36ページ目 ワガママは許しませんよ!
ふう、ようやく国王様・大司祭様の大精霊様とのお茶会も終わって一息つけます。
いえ、大精霊様は今まで通りで大変なんですけどね、国王様と大司祭様が居ないだけでも気持ちが大分と楽になるのですよ。
そういえば最近は冒険もといクエストに行っていませんがどうなのでしょうか?
「リーズお嬢様、今後はどの様なご予定ですか?」
「明日は、何とダンジョン探索よ!ようやくダンジョン探索へ行くことが出来るわ!」
「わー、おめでとうございます。それで、どんなダンジョンに行くのですか?」
「へ?」
「へ?ではありません。前に言いましたよね?目的地の事はしっかりと調べましょうって」
「えと、それは・・・・」
嬉しすぎて今まで言ってきたことが全て飛んでしまっていたようですね。
物凄く挙動不審です。
「リーズお嬢様」
「はい・・・」
「明日のパーティーメンバーはどうなっていますか?」
「え?カグヤと一緒に行くわ」
「他には?」
「近場で浅いダンジョンだからこの3人でも大丈夫だってカグヤが・・・」
「・・・そうですか」
「怒らないの?」
「怒って欲しいんですか?」
「ううん。ただ、絶対に怒られると思ったから」
「誰だって浮かれて失敗をしてしまう事はありますからね、今回は無しです。でも、準備は可能な限りしてくださいね」
「わかった」
部屋へ走っていくリーズお嬢様を見ながら
やっぱり、甘いでしょうか?
そんなことを考えながら私もダンジョン探索へ向けて準備を始めました。
翌日、私たちは学園の門の所で1つのパーティーと出会いました。
「お、リーズとカグヤじゃないか?お前たちもホルゾンのダンジョンか?」
「ええ、あそこなら初心者でも安心だから」
「サブリこそどうしたのよ?あなたが行く様なダンジョンじゃないでしょ?」
「ああ、俺はコイツを新調したからな、試し切りだ」
「リーズお嬢様。この方は?」
「コイツはサブリ。見た目通りの戦士よ。私とは同期なの」
「え?リーズお嬢様。今年中等部に入られたんですよね?」
「そうよ!私が1回進級試験に落ちたのよ!」
「ハハハ、相変わらず元気だな」
私はサブリと言われた方を見ました。
お嬢様の言われたように戦士職。
体格は細身ですががっしりとしています、細マッチョですね。
顔も整っていて、イケメンさん。
武器は大剣ですか、あれだけ筋肉が付いていれば問題なく振り回せますね。
パーティーメンバーは槍使いと魔法使いの3人。ちなみに男・女・女です。ハーレムパーティーです。
今もお嬢様方と話しているサブリ様を後ろのお二方が少し睨むように見ています。
うん。死んでよし。
ハーレムパーティなんてうらやまです。
え?私ですか?私は使い魔でメイド扱いなのでノーカンですよ?
「なあ、カグヤ。せっかく同じダンジョンへ向かうんだ、パーティーを纏めないか?」
「そうね。私は問題無いわ。あなたたちは?」
「私も問題無いわ」
「私は1つお願いがあります」
「何だ?」
「ダンジョンで初めて出会った魔物1体をリーズお嬢様1人で倒させていただきたいのです」
「構わないが、何でまたそんなことを?」
「私が知っている限りではリーズお嬢様はまだお1人で魔物を倒したことはありませんので」
「分かった。適当なやつを見繕うよ」
「ありがとうございます」
「ちょっと待ちなさいよ!」
「どうしたんだ?サファ?」
「何で使い魔の要求なんて呑まないといけないのよ!」
「サファちゃん、落ちついて」
「キャンディスは黙ってて!」
なるほど、普通に考えればそうですね。
最近は色々と任されて人扱いされていたので忘れていましたが、使い魔は本来、主人の言う事に服従でしたね。
「すみません。今のは無かったことにしてください」
「いや、構わないよ。」
「サブリ!」
「カグヤはもともとリーズの付き合いで行くんだからそっちの意見も聞かないとね」
「ありがとう。サブリ、助かるわ」
私たちは馬車に乗りながら、細々としたことを話し合いながら進んで行きます。
御者はサブリ様がやってくれています。
隣には私が座って御者を教えてもらっています。
サファ様には睨まれましたが、覚えたい旨を伝えると周りからの説得もあり渋々了解していただけました。
「それにしても、ダンジョンは結構遠くにあるのですね」
「まあな、魔物があふれ出して街になだれ込んでも大変だろう?」
「はい。では街の近くにはダンジョンはないのですか?」
「無い事も無いが、たいていは直ぐに潰されるな」
「では、これから向かうダンジョンは潰されないのですか?」
「いや、ホルゾンのダンジョンは潰しても復活する特殊なダンジョンなんだ。現れる魔物も低級な魔物ばかりだから初心者向けなんだ」
「犠牲者・・・は出ないのですか?」
「いや、流石に数人は死んだり行方不明になったりはしているよ。あのダンジョンは結構な頻度で構造が変化するからね」
「他のダンジョンもですか?」
「ああ、大体そうだな。ただ、ホルゾンほどではないかな。アソコはボスを倒しても数日で復活するし、本当に初心者にとって良い練習になるよ」
そう言われるサブリ様ですが、向こうの知識がある私としては撃破したボスは中ボスか何かでダンジョン本来のボスを討伐できていないのではないかと思ってしまいます。
それなりの経験者の死者も出ているようですし。
ダンジョンについても、しっかり勉強しなくてはいけませんね。
「お、ホルゾンが見えてきたぞ。今日はあの街で1泊して明日探索に出かけよう」
ちなみに、ダンジョンの近くには監視用の街があり、ダンジョンが大きく難易度が高いほどダンジョンに訪れる騎士や冒険者が増え、ソコに商人たちが集まるので自然と大きな街になっていくのだそうです。
ダンジョンによっては意図的に破壊を禁止して利益を出しているダンジョン街もあるそうです。
「わあー、物凄い活気ですねー」
「騎士や冒険者の初心者にはうってつけの場所だから自然と人も集まるのよ」
学園のあるフェリアで生活が完結してしまっている私にはとても新鮮で、さしずめテーマパークの様です。
お店に出ている武具も多種多様ですし、アイテムも色々あって飽きません。
「俺たちは先に宿に行っているよ」
「せいぜい面倒事に巻き込まれないように気を付ける事ね!」
「お先に失礼します」
サブリ様たちは先に宿へ行ってしまいました。
「さて、それでは私たちは」
「お店を見て回るのよね?」
嬉しそうに聞いてこられるリーズお嬢様ですが、目的を分かっておられるのでしょうか?
「リーズ、見て回るけど無駄使いはしないわよ」
「分かっているわよ」
「それで、まずは何処へ行くのかしら?」
「はい、まずはダンジョンの最新のマップを買いたいです」
「え?サブリたちが持ってるのじゃダメなの?」
「リーズお嬢様、私たちは本来ならそういったアイテムも無い状態でこの街へ来るはずだったのでそういった部分はしっかり押さえていきましょう。構造の変化があったりするかもしれませんし」
「なるほど、そうね」
「後は食料の補充と掘り出し物のアイテムが無いかお店見てみるくらいに思っているのですがどうでしょうか?」
食料もアイテムも十分と言える量を昨日話し合って準備はしましたが、最終確認の意味も兼ねてみて回ります。
さすがダンジョン街という事もあって武具・消耗品のお店が多いですね。
「ここまで品揃えがいいなら向こうで準備してこなくてもよかったわね」
「ダメよ、リーズ。場合によってはアイテムが無い状態になる事だってあるのだから、準備できるときにしておかないと」
「お、嬢ちゃんたち冒険者かい?安くしとくよ?」
「私たちは騎士見習よ」
「おっとそいつは失礼。どうだい、何か買っていかないか?」
「んー」
「コレください」
「メイドの嬢ちゃん。ありがとよ」
「後、最近のダンジョンの事を教えていただいてもいいですか?」
「クロ?」
「って言っても俺は中の事は知らないぜ?」
「噂とかでもいいんです。構造が変わったとか、今までいなかった魔物が居たとか」
「んー、構造は最近変化なしだな。魔物も同じだ。ただ、最近ここらでの中堅の冒険者のパーティーが何組かが行方不明になっているとは聞いたことがあるな」
「そうですか、ありがとうございます」
「構わないさ。嬢ちゃんも潜るんだろ?気を付けろよ」
その後もお店を見て回って日が落ちてきたので私たちも宿へ向かう事にしました。
「クロ。何か作って」
「リーズ・・・・」
「どうしたんだ、リーズ?夕食なら今食べているじゃないか」
「私、クロの料理がいい」
しまった。私の料理に慣れた所為で他所の料理では不服と申しますか。
十分美味しいですよ。味が少し薄いですが素材の味が十分に出ています。
この世界では一般的で十分な夕食です。
「お客様、何かありましたか?」
ご飯時で他のお客さんも多いのに私たちの変化に気づいて確認に来るなんて、このウエイトレスさん、凄いです。
「あ、すみません。何でもないです。連れの好き嫌いですので」
「そうですか?」
「クロ、簡単なのでいいから」
「ここは寮ではありません。リーズお嬢様。わがまま言わないでください」
「はん!こんなメイドの料理の方が良いなんて舌がどうかしてるんじゃないの?」
「サファちゃん!」
「何ですって!」
何だかお2人ともヒートアップしていますね、ここら辺で熱を冷ましましょうか。
「こんな料理よりクロが作ってくれた料理の方がずっとおいしいわよ!!」
「お嬢様!!!!」
思わず叫んでしまいました。
今までは仲間内のケンカかと見ていた他のお客様も私が叫んでしまったので皆コチラを注目しています。
変に目立ってしまいましたが、言わずにはいられません。
「お嬢様、このお料理は料理人の方が私たちの為に丹精込めて作ってくださった料理です。それを【こんな料理】とは何ですか!」
「だって、クロの料理の方が美味しいもん・・・」
今まで、リーズお嬢様に対してここまで怒ったことは無いのでオドオドしながら返答されます。
「だってではありません。味の好みに文句は付けませんが、作っていただいた方へのその態度は許せません!」
サブリ様たちも私がいきなり怒ってポカンとしています。
言い合っていたサファ様も何言うでもなく、どこか居心地悪そうにしています。
「おい、凄い声が聞こえてきたがどうした?」
「あ、料理長」
「すみません、ウチのお嬢様のワガママです。」
「嬢ちゃん、このメイドの料理は俺の料理を【こんな料理】と言わせるほど美味いのか?」
料理長さんは目を座らせて威圧しながらリーズお嬢様に質問してきます。
あんな大声で自分の料理を貶されては当然です。
「美味しいわ、比べるまでもなく」
「ほう。おい、そこのメイド。お前のご主人様が自信満々に言っているんだ、何か作っちゃくれないか?」
「え?私がですか?」
「この嬢ちゃんはお前の料理の方が美味いと言っているんだ、当然だろ?」
「ですが、他のお客様が・・・・」
「なら他の客にも出せるような料理にしてくれ、ウチは日替わりもやっているからな」
うう・・・・
お嬢様が失礼な事をしてしまったのは事実ですし、私も騒ぎを起こしてしまったので作るしかないですか。
「材料は使わせていただけますか?」
「ああ、自由に使え」
「わかりました。厨房をお借りします」
他の方にお出しするなら量を作らないといけませんね・・・
「お待たせしました」
たくさんのお客様にお出しできるようにと前に作ったクリームシチューを作りました。
パンもサンドウィッチにしてあります。
足りない調味料類は自腹になりますが、しょうがないですね。
「ほう、いい匂いだな」
あの、何で他の方も私の料理を見ているのですか?
私が厨房に入ってからそれなりに時間が経っているのですが皆さん食事はどうされたのですか?
とりあえず、リーズお嬢様たちにもシチューとパンを配っておきます。
「いただきまーす。あむ、やっぱりクロの料理は美味しいわね」
反省していませんね、リーズお嬢様。寮に帰ったらお説教ですよ?
カグヤお嬢様も心なしか嬉しそうな顔をされています。
貴女もだったんですか?
「うわ!美味し!!」
「このパンも美味い。この白っぽいソースが美味い」
「美味しい」
「ま、負けた。こんな美味いシチュー食ったことが無え」
「あ、ありがとうございます」
ジーー
ジーー・・・
ジーー・・・・・
ああ、周りの視線が痛いです。
何かもう、エサを目の前にしてお預けを食らっている獣の様な感じの視線が周りから突き刺さってきます。
「え、えーと・・・」
困って料理長さんの方を見ると
「この料理、今晩だけでも出せるか?」
でーすよねー。
この状態でで拒否したら何されるか分からないですよねー。
「材料があるうちは・・・・」
「なら頼む、報酬は後でキッチリ払う。おい、日替わりメニュー書き換えてこい。メニューは・・・」
「あ、クリームシチューとサンドウィッチです」
「だ、そうだ」
私たちの対応をしてくださったウエイトレスさんがあわてて走っていきました。
そして、
「「「俺たちにも日替わりを追加してくれ!!!」」」
「頼んだぞ」
「シチューはたくさん作りましたが、パンは作れていないので時間をください」
「だ、そうだ。お前等!大人しく待ってろよ!」
私はそのまま厨房へ拉致されていきました。
お店のスタッフの方々へのまかない分が作れなくなりそうになったので完売にしてもらいました。
私、最近お料理しかしていない気がします。
そろそろクラスが料理人になってしまいそうです・・・。




