67ページ目 国王誕生祭3
ミューズ視点
拷問だわ・・・。
私はとても高い倍率を抜けて、国王様や来賓の方々が食事をされる大広間の給仕の担当になれたのだけれど、この仕事は拷問だわ。
コレは私だけではなく、大広間の担当になった者全員の総意で間違いないと思うの。
私達は今、厨房から料理をカートにのせて大広間へ運んでいる最中なのだけれど、料理の蓋から微かに漏れている料理の香りが私たちの鼻を刺激する。
国王様のお客様に出される料理だから出来るわけが無いのだけれど、出来るのなら今すぐにこの蓋を取って中の料理を食べたい衝動に駆られている。
一体この蓋の中にはどんな料理が入っているのかしら・・・?
新学期が始まってすぐ、誕生祭のお手伝いのクエストが発行された。
内容は街の警備から大広間のお城の警備、その他多数のお手伝いがあり、その中でも一番人気だったのが大広間の給仕のクエスト。
国王様に直にお会いできることや、他国の来賓とお近づきになれる可能性がある為、全生徒の羨望の的になったわ。
抽選で選ばれた一部の生徒がお城で給仕の礼儀・作法などを教えていただいたのだけれど、こんなのは教えていただいていない。
こんなにも美味しそうな匂いのする料理を運ぶだけだなんて!!!
ちなみに、リーズも選ばれているのだけれど、何故かクロの姿は無い。
いつもリーズにべったりとくっついているのに・・・。
私達は大広間の指定された場所へ料理を運び、来賓の方々が集まられるのを待つ。
来賓の方々が集まり、国王様が感謝の挨拶をして立食パーティーが始まった。
国王様の合図で私たちは蓋を外し、料理が姿を現していく。ソコにあったのは見た事も無い料理と今まで以上に強烈に私たちの鼻を刺激する料理の香り。
流石、国王様が誕生祭に出される料理ね。
クロが普段作ってくれる料理も素晴らしいけれど、この料理はその更に上を行くわ。
こんな素晴らしい料理を食べられる来賓の方々は幸せなのでしょう、対して私たちは更に地獄に落ちることに。
そう、とても美味しそうな魅惑満載の料理、それを貪るように食べている様を見ることしかできないのだから。
しかし、この立食パーティーは1つだけおかしなところがあった。
立食パーティーと言えば談笑を交えながら料理を楽しむもののはず、しかし来賓の方々はまるで憑りつかれたかのように料理を貪っている。
そこには美味いの一言も無く、只々料理を胃に運ぶだけの反復運動を繰り返している。
そして、目の前の料理を食べ終え、次の料理へ向かおうとして気が付くのよ。
皆、目の前の料理に夢中になりすぎて、他の料理がほとんど残っていないことに。
もちろん、何の心配もない。
直ぐに第2陣が次の料理を運んでくる手はずになっているのだから。
私達はこれからこのパーティーが終わるまで永遠と料理を運ぶ仕事を繰り返さなくてはいけないの。
これは、トンデモない拷問だわ・・・。
とある国の国王視点
余は甘かった。
朝食のデザートに食べたあのプリンよりもずっと甘かった。
この誕生祭で饗される料理で美味いのはせいぜい後2品程度だと思っていたが、そんなことはなかった。
スープ・麺料理・肉料理・サラダ等々、全ての料理が余の国の料理よりも優れていると言わざるを得ない料理ばかりだ。
まず初めに余のいる机に置かれたのは麺だった、麺のみだった。
まさかこれだけかと思っていると別の者たちが大きな鍋を持ってやってきた。
鍋の中身は汁であった。
1つとして同じ汁は無く、香りもとてもいい。
他の場所からも様々な料理の香りが上り立つ、これは美食の国の王である余にしてみれば戦を仕掛けられたのも同義であった。
これ程の新しい料理をこれ程の数用意したのだ、その全てを食してやると試してやると、そう思って目の前の麺に赤い汁をかけてもらい食したのだが、戦慄した。
余が今まで食していた料理とはかけ離れた美味さだった。
あっと言う間に最初の一皿を食いつくしてしまった。
他の者を見ると余と同じように驚き、只々無言で料理を貪っている。
もし、今の我々の状態を王族たちが料理を下品に貪っていると言われても誰も反論すまい。
それほどまでにこの料理は美味いのだ、会話をする暇があれば更に料理を胃に詰め込みたいと思えるほどに、ひたすらに料理を食し続ける。
余も他の汁の味も味わおうと麺を追加させるときにふと気が付いたのだ。
一皿目と同じ量をもらっていいのか?と、全ての料理を味わえるのか?と・・・。
確かにココにある料理はいくらでも食えそうなくらい美味い、しかし!胃には限界がある!既定の量をもらうよりも少し量を減らし、色々な味を味わった方が賢いのではないのか?と・・・。
宴は始まったばかりなのだ、早々に食いすぎて倒れるわけにもいかん!
少し見渡すと数名、余と同じ考えに至った者がおり料理の量を抑えて食している。
やはり、これが正解!
余は全ての汁を堪能したが、失敗もあった。
人数に対して料理の量は十分にあった、しかし、料理が美味過ぎたのだ!
皆後先考えずに食していった為に他の料理が無くなってしまったのだ!
クソ、失態だ。汁の種類ではなく料理そのものの種類を変えればよかったか・・・。
この大広間に居る者が食すには十分すぎるほどにあった料理が半刻経たない間になくなってしまったのだ。
国王もさすがにこの事態は予想していなかっただろう。
十二分に用意した料理が早々に無くなるなどとは・・・。
他の者たちも美味かったが全く食い足りない、そんな顔をしている。
料理の味が素晴らしかっただけに、残念でならない。
私も残念だが仕方ないと諦め、近くの者と今の料理の談笑でもしようかと思った時だ、入口の扉が開き奥からはカートが次々と大広間へ入って来るではないか!?
カートが横切る時に流れ出る香りはまさに先ほどまで食していたあの料理たちの香り!
カートの配置が整ったのを見計らい国王が告げる。
「皆様、料理はまだまだありますが、その前にお願いがございます。食したい料理の所までご自分で移動して食していただきたい。そうでないと給仕が足りませぬので・・・」
我々に自分で移動しろと命令をしてくる国王。
しかし、この場でその命令に何の意味があろうか?
皆、次の料理を食したくて仕方が無いのだ!給仕が運んでくるのなんぞ待っていられるわけがない!
「では、ごゆるりと引き続き食事の一時をお楽しみください」
国王が話し終わると同時に皆移動する。
まだ食したことのない料理を食す為に!
どうやら余の考えは正しかったようだ。
考えなしに料理を貪っていた者は腹が膨れ、もう食すことも難しくなってきいる様だ。
部屋の壁際にはどうぞ休んでくださいと言わんばかりに無数に椅子が置いてあり、椅子にもたれかかり食休みをしながら、談笑している者も数人いる。
時折、争いを起こすような声がするが兵が少し話せば急に大人しくなる。
聞こえた限りでは、部屋から追い出す類のものだった。
当然であろう、この楽園から追い出されるなど、たまったものではない。
しかしまいった。余も様々な料理を食してきたおかげで腹が膨れてきてしまった。
ここは他の者同様、談笑でもして食休みをするか?
そう思いながら広間を良く見渡すと、知り合いの王族でこの場にいないものがいることに気が付いた。
火急の様があったのか、はたまたこの国の宴などと見下して参加を代理に任せたか・・・。
今もなおものすごい勢いで料理を貪っているのはその代理の者たちか・・・。
代理を頼んだ者は勿体ない事をしたものだな。
さて、食休みも兼ねて挨拶でもしてくるか。私は宰相に告げイヴァン殿の所へ向かう。
現金にも宴の前は見下してすらいたというのに今は尊敬に近い感情を持っているとは・・・。
そう思いながらイヴァン殿の所へ向かうが、足を止めてしまう。
理由は、イヴァン殿の隣に侍り話をしているのがエルフの王族だからだ。
娘を連れてきているのか、すぐ近くで小さなエルフの娘が料理を食している。
更には神殿の大司祭様もおり、この大広間でなお異界のような感じを出している。
他の者は気後れからか少し距離を空けて傍観しているのみだ。
確かにこの国はエルフと少なからず交流はあったように記憶しているが、あそこまで親しい間柄とは聞いていない・・・。
「イヴァン殿、この度は素晴らしい宴にご招待いただき、誠に感謝いたします」
「おお!貴方は美食の国の・・・どうです?今日の料理は?」
「どれも素晴らしい!是非、我が国に来て欲しいものです」
「そうですか、機会があればですな」
余の意を決した挨拶と勧誘もあっさりと躱されてしまう、当然のことだな。
「しかし、何故エルフの女王と大司祭様ががコチラに?」
「招待状を出したら直ぐに参加の返事がきたぞ?」
「「初めまして、美食の国の王。よろしくお願いします」」
「あ、いえ。初めまして。こちらこそ・・・よろしく。不躾ですが、何故この宴に?エルフ族はあまり外の種族と交流を持たないと聞いたのですが・・・それに、神殿の大司祭様も・・・」
「「彼女の料理が食べられると聞いて」」
意外と俗物的な答えが返ってきた。
だが、今何と言った?【彼女の料理】?つまり、エルフの女王と大司祭様はこの料理を作った人物を知っている!?
ならば、話の流れでイヴァン殿に紹介してもらうのは何の違和感もあるまい!
繋がりを持ちたい!あわよくば我が国に引き抜きたい!!
「イヴァン殿。その料理人、是非余にも紹介していただきたい。これほどの料理を作ってもらったのだ、直接余の口から礼を言いたい!」
余の言葉を聞き、周りの者も聞き耳を立てる。
皆、狙っているのだ。この料理を作った料理人を手にれる機会を!
「申し訳ない、さっきまでいたんだがな。次の料理を作りに引っ込んだよ」
この言葉に周りの者はどんな人物が近寄ったか確認を取り出すが、誰一人その料理人らしき人物を見たという者はいなかった。
当然だろう、他の者にこんなチャンスを分けてやる義理は無いのだから・・・。
しかし、一体どのような者がこの料理を作ったのか・・・。
「申し訳ございません、国王様」
「む、どうした?」
会話に割り込んできたのは一人のメイドだった。
このメイド、何処かで見たような・・・
「そろそろデザートを運び込もうと思うのですが、よろしいですか?」
「フム、頃合いだな。分かった、用意してくれ」
「はい。それでは失礼します」
ペコリと礼をしてまるで溶けるように人ごみの中に消えていった。
「アイツが今回の料理を作ったヤツだ」
は?余は慌ててメイドが移動した方を見る。
当然、声が聞こえた者はメイドを探したが、もうメイドの姿は無かった。
「イヴァン殿!」
「すまないな。この人の中、コイツが作ったなんて言えば次の料理が出るのがいつになるか分からんからな」
それはその通りだ、皆が引き込もうと勧誘を行い料理どころではないはずだ。
また、厨房へ向かおうとする者もいたが城から追い出すと言われて即断念していた。
程なくして扉が開き、カートがデザートを載せて入って来る。
そこにあるのは余が虜になったプリン(飾り付けのおかげでずいぶんと豪華になっている)や見た事も無い透明の入れ物に入った細工物の様な物など様々で、どれも甘い匂いで誘惑してくる。
残念ながら、運んできたのは学園の生徒で件のメイドは見られなかったが・・・。
まあいい、せっかくのデザートだ。他の者に取られてしまう前に確保しなくては!
余も他の者と同様にデザートに群がっていく、余が選ぶのは当然プリンだ!一体この飾りつけでどのように味が変化するのか・・・。
プリンを手に入れ、早速一口食べてみる・・・。
違った・・・・。
今朝まで余が食してきたプリンとは全くの別物だった。
プリンの甘さ、舌触り、喉越しなど全てが数段上で、今までのプリンが失敗作に思えるほどであった。
プリンを流し込むように食し、他のデザートにも手を付ける。
全てが天界の料理と言われても過言ではないほどの旨さで、またしても皆で貪ってしまった。
そこには王族や貴族の威厳など無くエサに群がる家畜さながらであった。
一緒に出された飲み物は少し苦く、甘いデザートとの相性も抜群であった。
その飲み物に更に砂糖やミルクを大量に入れている者を見たときには吐き気を覚えたが・・・・・。
余は戦をしかけられたと感じたが、ソレは全くの間違いであった。
戦いにすらならないほどの実力差・・・。
私は感染完全敗北を悟りながらもこの天界の菓子をほおばり続けた・・・。
甘味は正義!
カロリー計算?
異世界でそんなものは無粋です。
丸々と太った〇を量産するのです!
三大欲求の一つである食は人心を掌握するのにはうってつけなのです!
書けていませんが、辛い料理も多数作られています。
甘いものも辛いものもその他のもの体を壊さない程度に美味しくいただきましょう。
何事も行き過ぎはよくありません、程ほどが一番です。




