69ページ目 国王誕生祭5
リーズ視点
「リーズ!?だめぇ!!!!」
誰かの叫び声で【鎧】は瞬時に私に気づき、私の不意打ちは失敗に終わった。
改めて対峙すると凄い威圧。何もしていないのにどんどん気力が削られていく気がする。
「ほう、この国は騎士が多く戦いも正々堂々と正面からを望む者が多いと聞いていたが、貴女の様に私の隙をつくことをする者もいるのですね。しかも、まだ学生・・・」
少し感心するような、面白がるような声音で話しかけてくる【鎧】。
「さて、私はようやくこの国の王と戦うことが出来るかと思った矢先にこの横槍。覚悟はできているのでしょうね?」
う、怖い!すごく怖い!!!でも・・・
「私は騎士を目指す者よ!たとえどんなに実力差があったとしても、騎士としての信念を曲げることは出来ない!!!」
私は、自分を鼓舞するために叫ぶ!
もう、後には引き返せない。直ぐに後悔の念に襲われる自分を蹴り飛ばして【鎧】を正面に見据え、構え直す。
すると、周りに変化があった。
「「「俺たちだって騎士の見習い!この国で自由にさせてたまるか!!!」」」
他の学生たちも前に出て、武器を構えてくれた。
一緒に戦ってくれるというのは、こんなにも頼もしいと初めて思った。
これなら、少しは時間稼ぎが・・・
「その心意気は買いますが、弱者と剣を交えるつもりは無い!」
威圧を込めた剣を一振り。
それだけで、他の皆は戦意をくじかれてしまった。
「やはり貴女は残りましたか」
「ええ、何とかね・・・」
「いいでしょう、では闘争を始めましょう!」
瞬間、今まで以上の威圧と見えないくらいのスピードで攻撃が繰り出される。
私は何とか体をひねり、剣の腹でいなし反撃を・・・直感的に飛び退く。
「私の攻撃を正確にいなし、誘いにも乗らない。いいですね」
私は答えることもできず、ただ剣を構え直す。
おしゃべりなんてしている余裕は無い、一瞬でも気を抜けばその瞬間に殺されてしまう。
「良い覚悟です」
一瞬で距離を詰め、連続の斬撃が迫って来る。
私は完全に防ぐことはかなわず、切り傷が出来てしまう。
大丈夫。まだ、分かる。
明確に殺気がある分、【鎧】の攻撃の方が避けやすい。
クロは訓練では殺気もなにも無くかなり変則的な攻撃をしてくる。
それに比べれば、力では勝っていても直線的な攻撃をしてくる【鎧】の攻撃はまだいなすことが出来るし、威圧もそれほど気にならない。
しかし、どうしようかしら。
いなせても私の攻撃は届かないし、隙を狙われてあっと言う間に死んでしまいそうね。
ココはクロの言いつけ通り、時間稼ぎをするしかないわね。
「攻撃してこないのですか?」
「色々模索してるんだけどね、貴方に通るイメージが湧かないのよ!それにコレはコレで意味があるわ」
「時間稼ぎですか」
ま、当然バレてるわね。
「ええ。この隙に国王様に貴方を倒す手段を考えてもらわないとね」
クロには助けが望める状態なら防御に専念して出来るだけ時間稼ぎをして、助けを待つように言われている。
当然、こんな状況なんて想定外。
でも、やらないと!!
クロが完全に不意打ちを決められる状況を作らないと、クロならきっと・・・。
「貴女がどのような策を練っているのか分かりませんが、興が冷めるようなことはしないでくださいね?」
「分かってるわよ!」
全力で走って数度切りつける。
相手のミスリルの剣にも鎧にもやはりダメージを与えられない。
相手の攻撃を躱し、反撃を繰り返すもやはり効果は無く、私のみが消耗していく。
「息が上がってきましたね?もう、おしまいですか?それとも策の準備が整いましたか?」
限界が近いだけよ!
でも、まだ倒れられない。【鎧】は周囲を気にする余裕がある。
私だけに意識を向けさせないと。もっと、【鎧】の注意を引く何かを・・・
ダメだ、【鎧】相手では私の手札は通じない。
もう、前にクロが絶対にやるなって言っていた方法を試すしかないわ。
クロは凄く怒るでしょうけど、私だって戦いを挑んだ以上一泡吹かせたいしアレ以外通用しないだろうし。
成功する確率は物凄く低いけれど、やるしかないわね!
私はクロが言っていたことを思い出す。
精霊の力を自分に貸してもらって戦う方法らしい。
どうやってそんなことするのよ!?って怒ったんだけど、
「話が通じる大精霊様がいらっしゃいますけど?」
だもんね。
その後、その戦い方の危険性も十分に教わった。
後は、シャイナ様次第・・・。
でも・・・どうやってお願いしよう・・・。
この会場には当然のように紛れ込んでいるんだろうけど、叫ぶわけにもいかないし・・・。
『リーズさん。クロさんの言っていた方法。使われるのですか?。』
え?シャイナ様!?どうして???
『精霊には本来。精神で語りかけるものよ。言い方は悪いけれど。あなたたちがおかしいのよ?。』
う、確かにそうだった。今は普通に話しているから忘れそうになるけど、シャイナ様達とは話すことはおろか、会う事すらほとんどできないんだった。
でも、今はそのおかしな状況のおかげで力を借りることが出来る!
お願い!シャイナ様。私に力を貸して!!!
『分かったわ。貴女が耐えられる分だけの力を貸してあげましょう。特別ですよ?。』
私は武器を構え直し、【鎧】を見据える。
小細工無しの真っ向勝負!
「その顔、勝負を決めようという顔ですね。いいでしょう。受けて立ちます」
お願い、持ってね。私の体・・・。
「レイド!!」
瞬間、物凄い量の力の塊が自分の中になだれ込んで来る。
全身が軋んで、意識も途切れそう・・・。
一瞬も無駄に出来ないッ。
「バニシングソード!」
レイドによって底上げされたステータスを制御することなく全力で【鎧】にぶつける。
思い切り切りつけて飛び退く。
動作にすればほんの一瞬だったけれど、コレが私の限界だった。
切りつけた時に確かな手ごたえがあった。
どれだけかは分からないけれど、確実にダメージを与えた・・・。
かすむ視界で見ると、【鎧】の剣を折り、体に大きな傷を与えていた。
倒せなかったけれど、これだけやったなら十分戦いを有利に進められるはず・・・。
「学生の身でまさかこれ程の力を扱えるとは、素晴らしいですね」
【鎧】はそう言いながら剣と鎧を修復させながらコチラに歩いてくる。
自分の間合いで止まり、告げる。
「素晴らしかったですよ。さて、最後に何か言う事はありますか?」
息を切らせながら私は俯くしかない。
私の出せる全力をぶつけて、あっさり全快されてしまうんだもの。
もう、どうしようもないじゃない。
でも、もう一仕事・・・。
「じゃあ、最後に一言だけ・・・」
「なんで・・・」
【鎧】の言葉は続かない。
だって、クロが後ろから剣で滅多刺しにしたのだから。
今の【鎧】は体から無数の剣を生やしたオブジェと化していた。
「私の囮、どうだった?」
そう、先生にテストの採点を尋ねるように私の横で私と背を合わす様に立っている使い魔に声をかけた。
クロ視点
リーズお嬢様が無茶を仕掛けようとした時に止めるべきでした。
強引に割り込んでタゲを取って、出来る限りをやれるべきでした。
そうすればリーズお嬢様があんなにボロボロになる事は無かったはずです。
でも、出来なかったのです。リーズお嬢様を見ていると、ソレはしてはイケナイ気がしました。
恐らく、シャイナ様のおかげでしょう。
リーズお嬢様は何とか息があるようです。
【鎧】さんがリーズお嬢様に近づいていき、リーズお嬢様が作った隙をついて奇襲します。
あらかじめ準備しておいた剣で頭・胸・腹・腕・足。
おおよそ人型の弱点と言える部分を中心に剣で串刺しにしました。
「私の囮、どうだった?」
リーズお嬢様の質問に、
「無茶をし過ぎです!見ている私の身にもなってください・・・。」
「ごめん。でも、無茶をしたかいはあったでしょう?」
「普通の魔物なら完璧と言っていいでしょう。しかし残念でしたね、私はこの程度では倒せません」
剣が刺さっていて動きにくい所為か、ややぎこちない動きで【鎧】さんは剣を抜いていきます。
「やれやれ、コレが貴女の本命ですか?だとしたら残念です」
ふむ、ここまでノーダメージだとリーズお嬢様を連れて逃げ出すことも選択肢に入れないとまずいですかね?
というか逃げたいです。
でも、これだけ恰好を付けて出てきておいて即行で逃げ出すのは【鎧】さんも周りも許してくれないですよねー。
特に【鎧】さんの怒気が凄いです、大分に怒ってらっしゃいます。
逃げても確実に追いかけてきそうな感じです。
逆に逃げてココから遠ざけるというのは・・・ダメですね。被害がどうなるか分かったものではないです。
リーズお嬢様も命がけでここまでされたのですし、私も・・・。
「リーズお嬢様、これを飲んで下がっていてください」
特性回復薬を渡して下がってもらいます。
リーズお嬢様を襲うようなマネはしないと思いますが、巻き込んでは大変です。
「クロ、負けないで!」
どうしてでしょう?だた「負けないで」と声をかけられただけなのに、体の内側から沸々と力が湧いてくる感覚があるのは?リーズお嬢様が私の契約者だからでしょうか?
さて、リーズお嬢様も応援してくれているわけですし、恰好がいい所を見せますか!
私はアイテムボックスから一振りの刀を取り出して腰を落として居合の構えを取ります。
【鎧】さんの怒気から喜色に変わる瞬間に全力で踏み込んで一気に切り捨てます。
片腕、胴。
首を落とそうとした時には剣の反撃が来て引くしかありませんでした。
先制攻撃としては十分と思いたいのですが、何せ切り落としてもダメージが無くほぼ一瞬で元通りです。
この様子では痛覚もないのでしょう。
「やるな!今度は此方から行くぞ!」
リーズお嬢様の時よりも素早い踏み込みです、どうやら私に合わせて戦闘速度を上げて下さったようです。
超パワーで超スピードって卑怯じゃないですか?
しかも体はミスリルで多少の攻撃は無効とか、チートです!?
なんでこんなチートボスを徘徊型にしたんですか?
普通はダンジョンの奥にでもどっしり構えて万全の態勢で戦いを挑むものじゃないんですか???
運営に文句言ってやる!
いなすと同時に切りつけ、どうしてもいなせない時には受け止め攻撃を防いでいきます。
どれだけ切り落とそうが相手のライフは変化なし!
私は防げてはいますが、小さな傷は負っています。状況的には私が不利です。
「メイド、貴様本当に人間か?私の攻撃をこうも受け止めるなど」
「それはもう、色々準備しましたから」
武器に防具にこの部屋に。
エルフの里で教わった陣術を施しています。
「それに先ほどから私が与えた傷も回復しているようだが?」
「それはもう色々準備しましたから」
この部屋にはバフの他に傷の回復の陣術も仕込んでありますし、リジェネもあらかじめ使っています。
スピードでは何とか勝っているはずなので、それで何とか凌いでいるのです。
「なるほど。では、これはどう・・・・・・・だ!」
瞬間には私の目の前に立ち、剣が振り下ろされます。
いなすことには成功しましたが、それだけで刀が折られてしまいました。
まだ強くなるのですか!?
ミスリルの硬度であのスピード、手持ち武器では厳しいでしょうか?
そう思いながらも新しく刀を取り出し、切り結んでいきます。
剣と刀がぶつかる度に私の刀は使用不可になっていきますが、それでも私は新しい刀を取り出し少しずつですが【鎧】さんのミスリルの体を切り落としていきます。
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「全く、一体いくつその剣を持っている?」
「私の、持っている、アイテムボックスに、入るだけ、入れましたので・・・」
私は息が切れており限界です、対して【鎧】さんはまだ全然平気なようです。
切り落とした体の総量は既に本体の数倍の量になっています。
「だが、それも打ち止めの様だな?」
そう、私は用意した刀をすべて使ってしまい、もう武器が無い状態でした。
「初めは騎士の戦いを踏みにじる痴れ者と思ったが、貴様もなかなかやるではないか。その戦いぶりに免じ最後に主人に最後の挨拶くらいはさせてやろう」
この方はもう、魔王というより考え方が人間の様ですね。
だからこそ、騎士とよばれているのでしょうけども・・・。
そうですね、もう充分頑張りましたよね?
ただの使い魔が大陸魔王相手にここまで戦えたのですから。
私はありがたくその厚意を受け取ることにしました。
リーズお嬢様に、謝らなくてはいけません。
私は振り向いて、リーズお嬢様に今の心情をお伝えします。
リーズお嬢様は今にも飛び出しそうになっていますが、周りの方が何とか抑えて下さっています。
「リーズお嬢様。申し訳ございません。私の剣の腕では大陸魔王・【鎧】に勝つことは出来ませんでした」
そう言い終えた瞬間。私の首に剣が振り抜かれました。
クロ 「刀って下手くそが使うと直ぐに使えなくなるんでしょう?
だから一杯用意したの!
アイテムボックスに押し込むから大量に持ち込んでも全然重くないの!!
数は力!!!」
【鎧】「ぬるい!」




