表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファミリアエッセンス  作者: 玄亀
41/211

41ページ目 クナピムカ

クナピムカ【仮面(ペルソナ)】視点


侵入者たちは使い魔(ファミリア)に私の足止めを頼み急ぎ撤退していった。

あの者たちを逃したところで何の問題も無い、むしろ予定通り。

彼女たちはダンジョンを出て直ぐに私の事をギルドに報告するだろう。

そうすればたくさんの人間たちが私を殺す為にやって来る。

全て計画通り。

後は、目の前のメイドを消すだけだ。


構えるメイドの装備はナイフが2本、私の攻撃を防いだことから実力者だという事は分かっている。

「あのー」

「何ですか?」

「どうしたら、私を帰してくださいますか?」

「言ったでしょう。貴女だけは消しておかないといけないと」

あの傷を一瞬で治す様な化け物は何があっても返すわけにはいかない。

「まあ、帰りたければ勝手に帰っていただいて結構ですよ?私は後ろから好きなだけ攻撃しますので」

「そうですか、仕方ないですね」

瞬間、メイドの雰囲気が変わった。今まで威圧感など全くなかったとのに今は自分と同等の者と対峙している様な圧を感じる。

「おもしろい!さあ、私の糧になってください」

そう言って構えた瞬間にはメイドはもう顔前に迫っていた、攻撃もコチラの首を正確に捉えている。

く、速い!だが、甘い!

杖で攻撃を防いだ瞬間に腹部にとんでもない衝撃があった。


ゴフ・・・


何があった?

メイドの攻撃はしっかりと防いだはずだ。なのにどうして私は壁にめり込んでいる?

まずは体勢を立て直さねば。

体が動かない

手も、足も動かない。痛みしか感じない。

確認してみると理解した。

両手両足共に複数の剣で串刺しにされ、壁に縫い付けられているようだ。

改めてメイドを見ると両手に複数の剣を持っている。私の体を縫い付けている剣と同じものだろう。

「驚いた、まさかこれほどとは・・・」

「・・・」

メイドは何も話さない。

ただ無言で剣をコチラに向けているだけだ。

反撃は・・・できないか。

ご丁寧に各関節には剣が刺してありコレでは自分で抜くことは出来ない。

もしかすれば次の冒険者が来た時までこの状態でそのまま殺されてしまうかもしれない。

「フフフ、参った。私の負けだ・・・とんでもないメイドだね、君は。帰っていいよ」

「そうですか、それでは失礼します」

私が言うなりメイドは直ぐに帰ってしまった。

しかし、どうしたものかね、この状態は。



「何ですか?その恰好は。まるで標本の様ですよ?」

「似たようなものですよ、【館長】。申し訳ないですが、抜いていただいてもよろしいですか?」

「構いませんよ」




リーズ視点


私たちはクロに時間稼ぎをお願いしてダンジョンを走っていた。

途中からサブリも回復して、自分で移動できるようになっていたので移動は楽だった。

「リーズ、クロは大丈夫なのか?」

「分からないわ。でも、ああしないと私たちが足手まといになるわ」

今回のダンジョン探索は全てクロのおかげで被害が最小限だった。

操られた冒険者も、オークもクロの作戦が無かったらもっと苦戦していただろう。

いいえ、そのまま殺されていたかもしれない。

「情けないわね、私たち」

「カグヤ・・・・」

それは皆同じ気持ちだった。

誰もカグヤに答えられない。

パーティーとしてダンジョンに潜ったのに重要なところは全てクロ任せになってしまった。

それぞれ色々なことを想いながら直線をひた走る、自分たちの罪から逃げだす様に一心に・・・

「それでは、今後に期待しておきますね。カグヤお嬢様」

「クロ!」

カグヤに答えたのはクロだった。

平然といつもの様に私たちの後ろを追走している。

傷一つ無く、疲れ一つ見せず、いつもの様にそこにクロがいた。

「・・・・・」

サブリとキャンディスは何も言えず、サファは驚かない驚かないとブツブツ呟いている。

「クロ、大丈夫だった?」

「はい、リーズお嬢様。追撃も無いと思いますよ」

「そう、なら一気にこのダンジョンから脱出しましょう!」


私たちはダンジョンから脱出したとギルドに駆け込んで今回の事を報告した。

最初は信じてもらえなかったけれど、冒険者の遺品を提出すると直ぐに奥の部屋へ通されて今回の事を報告することになった。

打ち合わせの通り、所々信じてもらえないような所はぼかしてになるけれど。

別通路への道はまだ発見されていなかったらしくてダンジョン未踏域の情報料として少し報酬ももらえたし、大量にあったオークも買い取ってもらえたので皆ホクホクよ。

クロにお祝いでオークの肉で何か作ってと頼んだら解体は出来ないので解体できた肉をもらってきて欲しいと言われた。

クロにもできないことはあるんだなと思った瞬間だったわ。

皆も意外そうな顔をしてた。

魔導書(グリモア)で何か確認して料理に使う材料を買い足して宿へ帰ったわ。

かなりの量を買い込んでいたから聞いてみたら

「どうせ他の方にも作る羽目になりますから・・・・」

と諦めたような答えが返ってきた。


「オヤジさん。また、厨房をお借りしていいですか?」

「おお!君の料理が振舞われるなら大歓迎だ。今日の日替わり料理変更してこい」

宿の料理人たちも喜んで迎え入れている。

私たちが席で歓談いると客が急に増えだした。

話を盗み聞きしていると、ここ最近謎の料理人の作る料理がとても美味しいと評判になっているようだった。

「クロは、凄いな」

「ええ、リーズ。あなたにはもったいないわね」

「不思議な方ですよねぇ」

「一緒に居ると疲れが取れないわ」

「カグヤ、後でクロにチクってもいいのよ」

「やめて、リーズ何か大変なことになる気がするわ」

「お待たせしましたー」

私たちの分の料理が届いた。

く、いい匂いね。

一口サイズに切られたオークの肉に卵、野菜、ソースが一緒に入っている。

卵?何で卵が同じお皿に入っているのかしら?

割って肉にでも掛けるのかしらしかもこんなに茶色い卵なんて初めてよ。

お肉もほのかに甘い香りがする。

お肉なのに何で?

「とりあえず、食べてみようか」

サブリの意見に頷く。

「今日はいっぱい走ったし、お腹ももうペコペコ」

「周りの視線が痛い!」

「はっきり言ってオークと戦った時より恐怖を感じます」

「冷めないうちにいただきましょう」

私たちが料理を食べようとすると、

「あ、玉子はそのまま食べられるからって伝言を預かってます」

「え?卵の殻なんて食べれないぞ?」

「お鍋で何かしてから卵の殻を剥かれるとまた玉子が出てきたんですよ」

「なら、どうしてこんなに茶色いのよ!」

「煮汁を吸ったそうですよ?」

「分かったわ。全部このまま食べられるのね?」

「はい、それでは~」

給仕はそれだけ言うとまた厨房へ戻ってしまった。


「それじゃあ、改めて。いただきます!」

「「「いただきます」」」

それぞれがクロン作った料理を食べ始めた。

私は、私たちは迷わずオークの肉から食べた。

「「「美味しー!!」」」

柔らかい。

今までクロが出した肉料理も焼いた物ばかりだから少し硬い時もあったけどこれは違う!

とても柔らかく、しかし肉の弾力はしっかりとある。

味も甘辛く食が進む。

「これまた美味いな」

「ええ!こんな肉料理は初めてよ!」

「柔らかくて食べやすいです」

「不思議な味」

「この卵、中で固まってる!」

「癖になるな」

周りも料理が届き始めたみたいで料理の感想がチラホラ聞こえてきた。

「相席いいかな?」

私たちが料理に舌鼓を打っているとそんな声が聞こえてきたので顔を上げるとそこには、

【仮面】がいた・・・。

私たちは動けなかった、何故、魔人(デモニア)がここに・・・・

「相席いいかな?」

「ど、どうぞ」

私たちにはそう返すことしかできなかった

「失礼」

「いらっしゃいませ、ご注文はどうされますか?」

「彼女たちと同じものを」

「かしこまりました」

淀みなく会話をしていく仮面、何が狙いなのかしら?

「いやいや、急に済まないね。君たちに伝えないといけないことが出来たのでね」

「俺たちに伝えないといけない事?」

「そうだ、ダンジョンのことだ」

ダンジョン!?

私たちは身構える、何があっても対処できるように

周りを観察すると何人かの冒険者がコチラを見て、聞き耳を立てていた。

彼らも既に身構えている。

「お待ちどう様ー、ごゆっくりどうぞー」

私たちの事など意に介さず、運ばれてきた食事を口にする仮面。

仕方がないので私たちも食事をそのまま続けるしかなかった。

「ほう、美味いな。食事が必要ない私でも食べたいと思ってしまうな。これからは人里におりてたまに食べてみるか?」

「クロの手料理ならともかく、他の人の料理に期待しない方が良いわよ。アンタならそのまま街を破壊しそうなほど差があるから」

「そうか、それは残念だ・・・」

ナプキンで口元(仮面)を丁寧に吹いている、食べている時も思ったけれどどうやって食べているのかしら?

「で、俺たちに何の用だ?」

「ああ、私は今回ダンジョンを別の魔人に譲ってね、私にリベンジに来ても私がいないことを伝えに来たのだよ」

「そう、それはご丁寧にどうも!」

サファは今にも飛び掛かりそうね、それを押さえているのはダンジョンでのことがあったからね。

「ま、そういうわけで私は出かけることにするよ。何処かで気に入った場所があればソコでマスターをやっているから出会ったときはよろしく」

「出会いたくないわね」

「そうね、できれば一生」

「おやおや、嫌われてしまったものだね」

わざとらしく肩をすくめ、また食事を再開する仮面。


「よお、兄さん。悪いがチョイと顔貸してくれないかい?」

数人の冒険者が【仮面】に話しかけてきた。

「すまない、今私は食事中だ。もう少し待ってくれたまえ」

「なめんじゃねぇぞ!!」

武器を振りかぶるもフォークの寸止めで静止されられる。

あのまま少しでも腕を伸ばされていたら目が潰されていたはず・・・。

「分かったかな?私は食事中だ」

この行為が挑発に取れたのか周りの冒険者たちも武器を抜き、皆戦闘状態に入ってしまった。

物凄い殺気を受けながらも【仮面】は悠々と食事を続けている。

「テメェ!!!!」


バン!!


厨房の方から壁を叩く大きな音がして、皆ソッチを向いた。

私も向いた、もちろん、カグヤやサブリたちも。

そして、激しく後悔した。

剣呑な雰囲気を出し、物凄く良い笑顔のクロ(化け物)がソコにいた。

「皆さ~ん?お話が盛り上がって騒がれるのは分かりますが、乱闘はダメですよ~?やるなら外でお願いしますね~?」

クロの圧力が半端なかった、というか直ぐに逃げ出したかった。

これは大精霊様たちを本気で怒っている時のクロだ。

カグヤに目をやるとカグヤは銅像の様にフォークを咥えたまま動かなくなっていた。

幽鬼の様にコチラにやって来るクロに対して皆同じ分だけ後ずさる。

「それで~、何のごようですか?【仮面】さ~ん?」

仮面の方を見るとナイフを持つ手が震えていた・・・。

そうだよね。この状態のクロ、メッチャ怖いモン。

「べ、別のダンジョン移ることにしたのでね、その連絡に来ただけだ。私に戦闘の意思はないよ」

「そうですか、それはご丁寧にどうも」

今までの威圧が急に無くなりいつものクロに戻った。

皆一様に安堵のため息が漏れる。

「移動先が決まったら使者でも送らせてもらおう、是非遊びに来てくれたまえ」

「それは、デート(殺し合い)のお誘いですか?」

「ああ、できればその方が嬉しいが、お友達と一緒でも構わない」

「考えておきますね?では、私はまだ料理しないといけないので」

「ああ。ご馳走様、とても美味しかったよ」

そう言うと【仮面】は金貨を机の上に置いて普通に出口から出て行ってしまった。

止める者はだれもいない、誰もクロの怒りを買いたくなかったの。

「明日、ギルドに再報告だな・・・・」

誰ともなしに机に着き直し、静かに食事を再開した。

この後に食堂に来た人は皆不思議な顔をしていたわ、いつも騒ぎまくっている同業者がお通夜みたいに静かに食事を取っていたんだもの。

ついでに、誰もこの事を話そうとしなかったわね。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ