70ページ目 国王誕生祭6
「クロー!!!!」
リーズお嬢様の悲鳴が大広間に響き渡ります。
他の方々も首を逸らし、私の惨状を見ないようにされているようです。
リーズお嬢様の悲鳴の後は誰も、何も発しません。
仕方ないですよね?目の前で首チョンなんて見せられてしまっては・・・。
私の首を切りつけた【鎧】リッターさんも何も言葉を発しません。
リーズお嬢様をこれ以上心配させるわけにはいきません。
「大丈夫ですよ、リーズお嬢様」
「え?クロ???」
「はい!クロですよ」
信じられない様なお顔で私を見つめられるリーズお嬢様。
その言葉に釣られて顔をあげられる皆様。
そして訪れる沈黙。
あれ?おかしいですね?ここ「よかったー」と歓喜の声が聞こえるはずなのですが、何故に皆様黙っておられるのでしょう?
ようやく頭が回転しだしたらしいリーズお嬢様が質問されました。
「クロ、あなた斬られたんじゃ・・・」
「ええ、そうですね」
「じゃあ、なんで生きてるの?もしかしてもう不死系の魔物にでもなったの?」
「失礼ですね。私は生きていますよ。生きているのは攻撃が当たっていないからですよ?」
「え?」
再び沈黙されるリーズお嬢様。
周りの方の視線がリッターさんを見る物より恐怖を帯びているのは気のせいでしょうか?
このままでは何なのでネタばらしをします。
「リーズお嬢様、リッターさんは全身魔法金属・ミスリルの大陸魔王なのですよ?」
「へ、うん・・・」
「私は、寮で毎日修繕作業をしているのですよ?」
「あ、うん・・・」
「つまり、これくらいわけないのですよ?」
「・・・うん?・・・・」
まだ納得されていないようですね。
しかし、寮でやりたい放題の大精霊様との事を他の方に話すわけにはいきませんし・・・。
「クロ」
「はい!」
分かっていただけましたか!
「どうして、あんなことを言ったの!私、凄く心配したんだから!!!」
「いや、だってリーズお嬢様があそこまで無茶をされて戦われたのに、使い魔の私が剣を使わずに戦うのもどうかと・・・」
分かっていただけたようですけれど、ご機嫌はすこぶるナナメです。
「その結果がコレなわけ?心配させないでよ!この・・・バカバカバカバカバカバカ!」
うーん、困りました。リーズお嬢様の機嫌が直りません・・・。
「貴様・・・どうやって・・・」
リッターさんが痺れを切らして質問されました。
おかしいですね?一番近くで見ておられたはずなのですが?
別段、バレて困るような内容ではないのでネタバラシといきますか。
「コレが答えですよ」
私は近くにあったリッターさんの残骸の一つを掴んで錬金術で刀に錬成します。
「私。錬金術師でして」
周りが何やら騒がしいですが、そちらを気にしている場合ではありません。
リッターさんからの威圧が更に跳ね上がります。
「貴様!初めから私と本気で戦う気が無かったという事か!?私の感じた、貴様への敬意も私の、思い違いという事かぁぁぁぁ!」
もう、完全にキレて私に切りかかってこられます。
対して私は、攻撃をいなしながらリッターさんを分解していきます。
今までの倍以上のスピードで残骸が量産されていきます。
「ハア、ハア」
ようやく頭が冷えたのか距離を取り構えて私を見ています。
「貴様、何故初めからその戦い方をしなかった」
「言ったじゃないですか、リーズおい嬢様が剣であそこまで頑張られたのに使い魔の私が別の方法で戦うのは気が引けると。それに、一応初めからこの戦い方でしたよ?貴方を斬った時は全部錬金術を使っていましたから。あからさまにするか隠してするかの違いです。それに、もう充分ですし」
「何?、何が十分だというのだ」
「素材がです」
「素材?」
「はい、コレだけあれば私と知り合いの分は十分かと」
周りをアピールするかのように私は手を広げます。
「おい・・・まさか・・・」
リッターさんは私の意図に気が付いたようで、震えています。
また、怒って突撃してくるでしょうか?
そう、リッターさんが言った「本気で戦う気が無かったのか」というのはある意味正解です。
私は本気で暴れる魔物から素材を採取していただけなのですから。
しかし、凄い魔力量ですね。あれだけ斬り飛ばしてまだ余裕で再生します。
これは倒してしまうよりも・・・
「キ・サ・マァァァァァァァァッ!!!!」
激怒というよりは自棄の様な感じで切り込んできます。
勝負を付けるとしましょう。
私も踏み込み、狙いを定めます。
交差する2人。
倒れるのは片方のみ。
私としては、ほとんど予定通りの結末。
違うとすれば・・・
「く、殺せ!!」
私がリッターさんの核を持っていてまだ生きているという事です。
清々しいまでのくっころさんです。
騎士ですねー、これで女性型の魔王なら良かったんですけどねー。
完全い負けを認めているようで再生できるはずなのに何もしようとしません。
まあ、再生もさせませんけどね!
「「「おおおおお~~~~!!!!!」」」
突然、周りから大歓声が上がりました。
皆様、口々に凄い!とか信じられない!とか言っています。
リッターさんは負けを認め、もう倒されるのを待つばかりといった様子なので、私が大陸魔王・【鎧】リッターを倒したことを讃えてくれています。
手の平にあるリッターさんの核からも心なしか満足そうな感じが漂っています。
これにて、長い間人間を苦しめてきた魔王が一人の人間の手によって倒されて今回の物語はめでたしめでたし。
なんてするわけがないじゃないですか。
「国王様!お願いがあります」
私が発言すると周りが水を打ったように静かになりました。
この場では私は英雄。
誰もが私の言葉に耳を傾けています。
「何だ、クロよ」
「コレを、私に下さい!」
「「「は?」」」
大広間は沈黙した。
意味が分からないと思うので、説明する。
「リッターさんは魔力さえあれば無限に魔法鉱石・ミスリルを作り出せるのですよ?わざわざ危険な炭鉱に赴いて少量のミスリルを取って来るよりもずっといいです。確かにミスリルの価値は下がってしまうかもしれませんが、お城の兵士さんたちの装備も短時間で一新できますし、近隣の対魔物装備には十分ですし、装飾品などにもピッタリじゃないですか!コレは理想的な炭鉱なのですよ!!!お城で使うのが問題なら、私が個人的に使いたいので許可を下さい」
私は目をキラキラとさせながらお願いします。
大精霊様にお願いして出していただければ問題無いと言えば問題無いのですが、そんなことを頼むなんて出来ません。
同じだ?
いいえ、リッターさんは事前に戦闘があったといえ、私が倒したのです!
つまり!所有権は私にあるはずなのです!!!
最初に沈黙を破ったのは、
「やめろ!やめてくれー!!!」
当事者のリッターさんでした。
「頼む、頼むから騎士として死なせてくれ!こんな道具の様な最後は嫌だ!!!」
確かにそうですよね、私も嫌です。
エロゲで言えば苗床BADENDです。
しかし、魔物にかける慈悲は無し!
「大丈夫ですよ、毎日しっかりと(拘束の)お手入れをして、魔力も(強制で)補充して良質なミスリルを生産できるようにしますので、物凄い好待遇ですよ?今後永遠に人の役に立てるのですよ?」
「嫌だ!辞めてくれ!せめて名誉の死を!!!」
この好待遇に不満を漏らすリッターさん。
名誉の死を!という事ならば・・・
「そうですねー、あ、アナタ!」
私が声をかけたのはいかにも横暴で、自分の欲の為にだけ動いていそうな一人の貴族。
「アナタ、【鎧】リッターさんを倒して英雄になる気はありませんか?」
またしても私の意図を理解できず、周りは反応できません。
「英雄になれば、今以上に良い思いを出来ますよ?」
それを聞いた貴族の顔が卑しくゆがむ、他の似たような貴族たちも是非自分をと身を乗り出しています。
「では、リッターさん。どの方がいいですか?」
やはり、ご本人に関わることですから、意見は聞かないといけませんよね?
「ふざけるな!こんなクズ共に私の最後をだと!?腐りきったクズ共を嫌というほど見てきたが、貴様はその比では無いぞ!」
手柄を平等に分配しようとしている私がクズですと!?
これは心外。
「私は貴様に私を殺せと言っているのだ!魔王殺しの栄誉がいらんのか!?」
「別段要りませんねぇ、面倒事に巻き込まれる予感しかしないので。栄誉よりも継続的にミスリルが欲しいです」
私の言葉に言葉を詰まらせるリッターさん。
「おい!コスカートの王、コイツおかしいぞ。何とかしろ!?」
何故か敵であるはずの国王様にお願いをし出すリッターさん・・・。
周りでは、強欲な貴族たちが俺に寄こせと騒いでいます。
「クロ・・・。他に何か無いのか、何だか俺はもう【鎧】が被害者にしか見えんぞ?」
そうですか?
確認の為に、他の王族で在ろう方々を見ると皆様首を縦に振り肯定されます。
では、本命と行きますか。
「ではリッターさん。私と契約して私の使い魔になってください」
「「「な!?」」」
大広間が驚きに揺れます。
「クロ、お前は何を考えている!?大陸魔王を使い魔になど!」
他の方からも非難轟々です。
ああ言えばこう言いますね・・・。
貴重なアイテムはゲットする、貴重なモンスターもゲットする。
こんなゲーム終盤ですらゲットできるか分からないモンスターのゲットチャンスを逃すわけにはいきません!
なので、周りを無視して続けます。
「それではリッターさん。どれがよろしいですか?一つ。このまま私にミスリル炭鉱として使われ続ける。一つ。何処かの誰かに倒される。一つ。私の使い魔になる。この3つからお選びください。なお、選択しの追加はありませんし、時間を掛けるのもアレなの後少しの間に決まらなければ炭鉱とさせていただきます」
まあ、私の期待では、使い魔・炭鉱・誰かの栄誉の順ですね。
どうせなら私の利益に繋げたいものです。
「待て、貴様!私を使い魔にすると言ったな?この私を!」
「そうですけど?」
「願ってもない!この【鎧】・リッター喜んで貴様の使い魔となろう」
あれー?予想外ですねー。もっと色々言って来るかと思ったのですが・・・
「私をここまで圧倒したのだ、主として何の問題も無い!死を覚悟していたが配下に加えてもらえるというのならば、むしろ誇らしいくらいだ」
全力で戦って勝てなかった者に忠誠を誓う。これも一つの騎士の姿!なのでしょうか???
物凄く上機嫌ですね。使い魔になれば炭鉱は免除されると思っておられるようです。
「国王様。リッターさんもこう言っておられるので、契約の儀式をお願いしたいのですが」
「いや、しかし・・・」
「その儀式、私が執り行いましょう」
そう言って前に出てこられたのはソニアス様でした。
「よろしいのですか?」
「ええ、私たちは命を救われたのですから。しかし、報酬はこの儀式という事になりますよ?」
「ふざけるな!我々はそんなこと認めないぞ!」
文句を言ってきたのはどこかの貴族と王様たち。
手柄が無くなってしまうのですから当然ですか、さてどうしましょう。皆さん私の意をくんで黙認していただけると思っていたのですが・・・。
「クロ様。いえ、主様。私の拘束を解いていただきたい。契約の儀式などせずとも私は貴女様に私の全てを捧げましょう。ですからあのクズ共を処分する許可を・・・」
一瞬で大広間がざわつきます。
私もいいかと思って手から核を叫んできた貴族たちの方へ投げました。
そしたらまあ、一瞬で元の姿に戻って貴族たちを威嚇しています。
「戦いすらしない者が口を開くな」
威嚇とこの一言であっという間に静かになってしまいました。
文句をいう人もいなくなったところで早速儀式を開始します。
実はソニアス様、私たちが問答している間も何食わぬ顔で儀式の準備を進めていました。
私達は魔法陣の中に立ち、各国の王や貴族が見守る中で契約の儀式が始まります。
私は何も知識が無かったのですが、頭の中に不思議と言葉が浮かんできます。
「汝、リッター。我が使い魔として私に仕え、私の為にその力を行使することを誓え」
「我が名はリッター・ガーディン。今この時より貴女の為にこの力を振るう事を誓いましょう」
魔法陣がひと際輝き、静寂が訪れました。
これで、成功なのでしょうか???
「お疲れ様です。無事、契約完了ですよ」
良かったー。リーズお嬢様の時とはずいぶんと違ったので心配だったのですが、問題無かったようですね!
「あの、主様・・・」
「あ、はい。私の事ですね?」
「はい。そうです。私も騎士の誓いをさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
騎士の誓い?どんなものでしょうか???
「何、簡単な儀式だ。騎士が使える相手に剣を捧げ、主人が受け取り剣を返す。ただそれだけのものだ」
なるほど、国王様説明ありがとうございます。そうですね、リッターさんは騎士って言われていますしね。
「分かりました。では、このまま執り行いましょう」
私もさっさと引っ込みたいので、すぐに出来ることは直ぐに行いましょう。
「待って!」
待ったをかけたのは何とカティ様でした、一体どうしたというのでしょうか。
「クロちゃん、まさかその恰好で騎士の誓いを受けるの?」
「???そうですけど?」
「それじゃあ、ダメよ!儀式にはそれに合った恰好が必要なのよ!!!」
え!?今の契約の儀式では何も言わなかったではないですか???
「リッター。貴方もどうせならもっと主人に見合った服を着たクロちゃんと儀式をしたいと思わない?」
「それは、同意しますが・・・」
「決まりね!」
カティ様がパチンと指を鳴らすと何処からかメイドさんたちが現れて私を囲んでしまいます。
私の索敵に全く引っかかりませんでしたよ!?
「背景と同化することすらプロのメイドには必要な事なのよ。並みの索敵では無理よ」
とてもいい笑顔のカティ様。
これは、アレです!!
寮で初めて私が紹介された時の感じです!
「止めて下さい!離してください!!!」
両脇をガッチリと固められ、私は引きずられていきます。
! そうです。こんな時こそ!です。
「リッターさん!助けて下さい!!!」
「ハ! !?」
次の瞬間、リッターさんは動きを止めてしまいます。
対峙しているのは笑顔のカティ様。
物凄い力を感じる槍を向けていて、その穂先は常にリッターさんの核を捕らえ続けています。
「クッ・・・」
「人間はね!本気になれば本来の数倍も数十倍も力を出せるものなのよ!!!」
言っていることはとても恰好良いのですが、理由が私の着せ替えですか!?
何で私が戦う前にその本機を出してくれなかったのですか!
リッターさんも全く動けません。
「じゃ、少し待っててね。貴方のご主人様、貴方にふさわしい恰好にしてくるから」
「誰か助けて下さ~~~い」
私の声は空しく大広間に木霊し、衣装室への扉が閉められました・・・。
「カティ様!離してください!」
「大丈夫よクロちゃん。ピッタリなのを選んであげるから、何の心配もいらないわ!」
「イーヤーでーすー」
最強の敵は身内にいました・・・。
次くらいで終わるはず・・・。




