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ファミリアエッセンス  作者: 玄亀
16/211

16ページ目 学園長が紛れ込んでいたようです

「ところで、寮長様」

「なんや、うちのことはお嬢様って呼んでくれへんのか?」

「すいません、まだお名前を聞いていませんでしたので」

「ああ!そうか。いやー、リーズが普通に話してるから言うたもんやと思とったわ。

うちはメイサライネ・デスプリス。呼ぶ時はメイサでええよ。布系のアイテムの生産職や、ついでにこの寮の寮長もやっとるから分からん事あったら何でも聞き。」

そう言ってカラカラと笑う。

「それではメイサお嬢様。この寮にはちゃんとしたお手伝い(メイド)は居ないのですか?」


これだけ大きな学園で、お嬢様たちが集まっているのに、そこにメイドが居ないはずが無いのです。

仮に居ないとしても何か理由があるはずです。

そう、学園の方針でメイドは付けないとかそんな感じの理由が。

質問をして周りを見渡すとメイサお嬢様だけでなく、リーズお嬢様や他のお嬢様も皆一様に下を向いて暗い沈黙を告げる。え?何ですか?何かとんでもない理由がるのですか。

そして、オロオロしている私にリーズお嬢様が

「クロ、騎士というものは実力社会なのよ。」

「はぁ」

魔物(デモン)を倒してお金を稼げなければあっという間に貧乏になるの」

「世知辛いですね」

大雑把に言うなら漁師みたいなものでしょうか?

たくさんの魔物を倒したときはかなりの収入があり、無ければ無い。

「という事は、メイドさんも自分たちでお金を貯めて雇わないといけないのですか?」

学生の女の子にそれはキツイでしょう。

魔物を安定して倒すのも、メイドさんを雇う交渉も


「いいえ、メイドは学園が閣僚に配置してくれるわ」

「でも、今居ないですよね?」

「この学園には特徴的なルールがあるの。【学園は一定以上のサポートはしない、足りない場合は自分たちで解決すること】ってルールが」

「? それならご実家から来てもらえば」

「自立を促す為に家族からの支援は殆ど禁止されているわ」

「・・・・」

「そして、いくら騎士を目指しているとはいえ今まで優雅な生活をしていた私たちが急に自立できると思う?」

ああ、なるほど。生徒の需要にメイドの供給が追い付いていないのですね。そして、学園は一定以上のサポートをしない。つまり・・・

「学生同士のメイド(労働力)を賭けた決闘が頻発してメイドの奪い合いが常時起こっているの」

「それならメイドさんの居る寮へ入れば」

「入る寮は学園側が決めて、余程のことがないと変更はできないわ。」

「つまり、お嬢様方はその決闘に負けて現在メイドさんが居ない状態にあると。そして、スキルでメイドさんが出来る私は多少の問題があっても手元に置くべきという判断になったと?」

「まあ、そういうこっちゃ。決闘言うだけあって戦闘系の勝負しかないから戦闘系の寮生がおらんとすぐに絞られるんよ。まあ、年度初めには再配置されるからずっとおらへんっていうわけでもなんやけどね」

「なら、私が来る前はどうやって生活していたのですか?」

「ちょうど学期末に負けて最後のメイドがおらんようになったところで長期休みに入ったからなぁ、皆で休み終わってから考えようって腹やったんやけど、帰って来たら取られる心配のないメイドが居てるやん?リーズ、ほんまええ仕事したで」

ニッコリ。

笑う他のお嬢様方・・・。


ダメだコイツら・・・・。何とかする気0だ。

「っちゅうわけで、よろしく頼むな」

「ちゃんと手伝ってくださいね?」

ジト目で睨むもどこ吹く風のメイサお嬢様。

異世界まで来てハウスキーパーですか・・・・


「コホン、では次に・・・」

「まだあるん!?」

「まだって、まだ1つしか聞いていません。現状不安に思っていることはすべて答えていただきます」

「そんなメンドウはリーズに任せるわ!」

「ではメイサお嬢様はご飯抜きということで」

「何でも聞いてや!!」


現金なお嬢様ですが、どこか憎めませんね。

他のお嬢様方も批判無く付いてきておられるようですし、人を引き付ける才能は強いようです。

まあ、メイサお嬢様が意見が出る前に勢いで通しているだけかもしれませんが。


「先ほどおっしゃっていた部屋の拡張というのはどういう事なんですか?」

「ああ、実はこの寮自体がマジックアイテムで拡張、改装が自由なんよ。新しい寮生が決まって空き部屋が無かったら新しい部屋を拡張するって具合や」

「いくらでも拡張できるんですか?」

「そうや。聞いた話では一人で10部屋持ってた生徒がいたとか・・・。まあ、2人1部屋からの拡張になるんやけどな」

「その2人1部屋に意味は?拡張できるなら関係ない気がするのですが」

「騎士かて常にソロやないからその練習らしいで。ついでいうと拡張にはかなりのポイントがかかるからよっぽどやないと2人1部屋のままや。10部屋持っとったいう生徒がどんだけ異常かようわかるやろ?」


確かに、パーティーを組むこともあるでしょうから集団行動になれる意味では相部屋はいいのでしょう。


「まあ、基本は2人で協力して何か追加するか、寮全体で協力して改装するかが主流やね」

「ちなみに、新しい部屋の追加は・・・・」

「1年くらいみっちり稼げばイケるんちゃう?」

「えっとそのポイントというのはどうやって稼げば・・・」

「各部屋にアイテム納品用のBOXがあるからそこに放り込めばええ。どんなアイテムでもソレに見合ったポイントがもらえる。けど、返品はないから気ーつけや?ウチも前にようやく手に入れたアイテムを間違えてボックスに入れてもうて泣きはらしたことあるから、ホンマ、気ーつけや。」

「はい・・・。」

間違えてレアアイテム売却・・・。笑えないですね。ガクブルです。


「部屋のポイント確認と改装・改築ははボックスに備え付けの魔導書で出来るから」

「それだと1人だけ頑張ってもう1人は楽して改装できそうなんですけど」

「出来るけど、そんなことしようと思うか?卒業するまでずっと一緒の部屋ねんで?」

「さすがにそれは・・・」

「ま、ウチは使わしてもらうけどなー」


最もな事を言っておいて自分はしちゃってるんですか?

この人フリーダムだ・・・。

ふと顔上げると、あきらめたような笑顔のお嬢様が1人いらっしゃいました。

ああ、あのお嬢様は同室なのでしょう、ご愁傷様。


「改築方法は分かりました。とりあえず、レアアイテムをドンドン放り込めばいいんですね」

「身も蓋も無い言い方をすればそうや」


「では次は寮ではなく学園についてなんですけどこのメイド服って学園で使われているのと同じ服ではありませんよね?」

「何や?同じ服の方が良かったんか?すぐに出せるで?」

「いえ、同じ服だと絶対に面倒事に巻き込まれますので、リーズお嬢様の使い魔(メイド)として居るだけでも問題が起こると思っているのに学園のメイドさんと同じ服とかもう、問題を起こしたくて着ているとしか」

「ああ、それらな問題無いで、ウチオリジナルのメイド服やから。まあ、でもそうやなぁ、確かにメイドの格好しとる奴が傍におったら注目の的やなぁ、ましてやあのリーズやからなぁ・・・」


「それはどういうことですか?」

「それはリーズ本人に聞き、ウチらが言う事ちゃうわ。んー、学園長に報告に行って便宜を図ってもらうしかないいんちゃう?まあ、あかんかったら寮の管理頼むだけやし?」

「学園長ですか、そんなに簡単にお会いできる方なんですか?学園長ともなればお忙しそうですし、会っていただけるまでに時間がかかりそうなのですが・・・」


「問題ない。明日中には全教員に通達しておこう。ズズ」

「そうですか、それはありがとうございます。面倒そうな問題が早期に解決できて一安心です」

「何、学園を運営するものとしては当然だ」

「ああ、理解ある方が学園長で本当に助かります。あ、お茶のお替りいかかですか?」

「うむ、いただこう」


淡々と話しながらお茶のお替りを注いでいく。


「学園長!いつからそこに???」

周りのお嬢様は学園長に気づいて慌てだす、ファンタジー世界の学園長が神出鬼没なのも、ロリなのも私には珍しくないので特に気にせずお茶を出す。


「しかし君は驚かないのだな?私がここに居ることに」

「まあ、こういう(ファンタジー)世界で学園長や国王様が自由人というのはよくありますので」

「そうか、ベタな反応もつまらないが、こう、完全にスルーされるというのも応えるな、というかフリーダムな国王は問題ではないか?」

「あくまでお話の中だけなので、実際はストレスが胃がやられるの方が多いかと。後、私としては登場に驚くかこの小さな女の子は誰の妹さんですかと聞くくらいしか思いつきませんがやり直さ(登場し直さ)れますか?」

「いや、やめておこう」

「あの、学」

話し出したリーズお嬢様の口を素早くふさぐ。

問題が解決した以上、変に発言して面倒事を増やしたくありません。


「君は本当に昨日今日この世界に来たばかりなのかい?対応がやけに早いように見えるのだが?」

私のいた世界(日本)の物語ではよくあることなので」

「では、君の今の真意を聞こうじゃあないか。」

「学園長からのイベント(面倒事)は勘弁してください。少なくとも私がここの生活に慣れるまでは」

「ほう、だが周りは待ってはくれないぞ?」

「ですから待っていただきたいのです。少なくとも登校初日からイベント盛りだくさんだと思うので」

「ハッハッハ、それも想定済みという事か。だが良いのかい?今聞いておかないと後悔するかもしれないよ?」

「すみません、こう見えてもいっぱいいっぱいなもので」

「そうか、ならば今日はこのまま失礼するとしよう」


学園長はそう言って寮から去ろうとする。

出口に歩きながら学園長の姿が変化する幼女から少女、大人の女性へと。

「あ、そうそう。私はカリン・ビアード・セルグリンド。悪いが気様如きに図られるほど甘くは無いぞ、お嬢ちゃん?」

そう言って学園長はまだ姿を次々に変えながらも今度こそ寮から去っていった。


「ねえ、クロ図るって何の事?」

「さあ?何の事でしょう?私の学園長に対する反応の事でしょうか?」

恐らく私が掛けたアナライズ(解析)の事でしょうねぇ。

ステータスが常時変化とかどんなユニークスキルでしょうか?

あれは人の姿をした化け物ですね。敵に回したくないものです。




自室へ帰る途中、カリンは何とも言えない気持ち、というか不機嫌だった。

昨日の夕方、いけ好かない新官長(エリザベッタ)から報告があった。

面白い使い魔がこの世界に紛れ込んだと。

何千の使い魔を見てきた自分にも判別がつかない存在だと。

試しに接触はしてみたがはっきり言って期待外れだった。一応、私に解析系のスキルは掛けたようだが結局、何も分からなかったようだし、逆に私が解析を掛けた事にも気が付いた様子は無かった。

期待していた分、落胆も大きかった。

久しぶりに世界が面白く動くと思っていたのに、現れたのはただ少し場慣れ(?)した小娘だった。

楽しめないのなら、私の駒として活用する方法を考えよう。そう思いながら歩いていく



カリンは帰路について行く小娘(クロ)が何も本当の情報を出していないことに気づかずに。

既に監視(マーク)されていたことに気づかずに。


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