日リッターさんにしごいていただいています。

皆さん涙目ですが、これが皆さんの為なのです。

おかげさまで、大抵の威圧にはへっちゃらの様です。


「それで、このダンジョンどうするの?攻略する?」

現在、私たちは洞窟最奥の扉の前で休憩中です。

この洞窟をどうするか・・・。

「私は、このまま帰ろうと思います」

「ティファ、どうして?」

「クロが言っていた、りさいくる?このダンジョンは私達にはちょうど良いレベルだから、また来たらいいかなって」

「確かにそうね」

「それでは、私はココ(洞窟)の主さんに挨拶だけしてきますね」




「今日はいつもより早く終わったわね」

「新しいダンジョンという事で朝早くに出発しましたしね」

「それでは、ここで解散して自由行動にしましょうか、私は夕飯の買い足しがありますし」

「「「りょうかーい」」」

私はリーズお嬢様、ティファ様と一緒に買い物出かけました。





???視点

「なかなか綺麗な街並みね、コーラル?」

「はい。シャンタル様。この大陸一番の都市と言われるだけはありますね」

「全くお父様にも困ったものだわ、いきなり別の大陸の学校に編入しろだなんて・・・」

「ですが、お顔は笑っておられますよ?」

「当然じゃない!あんな堅っ苦しい王城じゃなくて、誰も私の事を知らない街で冒険者の活動ができるんだから!」

「ですが、国王様のクエストもお忘れなく・・・」

「分かっているわよ、新しく大陸魔王(ヴァイアス)になった【冥土】だっけ?ソレを調べればいいんでしょ?」

全く、パパもどうかしているわ。

可愛い娘の私に魔王の調査を頼むなんて・・・。

でも、大陸魔王かぁ・・・。一体どんヤツなんだろう。

魔王や魔人は積極的に活動をして広く知られているけれど、大陸魔王ってほとんど行動を起こさないから分からないことが多いのよね・・・。

そう、今回私がセルグリンド学園に編入したのは新しく大陸魔王となった【冥土】を監視する為。

出来れば友誼を計ってこいと言われたけれど、そんなことできるのかしら。


「それにしても、あの2人遅いわね」

「そうですね。急いでいないとはいえ姫様をお待たせするとは・・・」

今回の旅の護衛をしてくれ騎士2人の知り合いがこの街に居るとの事なので挨拶の許可を出したのだけれど、一向に戻ってくる気配がない・・・。

ココで立っているだけというのも暇ね・・・。


あら?あの制服は・・・

「ねえ、貴女たち。もしかしてセルグリンド学園の生徒さん?」

「はい。そうですよ」

やった、当たりね。この人たちには悪いけれど話し相手になっていてもらいましょう。

「私はシャンタル・ルーウ・ジラール。こっちはコーラル・ジェシカよ」

「ジラールって・・・。失礼ですが、貴女はジラール国の・・・」

「ええ、そうよ。私はジラールの王女よ」

「失礼しました。私はコスカート王女、ティファニール・パトリシア・コスカートです」


驚いた、まさかこの国の王女様と会えるなんて。

そうすると後の2人はお付きかしら?


「わ、私はリーズ・エラインと言います」

「私はクロです【メイド】をやっています」


エライン・・・確か、この国のやたら強い騎士がその名前だったような・・・。


「シャンタル様、大変お待たせいたしました!!」

あら、これからお話をしようと思ったのにちょうど来ちゃったわね。

「コチラの方は?」

「この国の王女、ティファニール・パトリシア・コスカート様とそのご友人よ」

「! よろしくお願いします」

さて、それじゃあ、学園に向かおうかしらね。


「シャンタル様、よろしいですか?」

「何?」

「はっ、先ほどあった友人に隠れ家の様な食堂の話を聞きまして、とても美味しい料理を出す店のようでこれからその店でお昼をどうですか?」

「貴方達!時間を掛けておきながら!!!」

「まあ、いいわ。せっかくの他国なのだもの、こういうことも楽しまないと」

「ありがとうございます。ティファニール様達も是非」

「ありがとうございます。ご一緒させていただきます」


騎士2人について歩いているとティファニールたちが足を止めた。

「あの、そこから先は・・・」

「大丈夫です。何かあれば私たちがお守りいたしますので」

見るからに治安の悪そうな場所への入り口ね。

でも、うちの騎士はそう簡単にやられはしないし、私もコーラルも戦える。

彼女たちを守ることくらいはできるわ。

ティファニールたちは少し不安そうにしながら私たちについてくることに決めたみたいね。

2人に連れられて入り組んだ道を進んで行く。

丁度、前と後ろに分かれて護衛も兼ねてもらっている。

そのまま歩くこと少し、開けた空間の奥には小ぎれいにしてある1軒の店が見えてきた。

なるほど、中々に雰囲気のあるお店ね。

お店の前には1人の男が立っていた、彼が騎士たちの言っていた友人かしら?


「よお」

「後ろのお嬢さんたちは?」

「この国のお姫様とそのお友達だ」

「そうか」

男はニッコリと笑いながら手を上げ、

「囲め!」


!?


その瞬間、建物の陰や屋根の上から複数の人影が現れた。

「姫様!」

「ええ!」

直ぐに構える私たちだったけれど、ティファニールたちはそうはいかなかったみたいね・・・。

騎士の前を歩いていたメイドが捕まってしまっている。

それに、人数も多い。

この人数を切り抜けるのは骨が折れそうね・・・。


「動くなよ?人質がどうなってもしらねえぞ?」

「クソ・・・」

「おい、あの人呼んできてくれよ」


男がそういうと1人が店の中へ入っていき、少しして女性と一緒に戻ってきた。

現れた女性は私たちが普段見ない確か長着っていったっけ?を着崩している。

着崩した服とプロポーション、醸し出す雰囲気が合わさり何とも妖艶で目が離せない。


「ほぉう、これはまた可愛い娘ねぇ」

「ああ、俺たちの国の姫さんとメイド。それにこの国の姫さんとその友人だ。どうだ?コイツ等ならこの国の王とジラールの王を脅して金を巻き上げられるだろう?」

私達を人質にお金を要求する気!?

油断した、普段からマジメって評価だったから安心しきっていた。

それに、あの女の人は危険そうね・・・。

何とかしてティファニールたちだけでも逃がさないと恥さらしも良い所だわ!


女の人は私たちを品定めすかのようにジッと見ている。

「王女様達は人質にするとして、他の娘はどうするの?」

「これだけ美人ぞろいなんだ、捌く所はいくらでもあるさ」

「そう・・・」

何とか、あの3人だけでも何とかしないと、そしてあの女の人と交渉できれば・・・

女の人は興味を失った様に目を閉じ

「お嬢ちゃんたち。じっとしていれば痛い目に合わなくて済むわよ?捕えな!」


その一声で周りの男たちも一斉に動き出す。

何!?この練度。コイツ等の動き、ただの暴漢の動きじゃないわよ!?

動きに驚いて反応が遅れてしまった、これじゃあ皆捕まってしまう。

「ぐあ!」

「な?何で!?」

「てめえ、グハッ」


私が動けないうちに私たちを売ろうとした騎士は捕まってしまった。

「ちゃんと言いつけ通り動かなかったわね。偉いわ」

動かなかったというよりは動けなかった・・・ね。

「それじゃあ、そいつらふん縛ってお城に連絡してちょうだい」

「どうして、助けてくれたんですか?」

指示を出す女性に質問してみた。

「それはお嬢ちゃんから見た結果だよ。私からすれば人の土地で何好き勝手やっているんだって感じね。国とやり合うなんて命がいくつあっても足りないよ。姉さんとの約束もあるしね」

「姉さん?」

「私らのボスみたいな人だよ、皆好き勝手に呼んでるけどね」

「嬢ちゃんたちには悪いけれど、証人になってもらうよ、私達だけよりもよっぽど信頼があるからね。それまでは・・・あの店で食事でもどうだい?」


呆気にとられる私たちを気にする事も無く店に入っていく女性を追いかけることしか私達にはできなかった・・・。

今日もコスカートの首都、フェリアでは悪党狩りがはかどっております。

異常?

異常も続けばやがて日常に変化していきます。

人とは慣れとはそういうモノなのです。


無法者の皆様へ

フェリアではスラムでは皆様のお越しをお待ちしております。

国家転覆・誘拐・違法販売等々、どのような志の方でも大歓迎です。

当スラムでは余程のことが無い限り国の騎士は立ち入りできなくなっております。

どうぞご安心して悪事のご相談・ご商談をおススメください。


また、儲かりそうなお話には当スラムも全面的に支援・参加させていただきます。

詳しくは当スラム、『コミッティー』の店主にお聞きください。


イヴァン視点


「これは何だ?クロ」

俺は渡された羊皮紙を見ながら聞いた

「勧誘のチラシです、国王様。各国の治安の悪い所にばら撒いてもらうように頼みました」

「俺は街に悪党を呼ぶつもりは無いんだが?」

「来られた方はスラムの皆様に捕らえていただきます。もしかすると他国に恩を売れるかもですね?」

「お前、やっぱり外道だな」

「今更ですね」

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