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ファミリアエッセンス  作者: 玄亀
56/211

56ページ目 帰省

「クロ、準備はいい?」

「はい・・・」

「忘れ物は無いわよね?今日から1月は戻ってこないんだから、忘れてたら大変よ?」

「大丈夫ですよ・・・」


リーズお嬢様のテンションが高いです。

理由は分かります。

念願の夏休みに入ったからです。

寮の皆さんも各自、帰省されています。

私達が一番最後なのです。

理由としましては、私が寮の管理をしているからです。

それで、今日。ようやくリーズお嬢様も帰省できることになり、テンションが上がっているのですが・・・


「クロ?何だか機嫌悪くない?どうしたの???」

「どうしたの???ではありませんよ!いくら私のアイテムボックスに入るからって私物全部入れる事は無いでしょう!?」

そう、帰省されるにあたって私に下されたミッションは移動式倉庫です。

武具・アイテム・教材・衣類等々・・・

リーズお嬢様は私のアイテムボックスに全て押し込みました。


おかげさまでリーズお嬢様のお部屋はベットと机しか置いてない新品状態です。

昨夜、リーズお嬢様に「衣装ケースってアイテムボックスに入るかしら?」と、尋ねられた時には戦慄が走りました。

確かに、私の役目はリーズお嬢様のサポートですが、コレは違うのではないでしょうか?



「お待たせ!姉様!!」

「そんなに待っていないわ」

リーズお嬢様とミューズお嬢様はディヤガンドの森のクエスト以降よくお話しされるようになりました。

姉妹ですし、仲がいいのは良い事ですよね。

「ミューズお嬢様。荷物、お持ちしますよ」

「悪いわよ。それに、そんなに重くないし大丈夫よ」

「ですが、手荷物が無い方がよろしいでしょう?」

「ええ。そう言えばリーズ。貴女の荷物は?」

スッと横に目を逸らされるリーズお嬢様。

「私がアイテムボックスにしまっています。私物丸ごと・・・」

「そう、クロのアイテムボックスに・・・って、私物丸ごと!?」


ミューズお嬢様も最近は私に慣れてこられて普通にお話されるようになりました。

私の奇行?に慣れられたのか、驚かれることも減ったのですがこれには驚かれているようです。

「リーズ、貴女・・・」

「・・・」

姉妹に気まずい沈黙が流れます。

「と、言うわけですので、私が預かりますね?」

「ええ。お願いするわ」

ミューズお嬢様の荷物も預かり、しまい込みます。


校門から出ようとした時に1人の女生徒が走ってきました。

最近、私たちとずっと行動を共にしているティファニール様です。

お付きの2人は一緒にクエストに行ったりするのですが、その他の方は全く見かけません。

「みんな、帰っちゃうのね。寂しくなるわ」

「寂しくって、同じ領内じゃない。そりゃあ、学園よりは距離があるけれど、会えない距離じゃないわ」

「そ、そうですね。私は一人になるわけではないですよね?遊びに行ってもいいですか?」

「歓迎するわ」

ミューズお嬢様もティファ様と打ち解け普通にお話しする間柄になっています。

最初はボッチだったティファ様も少しずつですが、お友達が増えてきています。

「では早速・・・」

「どうしてそうなりますか!?」

「ミューズが歓迎すると・・・」

「せめてヘディ様に許可をいただいてからにしてあげてください。ヘディ様と家の方の為に・・・」

いきなり王女様が家に来るなんて胃に穴が開いてしまいますよ?おもてなしする側が・・・

「そうね、ヘディに聞いてみるわ!」

明るくそう言って走り去るティファ様。

今から確認に行くおつもりですか!?

あ、もう見えません・・・。



「何かお買い物されてから帰えられるのですか?」

「このまま屋敷へ帰るわ。姉様は?」

「私も、このまま帰るわ」

「分かりました。では、行きましょうか」

と、言っても馬車ですが・・・


お屋敷に着くと数人のメイドさんと執事さんに出迎えていただけました。

まあ、自分たちの雇い主が帰ってきたのだから当然ですか???

「みんな、ただいま!」

「ただいま」

「お帰りなさいませ、お嬢様」

壮年の執事?が代表して挨拶をされます。

佇まいに隙が無く、格好いいです。

服の上からでも体が鍛えられていることがわかり、鋭い眼で私を見ています。

「して、お嬢様。そちらのメイドは?」

「あ、ごめんなさい。私の使い魔(ファミリア)よ!」

「おお!お嬢様にもついに使い魔が・・・しかし、その者は信用できますかな?」

今までよりも威圧を込めて私を睨みつけてきます。


私、試されている!?

「もう、やめなよハムザ。そこのメイドちゃん、怖がっているでしょ?」

「む?カリナ。私はただお嬢様に相応しいか見極め」

「リーズお嬢が呼んだ(召喚した)んだから、相応しいもクソも無いだろ?」

「貴様、お嬢様に向かってその言い方は何とかしろと言っているだろ!」

私のフォローをしてくださったメイドさんはカリナと言う名前で、リーズお嬢様と年も変わらないように見えます。

「コホン、この子はクロ。私の使い魔よ。この格好(メイド服)に関してはうちの寮にメイドが居ないから、雑用をしてもらう為にこの格好をさせているわ。それと、この子の本業は私のサポートだから仕込む必要は無いわ」

リーズお嬢様が私の紹介をされ、視線が私に集まったので私も挨拶をします。

「リーズお嬢様の使い魔で、クロと言います。よろしくお願いします」

私の挨拶に続いて、

「ふん、確かに礼儀も何も出来ていないな。まあ、リーズお嬢様がそう仰るのであれば、我々が指摘することではないか・・・。ハムザ・エルだ。執事(バトラー)をしている」

「相変わらず固いねぇ。私はカリナ・ヤシン。ハウスキーパーだよ」

執事さんとメイドさんがいるなんて、リーズお嬢様は本当にお嬢様なんですねぇ・・・。

しみじみとそんなことを思いました。

ハムザ様とカリナ様に会わせて礼をされる他の執事さんとメイドさん。

一糸乱れることなく、凛としていてとても恰好いいです。

エセメイドの私とは違いますね!


「では、お嬢様。どうぞ中に」

そうして、お屋敷へ通されるのですが、私はどうすればいいのでしょうか?

一緒について行いって大丈夫なのでしょうか???

オロオロしている私を見る周りの視線が痛いです。

なんでコイツがリーズお嬢様に仕えているのかという無言の圧力が凄いです。

というか怖いです、逃げ出したいです。

「クロ、何してるのよ?早く来なさい!」

リーズお嬢様にそう言われてようやく私はお屋敷へ入っていくのでした。



「それでは、お嬢様。今日のご予定は?」

「私はとりあえず、部屋でゆっくりするわ」

「私も、荷物を出して整理しなくちゃ」

今、この部屋に居るのはリーズお嬢様、ミューズお嬢様、ハムザ様、カリナ様、私です。

どうやら今後の予定を確認されているようです。

「?そう言えばお荷物が見当たりませんが?」

「ああ、クロ。姉様の荷物出してあげて。私のは後で出してくれればいいから」

そう言われるので、ミューズお嬢様に荷物をお返しします。


「ほう、中々の容量のアイテムボックスだな。で、クロ だったな。お前はどうする?」

「ふぇ?」

いきなり振られて困惑してしまします。

「まあ、君はリーズお嬢の使い魔だからね。コッチでも把握しておきたいのさ」

と、言われましても何をしていいかも分からないのですが・・・。

「リーズお嬢様。私はどうすればいいのでしょうか?」

「ん?好きにすればいいんじゃない?」

まさかの放置プレイです。

知らないお屋敷で放置ってどうしろと???

「えと・・・リーズお嬢様と一緒に居ます。カリナ様、ハムザ様」

「クロ。私達に様付けは要らない」

「そうそう、リーズお嬢の使い魔だしね。地位的にはソッチのが上だよ」

「わ、分かりました。では、さん付けで・・・」

「まあ、いいだろう。何かあればすぐに呼んでください」

そう言ってお2人は出ていかれました。



「はぁ~、リーズお嬢様は本当にお嬢様なのですね~」

「何よ、その私がお嬢様じゃないみたいないい方は!」

「自業自得じゃない?」

そう言って笑われるミューズお嬢様。

「あ、そうだ。クロ。分からないことがあれば私が説明してあげるわ」

「何で姉様がするのよ!?」

「あなたがしないからよ」

そうでですねー、それでは・・・

「あのお2人について説明していただいてもよろしいですか?」

「あら?この家の構造とかについて聞かれると思ったけど?」

「それはもう把握できましたので」

周りの把握はもう無意識に行っていますからね、このお屋敷に着いた時に確認しています。

使用人の方々の場所もバッチリです。

誰が何処か分かりませんが・・・。

まあ、カリナさんとハムザさんの位置が分かれば大丈夫でしょう。


「相変わらず、ね」

フフン。と鼻を鳴らすリーズお嬢様。

どうして貴女がドヤ顔なんですか。あれ?コレ前にもあったような・・・


「ハムザはバトラー(執事)。他の従僕(フットマン)の統括よ」

「執事と従僕は違うのですか???」

「詳しく説明すると長くてメンドウだから執事の一番偉い人って認識でいいわ!」

「リーズ・・・」

そうですか、執事以外にも男性の役職があるのですね。

「それで、カリナはハウスキーパー。リーズの感じで言うならメイド長ね」

何ですか、ソレ。

メイドにも色々種類があるのですか???

私のオタク知識程度では理解の出来ない世界ですね。

私の中では男の従者=執事。女性の従者=メイドですからね。

コレは勉強をしないといけないでしょうか。


「ですが、カリナさ・・・んはずいぶんお若いですよね?ハムザさ・・・んと比べて」

「私と同い年よ。父様が拾ってきたのよ」

そんな犬みたいな・・・

「いきさつは知らないけれど、優秀な事は確かね。実力も無いのにハウスキーパーには付けないもの。特にウチでは・・・」

十分な実力があって今の職に居ると。

なんとなくでリーズお嬢様の隣にいる私とは大違いです。


「じゃあ、私はへに戻るわ」

「同じ部屋では無いのですか?こんなに広いので同室かと・・・」

「ふふ。暇になったら私の部屋にも来てね。歓迎するわ。」

「クロ、行かなくていいからね」

そんな軽い悶着があり、ミューズお嬢様は部屋へ戻っていかれました。


「私はこの部屋に居ていいのですよね?」

「ええ。私の使い魔だしね」

良かった。コレで馬小屋とか言われたらどうしようかと思いました。

この後、リーズお嬢様に私も予定を確認しましたが、本当に何も決めておられないようでした。

宿題のほとんどは既に終わっていますし、別段、やりたいことも無いそうです。

なぜ、ご実家に戻られたのですか!?

いえ、その考えは無粋ですね。

余程の事が無い限り実家というのは何もなくとも帰りたくなるもののハズですから・・・。


そのままリーズお嬢様と他愛もないおしゃべりを続けていると外から誰か近づいてきました。

速度的には馬車でしょうか、人数も2人。

と、いう事はヘディ様が仕事を終えて戻られたのでしょう。

外を見ても夕日が沈みかけています。

今日から私もお世話になるのですから、しっかりと挨拶をしておかないといけませんね!


そう思って、私は部屋を出ようとします。

「どこ行くの?」

「ヘディ様がお帰りの様ですので、ご挨拶に」

そう、と特に興味を示されないので私はそのまま玄関へと向かいました。


お屋敷の中は人の気配はするのですが、騒がしい事は決してなくとても静かです。

「やはり、学園とは違いますね」

「何が学園とは違うのだ?」

「人の気配はするのですが、とても静かだと・・・」

後ろにいるハムザさんに答えます。

「どこへ行く」

「エディ様が帰って来られるようなので、ご挨拶しようかと・・・」

「まだ旦那様は帰って来られていない」

「お出迎えすのもお仕事では?」

「「・・・・」」

気まずい沈黙が流れます。

「おーい、ハムザー。旦那様そろそろ帰って来るよー」

「本当か!?」

あ、私の時は信じなかったのに、カリナさんの時は信じるのですね!

いえ、今日あったばかりの私と長年一緒に仕事をしてきたカリナさんとでは比べるまでもありませんが・・・

とりあえず、私もお願いしてお出迎えさせていただけました。


その際にお辞儀の角度とか声の出し方とか色々と注意されましたが・・・

ギリギリ許容範囲に収まれたようです。


玄関の扉が開いた瞬間に、カリナさんとハムザさんが挨拶をして、それに倣って他の執事、メイド、私が挨拶をします。

エディ様も軽く皆さんに挨拶をして礼を解いて顔を上げた私を見て、硬直されます。

「「・・・・」」

ニッコリ。

凄く気まずいので、和やかにするために微笑んでみます。

「ブフォ!?」

と吹き出されてせき込んでしまいました。


へ?何ですか、その反応は!?

そんなに驚くことですか?お城で何度もお会いしましたよね?少しですがお話もしましたよね?

顔見知り程度には知っていますよね?

「やっと夏休みに入ってのんびりできるわね」

「予定をある程度には立てておかないと後が大変ですよ~」

「大丈夫大丈夫。まだ、始まったばかりだし」


「あ、ダメだ。絶対に最終日辺りに泣きっ面になるフラグです。

何とかしないと・・・。」


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