26ページ目 国王様と謁見
「暇ですねー」
森から兵士さんに連行されて現在お城の地下牢の中に居ます。
それなりに時間は立ったと思うのですが、一向に誰も来ないので私は今日集めたアイテムの整理なんかをやっています。
「『暇ですねー』じゃ、無いわよ!どうするのよ?私たち捕まっちゃったじゃない!」
「まあ、そう慌てるな。牢に入れられたという事は少しは問答があるはずだ。いきなり処刑は無いだろうさ」
「私の親はお城勤めなのよ!ああ、お父様になんて謝ればいいのかしら・・・」
「それは大変だな」
「クロ、ここから脱出できない?」
「脱走しちゃいますと、罪状が増えてしまいますよ?」
「大人しくしているのが一番だ」
そんな感じでおしゃべりしているとようやく兵士さんがやって来ました。
「「・・・・・・」」
私たちを見て少し沈黙?した後すぐに出るように言われ、王様の謁見室まで連れていかれました。
部屋に入ると正面の立派な玉座には国王様と女王様が、お2人を守る様に1人ずつ騎士様が付き。私たちの左右には騎士様と偉そうな方々がズラリ並んでいました。
国王様の御前まで行き、お嬢様とカリン様が急に跪かれたので私も慌ててマネをします。
やっぱり良い所のお嬢様はこういう作法もしっかりと叩きこまれているのでしょうか?
さも当然の様な動きで、私はビックリですよ。
「顔をあげよ」
王様の声が聞こえ、お嬢様たちに倣って顔を上げます。
物凄い威圧感です。森で会った時とは全く別の威圧感がコチラにビシビシと伝わってきます。
王様だけでなく他の方からのモノも混じっている所為すね。
1人の老人が歩み出て話し出しました。
「お前たちはこの国の国王であるイヴァン陛下を魔法で拘束し、更には頭を強打し、傷害を負わせた。1国の王に対して行ったその行為、どれだけの罪か分かるな?」
ココに来て時間の経っていない私はどれほどの罪か分かっていませんが、お嬢様たちは何も言わず聞いているので私もそれに倣います。
「お前たちの罪は十分として、娘の教育もできていなかったエライン候。そなたにも責任があることは理解しているな?」
老人の言葉に
「ま、待ってください!今回の事は私たちがしたことです、お父様は関係ありません!!」
ガン!
「黙れ!貴様等は話せる立場にないのだ、罪人よ!」
後ろにいた兵士がお嬢様の頭を床に押し付けました。
それでも嘆願し続けるお嬢様に兵士が頭を持ち上げ、床に叩きつけようとしたとき
「やめよ」
国王様から静止がかかりました。
「しかし、陛下!」
「やめよ、これ以上は血が流れる。やめよ」
国王様の威圧付きの謎の言葉に兵士も気圧され、元の位置に戻ります。
「続きを」
「は!さて本来ならばこのまま罪状を言い渡し、処罰するのだが近衛兵から減刑の嘆願が上がっている」
「「「?」」」
私たちは意味が分かりませんでした。
何故、国王様をお守りするはずの近衛兵から嘆願があがるのでしょうか?
「オホン、ああ、ここにいる大臣は皆知っているのだが、国王陛下はよく政務を放棄してよく視察に行かれてな。毎回突発的に出られるので、近衛の準備も追いつかん」
ああ、この国王様、自由人タイプの国王様ですか、家臣の人は大変ですね。
「今回は近衛をお連れになってくれて安心していたのだが、急に森に向かって走り出されて見失ってしまったようなのだ。このままでは無駄に捜索の時間ばかり過ぎてしまうと思った矢先にお前たちが国王様を拘束しているのが見つかったのだよ」
「「・・・・」」
「まあ、ぶっちゃけるとあの森で逃げ回る陛下を捉えるのは無理だから助かってさえいる」
「叩いてしまったことは・・・・」
私はその言葉に思わず呟いてしましました。
「連れ帰るときもなんやかんやで逃げ出そうとするからとても楽だったと報告を受けている」
駄目だ、この国王様、何とかしないと・・・・
「我々としては大いに助かったが、国王様を気絶させてお咎めなしというわけにもいかないので、こういう場を行ったわけだ」
「つまり、私たちは・・・」
「ああ、何の罪にも問われることはない」
「良かったぁ・・・」
今まであった威圧感が一気に消え去り、皆さん一息付けたような感じになっています。
国王様もうんうんと頷いています。
何故貴方が良くやったという風に頷いているのですか?
貴方の所為で私たちはとんだトバッチリなんですよ?
私がそんなことを考えていると、
「それで、近衛たちが到着するまで何があったのですか?」
女王様から質問がありました。
「へ?」
その場に居た一同がそんな間の抜けた声を出してしまいます。
「近衛たちの報告で連行からの事は聞きましたが、それ以前の事が聴けていません。皆が無罪と言っているなら、それで構いませんが何があったのかを話してください」
「カティ、もう、終わった話だぞ」
「そうですね。ですが私は彼女たちがどうやって貴方を拘束できたのか非常に興味があります。エライン候にも聞きましたが彼女は中等部になったばかりだと、この中でも3人で貴方を拘束できる人は限られていますので、彼女たちがどうやったかのか非常に興味が興味があります。ええ、とっても興味があります」
大事なことなので、複数回言われたようです。
国王様のお顔は青ざめて、変な汗が出ています。しきりに此方の方へ目配せをしているのは気のせいではないはずです。
「どの様なことがあったのか、一部始終しっかりと話してくださいね?」
物凄く綺麗な微笑み下に拒否できない威圧感があります。
普通ならば、当たり障りの無いように脚色をしてお話する所でしょうが、お嬢様にあんなことをした手前、完全暴露してしまいましょう。
「それでは、私から説明させていただきます」
私の話を聞いているうちに皆さんの目が次々にクズを見る目に変わって国王様に注がれていきます。
国王様は話が始まる時に逃げ出そうとしましたが、女王様にしっかり捉まり今では顔を明後日の方へ向け、音の出ない口笛か何かを吹いています。
「アナタ・・・・」
「はい・・・」
「何かいうことは?」
「正直やりすぎたと思っている、スマンかった」
「イヴァン!あなたは年頃の女の子を組み敷き、強姦をして無罪放免なんて許されると思っているのですか!!!」
「未遂だ!未遂。それ以上はやるつもりは無かった」
「貴方の意志は関係ありません。こんなことなら、その場で片腕くらい切り落とされるべきでした。いえ、斬られておくべきでした」
国王様の国王にあるまじき行為に女王様は糾弾し続けます。
大臣の方へ助けを求め顔を向ける国王様ですが、当然、誰も助けようとしません。
「最低1月は【磔の刑】ですね」
「お、おいマテ!アレを1月だと!?」
【磔の刑】椅子に磔にし、1日中休み無しで働かせ続ける極悪な刑。トイレですら女王様同伴でないと行けず、足は鎖(ドワーフ謹製)で繋がれ、首にも奴隷用の首輪が付けられ女王様が常にリードを持った状態で過ごすのだという事を大臣様がコッソリ教えてくださいました。
ソレが、年数回はあるとのこと・・・・
国王様、ダメ過ぎじゃね?いったい何やらかしているんですか?
既に首輪を付け国王様を捕縛した状態で女王様がコチラへ近づいてこられました。
「リーズちゃん?」
「ハ、ハイ」
「あのクズが乱暴な事をして本当にごめんなさいね」
「い、いえ。結果的に大丈夫でしたし、私も甘かったんだと思います。あんなことクエストに出ればいつ起きてもおかしくない事なのに・・・・」
「そう、でも今はもう考えるのをやめなさい。今のあなたには負荷が大きすぎるわ」
やさしく、諭すように話される女王様。本当に心配されているのがよく分かります。
「それでクロちゃん?」
「あ、ハイ」
「クズを殺さないでくれてありがとう。あんなのでも私の大切な夫で国王だから・・・」
あそこまでして大切というのはどうなのでしょうか?彼女なりの愛情なのでしょうか???
「でだ、クロ。お前に話がある」
威厳たっぷりに拘束された国王様が話しかけてきます。
「おまえ、俺の妾にならないか?嬢ちゃん毎引き立てても良い」
「は?」
何を言っているのでしょうか、この国王は。奥さんの居る前で堂々と浮気宣言しだしましたよ?
いえ、王族なのですから後継ぎを残すために妾も必要なのかもしれませんが、あんなことをした相手をその日に誘いますか???
「お断りです、何よりこんな綺麗な奥様がおられるではないですか。浮気は良くないですよ?」
「カティには結婚するときに妾の事は話して納得させている。俺は強い奴は大好きだからな、独身なら正妻に誘っていたぞ?」
「何ですか?ソレ?」
「カティ、お前もコイツなら異論は無いだろう?」
「ええ、この娘なら問題無いわ」
ええー!女王様もOKなんですか?奥さん公認って浮気になるのかしら???
「お断りします」
「何故だ!?」
国王様直々のお誘いただお断りするだけでは非常にまずいので、近くにいる女王様に理由を耳打ちでお話し、絶対に秘密にして欲しいとお願いをしました。
「あらあら、ソレは無理ね~。私がイヴァンに言ってあげるわ」
「何だ?俺の何がダメなんだ」
全てですよ、このロリ国王。今日の言動を見て更に14・5歳くらいに見える女の子に求婚とか、日本ならどんなに偉い人でも事案で1週間はメディア流れ続けますよ?
「それがね、・・・・・・・」
「は?おま、え?本当か?」
「はい」
「私もあの子の魔導書確認させてもらったけど、本当よ」
いつ確認されたのでしょう?全く気が付きませんでした。
「ぐぬぬ、わかった」
分かっていただけましたか、あの国王様の妾とか本当に女の子だったとしてもお断りです。厄介事しか起きそうにありませんし。
「それでは、お友達になりましょう?」
「「え?あ、はい?」」
女王様の急な申し出に私たちは混乱するしかありませんでした。
「私も強い子は大好きなのよ。それに、お城の中ではお話しする人が居なくて困っているの」
「困っているの」ではありません、そんなことお願いされるコチラが「困っているの」です。
「女王様とお友達、女王様とお友達・・・・・・」
リーズお嬢様は既にパンク中です、ここは何とか私が切り抜けなければ!
「しかし、他の皆様がどう思うか・・・」
「大丈夫。私、ずっと一途に働いてきたのだものこれくらいのお願い聞いてもらえるわよ。ねえ?」
そう言われて大臣様たちの方を見ると、皆さん慌てて頭を上下に振ります。
あ、これはアレですね。女王様の方が位が上ですね。国王様、もしかして養子婿なのでしょうか?
「分かりました、女王様」
「あら、そんな他人行儀な呼び方ではなくてカティと呼んで良いのよ?お友達なのだから」
「あの、流石に・・・それは・・・」
「んー?」
「分かりました、カティ様」
「うふふ、よろしくね」
しまった!国王様だけが自由人なのかと思ったら、女王様も自由人でした。
しかも、普段は文句無しの女王様なので稀に我が儘を言っても全て通してしまうという厄介なタイプの様です。
大臣様?何故胸を撫で下ろしておられるのですか?そんなにこの方とお付き合いするのは大変なのですか??何故、そんな目でコチラを見るのですか!!!!
カリン様、何をそんなにニマニマとされているのですか!?助けて下さいよ!
女王様のトンデモ発言にビックリしていると、一人の小さな女の子とメイドさんが謁見室に入ってきました。
「姫様、ダメですよ!お仕事中ですよ」
「おかあさまのとこいく~」
そう言って小さな女の子がカティ様のお腹へ走ってしていきました。
「あらあら、イローナ。どうしたの?」
「えへへ~」
どうやらただ、お母さんに会いたかっただけの様ですね。
王族ともなれば、小さい時から大変なのでしょう。
「あのね、おかあさま。わたし、おなかすいた」
「あら、それは大変ねえ。クロちゃん、何か食べるもの持ってない?」
何故、私に聞くんですか?今日初対面ですよね?他人の使い魔から食べ物をもらう王族ってどうなんですか!!!
「何故、私に?」
「コリーンが言っていたのよ。そうだ、2人とも挨拶くらいしたら?」
「「ハ!」」
「久しぶりだなクロ君、元気そうで何よりだ」
「久しぶりだな、クロ。また派手なことをやってくれた」
「お久し振りですお2人とも。それでコリーン様が言っていたとは?」
「この前、寮でコーヒーをもらったことを話してしまってな、その流れでカティアナ様にお出しした」
「ふぇ?な、何でお出ししたのですか!あんな物とても王族の方に飲んでいただくものでは」
「とってもおいしかったわよ?」
「・・・・」
「それで、何かないかしら?」
なんだかタカリみたいに聞こえるので止めて下さい。私の中の王族のイメージがドンドン崩れていきます。お願い、催促しないで・・・
「こんなものしか」
そういって、私は持っていたクッキーを1つ差し出した。
見た目はほぼカ〇リーメイトですが、HP、MPが回復できて空腹感も無くなる優れものです。
図書館便利すぎです。知識0でもこんなアイテムが作れるのですから。
「これは?」
「携帯食料です。探索の間に皆で食べた分の残りになります」
こんな残り物の様な物を食べられるはずありませんよね。
「食べてみる?」
「うん!」
えーー!食べちゃうんですか?こう、思いっきり残り物です宣言したのに、普通なら「王族に残り物をお出しするとは何事か!!」って怒られる場面なのに、周りの大臣様たちは何も言いません。
まさか日常的に一般市民から食べ物もらったりされていないですよね?ね?
「・・・では、半分どうぞ。結構お腹も膨れますので」
「じゃあ、残り半分は私がいただくわ」
あ、はい。カティ様も食べたかったのすね、言っていただければもう1つお出ししたのですが・・・・
「おいしい」
「ほんと、美味しいわね。コレ、どこで売っているの?」
「すいません、手作りなので・・・」
「あら、お料理もできるのね?」
「いえ、料理というほどのものでは・・・」
ヤバイ、何だか分かりませんがココははっきりと拒否しないといけない気がします。
「ほう、そんなに美味いのか?」
「ええ」
「なら、俺にも1つくれ」
「申し訳ございません、コレで最後です」
下手に渡してもっと他の物もくれとか言われては堪りません。
「そうか、なら夕食を作ってくれ」
「はい?」
意味が分かりません。何故、私が、国王様に、夕食を作らないといけないのでしょうか?
「他に無いのだろう?なら城の食材を好きに使ってよいから作れ」
「しかし、味の方が・・・・」
「何、俺は不定期に城の新人の料理人に作らせている。失敗作も来ることがあるが気にしたことはないぞ?」
どんだけ自由人なんですか!新人に作らせるってある拷問じゃないですか!!失敗してもいいから出せって無茶過ぎませんか???
周りの大臣様たちはもう、同情の眼差ししか向けてきません。誰も止めてくれないのです。
最後の希望を胸にカティ様の方を見ると
「私もクロちゃんの手料理食べてみたいわ。あ、この娘の分もお願いね?」
っと止めを刺されました。
直ぐにお城の料理長が呼び出され、命令されました。
「夕食はコイツに作らせる」
「かしこまりました」
え?何その淡々とした会話。もう少し意見具申しようよ。外部の者に作らせることは出来ません的な・・・
呆然とする私の横へやってきた料理長は私の肩に手を置いて目をつむりゆっくりと首を振りました。
ああ、この方も被害者なのですね・・・
調理場へ連れていかれる前に国王様から
「ここに居る大臣たちの分も頼む」
と追加料理を頼む気軽さで料理を追加される首輪付きの国王様。
王族の方にお出しする料理ってどんなのですかー!誰か教えてくださいよー!!!
私「急に無茶ぶりなお願いをされるなんて、あなた何様ですか!!」
イヴァン「? 王様。」
カティ「? 女王様。」
私「・・・・」
カティ「美味しいのをお願いね?」
私「ハイ・・・・」




