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ファミリアエッセンス  作者: 玄亀
66/211

66ページ目 国王誕生祭2

とある国の国王視点


今回、それなりに交流のあるコスカートの王から誕生祭の招待を受けた。

普段ならば代理の者に行かせるのだが、今年はヤツの節目の年の誕生祭という事で相当力を入れているらしい。

それに、最近はアイテムの輸出なども増えてきており、目に見えて好景気だ。

誕生祭に力を入れているのは招待状に書いてあった通りだとしたら他国の王たちも参加するはずだ。

ココはコスカートを偵さ、誕生祭に参加して近況を確認することも大事なので参加してみたわけだ。

誕生祭当日はまだ先だというのに民たちはもうすでにお祭り騒ぎである。

まあ、民がこれだけ元気よく祭りを楽しみに出来ているのは何の問題も無い、むしろ評価できる。

我々がフェリア(王都)へ入って直ぐのことだ。

建物の陰で明らかに怪しい連中が会話している。

王である俺には分かる、アレはクズ(悪党)共だ。

祭りの騒ぎに乗じて何かするつもりなのだろう。

普段ならば放っておくが、今回はコスカート王が力を入れて取り組んでいる誕生祭。

貸しを作るいい機会だ。

「おい、路地へ入っていったヤツ等を追うぞ。何人か一緒に来い」

「は!」

「他の奴は予定通りに行動しろ」


俺は護衛の騎士団長と数名を連れて路地裏を進む。

俺自身も腕に覚えはあるが、念の為に護衛に前を任せている。

少し歩くと開けた場所に着いた。

角から広場を覗くと先ほどのクズが誘っていたクズを捕らえていた。

どういう状況なのか確認するために奴らの動向を監視していると

「いやぁ~、ホンッと姉さんの言った通りだな」

「ああ、こうも簡単に付いてきてくれるんだからな」

「もう何組かいッとこうぜ」

そう言いながら捕らえたヤツ等の持ち物を押収し、逃げられないように縛り上げている。

なんだ、アイツら?何故よそから来た仲間から物品を巻き上げている?

「王・・・」

しまった、俺としたことが目の前の光景に気を取られ過ぎて他の奴らが周りを囲んだことに気が付けなかった。

素早く見渡しても今のメンバーでは手に余る人数がコチラを囲んでいる。


「おたくら、他所の国の王様と護衛ですよねぇ?すいませんが、広場まで出て行ってもらっていいですか?」

チッ、ここはコイツ等の言うとおりにするしかないか、広場に出ればまだ動きやすい。

その余裕ぶった表情を一気に泣き顔に変えてやる!

「お?どうしたんだソイツ等」

「覗いてやがりました」

この場を仕切っていると思われる男はそれだけ聞くと興味も無いのか奪ったアイテムの確認を始めている。

「おい!貴様等」

「なんだい?」

「ココでなにをしている?」

使い古されたありきたりなセリフだが、これが一番効率よく相手の事を調べられる。

この返答次第で相手の力量も分かるというものだ。

「同業者狩り」

「は?」

「だから、同業者狩りだよ」

確認を終えたのか、他の者にアイテムを渡してコチラに歩いてくる。

「同業者狩りだと?」

「ああ、そうさ。ホレ、後、見てみな」

言われたまま見ると別のグループがこの場に連れてこられたところだった。

「うっひょぉ!こんなお偉方捕まえたのか!?なあ、俺たちにもいい話になるって本当か?」

「さあな?これからのお前たち次第だろ?」

男がそういった瞬間、連れてこられた奴らは先ほどの奴ら同様、一瞬で捕まりアイテムを押収されていた。

ようやく自分たちの状況が理解できた男たちは騒ぎだす。

「テメェ等!どういうつもりだよ!?」

「どうもこうも。テメェ等こそ人の縄張り荒らしてんじゃねえよ!お城の牢屋へご招待だぜ?」

男は先に言った通り本当に同業者を狩っていた。

考えてみれば、厳しい監査を抜けて新しい街に入り、同業者と思われる人物から話しかけられれば警戒も緩むというもの。

ようやくこの街へやってきたクズはコイツ等の撒き餌に食いついてしまったわけだ。


「おし、とりあえずこんなもんだろ、連れて行け」

尚も騒ぐ男たちを無視して何処かへ連れて行く。

「オマエ等、どうしてこんなことをしているんだ?」

「ん?姉さんの指示だよ。一般人だまくらかすより儲けがあるってな。実際、アイツ等の金は全部オレ等の懐さ。おまけに報奨金も出る、良いことづくめだぜ」

姉さん?言い方からしてコイツ等のボスといったところか・・・。

同業者狩るなんてどんな思考回路してやがる?

「さて、と。後はアンタ等だな」

「俺たちをどうする気だ?」

フン、俺たちからも金を奪うか?残念だったな、今の間に魔法の詠唱も済んだ、いつ戦闘になっても問題ない。

「ココを真っ直ぐ行けば表通りに出られる。さっさっと行きな」

そう言って顎で通路を指す。

「なに?俺たちを襲うつもりじゃあ、無かったのか?」

「へ?俺たちは善良な一般市民ですぜ?他国の国王様を襲うなんて!?そんな恐れ多い・・・」

おどけてコチラに返してきやがる。

チ、っ徹底して同業狩りか・・・、今この状況でコイツ等を捕らえても直ぐに釈放だな。

「ああ、迷惑を掛けた。直ぐに出て行くよ」

「ココらは治安が悪いんで、気を付けて下せえよ」

「おい、この芝居も・・・」

「モチロン、姉さんからだ。一般人狙っちまったら俺らが捕まっちまうからな」

「どんな女だよ、ったく・・・」

「街中歩いてりゃ、会えんじゃないか?姉さん目立つから」

ふざけやがって・・・。


俺たちは言われた通りを抜けて表通りに出た。

表通りは陽気に何事も無いかの様に祭りが続いている。

少し行くといかにもバカそうなガキがどこぞの騎士たちとぶつかって揉めていた。

メイドが必死に謝っており、その騎士の隊長らしき者がその場を収めていた。

まさかメイドが主人を殴って黙られるとは思わなかったが、アレはけして間違いではないだろう。

あの手のバカは際限なく問題を起こす・・・。

ったく、無駄に気張ったな。部下にアイツらの言っていた姉さんの捜索をさせて俺はのんびりしようかね。





とある国の国王視点2


我が国は代々美食をもって国を動かしてきた。

美食の世界は日進月歩の為に世界一とは言えないまでも世の美食を牽引してきたと自負している。

だが、そんな我らを揺るがす大事件が起きた。

数か月前にコスカートの国よりオリーブオイルなる調味料が売り出されたのだ!

この調味料は既存の調味料とは一線を画し、我が国でも優秀な料理人がこぞって買い求めた。

しかし悲しいかな、輸入の品という事もあり十分な数を揃えられないでいる。

我らの専売ともいえる分野の一部を押さえられたのだ。

だからと言って即、戦というわけでもないが、やはり面白くない。

そう思っていた矢先、コスカートの王から誕生祭の招待状が届いた。

更に面白くない連絡に不参加にしようと思っていたが宰相が

「誕生祭の参加を理由にコスカートへ出向き、この調味料を作った料理人をスカウトしてきては?」

と進言してくれたのだ。

そう、各分野の最先端を行く国にとって優秀な人材の引き抜きなど当然の事!

最近は我が国の料理人に匹敵する料理人がいなかった為、忘れてしまっていたがいないのなら連れてこれば、作り方が分からないのであれば調べてくれば良いだけなのだ。

幸い、招待したのは向こう(コスカート)であるし、王族同士が出会ったときに人材の勧誘・引き抜きなど日常茶飯事なのだ。


そう、期待してコスカートの国に入ったのは良かったが、余は早くも落胆していた。

低い、低すぎる。

この国には素晴らしい調味料の産地であるにもかかわらず、露天の店にはほとんどオリーブオイルが置いてなかったのだ。

この国(コスカート)は何かに突出している国では無い、どちらかと言えば広く浅く色々な物を扱っている。

長けているとすれば魔族(デモン)からの侵略の防衛であるが、それもほとんどが一兵士の才能頼りで国を挙げて行っているわけではない。


「まさか、ここまで我が国との差があろうとは・・・」

「王よ、仕方がない事です。我が国の様に国を挙げて料理人の支援をしているわけでもないですし、オリーブオイルも他国へ輸出してしまっているのですから末端には届きますまい」

「それもそうか・・・」

それから余は指定されている宿へと向かった。

宿には既に他国の者が数名きていて食事をしたり、談笑したりしている。

その中で余は顔見知りを見つけ、歩を進める。

「久しいな」

「あら、おひさしぶりです。美食の国の国王様」

「我が国の料理を常日頃食している其方にはこの国の料理は受け付けないだろう?」

懇意にしている他国の女王に挨拶代わりに声をかけると、驚きの言葉が返ってきた。

「そうでもないですよ?他の料理は今一つでしたが、このデザートは絶品でした」

そう言って既に空になっている小皿をコチラに見せてくる。

絶品と聞いて美食の国の王たる余が食さないわけにはいかない。

「誰か!」

「は~い!」

「この者と同じ料理を世にも一つ頼む!」

「かしこまりましたー」

メイドは注文を聞くとパタパタと厨房へ引っ込んで行った。

時間を置かずして余が頼んだであろう料理と別の飲み物を一緒に持ってきた。

「どうぞ、こちら【プリン】になります。女王様、お待たせいたしました、こちら【コーヒー】になります」

「おい、そのコーヒーというのは何だ?」

「ん~、苦めの茶になります。砂糖と、ミルクで味を調整出来ますよ」

「ならばそれももらおうか」

「は~い」

そう言ってメイドはまた引っ込んだ。


「お、おまたせしました・・・こ、コーヒーになります・・・」

「ん?先ほどのメイドではないな」

「あ、その、彼女は緊急の助っ人でしたので・・・」

そう言ってぎこちなくコーヒーを置きそそくさと立ち去ってしまった。

比べてみると先のメイドはずいぶん失礼な感じがしたが・・・まあ、いい。実食だ。

フム、黄色い。そして頂に茶色いソースがかかっている。

匙で突いてみる。

プルン。

揺れる!?

何という柔らかさ!しかし、崩れるようなことは無い!

匙で掬ってみる。

抵抗がまるでない。

あ、味は一体・・・あまい!!!

しかし、ただ砂糖を大量に入れた物とは全然違う甘さ、柔らかく、噛まずとも喉の奥へ滑り落ちてしまった。

何だ!?この料理は!?こんな料理、余は食べたことが無い。

我が国では新しい料理は余の所へ運ばれてくるはず、つまりこの料理はこの国にしかない物という事か。

欲しい。この料理を作った料理人が。

「すまない!責任者の者と話せるか?」

呼び出した責任者に早速質問をする。

「この料理を作った料理人は誰だ?」

「申し訳ございません。この料理はお城から貴賓の方が泊まられる宿へ特別に送られてきた物でして、私どもも誰がどうやって作ったのか分からないのでございます」

「何!?城から・・・そうか、すまない。邪魔をした」

なるほど、この国の王お抱えの料理人の逸品というわけか。

城へ赴き事情を話せば会えるであろうが、その者は恐らく今は数日後の誕生祭の為に準備に追われているはず、ならば邪魔をするものではないな・・・。

会うのは誕生祭当時の楽しみに取っておこう。

「すまないが、プリンをもう2つ頼む!」



イヴァン視点


「なあ、クロよ。お前、プリンを出して良かったのか?アレは嬢ちゃんたちの為に作った料理だろう?」

「大丈夫ですよ、今お出ししているのはお城の料理人の方が作られた分ですので」

「いつの間に教えていたんだ?」

「いいえ、盗まれました。何回か作っただけなんですけどねー。凄いですねー、プロの料理人」

自分の料理が盗まれたというのにまるで怒った様子も無い。

スラムの悪党どもの事も含めて一体何を考えているのやら・・・

「当日の料理の方は大丈夫なのか?」

「はい、ミラノ様とも打ち合わせはバッチリですし材料も問題ありません」

「そうか、では頼んだぞ」

色々と思う事はあるがまあ、いい。

今の所、上がって来る報告は予想内のモノばかりだ。

この調子で誕生祭を成功させなければ・・・。




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