65ページ目 国王誕生祭
ミューズ視点
「まあ、ちょっとしたゴタゴタはあったけど、これからよろしゅうな。ミューズ」
「ええ、メイサ。よろしく」
学園長がいたのは驚いたけど・・・。
後、クロの学園長に対する態度もびっくりした。
誰にでもあんな感じなのかしら?
「ほな、細かいルールは後から教えるとしてこの寮でゼッッッタイに守らんとアカンルールだけ教えるわ」
え?そんな重要なルールがあるの?前の寮にはそんなことなかったのに・・・。
「1つ!クロの言う事は絶対聞く!!!」
「え!?何、そのルール・・・」
「ミューズ、この寮のメシを作っとるんはクロや。そのクロに逆らったら、どうなるか分かるか?」
「どうなるのよ・・・」
「ソイツだけな・・・メシ抜きなんよ・・・他の皆が食っとるのに、やで・・・」
想像すると、ソレは物凄く厳しい罰に思えた。
あの食事を自分だけ抜き?
「まあ、普通の食事は出てくるから気にせんでいいと言えばいいけどな。明らかに質は落ちるな」
そんな、クロがリーズと契約して半年くらいしか経っていないはずなのに・・・クロ、恐ろしい子。
「1つ!寮内の出来事は基本、口外禁止!!!」
「確かに、各寮毎の秘密があるのは分かるけれど、口外禁止ってそこまでするようなことがあるの?」
「あー、そうか。ミューズはまだ知らんかったんやっけ」
少し面倒くさそうな顔でメイサはとんでもない事を言ってきた。
「この寮な、頻繁に国王様やら大司祭様やらが来られるんよ。んで、結構大事なことも普通に話してはるから、基本寮内の出来事は口外禁止なんよ」
「待って、ちょっと意味が分からない・・・」
「お偉いさんの密会場みたいなもんやと思っとたらええ」
「ちょっと、それって・・・」
「ああ、あとそん時のおもてなしとかはウチらの仕事やし」
「さらっと怖い事言わないで!?何、その仕事!」
「まあ、来る数日前には連絡入るから大丈夫やろ」
「大丈夫じゃないわよ!!!」
「んで、本命はコッチなんやけど・・・」
「まだあるの!?」
「んー、お!丁度ええ所に!お~い!シャイナ~」
『はい。何でしょうか?。』
「今日、他の大精霊様は?」
『皆。寮に居ますよ。』
「集めてもろてええか?新しい寮生の紹介をしたいし、ソッチの紹介もしたいしな」
『それなら。皆さっきからこの部屋にいたから知っているわよ。彼女の家にも泊めてもらったし。』
へ?シャイナって光の大精霊様の名前よね?確かにあの人浮いてるけど。え?家に泊ったっていつ?この夏休みのこと言ってるの???
『ミューズさん。シャイナです。これからよろしくお願いしますね。』
「え・・・あ、はい。よろしく・・・お願いします・・・」
「まあ、他の大精霊様にも軽く挨拶しとき。これからお世話になるんやからな」
「うん・・・」
部屋の奥を見るとたくさんの女の人が宙に浮きながらコチラにやってきている。
アレ・・・皆・・・大精霊様!?
おかしい!おかし過ぎる!
大精霊様は人前に滅多に現れないって聞いていたのに、こんな・・・普通にお会いできるなんて・・・。
「まあ、コレがこの寮のトップシークレットや。国王様も大司祭様もほとんど大精霊様に会いに来られてるようなとこあるからなー」
「ちょ、ちょっとメイサ!これ、どういうことなのよ!?ありえないでしょ!!!」
私はメイサを思い切り揺するけれど、メイサは何か悟ったような顔で
「気まぐれでどっか行かはるまでガマンしぃ。皆ガマンしとるから」
「気まぐれでって・・・」
「まあ、元凶は全部アレ何やけどな・・・」
そう言って指さした先にはクロの姿があった。
「まさか、クロが?」
「ああ、畏まる必要はないで。友達感覚で話せるし、すぐ慣れると思うで?行動は突拍子ないけどクロにしかお願いしいひんから無理難題頼まれる事も無いし」
ああ、クロは普段から何か達観した様な感じがしたけれどこういうことがあるからなのか。
普段から大精霊様のお世話とかをしているのなら国王様の前でも堂々としていられるわよね・・・。
私はクロの大変な部分を初めて見て、ただただ
苦労しているのね
とだけ思ってしまった。
聞いていると、食事・掃除・洗濯などの家事を全て基本クロが一人で行っていて、その上でギルドへのアイテム納品用のアイテムも作っているらしい。
一体いつ休んでいるのよ、あの子・・・。
後日、魔法を使って寮中をものすごいスピードで掃除しているクロを見てもう何か良いうのはやめようと思ったわ。
クロ視点
「わぁ、凄い人ですね!皆さん、誕生祭に参加される方ですか???」
「国を挙げての催しだからね、別の国からもたくさん人が来るわ!」
「特に今年は節目という事で例年より大々的に行っているんですよ」
「全く、そんなことも知らないなんて君は本当にエライン家のメイドなのかい?」
リーズお嬢様、ティファ様、後何故かついて来ている男子生徒と一緒に街の大通りを歩いています。
まだ、誕生祭まで1週間あるというのにこの賑わい!
人混みが苦手な私も楽しくなるというものです。
人が多いと言っても都心のラッシュ時間の様な圧迫された多さではなく、お祭りの時の人の多さです。
それなりにスペースもあるので、ぶつかる心配もあまりありません。
「それにしても、大丈夫なのですか?ティファ様。こんな人ごみに出てしまって」
「なぁに、優秀な護衛の僕が付いているから何の心配もないさ!」
「・・・それで、今日は一体何処」
「お任せください、ティファニール様!あなた様が回られるべきところへこの僕、ダメンズがご案内いたします!」
ダメンズ様というやけに煩く自己主張の激しい男子生徒を横目で見ながら大通りを歩いて行きます。
「あ、あの食べ物は美味しそうですね」
ティファ様が道売りしている食べ物屋を見つけました。
「では、僕が。おい!店主この食べ物を2つ寄こせ」
「へい!毎度」
「うむ。ではな」
「ちょ、お客さん!お勘定!!」
「?王宮仕えの貴族たる僕が貴様のような者の料理を食ってやるのだ、それに勝る報酬はあるまい?」
なんかとんでもない事を言いだしました。
「ティファニール様、次へ行きましょう」
「ちょっと、ダメンズ!お勘定を・・・」
そう言ってさも当然の様に次の店へ向かっていくダメンズ様。
「すいませんすいませんすいません、お勘定は私が払いますので、後2ください」
「・・・ほらよ・・・」
「すいませんすいません・・・」
その後立ち寄るお店でもダメンズ様はソレが当然のであるかのように横柄なふるまいをし、お店の方や他のお客様の機嫌を損ね続け、私がそのフォローをして回ることになりました。
聞いた限りでは彼も騎士志望の生徒らしいのですが、今ままでどうやって単位を取ってきたのか不思議でなりません。
アレでは数年後以前に数分後が心配です。
何せ、今はお祭りで色々な所から色々な人が来るのですから・・・。
そしてその不安は直ぐに現実のものとなりました。
あんな態度でいるのですから、フラグなどでは無く、当然の帰結です。
ドン。
「痛いではないか、君たち。謝りたまえ!」
「あ?何だと、このガキ」
相手は見るからに他国の強そうな鎧と雰囲気を纏った方です。
「僕は王宮仕えの貴族!ダメンズ・イエキエールだ。その僕にぶつかっておいて謝罪の一つも無いとはどういうことだい?」
そう、何処から溢れ出るのか分からない自信で問いただされるダメンズ様。
「ハン、知るかよテメェなんか」
明ららかに険悪な雰囲気になっていきます。
周りにいた方たちも距離を取って事の行く末を見守っています。
「そうか、ならば仕方がない!この僕自ら君たちヴォ・・・」
バタン・・・
「全く、せっかくのお祭りだというのに、問題を起こさないでくださいよ。申し訳ございません、異国の騎士様。この方には後で良く言っておきますので今回はどうか目を瞑っていただけないでしょうか?」
「ふざけるなよ!メイド。主人のしでかしたことはお前らに償ってもらうからな!」
そう言って厭らしい目でリーズお嬢様とティファ様を見る騎士。
それを見て私の敵対感情も上がっていきます。
「やめろ」
「隊長?なんでですか」
そんな騎士を無視して隊長と呼ばれていた騎士様はティファ様に向き直り、
「ティファニール・パトリシア・コスカート様とお見受けします。今回は私の部下が大変なご無礼を」
「!い、いえ、気になさらないでください。元はと言えば私がこの男を御しておけなかったことがいけないのです。どうか頭をお上げください」
「そうですか、ご苦労されていますね。お忍びでお散歩ですか?どうか気を付けて」
何故でしょう、あの方からは何か共感できものを感じますね。
あの隊長さんの対応のおかげで無事に済んで何よりです。
「「「ありがとうございます」」」
隊長さんは少し私の方を見てから失礼しますと言って去って行かれました。
「ねえ、コイツそこら辺の衛兵に預けて私達だけで行動しない?私、もうコイツと一緒に居たくないんだけど」
ソレはティファ様も私も同意なので近くにいた衛兵さんに頼んでお城へ送り返してもらいました。
その後は問題も起こらず、3人で楽しみながら見て回りました。
やはりダメンズ様が問題だったらしく、残りの日もメンバーが入れ替わってお祭りに参加しましたが当然今日の様なトラブルはありませんでした。
祭り2日目
イヴァン視点
誕生祭が始まって2日目。
小さなイザコザはあるようだが概ね問題無く進んでいる。
そう、問題があったとすればイエキエール家のバカ息子が今までどおりバカをしていることくらいだ。
「国王様、よろしいでしょうか?」
「何だ」
「ハ、門の前にスラムの有力者が数名、縄で縛った者を連れてきています。普段なら即刻全員を縛り上げるのですが、相手方に悪意も何も感じられず、我々もどうしたものかと思いまして・・・」
「分かった。俺が向かおう」
スラムの連中が?
意図が読めないな・・・。
アイツらはこのところ大人しくしていたがまさかこのタイミングで何かしでかす気か???
「おぉ~、これは国王様、ご機嫌麗しゅう」
「テメェ等のおかげで一気に悪くなったよ、それで何の用だ?」
「ああ、俺らの縄張りを荒らす奴がいたからな、縛り上げて持ってきたのよ」
「ほう、お前らが?見上げた心がけだな、何を考えている?」
そう、他所の奴らに縄張りを荒らされて抗争が起こったことは何度もあったがその相手を城へ連れてくるようなことは無かった。
何せ、そんなことをすれば自分たちも捕まってしまうのだからな。
「何も、あえて言うなら・・・金儲けかね?」
「金儲けだと!?」
「ああ、姉さんが言うには俺たちで処理するよりも無法者を捕まえったってことで褒賞が出るかもって言ってたぜ?」
「1人で来るならまだしも、こんな人数で。テメェら全員捕まるとは思わなかったのか?」
そんなバカなら既に全員捕まえているんだかな。
コイツ等に指示を出した『姉さん』とやらを特定できないと厄介なことになりそうだ。
「なあに、こう言えばとりあえず大丈夫だろうって言われたぜ?『メイドの姉さんの命令』だって」
メイドの姉さん・・・クロ・・・か・・・。
頭を抱えたくなった・・・。
無法者が問題を起こす前に捕まるのは嬉しい限りだが、よりによって何で頭を悩ませている無法者が連れてくるんだよ?
これじゃあ、コイツ等も捕まえるに捕まえられないじゃないか。
「お前ら、アイツとどういう関係だ?」
「一番しっくりくるのは部下かねぇ?喜びなよ?アンタの娘さんの安全の為にスラムの塒全部襲撃して・・・拷問・・・かけて回ったからな・・・」
何だか最後の方は震えながら話していたが、クロの奴がティファを心配して悪党掃除をしてくれたことは分かった。
「で、貴様等これからどうする気だ?」
そう、問題はそこだ。
いくらクロの下に付いたとしても問題を起こされたのでは堪らない。
「誕生祭の間は今日みたいなことを繰り替えずさ、アイツら良い売り場を紹介してやるつったらすげえ簡単に釣れたからな。姉さん様様だぜ」
どうやらクロがまた何か悪だくみをしているのは間違いなかった。
アイツ、一体コイツらに何を拭きんだんだ?
「んで、祭りの後は法律ギリギリでやらしてもらうよ」
「それも姉さんの指示か?」
「半々だな、学園のお嬢様方に手を出さないなら特に何も言わないって言ってたからな。まあ、この法律ギリギリってのは教えてもらった、後はご自由にだそうで。そうそう、これからもコイツ等買い取ってくれよ?」
ええい!厄介極まりない事をしてくれやがってクロめ!
「おい、褒賞を持ってきてやれ、悔しいが、問題が未然に解決したことには変わりない。いずれ、貴様等も牢へぶち込んでやる!」
「お~こえ~。じゃあな、姉さんによろしく」
褒賞を受け取ると奴らは塒へ悠々と帰って行った。
俺たちはソレを見送ることしかできなかった。
その後、日が進むにつれてメイドの少女が何かやらかしたという報告が次々上がってきた。
主に、外国の兵たちから・・・。
「クロ、テメェなんてことしてくれんだよ!?」
「お嬢様をお守りするのは当然ですよ!」
「・・・」
「後、裏世界のボスとか響きが格好良くないですか?」
「・・・#」




