45ページ目 王女様の思い、お嬢様の思い
ティファ視点
私は今までコスカートの王女として色々な人に会ってきました、会わなければいけませんでした。
自国の貴族とその後継ぎの男子、他国の王族と次期国王の王子。
野蛮そうな冒険者に高潔な騎士、その他にもたくさん、たくさん・・・。
でも、あの子。リーズ・エラインほどの敵意を覚えたことはありませんでした。
苦手な男子も嫌だなと思う事はあっても排除しようと思う事は一度もありませんでした。
なのに彼女は、見た瞬間に敵だと思ってしまったのです。
下手をすれば魔物以上に敵だと自分の中でカテゴライズしてしまったのです。
彼女は我が国の臣民であり、同じ学園へ通う仲間だというのに・・・・。
私が俯いて考えているうちにクロが準備を終えて戻ってきました。
戻ってきたクロは少し苛立っているように見えました。
今回の遠征をお父様に報告するときにお友達だと紹介しようと思ったのですが、違いますと断られてしまうのでは無いか。
笑顔の仮面を付け、民の声に応えながら城へ帰っていきます。
城へ戻るとそのまま食堂へ通されました。
何でも、美味しい食事を取りながら話を聞くという事らしいです。お父様、またおかしなことをされますね。
私たちの前にお父様たちが座り、私たちも席に着いた時にようやく、クロの姿が無いことに気が付きました。
「あの、私たち以外にメイドがいませんでしたか?」
「メイド?いえ、ティファ様と後はパーティーのお2人だけでしたが?」
2人を見てみますが今気が付いたようで、首を振っています。
「どうしたティファ?誰か探しているのか?」
「はい、仲良くなった子がいますのでお父様にも紹介しようと思ったのですが・・・」
「居なくなったと・・・・。誰か、城の中に見慣れない者がいないか探してくれ、最悪刺客という可能性もある。十分に注意すように」
「お父様!」
「スマンが、一緒に入城して勝手に居なくなるのであればそう思わざるえない」
そうですね、一言も無しに姿をくらましてしまっては仕方ないですね。
クロ、何故急に消えてしまったのですか・・・。
それから私たちは今回の遠征の報告を始めました。
途中に近衛長のヤニツェクさんがお父様に何か耳打ちしてお父様の顔が少し曇りましたが少ししてコリーンさんが何か耳打ちされるとお父様は満足そうに頷いておられました。
私たちの報告よりも反応されているのですが、そんなに重要なことなのでしょうか?
「お父様、何か重要な事でもあったのですか?」
「なに、お前たちには関係ない。それにもう解決した」
「そうですか・・・」
解決したのならそれは喜ばしい事ですが、自分たちは蚊帳の外という事で私たちは少し残念です。
「国王様。食事の準備ができました」
「うむ、通せ」
食事が運ばれてきたようですね。
城の食事は美味しいのですが、私はクロの事があってそこまでいい気分には慣れませんでした。
私の前にも料理が置かれ、皆に行きわたった後、どうぞと料理の蓋が取られました。
その料理からはとてもいい匂いがしました。
今まで私が食べてきたものとは一線を画す匂い!
コレなんか凄い!早く食べたい!
2人も早く食べたそうに少しソワソワしています。
「おぬしたちの為に特別に作らせた料理だ、存分に味わえ」
お父様の言葉を皮切りに私たちは料理に手を伸ばします。
簡単にナイフが入り切れていく肉? 肉よね?
甘辛く味付けしてあり丁度食べやすい大きさにカットしてある野菜。
そのままでも十分美味しいのに備え付けの汁、ソースというらしいを付けて食べると更に美味しくなる料理。
私は感動した。料理で感動するのは初めてかもしれない。
そしてふと、クロにもこの料理を食べさせてあげたかったと思ってしまう。
クロ、どこに行ってしまったのよ?
「しかし、この”ハンバーグ”はは旨いが他の新しい料理は無いのか?クロ?」
そうか、この美味しい料理はハンバーグというのか。
そんなことを考えているとお父様の口から意外な名前が飛び出した。
え?クロ?まさか、偶然名前が一緒なだけよね?
お父様の横に立っているコック服とコック帽を着た人を見る。
「無茶を言わないでください、国王様。そもそもミラノ様だって同じ料理を作れるではないですか。どうして私なんですか」
「そりゃ、お前の方が美味いからな。それにイローナも喜ぶ」
「いえいえいえ、さっき味見させていただきましたけど、私よりずっと美味しかったですよ!」
「そうか!なら、俺たちはお前の作る味の方が好みというだけだな!」
「・・・・」
お父様の暴論に黙ってしまっていますが、そうではありません。
「クロ!」
「はい、何ですかティファ様?」
コック帽を取りコチラを見ているのは髪を後ろで纏めている為、印象変わっていますが確かにクロでした。
「あなた、どこに居たのですか?」
「どこって厨房ですけど?」
「そう、よかった・・・」
本当に良かった。コレで兵士にクロが打ち取られることはなさそうです。
「なんだ、お前らどこで知り合ったんだ?」
「学園の前で・・・」
「そうか。ティファ、俺も最近知り合ったんだが、贔屓にしている。お前たちも何か困ったら頼ると良い、大抵のことは解決してくれるぞ。ハッハッハッハ」
豪快に笑うお父様に対してクロも笑顔を向けて・・・・・は、いませんでした。
顔は笑顔なのですが、その雰囲気は明らかな怒気が感じられます。
「ハッハッハ・・・ハ・・・・」
「・・・」
何処かへ行こうとするお父様。
お父様が逃げ出すなんて・・・・
「あなた、何処へ行くんですか?」
「少しトイレに・・・・」
「そうですか、分かりました。後、今回のクロちゃんへの報酬はあなたのおこずかいから引いておきますので」
「呼びに行く前にもう来ていただろう!?」
「それでも、させたわよね?料理」
「それも既に・・・」
「あなたが事ある毎に呼び出して料理させていたせいですよねぇ?」
「ぐ・・・それは・・・」
「それは?」
「分かりました」
お母さま、相変わらず容赦のない・・・。
お父様はすでに燃え尽きかけてますね。
「クロちゃん、報酬は後日持っていかせるからね。」
「あ、分かりました」
「それで、今日はどうするの?泊っていく?」
あ、それはとてもいい考えですね!そうすればクロといっぱいいっぱいお話しできます。
「すみません、皆様のご飯を作らないといけないので・・・」
「そう、ありがとうね」
「はい。失礼します。ティファ様、失礼しますね」
「え?あ・・・」
クロは一礼するとそのまま帰って行ってしまった。
「お母さんは大変ねぇ・・・」
お母様がそんな事を言い出したので
「え?クロって子供がいるのですか!?そんな風には見えません」
どう見ても私より年下なのに・・・・・・・
「そうねえ、10人以上いるわね」
ゴン!!
私は頭を思い切り叩かれた感じでした。
へ?10人以上???10人以上って、え????
「クロちゃん、寮の子たちの面倒を1人で見てるのよ。ご飯、お風呂その他諸々。もう、お母さんよねぇー」
なんだ、そういう事ですか。よかった~~。
良かったのですが、彼女に会った時のあの感じはまだ消えません。
今夜、お母様に相談してみましょう・・・。
リーズ視点
王女様が遠征から戻ってこられた。
武闘派の国王様・女王様に幼いころから教育されたティファニール様はまだ学生の身でありながら並みの騎士よりもずっと強い。
この学園に通う女子全員の憧れと言っても過言ではない。
かく言う私も彼女のファンだ。
強くて、綺麗で・・・・
でも。
彼女はもう無理だ!
ケンカをしたわけではない、ただ一目見ただけ。
クロの横に立つ彼女の姿を一目見ただけ。
それだけなのに、私は彼女を明確に敵と認識した。
彼女からはクロの隣は自分のものだというオーラが出ていた。
クロは主人である私の隣にいるものだ。決して彼女の隣では無い!
向こうも、私を敵と見定めていた。
引く気はサラサラ無いだろう、向こうは学園のトップで王女様。引く理由がない・・・。
でも、私だって引くつもりは無い。
ならば戦争だ!!
「・・ズ、リーズ、リーズ!」
「え?何?」
「何?じゃないわ。あなた、すごく怖い顔してるいわ」
しまった、カグヤに心配をかけさせちゃった。
「まあ、あの王女様の事ね?」
「うん・・・」
「気にしなくていいと思うけど?」
「どうして?」
「貴あなたはクロの主人でしょ?何を気にするの?」
確かにクロは私の使い魔だけど、だからこそ・・・・
「本当は契約で嫌々居るんじゃないかって思っちゃって・・・」
「・・・」
「私、もう寝る・・・」
今は頭の中グチャグチャで考えられない。
クロは「どうせ国王様から料理を作ってくれって依頼が来るから」って言ってお城へ行ってしまった。
依頼ならあの人と一緒に行っても仕方ない、行き先が一緒なだけ・・・
クロが帰ったら、しっかり聞かないと・・・くぅ~・・・・
「重症ね・・・」
「・・・ん・・・」
「おはようございます?リーズお嬢様」
「あ、クロ。おはよう・・・」
「と、言っても夜なんですけどね・・・」
クロが少し困ったような笑顔で言うので外を見るとなるほど、もうすっかり夜だった。
クロは椅子に座り本を読んでいるみたいだった。
くぅ~
「あ・・・」
「遅くなりましたが、夕食にしましょうか」
「他の皆は?」
「もう済まされて眠っておられると思います」
もしかして、ずっと待っててくれたのかしら?
部屋から出て数分で帰ってきた。
パン?がお皿にはパンが載っているけれど、そのパンは私が知っているものとは少し違った。
半分に切ったであろうパンにお肉と野菜が詰め込まれている。
「どうぞ、ケバブサンドです」
香ばしい匂いと少しツンとする匂いが鼻を刺激する。
食べてみると肉の美味しさとピリっとした刺激がある。
「おいしい、コレ何のお肉なの?」
「羊の肉を使っています。かかっているソースも手に入る食材で何とか作ったので本来の味よりは数段落ちてしまいますね」
これで味が数段落ちたとか信じられない・・・。
「すみません、リーズお嬢様。一番に食べさせてあげられなくて・・・」
少し残念そうな顔をするクロ。
そうか、お城に呼ばれていたのだもの、王様たちにこの料理を出したのよね。
「リーズお嬢様が眠っているからと他の皆様に待ってもらうわけにもいかず、先に食べていただきました」
「え?他の皆?お城では何を作ったの?」
「普通にハンバーグですけど・・・?」
「じゃあ、なんでコレを今日作ったの?」
「いえ、帰りに羊肉が売ってあってですね・・・たまにはいいかなと。そもそもいきなり呼び出されて新しい料理を作れるほど私は料理を知りません。新しい料理を作る時は結構入念に調べてから作っているのですよ?」
「今日も?」
「はい。一応は知ってはいましたけど、しっかり調べ直してから作りましたよ。それに、新しい料理を出すときはきっとリーズお嬢様が1番ですよ」
「今日はだいぶ後になっちゃったけどね!」
それは言わないでくださいよ~
と困り顔で笑うクロ。
良かった、クロは私をちゃんと思ってくれている。
それだけで私はもう満足できた。
「クロ、おかわりある?何だかお腹すいちゃって」
「ありますが、食べ過ぎでブーちゃんになってしまいますよ?」
へ?
「お夕飯の時ならまだしもこの時間では致命的です」
・・・・
「そ、そんな物、持ってくるな~~~!!!!」
「うっさいわ!リーズ!!!!」
メイサにメッチャ怒られた・・・・・。




