21ページ目 釣れた魚がデカ過ぎた
「はい、学園長コーヒーです。苦いですが、牛乳を入れると少し甘くなりますよ」
「ありがとう。ところで、クロ。君は学園長である私の扱が雑ではないかね?いくら今の私が小さいといえ、ネコの様に持ち上げて座らせるのはどうかと思うよ?」
「では、次からはお姫様抱っこで座っていただきますね?あ、私の膝上の方がよろしいですか?」
「すまん、君が非常にからかいがいの無い性格だということを再確認したよ」
「時と場合によりますよ、普段ならきっと驚きます」
「どうだか?で、君は私に防波堤になれと言っているが学園の長を顎で使えると思っているのかい?」
「守っていただけないのですか?」
「私にメリットが無い」
「そんな・・・」
リーズお嬢様は悲しそうな顔をされています。
カグヤお嬢様は静観したままですね。
「いいかい、リーズ君。本来学園長というものは生徒の事に関わるものではない。学園の運営等に関係することには協力しても、今回の取引は学園は無関係だ」
「「「「・・・・」」」」
お嬢様たちもヤニツェク様たちも学園長の言葉に黙り込んでしまいました。
確かに、今回の話は【私が作ったポーションをどう売るか】というものです。
そこに学園長の協力を得ようというのは正論です。
「そうですか、ところでヤニツェク様。今回のポーションの件はヤニツェク様お1人の判断でしょうか?」
「ん?私以外にもたくさんの人の意見を聞いてここに来たが、何故そんなことを聞く?」
「学園長の庇護を得ることが出来ないという事はまだ弱い私たちにとって死活問題です。私たちが作ったと周知されて街の外で襲われるような事は避けたいのです」
「ならばやはり騎士団、というか王宮にポーションのレシピを売ればいいだろう?そうすれば王宮の調薬師が作ってくれるんだ。確かに君の言うように最終的な儲けは減るが、そんなレシピを発見したんだ。大勢の意見を聞いてから来たというのならば、もしかすると王宮に呼ばれて王様直々に褒めてもらえるかもしれないそ?」
「王様直々に褒めて・・・」
リーズお嬢様はもうその場面を想像しているのかうっとりとしています。
カグヤお嬢様も少しそわそわした様子ですね。
「確かに国王様もこのポーションに興味を持っておられたぞ。あの方も王位につかれる前は騎士として様々な土地を回られていたからな」
「そんな王様に興味を持ってもらえるのってすごい事よね?ね?それなら、もう、レシピ渡しちゃってもいいんじゃない?クロ!」
コリーン様の言葉にリーズお嬢様の興奮は更に上がったの様です。
騎士としての実力もある国王様に興味を持ってもらえたという事は喜ばしいことであり、誇らしい事ですね。
確かにリーズお嬢様のおっしゃる通り渡してしまっても全く問題のないレシピなのですが、ここまで一気に人脈が広がると降りかかってくるイベントに対処しきれなくなってしまいます。
主にネタミや嫉妬などのメンドクサイ方面の・・・。
まだ、フラグ満載の学園生活もスタートしていないと言うのに更にフラグの増設はしたくありません。
しかし、これを機に国王様という騎士として進んでいく上で重要な人との繋がりは持っておきたいところです。しかしそうなるとやはり周りからのネタミ・嫉妬のイベントが・・・・
「結局のところクロ君、君は何が心配なんだい?」
真剣な表情で考え込んでいた私にヤニツェク様が聞いてこられました。
「お嬢様への危害です。強い方が相手では私がいくら小細工を仕掛けていても意味がありませんので。」
「クロ・・・・」
「と、色々とシリアスになりましたが、そもそも国王様がそんなに簡単にお会いしてくださるはずが無いでしょう?学園長が変なことをおっしゃるから変に盛り上がってしまいましたが・・・」
へ?っと場の空気が一気に冷える。
そう、学園長の一言で場が盛り上がって話が変な方向へ進んだだけです。
普通に考えれば回復効果の高いポーションの開発くらいで国王様にお会いできるはずがありません。
「コリーン様、確認になるのですが、国王様も私のポーションに興味を持っていただけているのですか?
」
「ええ、俺もこんなポーションが騎士時代にあれば・・・と、ぽつりとつぶやいておられた」
「国王様にそこまで言っていただいのならば、レシピをお渡ししないわけにはいきませんね」
「いいのか?コチラは助かるが」
「国王様からの命令に逆らえるわけないのですが?」
「何故、国王様からの命令になるんだ?」
「国王様が興味を持たれ、求められている。そして、レシピの交渉に来た。もこれはもう国王様が差し出せとおっしゃっているのと同じでは?」
「!すまない、俺たちは決してそんなつもりでは無い。この話は無かったことにしてくれて構わない。他の者への説明は俺が責任をもってする!」
物凄い勢いで謝り始めたヤニツェク様。
「あわわわわ、あ、謝らないでください。別に気にしていませんから」
「しかし!」
「それなら作成者がばれないようにだけしてください。それで多分、何とかなりますから」
「本当にいいのか?」
「ってクロ!それじゃあ、どうやって稼ぐのよ!!」
「また何か考えないといけませんねぇ・・・」
「ううぅぅ・・・」
今までテンションが高かった分、一気に落ちましたね。
「ハッハッハ。若いうちは苦労しておきたまえ」
楽しそうに笑う学園長。何がそんなに楽しいのでしょうか。ものすごくいい笑顔です。
「ねえ、クロ。本当に何も稼げる無いの」
捨てられた子犬の様な目でコチラを見るリーズお嬢様。
止めて下さい。そんな目で見ないでください。
私だってこのポーションで釣ってウハウハするつもりだったんです。
ただ釣れた魚が大きすぎて釣り上げられなかったんです。
「・・・・・」
「同じポーションをギルドに売るのはダメなの?」
「国王様にお渡しするのですから、ギルドに売ってしまえば私たちが盗んだことになってしまいます」
「何か他にないの???」
「ありませんて。騎士を目指しているのですから、明日からまた探索頑張るくらいはおっしゃってください」
何でしょう、リーズお嬢様がダメな娘になってしまったように見えるのですが・・・・・
「でも、ポーションの売上を期待してアイテムの収集をしていたのだからソレがなくなるとキビシイのは確かよ?」
「そうねんですよねー」
「たっだいまー。クローなんか食べもんあらへんって、来客中やったかスマンなー。また後で来るわー」
「「「・・・・」」」
メイサお嬢様・・・フリーダムですね。色々とぶち壊してさっさと消えてしまいました。
「さて、と。私も行くよ。もう、ココにいても面白い事は起きそうにないからね」
「君たちももう帰りたまえ。後はこの子たちが考えることだよ」
「しかし・・・」
「・・・分かりました。」
「ヤニツェク!」
「クロ君、今回の借りはいつか必ず返すよ」
「お仕事なのですから、借りに思われなくても大丈夫ですよ?」
「私のけじめの問題だ」
「分かりました。それではお見送りいたします」
「で、何やったん?」
メイサお嬢様に簡単な食べ物をお出しして、私は夕食準備をしています。
リーズお嬢様とカグヤお嬢様が今までの説明をされています。
「あ~、そらしゃーないわ。国王様に献上した物を勝手に量産はなー」
「リーズ、いい加減切り替えなさい。明日から新学期なんだから」
「ええ、そうね!クロもいるんだからすぐに稼げるようになってみせるわ」
おお、どうやら気持ちを持ちなおされたようです。
明日から新学期。
不安しかありませんが頑張りましょう。




