24ページ目 金の斧
「さて、今日はどこまで行くのかしら?」
「昨日と同じくらいまで進んでアイテム探しか?」
そう聞いてくるのはリーズお嬢様とカリン様。
昨日は密偵の様な方がパーティーに居ましたので様子見で近場を調べていたら、私たちはダメだという判定をされて出ていかれましたので今日は少し遠くまで行くことにしましょう。
「昨日も言いましたが、リーダーのお嬢様が決めて下さいよー」
「クロが決めてよ。そういう事もやってもらう為に呼んだんだから」
「私は特に予定もないし、2人に付き合うぞ」
「・・・はあ、お嬢様はこれからこういう事も考える様にしてくださいね?」
「えー・・・」
「えーじゃないです。せめて大まかな作戦くらいは考えるようにしてください!」
「確かに、全て任せきりでは情けないからな」
「うう、わ、分かったわよ」
リーズお嬢様、カグヤお嬢様とリーダーを交代でしていたそうなのですが、どうやって作戦を立てていたのでしょうか???
「では、今日はこの泉まで行こうと思います」
そう言って地図に描いてある泉を指します。
「ほう、けっこう遠くに行くのだな」
「今まで慎重だったクロにしては珍しいわね」
泉には【精霊の泉】と書いてありますので、是非調べてみたいですね。
水とか水とか水とか。ポーションに使えそうです。
「ええ、昨日索敵した結果それほど強力な魔物もいませんでしたし、このくらいなら大丈夫ではないかと」
「何!泉までの距離を索敵したのか?」
「いえいえ、周囲だけですけど、この森は少し奥へ行くと強力になるのですか?」
「いや、そんなことはない。森の中はせいぜいウルフ・ボア程度だな、稀に強い魔物が迷い込んで来るが・・・」
「なら、行けそうじゃない。今日は昨日よりも高ポイントをゲットできそうね!」
「泉から小川が出ているようなので、迷わないと思いますしリーズお嬢様が先導してくださいね?」
「は~い」
項垂れるお嬢様、カリン様と少し笑っていざ!出発です!
リーズお嬢様は知りませんがパーティー全員身内のようなものなので、私も気が楽です。
普通にポーションも配れますしね。
「それにしても、ポイントって中々たまらないのね。昨日のアイテムも3ポイントだったし」
「そう簡単にポイントが溜まってしまっては皆近場しか回らないだろう?一応、遠征の訓練も兼ねているようだしな」
「遠征の訓練?」
「ああ、比較的安全な森で遠出をして野営をしたり道具が不十分な中でどう対処するかを簡易的にだが学ぶのがこのクエストの目的、と聞いたことがある」
「なるほど、ダンジョンも日帰りというわけにはいきませんからね」
「へぇー、クロ!野営は任せたわよ!」
「少しはご自分でやろうとしてください・・・」
何でしょう、お嬢様段々とダメな娘になってきていないですか?
私はもう少しお嬢様に厳しくした方が良いのでしょうか???
そんなとりとめのない事を話しながら進んで行きます。
「着いたわね。結構綺麗な場所ね?【精霊の泉】って言われるのも何だかわかる気がするわ」
木々が少し開けた場所に泉があるだけの場所ですが、とてもキレイでした。
「そうだな。この泉には精霊が住んでいると言われている、見たものはいないがいつの間にかそう呼ばれるようになったそうだ」
「精霊はこの世界にはいないのですか?魔法があるのですから精霊や神様も居るのだと思っていたのですが」
「存在は確認されているが、殆ど我々の前に姿を現すことはないな。精霊が現れたと聞くのは神殿が管理している神聖な場所ばかりで、神と言われる存在は神殿の初代大司教様が1度だけ会われた事があると聞いたことがあるくらいだな」
「精霊様に会えると加護をいただけるって聞いたことがあるわ」
「精霊を”スピル”と呼ぶのですか、加護ってそんなに簡単にいただける物なのですか?」
「私たちは精霊を”スピル”、神を”デウス”と属する存在をまとめてそう呼んでいる。彼らは我々では理解できない存在だからな、もし貰えたとしてもそれは彼らの気まぐれだろう」
「へぇ~」
「で、クロ。君は何をしようとしているんだ?」
「そうよ、泉に向かってポーションなんて持って」
「実験ですよ実験」
「「実験?」」
「私のいた世界では、木こりが泉に自分の鉄の斧を落としてしまってそれを女神さまが金の斧と銀の斧をもって現れ、落としたのはどちらの斧かと聞いてくる話があるのですよ」
「何それ?何で女神様が金と銀の斧を持って出てくるのよ?気前良すぎない?」
「確かに、それでは皆、金の斧を選ぶのではないか?鉄と比べると価値が違いすぎる」
「あははは、それで鉄斧を落としてしまった木こりは自分が落としてしまったのは鉄の斧と正直に言うと金と銀、両方の斧をもらえたそうです。その話を聞いた別の木こりも同じことをして、金の斧を選ぶと女神様はなにもくれずにそのまま姿を消したそうです」
「2人目の木こりバカじゃないの?1人目に話を聞いて同じことしないの?1人目は金も銀ももらえたんでしょ?」
「欲に目がくらんでしまったのではないか?実際に目の前にすると冷静ではいられないだろう」
「・・・」
「どうしたのクロ?だまちゃって」
「いえ、考え方が全く違う世界にきたのだなぁと感じていただけです」
「では、これはどういう話だったのだ?」
「これは”神様は正直な者を助け、不正直な者には罰を与える”という事が教訓となっているおとぎ話です。それに習ってポーションでも投げ入れてみようかと」
「止めておきなさいよ。ポーションが勿体ないわ」
「ああ、アイテムの無駄使いは褒められたことではないぞ」
お2人が現実思考過ぎて辛いです。ココはファンタジーな世界なので、精霊・神族の存在も確認されているのですから試すくらいさせていただいても・・・
「とにかく、勿体ないからしまいなさい。そんなおとぎ話みたいなこと起きないわよ!」
「い~や~で~す~。試させてくださ~い」
私とリーズお嬢様がポーションの便を取り合っています。
自作のポーションとはいえ、私たちにとってはまだまだ貴重なアイテムなのですから納得は出来るのですが・・・
「この~」
「むー」
カリン様は馬鹿らしいとため息1つついて傍観されています。
「「あ・・・」」
ポーションは私たちの手から滑り落ちて泉に落ちてしまいました。
「ああ~!ポーションが~~・・・」
物凄く落ち込まれるリーズお嬢様。アレ?私そんなに悪いことをしましたか???
「もー!勿体ないじゃないの!!!どうせ【精霊の泉】なんて呼び方だけよ!!!」
「うう、すみません。お嬢様。すぐに拾ってきます」
私が泉に入ろうとすると
『呼び方だけではありませんよ?』
全身が水の綺麗な女性?がいました。
『私は精霊・ウンディーネともうします。』
「「「・・・・」」」
『?どうされました?』
「あ、いえ、まさか本当に精霊が出てくるとは思っていなかったので」
「クロ!あなた自分でも居るなんて思っていなかったことをどうしてやろうとしたのよ!」
「え?実験だって言ったじゃないですか」
「精霊・ウンディーネ。4大精霊精霊の一角じゃないか!何故こんな泉に・・・」
『たまたまこの泉でお昼寝をしていたら話し声が聞こえまして。何でも同族か神族様のお話だったようで。』
「それで、出てこられたと?信じられない・・・」
『あら?貴女が言ったのではないですか?私たちの事は理解できないと。』
「そうですが・・・」
『私も完全に気まぐれですのでお気になさらず。』
「・・・はい」
凄さが分かっているだけに何も話せないカリン様。
状況を理解せずに私に文句を言っているお嬢様。
ああ、大切なイベントのはずなのになぜこんなに残念な状態なのでしょう。
『コホン。それではあなたが落としたのはこの”完全回復薬”ですか?それともこの”エリクサー”ですか?』
ニコニコとしながら伝説級のアイテムをポンと出すウンディーネ様。
「な!エリクサーだと・・・」
「ねえ、それって伝説の秘薬よね?」
「ああ、不老不死になれるという霊薬だ」
お2人とも物凄く興奮しておられます。無理もないのでしょうか、4大精霊に伝説の霊薬なのですから。
本当におとぎ話のような状態です。
「あ、落としたのは普通のポーションです。こんなビンの」
そう言って私は別のポーションを出します。
『そうですか。それでは。』
「別にお礼はいいのでお願いを聞いて欲しいのですが」
「「!?」」
「代わりにココの水を定期的にもらいに来てもいいですか?」
「何言ってるのクロ!エリクサーよ、エリクサー!!!」
「そうだぞ。エリクサーなんて今後絶対に手に入らない代物だぞ!」
物凄い剣幕で迫られ、思い切りゆすられます。止めて下さい。気持ち悪いです・・・。
数分間似たような状態で迫られ続けて・・・ウプ・・・。
「ごめんなさい、クロ」
「申し訳ない」
『あらあら。大変ですね?メイドさん。』
「いえ・・・う・・・」
「それで、なんで受け取らないの?」
「何か理由があるのか?こんな好機他にはないぞ?」
「うう・・・、ゴホン。えっとですね、まずその2つが本物かどうか分かりません」
「何?貴様ウンディーネ様を疑うのか?」
「私たちには理解できないとおっしゃっていましたよね?私が鑑定した限りでは2つとも鑑定できませんでした。つまり、何か分からないアイテムです」
「それならもらってもいいんじゃない?」
「命の危機にそんな得体のしれないアイテム使えますか?」
「ええと、ちょっと無理かしら」
「それに、普段使うにしても本物だったらポーションは無駄使いです。エリクサーなら不老不死になりますが」
「それは良い事なんじゃないのか?」
「それをどうやって本物のと確かめるのですか?首でも飛ばしてもらいますか?」
「いや、それは・・・」
自分の首が飛ぶところを想像したのか少し引き下がるカリン様。
「後、分配はどうするのです?私とお嬢様は2人で1本としてどちらがどちらをもらうか穏便に決まりますか?」
「「それは・・・」」
うつむいて考え込むお2人
『失礼な!ちゃんと本物ですよ!よろしければ皆さん1本ずつ差し上げますよ?』
プンプンという擬音が聞こえてきそうな感じで話すウンディーネ様。
余計なこと言わないでください。
「「クロ・・・」」
「ええ、もう好きにしてください。どうなっても責任は取れませんよ?」
「責任ってなによ?」
「そんなレアアイテムを持っているのがバレれば欲しい人に追い回されたり、この場所が荒らされる可能性があるという事です」
「追われるのは分かるがココが荒らされる理由は?」
「私たちが行動可能な場所で可能性があるのはココだけですので」
『私は他の人が来ても差し上げませんよ?』
「それでも魔法やスキルで色々調べられるかもしれませんが良いのですか?」
『それはちょっと嫌ですね・・・』
「それなら、そんな伝説級のアイテムはホイホイ渡さないようにしてください」
『ええ。そうするわ。』
こうして、エリクサーはお預けになり、私のお願いの泉の水をもらうのみが叶うことになりました。
『でも。どうしてわざわざ私にお願いしたの?勝手に汲んでいけばいいのに。』
「私の気分の問題です。」
『そう。泉の水だけでは何だからコレもあげるわ。』
「ありがとうございます。ウンディーネ様」
『いいのよー。うふふ。』
「ねえ、今、私たち、4大精霊様に会っているのよね?」
「ああ、そうだ。どこの誰に話しても信じてもらえないだろうがな」
「でも、この雰囲気は変じゃない?もっとこう神聖であるべきだと思うのよ」
「ああ、そうだな。どう見ても孫にお小遣いをあげるお婆ちゃんだな・・・」
やけにフレンドリーなウンディーネ様にお礼を言い、立ち去ろうとした時でした。
私の索敵が物凄い勢いでコチラに向かって進んで来る何かを捉えたのは・・・




