19ページ目 ボアでビッグボアを釣る
「リーズお嬢様、明日、市場へ買い物に行ってもいいですか?」
夕食も終え皆さんがのんびりとしている中、私はお嬢様にお願いしてみます。
「市場って何か買うの?」
「はい。今日採取した薬草でポーションを作ってみようと思うのですが、入れ物が無いもので」
基本、この世界の液体の入れ物はビンに入っていてお嬢様の部屋には空きビンはありませでした。
「ああ、そういうこと。ごめん、誰か空きビン持ってない?」
「何に使うのー?」
「クロがポーション作りに挑戦するんだって」
「じゃあ、私のあげるよー。まだ予備あるしー。」
1人の方が返事をしてくださりました。
「よろしいのですか?」
「良いよー。クロちゃんにはご飯作ってもらってるしー」
結構な数をいただき、ポーション作りに励むことが出来ました。
図書館で作り方を確認しながら作っていきます。
出来たポーションをビンに入れて完成です。
後は納品ボックスに納品して数日後にはポイントが入るそうです。
これで後はどのくらいのポイントになるか待つだけですね。
私がポーションを作り始めたのは自分たちで使う分というのもありますが、
何より”お金”が無いのです!
こういった生活はお金がとてもかかるのです。大体のゲームなら武器・防具の損傷というパラメータやアイテムの使用期限というものがありませんが、ココは異世界で現実。
全ての物に物としての限界があり、ずっと使い続けることもできません。
アイテムの買い替え・補修に結構なお金がかかるのです。
なので、金策の1つとして自作ポーションを売ってみようと思ったわけです。
売れれば良し。売れなければ自分たちで使うだけです。
他に何か売れそうなものはないか考えていると、ふとこの世界には調味料が少ない事を思い出しました。
タレも醤油もマヨネーズもここ数日市場を覗いただけですが、見当たりませんでした。
「すいません、リーズお嬢様。この街の市場は他と比べて大きいのでしょうか?」
「え?大きいんじゃない?」
え?そんな適当なんですか?結構まじめな質問なんですが・・・
「他の国の大きな市場と比べても遜色ないくらいには大きいわ」
キッチリフォローを入れて下さるカグヤお嬢様、素敵です。もう、先生と呼ぼうかしら?
「何かするの?」
「私が居た所にあった調味料が欲しいと思ったのですが何処にも売ってなかったもので」
「調味料?そんなに大事なの?塩があれば美味しく食べれるじゃない」
「リーズお嬢様、調味料が色々とあればもっと美味しい料理が食べられるんですよ?」
「クロの料理は今のままで十分美味しいからそこに今以上にお金を割く必要は無いわ」
「そんなこと言わないでくださいよー。私としてはなじみの深い物だったので無いと困るんですよ。後、流通してないなら売ってみたらどうかなと・・・」
「流通してないものが売れるのかしら?」
「そこは納品ボックスに入れてみてポイント次第で直接ギルドへ持っていってお金に変えようかと」
「アイテムギルドの鑑定員は実験台ではないのだけれど・・・」
「でも、別に毒を送るわけではないのでいいのではないですか?」
「毒を送っても毒の鑑定してポイントもらえるけどね。ま、やってみればいいわよ。ねえ、カグヤ。明日は森まで行ってみない?今日は誰かの所為で全然剣を振れなかったし」
「はぁ、まあいいわ。確かにそろそろ森で探索してもいい頃ね」
「あ、私は帰りに市場によって欲しいです」
「あんた、市場って何買うのよ?」
「調味料の材料です。もちろん森でもしっかり採取しますよ」
「あなた、斥候よね?」
「採取もしていかないと勿体ないですよ」
カグヤお嬢様もあきれ気味ですが頷いてくれました。
お金が無いのですから、自然の恵みは最大限活用しなければ!
-翌日-
「基本的な回復セットは持ってきましたけれど、特に注意する魔物はいますか?」
周りには大きな木が何本も立っていて、少し見通しも悪いです。
リーズお嬢様の剣はどう見てすぐに木に当たりそうなのですが大丈夫でしょうか?
「ウルフとボアが攻撃力があって要注意かしら。後、たまにダンジョンから出てきた魔物が居ることがあるから注意して」
「分かりました」
「それじゃ、出発しましょ」
・・・・
・・・
・・
・
「ねぇ」
「何ですか、リーズお嬢様?」
「探索って、もっと慎重に行くものじゃないの?」
「普通はそうね」
「慎重に行っていますよ?」
「ずっと何かしら採取しているじゃない!森に入って1時間経っていないのにどれだけアイテムボックス入れてるのよ!!」
今回の探索用に私は寮の他のお嬢様からアイテムボックスを借りれるだけお借りして今日の採取に来ています。使えそうな植物は回収しているともう3つ目のアイテムボックスになりました。
スキルで索敵も行っているのですが、範囲内に検知できないので採取に勤しんでいるわけです。
「! お嬢様。少し行った所に何かいます」
「魔物かしら?」
「大きな茶色の塊ですね」
「それならボアね。寝ているんじゃないかしら?」
「どうされます?」
「もちろん、討伐よ。やっとこの剣を試せるわ」
お嬢様方にも見えるくらいに近くに寄り、茂みの中から再確認すると少し開けだ場所でボアが寝ていました。
作戦をどうするか尋ねようとした時、
「いやあーーーー!」
ズバシュ!!!
リーズお嬢様が突撃してボアを上下(?)真っ二つに切り裂きました。
「ふぅ」
やり切った顔のリーズお嬢様。
「あの、カグヤお嬢様・・・」
「言わないで・・・」
ああ、いつもこうなのですね・・・。
「どう、クロ。私の剣の威力は!」
「凄いですけど、真っ二つにしてどうアイテムボックスにしまうのですか?取り出したとき大変ですよ?それに、一応奇襲なのですから叫びながら突撃はやめた方がいいですよ。ターゲットにも、他の敵にも気付かれます」
「え?ここはもっと、こう、驚いて私を見るところじゃないの?こんなに強かったのですか!みたいな」
「はい。1撃で真っ二つにしたことには十分驚いています。が、それ以外がダメダメです。早く移動の準備をしてください。今の大声2・3匹コッチに向かってきています」
「ここで迎え撃てばいいじゃない」
「ではリーズお嬢様は下でお一人で魔物の攻撃を凌いでください。私とカグヤお嬢様は木の上から攻撃しますので」
「なんで私だけ下なのよ!」
「お嬢様がその剣を振り回されますと、私たちの居場所がありませんので」
「うう、それは遠慮するわ。ところでクロあんや何やってんの?」
「何って、ボアのお肉に麻痺の薬草や木の実を擦りこんでいるだけですよ?」
麻痺肉とか肉食動物相手には当然ですよね?
どのくらい効くか分からないので多めにしておきましょう。
リーズお嬢様も納得して一緒に木の上へ退避します。
やってきたのは3匹の大きなボアした。立派な角が2本生えています。
「ビッグボアね。巨体での突進が主な攻撃方法で突進時に巻き込まれると致命傷よ」
「ねえ、あいつらボアを食べ始めたんだけど・・・」
「猪は雑食ですからねー。生きている時は同族でも死んでしまったらエサになってしまうのではないでしょうか?」
「うへぇ、気持ち悪い」
「我慢しなさい。これからダンジョンにも潜るのだから、魔物の内臓を見る事にも慣れておきなさい」
慣れの問題なのかもしれないですが、生き物の肉を生で見るのはかなり堪えます。
普段はお肉を見るにしてもある程度処理された状態になるので完全に生の状態で見るととても気持ち悪いです。
「ねえ、麻痺草入れたんじゃなかったの?ピンピンしてるわよ?」
「そんなすぐには効果は出ないですよ」
「二人とも静かに。気付かれたらこんな木くらい突撃ですぐに倒してしまうわ」
「「・・・」」
食べ終わる頃になってようやく麻痺が回ったのかビッグボア倒れました。
「お嬢様、頭を狙ってください。できれば突きで」
「分かったわ」
「では」
3人で各々1匹ずつビックボアを仕留めました。
私はナイフで、リーズお嬢様は剣で、カグヤお嬢様は弓で。
「なんとか破損個所を少なく倒せましたね」
「ねえ、コレどうするの?」
「持ち帰ってギルドで解体してもらいましょ。これだけ綺麗ならいい値段が付くはず・・・」
「素材は私たちももらえるんですか?」
「ええ、ギルドに渡すときに欲しい部位を言えばいいわ」
「お肉って大丈夫なの?麻痺草食べてたでしょ?」
「調理の時に解麻痺しますので大丈夫ですよ?ギルドには報告した方がいいのですか?」
「ええ。まあ、売りに出す前に検査はするでしょうけど言ったほうがいいわね」
「では、この3匹を持って帰りましょうか」
「え?もう帰るの?」
「この3匹で十分な成果よ?」
「この森ではお嬢様が思っているような戦闘は無理ですよ。場所が狭すぎます」
「大剣が悪いっていうの?」
「武器にも向き不向きの相手・場所があるのです。もしくは狭い場所でも障害物に当てずに扱える技術を付けないとですね」
「・・・分かったわよ」
「早く行きましょう、他の魔物が寄って来ても面倒だわ」
こうしてビッグボア3匹をしまって今日の探索を切り上げて街へ帰りました。
まだお昼を少し過ぎたくらいです。市場にも十分寄れますね。




