34ページ目 大精霊の集まる場所3
サンドロ・ロロ視点
ミショーにイヴァン国王に面会の約束を取り付けに行かせた。
帰りを待っている間は年甲斐もなくソワソワしてしまった。
いや、仕方あるまい。大精霊様が集う場所へ赴けるなど、誰だってそうなるだろう。
「大司祭様、ただいま戻りました」
「おお、ミショー。どうでした?」
「はい、少し予想外の事が起こりましたが、問題ありません」
「予想外の事?」
「メイドが我々の謁見に割り込んできたのです。あんなのを通す兵も国王も信じられません」
私はミショーと話しているのだが、若い司祭が心底嫌そうに言っている。
「君はもう下がりなさい。大司祭様への報告は私がします」
「ですが」
「ご苦労様でした。下がって結構ですよ」
「・・・はい」
若い司祭は渋々といった感じで部屋を出ていった。
「申しわけございません」
「構いませんよ、これも勉強でしょう。それで、どういうことですか?」
「はい、我々の謁見中に彼が言ったように1人のメイドが報告にきました。その報告を聞き、私が使わされた意味を理解しました。」
「本当か!?名は?」
「確か、クロと・・・・」
「ほう、間違いないな。どのような娘だった?」
「あ、あの。大司祭様?」
「!も、申し訳ありません。年甲斐もなく興奮してしまいました」
「いえ、当然かと」
「それで、あなたから見てその娘はどうでした?」
「どう、と言われましてもイヴァン陛下には最低限の報告しか行いませんでしたので」
ふむ、そのメイドの事は何も分からなかったか。
だが、大精霊様が言っていた人物は確実に居る!それが分かっただけでも素晴らしい事だ。
「陛下も彼女の報告で大司祭様の要件を悟られたようで、急いで準備をするので3日後に、詳しことは後程使いを送るとのことでした」
「それほど早く、ありがたい事ですね」
「ええ」
「失礼します」
「おや、貴方はヤニツェク殿。どうされました?」
「イヴァン陛下からの使いとしてきました」
もう来たのか、最速でも明日になると思っていたのに、流石はイヴァン陛下ということか
「大司祭様もお元気そうで何よりです」
「ありがとうございます。早速で悪いですが陛下はなんと?」
「はい。まず場所の事もあるので同伴者は出来るだけ少なくして欲しいと」
「当然ですね。大人数で押しかけて大精霊様の気分を損ねては問題です」
「時間は昼過ぎまでに来ていただければ問題無いと」
ほう、わりと近くにあるのだなその聖地は。
「次に湯あみの準備をしてきて欲しいと」
「は?湯あみだと?」
ミショーよ、もう少し穏便に聞けないのか?
確かに意味が分からないがケンカ腰になりすぎだ。
「どういうことでしょうか?」
「はい。行先は城より少しは慣れた場所になりますのでその地で宿泊することになるかもしれないのでとのことです」
「大司祭様が湯あみ、宿泊、食事をされるにふさわしい場所が用意できていると?」
「いえ、それは私にも・・・ですが・・・」
「ですが何だ!」
だからミショーよ、もう少し落ち着け、興奮するのも分かるから落ち着け、話が進まん。
「ですが、恐らく大精霊様と同じ宿に泊まることになると思いますので、文句は無いだろうと陛下が」
「「!!!」」
「大精霊様と同じ宿に泊まれるのですか?」
「ええ、恐らく」
これは、何ということだ。複数の大精霊様にお会いできるだけでなく、同じ宿に泊まれるだとぅ!?
もう、偉業とかそんなレベルではないわ。神話になってもおかしくないぞ。
「それで、一応精一杯もてなす用意もすると連絡がありまして、大司祭様方には大変失礼になってしまうのですが、その場所のルールに従っていただきたいと」
「我々に命令するのか?その宿の人間が?」
「ミショー殿、お気持ちは分かりますがココはお願いします。その宿、いえ、寮を管理しているのは昼間来たメイドのクロです。」
「宿ですらなく寮だと!?」
「はい、場所はセルグリンド学園の女子寮の1つになります」
「貴様、そんな所に大司祭を」
「良いのです、ミショー。その寮に大精霊様がお集まりになっていると?」
「気が変わっていなければ、という前置きが付きますが」
寮、寮だと?何故そのような所に大精霊様が、私たちは貴重な鉱石を使いこの大聖堂を立てというのにタダの女子寮にだと!?
いや、大精霊様のお考えなど、私たちに分かるはずが無い。ココで問題を起こし大精霊様にお会いできない方がずっと問題だ、最悪、強行軍になるがその日のうちに帰れない事も無い。
「分かりました。向かうのは私とミショー、後は護衛2人としましょう」
「大司祭様、よろしいのですか?」
「良いのです。多くの大精霊様とお会いできるのでしたら何の問題もありません」
「では、陛下にはそのようにお伝えいたします」
「ええ、お願いします。ああ、それと。そのクロというメイドはどのような娘ですか?」
「クロ、ですか?」
「ええ、大精霊様がお気に入りの様なのでどのような方なのかと、できれば聖女にと思っておりまして」
「・・・・・」
ぬ?どうしてソコで黙る?私はメイドの事を軽く聞いただけだぞ?
口ごもるような事があるほど問題があるのか?
「そうですね、良い娘ですよ。聖女になってくれるかどうかは知りませんが」
「そうですか」
「では、失礼します」
あの言い淀みよう、何かあるのか?
無ければ直ぐに答えるはずだ、一体何が・・・
「大司祭様、私は護衛の選定に入ります」
「よろしくお願いします」
約束の日までの3日間はとても長く感じた。
祈祷の間にも大精霊様はお越し下さらなかった。
私は悶々としたままその日を迎えた。
前の日の晩など中々寝付けなかった。
子供か!と言われそうだが仕方あるまいて。
「ようこそ、大司祭様」
「今日はよろしくお願いします、イヴァン陛下」
「こちらこそ」
「そちらは両陛下とイローナ姫と近衛2人ですか」
「ええ、娘もアレを気に入っておりますので、申し訳ない」
「いえいえ、構いません。私も無理を言っているのですから」
「助かります、馬車も申し訳ありませんがコチラになります。目立つわけにはいきませんので」
「ええ、大丈夫です」
「それでは参りましょう」
道中、目立ってしまいましたがそこは仕方ないだろう。
馬車で護衛付きで移動していれば嫌でも目立つからな。
談笑をしていると、不意に馬車が止まった。
「どうした?」
「申し訳ございません、陛下。馬がこれ以上進もうとしないのです」
「何?今までそんなことは無かっただろう」
「はい。しかしどれだけ言っても進もうとしないのです」
「それは、大精霊様の影響かもしれませんね。動物は私たち以上に敏感ですから」
「そのようなことが・・・」
「ここからは歩くしかありませんね」
「申し訳ありません」
「仕方ありませんよ」
幸い、目的の場所はもう目の前だ。神殿の中を散歩するよりも短い。
「かあさま、ついたのー?」
「もう少しよ、イローナ。ココからは歩きましょうね」
ふむ、幼子は無垢でいい。この子も素直に育って欲しいものだ。
寮の門の方角を見ていると
ゴオオ!
と火柱が立ち上って消えた。
「「・・・・・」」
皆、一様に立ち止まる。
意を決して歩き始めると声が聞こえてきた。
「わぁ~~、イフリート様、セルシウス様。ケンカしないで下さーい!お庭が壊れてしまいます!!シルフ様も煽らないでください!!」
「ドライアド様、お庭に木を生やさないで下さいとあれほど・・・ちょっ!ノーム様!!何でそんなに増えてるんですか!?エレカ様、電気止めて下さい!痺れてしまいます!!」
「わ!シ、シャドー様。スカートの中から出てこないでくださいって言ってるじゃないですか!!マクスウェル様、よく分からないもの作らないでー!!!」
「ウンディー様!、シャイナ様!見てないで助けて下さーい!!!」
1人の女性の悲鳴が絶え間なく聞こえてくる。
門の中を覗いてみると、そこには予想だにしなかった景色があった。
複数の超常現象を起こす少女・女性が集まり、それを1人のメイドが対応しているようだがこれはどう見ても
「イヴァン陛下」
「何ですか?大司祭殿?」
「ここは、託児所か何かですか?」
「奇遇ですね。私もそう思いました。ですが、ここはセルグリンド学園の女子寮の1つです」
庭に居る少女たちはどう見ても人間ではない異常な魔力を放出しているので、大精霊様と分かるのだがここまで人の形を取られるのを初めて見た。
ミショーや護衛たちは言葉も出無い様だ。
それも仕方のない事か、私だって何も言うことが出来んよ。
そんな中、メイドがコチラに気が付き駆け寄ってきた。
「こ、国王様。ようこそおいでくださいまうわぁ!」
メイドはたくさんの同じ顔をした少女?に抱き着かれ、倒れ、埋もれてしまった。
「クロ、生きているか?」
何!?このメイドがクロか確かに可愛らしく、是非聖女にと思ったがこの惨状を見てさらにそんなことをさせるのは非常に可哀そうに思えた。
その後、メイドが何とかあやしつけて?その場に居た全員で中に入り今はお茶を出してもらっている。
が、その間にも大精霊様は各々遊び続け、話をできるような状態ではなかった。
『あなたも来たのですね?。』
「あ、あなた様はシャイナ様ですか?」
『ええ。』
「何故そのようなお姿に」
『ここは女性ばかりだから。私たちもそうしてみたの。それに。彼女の周りはとても居心地がいいのよ。』
そう言ってメイドの方へ視線を向けられるシャイナ様。
視線の先では今もメイドがてんやわんやしている。
「いつもココにおられるのですか?」
『いいえ。皆。普段は何処かへ行っているわ。夕方くらいからかしら、ココに集まるのは。』
例え夕方からでもこれだけの大精霊様が集まるのだ、もう、ココは聖域ではないか!!
『お?。神殿の爺さんじゃないか。何でココにいるんだ?。』
「シャイナ様が皆様がここへ集まるとおっしゃっていましたので」
『へぇー。あ。セル。てめー。それ俺んだぞ。』
そういって直ぐにかけていってしまうイフリート様。
ここは本当に凄い。相性が悪い大精霊様同士があんなに楽しそうに同じ場に居るとは、信じられない。
ん?ミショーよ。いつまで呆けている。お前も大精霊様とお話をしてみなさい。
イヴァン陛下は・・・と、メイドと会話中か
「で、コチラが神殿の大司祭殿だ」
「は、初めましてクロともうします」
「初めまして、大司祭をしているサンドロ・ロロと申します。あちらで呆けている司祭がミショー・エリドリシです」
「よろしくお願いします。」
見たところ、素直そうな良い娘だ。何故この間ヤニツェク殿は口ごもったのか
「あの、クロさ・・・」
「ただいまー。なんや表に立派な馬車が止まっとったけど、クロ知ってるかー?」
どうやらココの女生徒たちが帰ってきたようですね。
「お帰りなさいませ。メイサお嬢様。えと、国王様と女王様、大司祭様と司祭様が来られてます」
「へ?」
女生徒たちは私たちを見て硬直している。
まあ、当然か。国王陛下に大司祭が来ているのだから。
「どういう事やねん!?そんな偉い人がここに来るとか」
「大精霊様にお会いに来られたそうですよ?私がメンドウなので一緒に来てもらえるよう国王様に頼みました」
「何頼んでるねん!!!メンドウってメッチャ不敬やないか!!!!」
なるほど、口ごもった理由はこれですか。
「気にしないでいいのよ?私たちが無理を言って来ているのだから」
「は、は!申し訳ありません!!!」
「うふふ、そんなに固くならなくていいのに・・・」
無理だろう、それは・・・・タダの学生には荷が重すぎる・・・。
「メイサお嬢様、大精霊様と国王様たちをお風呂へ案内していただけますか?」
「へ?何でウチが!?リーズに頼んだらええやん!」
「メイサお嬢様は寮長ではないですか」
「せやかて・・・」
「では、皆様にお出しする料理を作るの、手伝っていただけますか?」
「案内させていただきます!」
「ヤニツェク様、この間説明したお風呂の使い方、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。大丈夫だと思う」
「では、国王様たちをお願いします。カティ様、分からないことがあればお嬢様方に聞いてください。お連れの方も一緒にどうぞ」
そう言われて私たちは大精霊様と一緒に風呂場へ行くことなった。
大精霊様はみな、女性の姿をしておられるので、我々、男とは別だ。
クソ、大精霊様と一緒の湯舟に着かれるなど羨ましい。




