73ページ目 魔王の悩み
「それでは、私の仮拠点はこのお城を使わせていただくとして、他の魔王や魔人はどうやってダンジョンを作っているのですか?」
魔王・魔人の事は分からないので積極的に質問をして疑問を埋めて行かなくてはいけません。
まずは基本、活動拠点からからですね!
「ダンジョン?何ですか、ソレは?」
「へ!?え、えっと魔王たちが勇者を迎え撃つ為に作る領地?の事です」
「他の魔王や魔人の方は滅ぼした人間の施設や魔物の住処をそのまま使っています。なので、外敵の迎撃に優れた土地は奪い合いが激しいのですよ」
「魔王の特権?とかで作るこ」
「そんな特権ありませんよ?新しく作るなら魔物を呼び出し指示を出し1から自分で作らなければいけません。労力が合わないのでそんなことをする方は滅多にいませんよ」
OK、分かりました。
魔王たちは原始人並みという事ですね?
いえ、彼らだって自分で住処を作っていたはずです。
あ、魔王たちは自分が強いから他者から奪う方が楽なので、自分で作るという文化が無いわけですね。
ふむ、困りましたね。魔法があるのだから当然ダンジョンもあり、ポイント等を溜めて自由に作れるとばかり思っていたのにまさかのセルフ式ですか!?
ノーム様にお願いすれば作っていただけそうですが、こんなことをお願いするのは気が引けますし、他に何か簡単に作れる方法は・・・・あ、そういえばあのシステムが使えそうです、今度聞いてみましょう。
「クロ様、大丈夫ですか?」
「はい。拠点改良については一応の解決策を見つけました。」
「は、はぁ。そうですか」
拠点自体の改良が後回しになるとすると兵隊の増員が必要ですね!
「配下を増やすにはどうすればいいのですか?」
「【名鑑】から欲しい魔物を選んでお申し付けください」
「私、その【名鑑】は持っていませんが・・・」
「ご心配なく、すぐにお渡しいたします。魔導書をお出しください」
私が魔導書を出すとエスターさんは魔導書に触れながら何やら呪文を唱えています。
「はい。これでクロ様も【名鑑】から魔物をご購入できますよ」
そう言われて確認すると【名鑑】には魔物の名前、特徴、スキル、肖像などのデータが見れるようになっていました。
ご丁寧に進化できる魔物は進化先までリンクが貼ってあります。まあ、私仕様なのでしょう。
「魔物をご購入いただくには魔幣が必要となります」
「魔族のお金という解釈でいいですか?」
「はい。魔幣は魔王らしい活動した後にその行為に応じて配布されます」
どうやら魔族のお金稼ぎは完全歩合制の様です。
治めている土地によって勝手に入って来ることは無いようで、不労収入は出来ないようです。
魔王の世界では働かざる者食うべからずの様です。
「なので、頑張って魔王らしい行動を心がけてください」
「はい!ではリッターさん、エスターさん。有り金全部下さい!」
「・・・クロ様?私のお話を聞いておられましたか???」
周りの方々も何言ってんだコイツみたいな顔です。
当然、リーズお嬢様も国王様もです。
「悪の魔王らしく持っている部下から巻き上げようと思います」
「ハッ!主様、どうぞ」
そう言ってリッターさんは剣を差し出してきます。
何故に剣?
「私の魔導書はこの剣ですので、少ないとは思いますが全て献上いたします」
魔幣のやり取りは魔導書で出来るようですね、ワザワザお金を出さなくていいとかラクチンですね。
それよりも魔族も魔導書を持っているのですねー。
あ、そういえば以前にリーズお嬢様が使い魔の魔導書は主人が管理するっぽい事を言っていましたね。
「ダメです!リッター様。クロ様にはご自分で稼いでいただかないと!」
「分かりました・・・。」
「分かっていただけ」
「リッターさん、この近くの魔人か魔王の所に集金に行ってください」
「集金???」
「魔族を倒すとお金が入るそうなので近場のを何体か適当に首チョンお願いします。所持金・アイテムの回収も忘れずに」
「だからソレをご自分で行ってくださいと言っているのです!!」
「リッターさんの方が強いですし、向いていますよ?私は私が自由になる為に行動していますよ?」
「貴女は魔王として活動する気は無いのですか!?」
「リスクも少なくもらえそうなのでもらっただけですので。それに私はお嬢様方のお世話で忙しいのです!手が回らないところをやってもらう為の配下でしょう?魔王活動の命令はしっかりと出しています。命令も立派なお仕事です」
「イヴァン殿、私、このお方とどうすれば上手く付き合っていけるのか分かりません!どうかお助け下さい!!」
敵であるはずの国王様に泣きつくエスターさん。
国王様が私の方を少し見て、
「あきらめろ、俺たちがどうこう言ってもどうにもならん」
「そんな!?」
今までのお付き合いで私の事はある程度分かっていただけているようで何よりです。
「魔王活動は後でするとして、どうにかなりませんか?自分の拠点が無防備なのはさすがに困るのですが・・・」
「・・・分かりました。今回は私からいくらかお出ししましょう。それで、どの魔物をお選びですか?」
「この鎧シリーズの魔物をお願いします。後、鎧の装飾は変更できますか?」
「装飾ですか、出来ますが何に使うのです?」
「このお城の兵の鎧と同じにして城に配置します」
「「「・・・」」」
また静かになってしましました・・・。
仕方がないので説明でもしておきますか。
「この系統の魔物は疲れることなく不眠不休で動けます。ですので昼夜関係なくお城の警備をさせることが出来ます。見た目はただの鎧なので通路に飾る様に配置したり、お城の兵士さんとセットで行動させたり、倉庫に大量に配置しておいても問題ありません」
「確かに、クロの言うとおりだな。それなら兵の負担も減らせる。他には何か考えているのか?」
企むって・・・
「後はレイス、出来ればリッチですか。鎧の魔物が打撃用ならばレイスなどは魔法用で運用を考えています。特に空を自由に移動出来て壁をすり抜けられるのがいいですね。常に最短で援軍に来てくれる後衛・支援職。頼もしい限りです」
本当なら街中に放したいのですけどね、夜間の治安維持用に。
無理でしょうねー。
「クロ、お前最終的にこの街をどうする気だ。魔物で溢れさせる気か?」
「強引に言えばそうですね、極力目立たないように魔物を配置して敵が現れた時には被害が出る前に一気に・・・というのが理想でしょうか」
防衛戦力が城内だけとか不安ですよ。
リッターさんたちのお金が使えれば一気にやろうと思ったのですけどね・・・。
「クロ様の考え方は凄いですね、こんな考え方をされるお方は初めてですよ」
私程度の考え方なんていくらでもいるでしょうに。
いなかったという事はそれだけ考え方も進んでいないという事でしょう。
コレは攻めるのが楽に・・・いえ、油断してはいけません。
直ぐに誰かがもっといい戦略を練るはずです。
慢心はしてはいけないのです。
「では、ご購入されるのは鎧系と死霊系でよろしいですか?ランクはどうされます?」
「ランクは最低でお願いします。魔物の進化とかも自分でやってみたいので。後、ランクの低い魔物は安そうなので」
「魔物の進化には多大な魔力が必要ですが、大丈夫ですか?」
「はい、当てがありますから」
「当てがる時点で問題ですね・・・」
自作ポーションで回復するのです、問題になるはずが無いですよ。
あ、後せっかく魔王になったのですからアレをいただきましょう
「あ、後もう一つ欲しい物があるのですが・・・」
おずおずとお願いする私に皆さんまだ何かあるのかという顔をされています。
しかし、コレは私にとっては大事な事なのです。
「何でしょう?」
「魔王と証明するために付け角が欲しいです」
こう、如何にも魔王です!って感じの角が欲しいのです。
私の中では魔王とか強い魔族は角があるイメージです。
そんな可哀そうな人見る眼で見ないでください!リーズお嬢様まで!?
「クロ、お前がおかしいのは知っていたがまさか、そんなに・・・」
「ひ、人の好みはそれぞれよね?」
「く、クロならきっと似合うよ」
「それ、本当に要るの?」
おふう。まさかの全員からの不評ですよ、魔王っぽくしろと言われて形から入ってみたらこの仕打ち・・・
「・・・まあ、必要かどうかはさておき、サービスで付けておきますね」
更に同情されました。
もう、テンションも下がってきましたし、リッターさんに頼んでこの大陸の魔王・魔人全部倒してもらえばいいんじゃないかな・・・。
エスター視点
はあ、頭が痛い・・・。
どうも、皆様。
私、【館長】ことエスターと申します。
現在はクロ様の住んでおられる寮におります。
クロ様の手で日夜改造され、大変過ごしやすくなっております。
この度、新しく大陸魔王になられたクロ様に騙さ・・・ゲフンゲフン
契約していただき、配下に加えていただきました。
契約の方法も初めは怒りを覚えましたが、素晴らしい一手だったと思っております。
リッター様に加えこの私まで配下に据えることの出来る実力!
まさに魔王の中の魔王に相応しいお方と言えるでしょう。
当然ながら我々のルールはご存じないらしく、私がご説明する機会をいただきました。
流石はクロ様!
私の説明を理解し、早速企てを始められました。
また、その考え方も私達には無い考え方ばかり!
このお方は確実に我々を導くお方と言えるでしょう!!!
ある問題を除けば・・・・。
問題があるとすれば、あの方は考え方が酷い!酷過ぎる!!!
私は数多くの魔族を見てきました。魔族ですので当然、人間は痛めつけますし、獲物としか見ていない方も多数いました。
しかし、しかし。クロ様は違いました。
獲物とすら見ておられませんでした!
倒すことで魔幣が支払われる我々はお金という扱いでした。
挑む者は募金者、倒しに行くときは集金という始末。
しかも、驚くことにそれは人間に対してもさほど差はありませんでした。
我々ですら、同族にはもう少し友好的に接します。
ですがクロ様は違いました。
積極的に倒すかどうか程度の差、でした。
さらに我々配下からも容赦なく魔幣を巻き上げようとする始末です。
本人曰く「悪の魔王として」と言っておられましたが、悪の魔王ですら部下から金品を巻き上げる様な事はしません。
凌辱するのは敵のみです。
そして私も、その凌辱を受けたのです・・・。
あれはとても恐ろしかったです・・・。
せめてもの意趣返しにとクロ様のあられもない姿で討伐依頼書を作らせて世界中に配布したところ、その日のうちに物凄い笑顔のクロ様がやってこられました。
一方的に蹂躙された後、私は地獄へ引きずられていったのです。
「お嬢様!新しいオモチャです」
そう言われながら部屋へ放り込まれた先には、この寮で暮らすお嬢様方。
「服はゴスロリを強制で着せようと思いますので、後はお願いします」
そう言ってクロ様が部屋を出た瞬間、恐ろしいほどの寒気を感じました。
前を見るとそこには獲物を目の前にした猛獣がいました。
この後私はオモチャにされ誇りを汚され、一晩中泣きました。
しかしここで終わらせないのがクロ様。
新しい討伐依頼書の肖像を描く為だけに国王であるイヴァン様から王座を借り、そこで優雅に座り満面の笑みを浮かべた肖像を描かせたのです!
見た目はどこかの国の姫と言っても通りそうなので、ご本人が良いのなら私に是非はございません。
ですが、
この笑みは、怖いです・・・。
こう、自分が犯してしまった事を責める様な圧力のある笑みなのです。
その絵が、私の部屋に胸から上のみ拡大されて飾られているのです。
しかも命令で1日に1度は必ずこの部屋に帰って眠る様に言われています。
クロ様の怒りの度合いが窺えます。
さて、目下私の主な役割は一つ前の討伐依頼書の回収です。
なかなか見つからないのが気になりますが、早く集めてしましましょう。
肖像の微笑みから感じられる恐怖が現実のものになる前に・・・。
エスター「リッター様、あなたはどうやってあのお嬢様方から逃れたのですか?」
リッター「!」
ガタガタガタガタガタガ・・・・
エスター「すみません・・・」




