35ページ目 大精霊の集まる場所4
イヴァン コスカート国王視点
俺たちはメシが出来までの間に風呂に入って来いと言われ、今風呂場に来ている。
知り合って数日しか経っていないが突拍子もない事ばかりする奴だから風呂場も普通ではないだろうと思っていたが、俺はまだ甘かったらしい。
脱衣所はまだ普通だった、せいぜい部屋が広いく、タオル、着替えの衣が置いてあったので準備が良いと思っていたくらいだった。
風呂場に入るとそこは全面が木張りで変な管の付いた物と大きな浴槽と外へ出る為の扉と個室へ繋がる扉があるだけの空間であったが、とても落ち着いた感じの空間であり、高級感が感じられた。
先日、器具の使い方を教わったというヤニツェクが器具の使い方を説明してくれた。どうやらあの管から湯が出てソコで体を洗ってから湯に浸かるらしい。
道具を使う前に
「因みに、この風呂の石・木・水は全て精霊様がお出しくださったものらしいです」
「「「は?」」」
「何でも、初めは風呂のお湯のみウンディーネ様のお世話になっていたそうなのですが、他の大精霊様が自分のも使えと騒いでうるさかったので入れ替えが出来る部分は全て変えたと・・・」
ふざけるな!なんだその理由は!!
何でそんな簡単にいざ作り終わったらもっといい素材あったから作り直しましたってなるんだよ?
そんなことより、湯、お湯って言ったよな?この大量のお湯が全て精霊水だと!?
大司祭殿発狂すんぞ?神殿がビン1本満たすのにどんだけ苦労してると思ってんだ?
「あ、それとウンディーネ様はこの寮の水は全て管理されているらしく、この寮の水は全て精霊水です。後、食事に出てくる野菜・果物はドライアド様とノーム様がお作り下さった物なのでとても健康に良いそうです」
それとじゃねえよ!何でそんな重要なことがついでみたいに言われてるんだよ?
こんな環境で生活してる奴なんて世界中探しても居ねえよ!!!贅沢ってレベルじゃねえぞ!?
大司祭殿の方を確認すると護衛は放心してアホの子状態になり、大司祭殿はココに神殿を建てられないかなどと司祭殿と話ている。
この間、城から帰る時には既に一杯一杯といった感じだったが、そうか。ついに限界を超えたのか。
それで、これか。
ん?ちょっと待てよ・・・
「おい、ヤニツェク。お前、まさかこの間、風呂に入ったのか?」
そう思うと怒りが沸いてきた。こんな凄い風呂に主人の俺より先に入るだと・・・
「い、いえ!私は器具と部屋の説明を受けただけですので、その時はお湯もありませんでしたし」
「そうか、もし先に入っていたなんて聞いたらお前を思い切り殴っていたぞ?」
「まあ、ココの女生徒は出来上がってから毎日入っているようですが・・・」
「「「・・・」」」
「まあ、それは仕方ないでしょう。早速体を洗って入りましょう」
大司祭殿のに促され俺たちは体を洗って湯に浸かった。
湯は少し熱い目でゆっくりと疲れが落ちていく様だ。
「あの小部屋はなんだ?」
「あれはサウナとか言っていました。この部屋で汗を流して水で体を冷やすそうですよ」
「ふむ、風呂に入っていれば別段入ろうとも思わんな」
「あと、そっちの扉の先は露天風呂です」
「露天風呂?」
「はい。屋外の風呂のことです。実際は幻覚系の魔法で屋外に見せているだけらしいですが、風も適度に流れていますので、本当に外に居るようですよ?」
「それはぜひ入ってみたいですね。ミショー、行ってみましょうか」
「ええ。」
「なら俺たちも行ってみるか」
そういって皆で連れ立って露天風呂へ行ってみる。
「これはまた・・・なんというか・・・・」
「ここは、屋内なのですよね?本当にその場に居るかのようだ・・・」
ソコに広がっているのは絶景だった。どこかの国のどこかの景色を映し出しているそうだが、こんな物作れるのか、この景色だけでも城で用意できないか今度カリンに聞いてみよう。
湯に浸かって至福を味わっていると板の向こうから声が聞こえてきた。
ココは俺たち以外に人が居ないので必然的に向こうはカティやこの寮の女生徒たちの声になるのだが・・・
「おい、ヤニツェク・・・」
「はい・・・・」
「この声は・・・」
「ここの女生徒たちの声です。あの板の向こうは女湯だそうです」
「「!!!」」
俺、ミショー、護衛の3人はその声に反応する。反応してしまう。
俺にはカティがいるが俺も男だし気になる。禁欲的な生活を強いられている2人ならなおさらだろう。
「おい、ヤニツェク。お前は何でそんなに淡々としている?」
「いえ、先日説明を受けた際、『覗きは自己責任でどうぞ。楽に・・・いえ、死ねると良いですね』と言われましたので」
「自己責任か、そうか」
「はい、自己責任です。その後この大陸が消滅しても責任は取れないと」
「「・・・・」」
え?ゼルパノス大陸消滅すんの?風呂覗いたくらいで?
こんな誘惑満載の状態で大陸の運命左右すんの?
「大精霊様が現状、女性の味方だそうで、覗くなら命を賭けて下さいと」
ああー、そうか。大精霊様が起これば大陸くらい吹っ飛ぶかもなー・・・
俺たちは女性たちの話し声が聞こえてくる中で悶々としながら体を温め、上がっていった。
「「「おお・・・」」」
この浴衣という衣は素晴らしい。何が素晴らしいって、いくらタオルで体を拭いたとはいえ風呂から上がったばかりだ。
体は火照っていてどうしてもラフに浴衣を着てしまう。つまり、女性陣もラフな感じになりなかなかきわどい感じになっている。
女生徒は今まで女子寮だったのでそのままの感じでかなりラフな着こなしになっているし、カティにコリーン、神殿の護衛は旨く着ることが出来す、着崩れている。
これはスバラシイ!是非とも城に導入できないものか・・・・
ふと同胞を見ると皆、少し前かがみになっていた。もちろん俺も。
「ずいぶんと楽しんでいるようだね?イヴァン君?」
「神殿の司祭様がそれでは示しがつきませんねー」
聞き覚えのある声のする方を見るとそこにはカリンと学園の勤務の女性神官の姿があった。
「はいはい、皆さん。熱いかもしれませんが危険な猛獣が居るので服はしっかり着てくださいねー」
「「「「!!!!」」」」」
女性神官の声で自分たちの状態と今の状況を理解した女性陣は急いで服装を正し、射殺さんが如き視線をコチラに向けてきた。
ああ、カティが物凄く笑顔だ。ヤバい・・・・。
他の同胞も皆、一様に青ざめていた。
「何故カリンがここに居る?」
「クロに呼ばれたからだが?」
「お前、学園長のくせに生徒に厄介になるなよ」
「なら君は国王のくせにそんな野獣めいた眼で私の可愛い生徒を視姦するのはやめてもらえるかい?」
「な!そんなことしていないだろ?」
「どうだろうねー、さっきまでの眼はそういう眼に見えたよ?皆ね」
く、確かに女性陣には見とれていたが不可抗力だろ?
しかし、このままでは俺たちの立場は悪くなる一方だ。何かいい方法は・・・・
「皆さ~ん、お食事の準備が出来ましたよー」
おお!救いの神が現れた。よし、ナイスタイミングだ。これでウヤムヤに
「変態の躾は後でもできますので、冷めないうちにご飯を食べてくださ~い」
助けてはくれなかった。しかも、言うに事欠いて変態だと!!
「クロ、いくら何でも口が過ぎるぞ」
立場をわきまえろよと威圧を込めて言うも
「あら、事実じゃない?」
「ああ、こんな変態共は縛って外にでも捨てておくべきだな」
多勢に無勢。俺たちは完全に孤立していた。
ん?待て待て。変態というならクロもそうじゃないか。
というか、男でメイド服ってかなりのモノだぞ?
「おい、クロは問題無いのか?」
「ん?クロはメイドだろう?なぜ君たちと同じなんだい?」
ちっ。そういえばクロが男だということをカリンとコリーン、ヤニツェク。それと神殿の奴らは知らないんだったか。
大広間には低い机が並べられており、足の無い椅子も置いてあった。
椅子の布は柔らかく肘置きもあり、中々に快適だ。
というか、俺がいつも座っている椅子より良くないか?この椅子。
料理はクロとノーム様(何人にも増えた)が運んできてくれ・・・下さった。
神殿の面々は感激して泣いていた。
しょうがないか、大精霊様直々に料理を配膳してもらえることなんて今後一生無いだろうからな。
さて、晩飯はパンと魚の切り身に野菜、その上に何かの汁がかかっている料理だった。
「これはアクアパッツァという名前の魚料理で、本来なら魚を1匹丸ごと使うらしいのですが、食べにくいと思いましたので、切り身に刺せていただきました」
「ほほう、これは美味しそうですね」
「素晴らしいです、クロさん」
「こんな料理、初めて見るな」
俺たちは口々に感想を言っているが、寮の生徒たちはクロの料理に慣れているので普通に食べ出している。
さて、俺も普段は魚料理なんてそんなに食わんからな。どんな味がするのか・・・
「これ、うまいな・・・」
「魚と野菜の旨味が凄い」
「汁もパンに付けて食べると絶品だ」
「おかわりもらえますか?」
皆、ほめちぎっている。おかわりを頼んだ奴は誰だ?まあ、当然か。これほどの魚料理は俺も初めて食べた。結局、俺もおかわりをしてしまった。
しょうがないだろう?美味いんだから。
しかも、酒までちゃっかり用意してやがる。
美味い酒とメシ。最高だ!!!!
食後、俺はカティ、イローナと一緒にゆっくりとさせてもらっている。
神殿の連中は大精霊様に必死に話しかけているし、ヤニツェクとコリーンは神殿の護衛と何やら話し込んでいる。
信じられない状況のはずなのに違和感なくゆっくりとできている。
特にイローナと一緒の時間は最近取ることが出来なかったので俺としてはソレが一番うれしかった。
クロは片付けをして眠ってしまった大精霊様を部屋まで運んでいる。
完全に保護者状態だ。今度城に呼んで今日の事を労ってやろうかと思ったが、やめた。
この寮以上の場所なんてまず無いだろうし、逆に料理を作らせる羽目になりそうだしな。
って、おいカリン!何でお前が酔いつぶれて運ばれている!?
テメェ教育者だろ!?さっき俺に偉そうに説教垂れてたくせにその様は何だ!!
話し終わった大司教殿やヤニツェクたちにも酒を持っていって・・・クロ、お前も大変だな。
全員、酔いが回ってきたのでその日はお開きとなった。
翌朝、思ったよりも早く目が覚めてしまった俺は何気なく昨日夕食を食べた部屋へ入った。
部屋に入るとそこには俺の見たことのない女性が飯を食っていた。
『あら。初めまして。イヴァン王。』
「初めまして、貴方は一体」
『私はルナ。月の大精霊よ。私は夜にしか行動できないの。人間は夜にはほとんど寝てしまうもの。こうして直に会うのは貴方が2人目よ。』
「もう1人は」
『当然。クロさんよ。あの子。面白いわね。晩御飯を作ってあげるから夜・・・貴方達からすれば朝ね。になったら起こしてくれだなんて。』
「気にいっておられるのですね」
『ええ。さて。私は寝るわ。おやすみなさい。』
そう言って直ぐに消えてしまわれた。
「あ、国王様。おはようございます。お早いですね」
「ああ、目が覚めてしまってな。手持無沙汰だ」
「なら、お風呂に入って来てはどうですか?朝風呂というのも気持ちいいですよ」
「ほう、それはよさそうだ」
風呂あがってくる頃には皆起き出しており、朝食を食べ、一段落した後、今回はお開きという事になった。
変える前にクロが大司祭殿に何か話しかけている。珍しいな。
「あの、大司祭様。」
「何ですか?クロさん」
「上級ポーションは安くなりませんか?」
「何故ですか?」
「ポーション類の管理は神殿が行っていると聞いたもので」
「そうですね、私たちが管理しています」
「数が揃えられず、苦労していると国王様がおっしゃっていました」
「我々の持つ精霊水も限りがありますから」
「では、もう制限をやめていただいても構いませんね?」
「それは、どういうことですか?」
「ここの水は全て精霊水で、使いたい放題ですので制限を設けなくてもいいですよね?」
「それは、我々にもいただけるという事ですか?」
「はい。樽にでも入れて持って帰られますか?」
「「・・・・」」
「ミショー、直ぐに規制を緩和して下さい。彼女がその気になれば我々は生きてはいけなくなります」
「・・・・はい」
「あなたが神殿の事を思って色々暗躍してくれていることは知っていますが、この事は出来るだけ早く処理してください」
「大司祭様、ありがとうございます」
おいおい、クロのヤツ精霊水の問題を力技で解決しやがった。
まあ、この国はクロから直接もらえるから問題ないが、他国にすればかなり良い話だな。
「いえいえ、ところでクロさん。聖女になっていただけませんか?」
は?聖女?アイツが!?
駄目だ。想像つかん。が、
まあ、そうだよな。神殿としては大精霊様とつながりのあるクロを聖女に据えたいというのは当然だな。
「すみません。お断りします」
「ほう、何故です?」
速攻で断りやがったなクロのヤツ。
「大精霊様のお世話、変わっていただけるのですか?」
「「・・・・・・・・・」」
クロの後ろ、寮の庭では大精霊様たちがまた好き勝手に遊んでいて、阿鼻叫喚の状態になっている。
大司祭殿もこれは手に負えないと思ったのか何も返せないでいる。
「また、来させていただいてもよろしいですか?」
スルーしたな。分かるぞ、俺だってアレの対応はしたくない。ソレがどんなに名誉なことだったとしても。
「来られるときは、できればご一報ください」
「分かりました。神殿にも遊びに来てくださいね。歓迎しますよ」
「ありがとうございます。時間があれば伺わせていただきます」
帰りの馬車の中、大司祭殿が話しかけてきた。
「イヴァン国王。彼女、制御できるのですか?」
「それは大精霊様を、という意味ですか?それとも彼女を、という意味ですか?」
「両方です」
「クロは大精霊様の世話を焼いているだけで、どうこうしようというつもりは無いでしょう。どこかへ行くなら見送り、あの寮に居るなら世話を焼く。その程度のつもりだと思いますよ」
「では、彼女自身は?」
「敵に回らないように気を付けますよ」
「そうですね、彼女が怒れば何が起こるかわからない。しっかり、手綱を握っていてください」
「ああ、どっかのバカが馬鹿をやらかさないことを祈っていますよ」
本当に。大精霊様よりも厄介だからな、アイツ・・・・・。




