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ファミリアエッセンス  作者: 玄亀
18/211

18ページ目 薬草の採取に来ましたが

「わぁ~、本当に何もない平原ですねー。」

街で準備を整え平原へ出た私たち一行。

途中リーズお嬢様に街の外を尋ねると「何もない平原よ」と返ってきたので人工物が何も無いのかと思えば文字通り木の1本もない平原が続いていた。

「何でも大昔の王様が急に周りの森を切り倒し地面の隆起すら均させたそうです。」

「おかげで薬草を取りに行くのにも一苦労よね」

雑談をしながらのんびり歩いて森の少し手前までやってきました。


「今日はこの辺りで薬草の採取なんですよね?カグヤお嬢様」

「ええ、そうよ。この辺りは強力な魔物も出ないから安心してゆっくり採取できるわ」

今回のパーティーリーダーはカグヤお嬢様です。

リーズお嬢様とクエストに出られるときはリーダーを交代制にしているらしいのです。

理由を尋ねると「今後の訓練よ」と当然の回答をいただきました。


「それじゃあ、ちょっと剣の試し切りを・・・」

「薬草の採取が終わってからね」

「少しくらいいいじゃない、カグヤ」

「採取が終わってから好きなだけ振り回せばいいわ、リーズ」

さすがはカグヤお嬢様。リーズお嬢様のあしらいもお手の物ですね。


「クロ、あなたは向こうの方をお願い」

「はい。いいですけど」

「どうしてクロだけ単独行動なのよ!!」

「あなたに失望させないためよ」

「そんなにですか!?」

「ええ、あなたは1人でゆっくり(・・・・・・・)採取してきなさい。日が暮れ出したらここに帰って来てくれればいいわ」

「わかりました。ではこれ、お弁当です」



少し歩いてお嬢様方の姿が見えなくなりました。

「はぁ、気を使わせてしまいました。まあ、せっかくなので気になっていた事を確認していきますか」



リーズ視点

クロが見えなくなった頃にカグヤに気になって尋ねてみた

「ねえ、カグヤ。どうしてクロを一人にしたの?」

「あの見た目でも男子だから、私が少し落ち着かなかったのよ。それに多分向こうも同じだろうし、やりたいこともあるでしょうし」

「やりたいこと???」

「ここに来る途中に言っていたでしょう?実際の動きの感覚やスキルのチェックをしたいって」

「ええ」

「横でされるとリーズがうるさいから遠くへ行ってもらったの」

「私うるさくなんてしないわよー」

「どうかしらね?」

楽しそうに返してくるカグヤ。

私は、クロの事を何も考えていなかったんだと今更思いながらカグヤを見る。

「ん?どうしたの?」

自分の考えを見透かされているみたいで恥ずかしいので

「カグヤ、急にクロに優しくなったなーっと思って。何かあった?」

「ええ」

「えっ!!!」

「あなたのお守りをする大変さを常に分かち合っているわ」

「カ、カグヤー!!!!」

彼女は見透かしていると言わん笑顔でからかい返してきた。



「ふぅ、こんなものね」

「あー、疲れた。採取できる場所と場所が遠いから大変よね」

「お昼にしましょう」

「オォーーン」

「またウルフの遠吠えね。今日はやけに多くない、カグヤ?」

「そうね。いつもはほとんど聞こえないものね」

「クロ、大丈夫かしら」

「あなたとは違って無茶はしないと思うけど、遠吠えの方、行ってみる?」

「ええ、剣の確認もしたいしね」

クロとカグヤがくれた装飾品(指輪)でどれくらい剣が使いやすくなったかきになるしね。


遠吠えの聞こえる方に2人で走っていく。

声の方へ走っていくと真っ平な平原にいくつかの塊が見え始めた。

塊はウルフの死体だった。全て首と胴が切り離され首があった方を下向きに赤い氷で突き刺されている。

「赤い、氷?」

「誰が、こんな・・・」

それは、初めて見る光景だった。普通、群れで襲ってきたウルフに対処したなら死体はそのまま打ち捨ててあるはず、なのにコレは全て下向きにくし刺しにされている。

いつの間にかウルフの遠吠えも聞こえなくなっている。

2人とも戦闘態勢で辺りを見渡すと見知った姿を見つけた。

ウルフの死体に囲まれながら立っていたのは自分の使い魔(クロ)だった。



クロ視点

ふぅ、ようやく片付きました。

たまたまアルミラージ(ウサギ)を見つけて討伐。

スキルで保存方法を調べると血抜き(?)というのをした方が良いです。

お肉と角が買い取り対象になっていたので処理をしていると血の匂いに釣られたのかウルフがやってきました。当然、襲ってきますので対処していると次から次へとやってきます。全て倒し終えたときには辺り一面ウルフの死体だらけでした。

ウルフの素材採取もクエストボードにありましたし、回収しておきましょう。

幸い、大きなダメージもなく戦闘のデータを取ることが出来ました。

回復魔法も、錬金術による武器の補修もバッチリです。

片っ端から逆さに立てていきます。周りに木も何もないので魔物の血で杭を作り、そこに刺していきます。

刺す作業が終わった頃に、お嬢様がコチラにこられました。

しまった、そんなに時間がたっていたのでしょうか。


「クロ、大丈夫?」

「はい、リーズお嬢様。どこも怪我していませんよ?」

「周り見るととても大丈夫見えないのだけれど?」

「すいません、カグヤお嬢様。アルミラージを倒してその血の匂いにウルフが釣られたみたいです。逃げ切ることもできなさそうなので必死で抵抗していたら」

「このありさまね」

「はい・・・。」

「まあ、クロが無事でよかったわ」

「そうね。初めての採取で使い魔が死ぬなんて目も当てられないものね。それで、この状況は何なの?」

お嬢様方は周りを気味悪そうに見渡します。

「これは血抜きといって肉の臭みを取る方法らしいです。本当は塩水に漬けるそうなのですが」

「そうね、塩なんて貴重な物、おいそれと使えないわね」


あ、いえ、これだけの量を漬けるのがメンドウというのは言わない方が良いのでしょうね。

「それで、これだけのウルフをどうするのかしら?」

「持てるだけ持ち運んで冒険者ギルドか寮の納品ボックスに押し込もうかと」

「「・・・」」

「どうされました?」

「どうって、どうやってこの量を持って帰るのよ!」

「え?アイテムボックスには入らないのですか?」

「こんなにたくさんのウルフの死体とか入れたくないわよ!臭いでしょ!!」

「ボックス内は匂いが移ったりするのですか?」

「しないけど、気分の問題よ!!」

「それ以前に私たちのアイテムボックスではこんなに入らないわ。1人せいぜい10匹よ」

なるほど、アイテムボックスの許容量の問題がありますか。

装備もですが、アイテムの所持可能数も増やす必要がありますね。


「それにしても、本当に無傷ね。まさかすべての攻撃をかわしたの?」

「それ、どんな化け物ですかカグヤお嬢様。討伐が終わった後に傷はヒールでナイフと服は錬金術で修理しただけですよ?」

「何それ?」

「と、言われましても・・・」

「さすがクロね!私の要望通りね!」

「要望通り?」

「スキルを選ぶ時に私の補助を優先してもらったからね。これで外で装備が壊れてもすぐに直してもらえるわ!」

「そうかもしれないけれど、納得がいかないわね」

「他の錬金術師の方はこういったことはされないのですか?」

「錬金術師はアイテムを作るのがメインだから外には出ないわ。それに作れるといっても本職の鍛冶師や調薬師には適わないから本当に補佐的に作るだけね」

「そうですか、勿体ないですね」

「いえ、そういう事ではないのだけれど・・・」


お嬢様方とお話していると索敵スキルに反応がありました。

「お嬢様、誰かは分かりませんが2名ほどコチラに接近してきます。」

「何も見えないけど、分かるの?」

「はい、別れてからの実験で色々拡張できましたので。それで、どうされます?」

「この状況を説明する?」

「信じてもらえないでしょ」


などとどうするか相談していると鎧を着た2人組がやってきた。

1人はガッチリとした鎧を着こみ、もう一人は軽めの軽装の鎧を着ています。

2人は私たちの前まで来ると冑を取って話掛けてきました。

「俺はコスカート王国の騎士団のヤニツェク・レメントギターという」

「私はコリーン・ラーセイよ」

ヤニツェク様は精悍な顔つきで如何にも騎士といった感じの方で、コリーン様も落ち着いた雰囲気で頼れる副官といった感じがします。

「単刀直入に聞くと、これは君たちがやったのか?」

「そうよ、クロが全モガモガ・・・」

リーズお嬢様がお話しするとややこしくなりそうなのでお口にチャックです。

その意図をくみ取ってくれたカグヤお嬢様が説明を引き継いでくれます。

「はい、運悪くウルフに囲まれてしまって、ようやく切り抜けたところです」

「そのわりには怪我も装備の破損も見受けられないが?」

疑いの目でコチラを見るヤニツェク様。まあ、当然ですね。私たちの様な小娘がこれだけの数のウルフに囲まれて無傷なのですから

「今、ちょうど回復と着替えを終えたところです」

「ならばその服を見せてみろ」

ヤバいです。明らかに疑っています。何とかここを切り抜ける方法は・・・


ボコン!

「何をする!コリーン!!」

コリーン様がヤニツェク様の頭を殴ったようです。

「何をするではない!女性の服を見せてみろだと?変態か!キサマ!!」

「いや、こんな小娘がこれだけのウルフを討伐したのが信じられなくてだな・・・」

「それは私もだが、被害が出ていないのだからいいだろう?そうでなくてもお前は顔が威圧的なのだからこの娘たちが怯えているではないか。そういうことは同業者だけにしろ」

「この顔は生まれつきだ」

「それでもだ、全く」

どうやらお二人とも怖い人ではないようです。

「それで、この状況(ウルフ)の説明をしてもらえるか?」

そう言って突き刺されたウルフを見渡すコリーン様。

ヤニツェク様はコリーン様の尻に敷かれているようで、無言です。

「血抜きを行っています。後で持てる分だけ冒険者に納品しようと思いまして」

ここは何とか口八丁で誤魔化しましょう。 無理かな?

「ほう、しかし君たちのアイテムボックスに全部入るのか?見たところかなりの数だが」

「はい、無理なのでこれから冒険者ギルドへ行って回収をお願いしようと思っていました」

「これだけの数だと依頼の出費の方が高いぞ?」

「そうですけど、このままにもできませんし」

淡々と質問するコリーン様と苦笑いで答えることしかできない私たち。

・・・・

・・・

・・


「コリーン、もういいだろう。最近、ウルフの被害が増えていると報告があって近々討伐に出る予定だったんだ。それをこの娘たちが代わりにやってくれたそれでいいだろう」

以外に優しいことを言ってくれるヤニツェク様。

「だがどう報告する?」

「それこそ俺たちが奮戦していたこの娘たちを助けたと言えばいい。でだ、このウルフはどうしたいんだ?」

「できれば全てギルドで換金したいです」

「正直だな」

「お嬢様方は駆け出しなので」

「学園の生徒か、まあいい。運ぶのを手伝ってやろう。コリーン、アイテムボックスに空きはあるな?」

「いいのですか?」

「メンドウな仕事が減ったからな。ま、俺からの報酬だ」

「ありがとうございます」


ウルフをすべて回収してギルドで納品するとき、量が量なので周りから注目されましたが騎士のお二人の仕事だどいうことで特に問題なく換金もできました。

「「「今日はありがとうございました」」」

「なに、気にすることはないさ。誰がやったかは知らないが優秀な騎士が育ちそうだ。期待しているよ」

そう言ってお二人は去っていきました。

私たちもそのまま寮に帰ることにしました。

こんなイベントは予想していませんでしたしね。

精神がヘトヘトです。

リーズお嬢様だけは武器の試し切りが出来なかったと愚痴をこぼしておられました。

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