30ページ目 新ポーションと神殿の現状
大臣たちが死刑の執行が決定し項垂れている中、国王様が話しかけてこられました。
「クロ、この間のポーションの件で相談があるのだが」
「はい、何でしょうか?」
「レシピを教えて欲しいのだが・・・」
「以前お渡ししましたよ?」
「ああ、材料は分かった。すぐに揃えて作製に入ったが、どうやってもお前と同じポーションが作れんそうだ。だから手順を教えて欲しいそうだ」
「いいですよ」
「いや、無理なのは分かっている。お前が苦労して作ったモノだからな。報酬は上乗せする、だから・・・」
「ですから、教えてもいいですよ」
「いいのか!?」
「はい」
「何故そんなにあっさりと許可を出す?」
国王様は怪訝な顔つきでコチラに聞いてこられます。
これは現物を見せた方が速そうですね。
私は今日、牢屋の中で完成した試作品のポーションを国王様に渡しました。
国王様はポーションを見て、ため息を1つ。
「おまえなぁ・・・」
国王様のため息を見て大臣の1人が
「どうされました?国王様」
「ああ、丁度良い。見てみろ。ポーションのレシピの譲渡を快諾した理由だと」
そう言って机の上でポーションを滑らせます。
「・・・・・」
ポーションを見た大臣も黙りこくってしまいました。
他の大臣も次々と復活しポーションを覗いています。
「なあ、クロ。どうやったら新しいポーションをこの数日で開発できるんだ?」
「素材をより良い物にしただけですよ?」
聞かれて困ることではないのそのまま答えます。
「この近辺でそんなことできる素材なんか採れたか?この効果はもうBクラスはある。神殿の専売特許だぞ?」
「神殿の専売特許、ですか?」
「ああ、効果の高いアイテム・素材は神殿が管理している」
「国や専門職の方が管理しているのでは?」
私の中では専門家が管理・研究し、より良い物を作る為に試行錯誤しているイメージなのですが、コチラでは違うようです。
「貴重なアイテムは神の聖遺物として信仰を司る神殿が回収・管理している。回復効果の高いアイテムも神の恩寵を無駄に受けてはならないとして国毎に神殿が配っている」
何ですかその刀狩りみたいなアイテム収集は!
貴重なアイテム。つまりは強力な道具は聖遺物として回収していき、回復アイテムも恩寵が弱くなるとか屁理屈をこねて回収。
力が自分たち以外の所へ集まるのを止めているわけですか。
確かに神殿としては好き勝手にアイテムを作られると困りますね、自分たちの利益が減ってしまいますからね。
「どうして各国で研究しないのですか?」
「高価な回復アイテムはそうそう作れん。素材を神殿がすべて管理しているからな。レシピも一切公開しない。作るとなると1から自分たちで試していかないといけないが、早々見つけられるモノではない。」
「すべてと言っても完全に管理することなんてできないのでは?」
「今の所、高価なアイテムを作るには鍵となるアイテムが必ず1つは存在する。それを神殿が押さえているんだよ」
「なるほど。だから他の国では高価なアイテムは作れないと・・・」
「ああ、こと回復アイテムに至ってはほぼ完全と言っていいほど神殿が管理している。なので、魔物が大量に発生する度に俺たちは頭を下げ、高額なアイテムを融通してもらっている」
独占して高額でアイテムを売りつけるって悪徳商法ですか!?
「だから、俺たちは効果の高い回復アイテムは是が非でも確保したい」
「理由は分かりましたが、コレも神殿にバレたら即時回収なのでは?」
「ああ、しかし全て回収できないほど出回ってしまえば大丈夫だろう?。だから独占されないアイテムで作ることが出来るのかと」
なるほど、独占できないほど市場に広がればなんとかなると・・・。
いたちごっこになりそうですが、底上げは出来るわけですね。
「出来そうか?」
「おそらく無理ですね。その場所を占拠されて独占されるだけかと・・・・。しかし、神殿はそんな酷いことをしているのですね?」
私は信じられなかった。神の信仰を司っていながらその実、中身は真っ黒ではないですか!!
「ひどくなったのはココ数年内だ。以前はそんなことはなかったのだがな」
「確か、神殿の司教が変わってからだったわね?」
ああ、トップが変わって経営方針が180度変わったような感じですか・・・・
欲に目が眩んでしまっているのでしょうか。
「その司教様より偉い方はいないのですか?」
「居るには居るが、大司教は今、祈祷に入っているからな。他の事は何も出来ん」
「数年前から祈祷って何をしているのですか?」
「神族・大精霊は基本、気が向いた時にしか現れない、話の内容も気分次第、急に立ち去る等から遅々として進まない」
「それ、する意味はあるのですか?」
「聞いてもらえた時の恩寵はすごいからな」
「それで、その間に組織がダメになっていると」
「ああ・・・」
コレ、もう私に頼むようなことではないですよね?
宗教?関係の問題ってどこでもメンドウだって聞きますよ?
複数の国をまたいでの問題ですよ?
何とか格国で協力して解決してくださいよ。
「すいません、そのポーションの鍵アイテムって何なんですか?」
「精霊水だ。精霊・ウンディーネが居る水場でしか採取することが出来ない。しかも量もポーションの瓶1本分取れるかどうかだ」
「そんなに貴重なんですか?」
「リーズ君、君は座学をもう少し頑張りたまえ。4大精霊は普通の精霊とは違う。滅多に人前に姿は現さないし、私たちの願いを聞くことはまず無い。気まぐれで出される精霊水を集めるしか方法がないのだよ」
「え?でもクロ。今日バケツで水回収してなかった?」
「「は?」」
大臣たちが一斉に注目します。
「どこの水をバケツで回収したというんだ?」
「えと、【精霊の泉】の水です。国王様が来られる前まで、私たちはウンディーネ様とお話をしていましたので、今後も泉で水を汲めば問題ないんじゃ・・・」
「ハッハッハ。あんな所にウンディーネ様が現れるわけが無いだろう、神殿の常に神聖に保たれている場所ですら滅多に現れないというのにあんな辺鄙な場所に現れるはずがない!」
大臣の良い切りにシュンとなるお嬢様。だから言ったじゃないですか、馬鹿にされるだけだって。
しかし国王様は違ったようで
「カリン。その話、本当か?」
学園長はソっと目を逸らします。
「何故報告しなかった?」
「しても笑い者になるだけだろう?それに今から回収に言ってもソコにウンディーネはもういないだろうし、水もただの水だろうさ。だから今のところクロが持っているバケツの中身だけじゃないかな?」
「クロ・・・」
「お高いですよ?」
「お前、国王から毟るきかよ・・・・」
「それならよその国に・・・」
「待て待て分かった。何が望みだ?」
「魔導書にポイントを入れて下さい。」
「ポイント?そんなものでいいのか?」
「はい。私はまだ自室が無いので、ポイントで寮の部屋を増改築したいのです」
「なるほど、その為のポイントか」
「はい。貴族の館1件分ほどいただければ・・・」
「何!!館1件分だと!?」
大臣が急に大きな声を出しました。
「もしかして多すぎましたか?」
色々な部屋を作りたいので多めに言ったのですが・・・・。
よし、ダメなら速攻で量を減らしていきましょう。
1教室分くらいまでなら減らしても大丈夫です。
「バケツ1杯分の精霊水ならまだまだおつりがくるわよ」
カティ様が横からフォローしてくださります。
え?余裕なのですか?かなりの高額になる思っていたのですが・・・
「4大精霊とはほとんど会えないし、精霊水もほとんど回収できないからとっても高価なのよ。あなた、色々とおまけしてあげたら?」
「そうだな。こんなチャンスは無いしな、後で支払っておこう。今までのポーションもポイントでいいのか?」
「はい。ポイントでお願いします」
精霊水も渡して、交渉成立です。
まとまったポイントが入るようなので、ようやく寮の部屋を改築できそうです。
自分の部屋に調合部屋、倉庫、実験部屋、お風呂・・・・
夢が広がりますね。こういうアレコレ考えている時間が一番楽しいですね。
「なあ、俺はもうクロを城勤め扱いで出入り・謁見も自由でいいと思うんだが、職権乱用なのは分かるがコイツの報告を後回しにするとメンドウ事が更にメンドウになる様な気がしてならん」
唐突にとんでもないことを言い出す国王様。
1貴族の使い魔に出入り・謁見自由ってどれだけ好待遇するつもりですか?
「あら?お友達に会いに来るのにワザワザ予約が必要かしら?」
カティ様は既に出入り自由の方向で考えておられたようです。
「なんだ、お前は問題無いのか」
「ええ。お友達ですもの」
「と、いうわけだ。何かあれば報告に来てくれ、優先的に受け付ける」
「あ、ありがとうございます」
そんなにポンポン何かあるとは思えないですし、あっても困ります。
「今日は急に城に連れてきて悪かったな」
「今度はゆっくりお話ししましょうね?」
友達を見送る感覚で部屋から見送られる私たち、帰りはわざわざ馬車まで用意していただけました。
変える前にお嬢様とお嬢様のお父様が話しておられましたが、お父さんはとても老け込んで見えたのはきっと気のせいでしょう。
「今日は色々ありましたね、お嬢様」
「ええ・・・まさか国王様にお会いするとは思わなかったわ」
「クエストのポイントは取れなかったが、いい経験になったじゃないか」
「学園長先生・・・・」
「学園長は明日からも同行されるのですか?」
「まさか、明日からは普通の仕事に戻るよ。君はかなり特殊だからいきなり放り出しては危険だと思って同行していたが、問題は無い様だしね」
安堵されるお嬢様。
まあ、いつも学園長と一緒というのは緊張してしまいますよね。
「他の生徒たちに【差】を付けられたことになるが、頑張りたまえ」
「はい!ありがとうございます」
「あ、お嬢様。気合の入ったところ申し訳ないのですが、明日、部屋の拡張をやってみたいのですがいいですか?」
「・・・・。良いわよ。私も行きたいところが出来たし、別行動ね。増築は1日で仕上げなさい」
「・・・分かりました」
そんなに簡単に出来るものなのでしょうか?
今後の予定を話しながら馬車に揺られて学園へ帰る私たちでした。




