106ページ目 観光クエスト。でっかけっるよー
ルビアさんとの戦いの打ち上げ?が終わった翌日学園へ行くとそこには人だかりに埋もれているココット様たちが居ました。
どうしたのと声をかけようとするティファ様を私は制します。
声をかけた瞬間あの団体様は此方にもやって来るのです、ココは涙をのんでスルーした方がいいのです!
「ちょっと!シャル!助けなさいよ!!!」
どうやらあの人ごみの中から私達を見つけてシャル様を呼び止めたようです。
「ねえシャル!ココットたちが食べったていう料理はもう無いの!?」
「信じられないくらい甘くて美味しかったって言っているわ!」
この世界には甘味は少ないですからね、その甘味を食べられるという事はステータスというか羨望の的なのでしょう。
そんな考察はさておき、シャル様に迫っている女生徒の皆さん。
王女にその行為は普通に不敬罪ですからね?
シャル様が王女扱いを嫌っているのは知っていますが今の迫り方は普通の方相手でも脅迫罪になりかねませんよ?
その圧力は相当なものらしくシャル様も顔をコチラに向けて助けを求めてきます。
そして同時に他の女生徒も私の方を見ます。
その向けられた目からは狂気を感じ、私は咄嗟にルビアさんを前に差し出します。
「「「!?」」」
瞬間、女生徒たちの勢いが弱まります。
「何を騒いでいるかと思えば・・・。アレは私に怯えることなく立ち向かった者たちへの褒美として供されたものだ、何もしていない者が何も得ることが出来ないというのは当然でしょう?」
女生徒たちは「うぅ・・・」と黙り込んでしまいましたね。
そのまんまですしね、しょうがないね。
「でもココットたちは」
「この者らもしっかりと抵抗の意を示していたわ。外野で震えているだけということはなかったわ。それに誰に褒美を出すかという事はクロードだったか?まあ、この国の王が決めた事。それに口を出すという事は王に文句があるという事だけれど、良いのかしら?」
わーい!ルビア様、マジカッケェェェェ!
私では出来ないことをバッサリ言ってくれました。
「まあ、どうしても言うのなら功績を上げることね。そうすれば何かお願いを聞いてもらえるかもしれないわよ?」
ルビアさんのこの意見で皆さん渋々引き下がっていきます。
「助けてくれてありがとう。でも!何でルビアさんがココにいるのよ!?」
助けてもらったココット様のお礼と疑問の大声で再び私達に視線が集まります。
「何でも何も使い魔がマスターの傍に侍るのは当然でしょ?」
「貴女、最強クラスの竜ですよね!?そんなの侍らせて何処かに戦争でも吹っかけるつもりですか!?」
おっとコレは私にでしょうね、ならばお答えしなくては・・・
「フン、戦争を吹っかける?何を言っているの?そちらが吹っかけてくるなら相手になるわ。この大陸の国を全て蹂躙するのにそんなに時間はかからないもの」
ちょっと、待ってくださいルビアさん。
戦争前提で話を進めないで下い!
私はそんな物騒な事をするつもりは微塵もありませんよ?
サンドバッグになるつもりはありませんが、少なくとも自分から事を起こすつもりはありません。
「気にしないで、ココット。ルビアを侍らせているのは示威行為みたいなものだから」
さすがリーズお嬢様、私の考えをよく理解していらっしゃる。
しかし問題が、ルビアさん実は竜の状態ですらそんなに知られておりませんでした。
つまり、名前だけは有名ですがどんな姿なのかが知られていない為に街中を人の姿で歩いても誰も反応してくれないという事態が発生し、昨日コッソリ落胆されていたのは私だけの秘密です。
本当なの?と聞きたげなココット様の視線にコクリと頷く私。
示威行為といううよりは肉壁としての意味合いが強いですかね?
竜(生きたほぼ最強)の盾!きっと世界最高の肉壁ですよ!!!
自己判断で防御・反撃・迎撃!やあ、やる事が無くなりますね。
人ごみも無くなりココット様達と談笑していると勇者が声をかけてきました。
「皆、学園長が呼んでいるから学園長室まで来てくれ」
学園長が私達に?何でしょう、訓練場をかなり破壊したことは不問と言っていただいているのですが・・・
学園長室、中で椅子に座っているのは髪を短く切りそろえて未だ衰えを感じさせない威圧感を放つ初老の男性です。
「やあ、すまないな君たち。呼び出してしまって」
「いえ、それでどのような御用でしょうか?学園長先生」
「うむ。シャンタル君、実はここにいる皆に1つクエストをお願いしたい。なに簡単なクエストだ」
そう言って差し出されたクエスト洋紙を確認されるシャル様。
少し怪訝そうな顔をされて学園長に聞き返されます。
「このクエストにこの人数は必要ないと思いますが?これでは・・・」
「恐らく、君の思っている通りだよ。ハッキリ言えば、コレは君たちへの報酬だ。ルビア・ジェノ・バハムートを降した君たちに陛下は礼を与えた。我々が何もしないわけにはいかない」
「それで、この簡単かつ高報酬のクエストですか?」
「ああ。それにコスカートの方々に観光に行ってもらうのにこのクエストは非常に都合がいい」
要するに国がお礼をしているのに自分たちがしないわけにはいかず、更に国賓であるティファ様達は観光もしたいと言っているのでそれを一気に満たせるクエストを用意して下さったという事らしい。
参加するのは聖さん以外の王城へ呼ばれたメンバー。
当然不参加は認められていません。
「分かりました。お引き受けします」
「おお!ありがとう。君たちが断ったらどうしようかと昨日の夜は眠れなかったよ」
そんな軽口をたたきながら学園長は微笑んでいました。
「出発は明日の朝だ。大丈夫だとは思うけれど、遅れないように」
教室に戻って部屋の隅っこで固まります。
「なあ、今日のクエストどうする?」
「豪、何を言っているの?明日から長期クエストよ、明日の準備をするに決まっているでしょ?」
「といっても俺はそんなに持って行くもの無いぜ?」
「学園長先生も行ってらっしゃったけど、ボーナスクエストだしそんなに気を張らなくていいかもだけど、最低限の戦闘と食べ物の準備はしてきてよね?前みたいに着替えが無いとか本当に勘弁してよ?」
「う、分かったよ・・・」
どうやらこの勇者、以前の長期クエストで着替えや食料を持ち込まなかったようですね。
1日で次の街の宿へ着けるならまだましですが、数日荷物と一緒に野宿では着替えは必須項目ですからね、女性は特に・・・。
「シャル、貴女達は大丈夫なの?」
「ええ。制服を数着持ってきているし、クロやコーラルが居れば洗濯も食事も問題無いわ」
「・・・何だか違う気もするけれど、問題無いならいいわ」
ええ、違いますね。
こういう場合は自分たちでそう言った身の回りの事も行うのが普通です。
甘やかしすぎですかね?
食料はしっかりと買い込んでいきましょうか、商人さんの馬車で大勢の方と一緒に移動と聞いていますがないよりはあった方が良いでしょう。
どうせアイテムボックスに入れるのでかさばりませんし。
そんな訳で、座学の授業は出席して後半の自由クエストの授業は準備に当てることにしました。
私達は街へ出て必要な物を買い足していきます。
保存のきく食べ物を多数買い込んでおきましょう。
後は調味料と、食器と調理器具も多少スペアがあった方がいいですね。
うん、結果を見ると手持ちだと移動不可能なくらい買い込みました。
必要な物を厳選できていません、これではダメだと分っているのですが持てるとどうしても持ってしまいますね。
買った端からアイテムボックスへシュート!
実は高収納のアイテムボックス、非常に高価らしくお金持ちの商人さんとかお貴族様とかしか持てないようです。
私は権力者の方としっかりとしたパイプを持っていますので問題無かったわけですね!
なお、これから私はお城へ帰って日持ちする料理やらお菓子やらを作らなければなりません。
誰の要望かって?モチロン皆さんのですよ。
気分は完全に観光、一応書類上は警護のお手伝いですよ?あまりダレきってはいけませんよ?
ルンルン気分のリーズお嬢様達。
コレは途中で訓練を挟んであげないといけないでしょうか?
翌日、集合場所へ皆さんと一緒に行くとそこには既に1人の商人の男性と4人の女性冒険者がおられました。
「申し訳ありません、来るのが遅れましたか?」
「いえいえ、私が個人的に市を見て回りたかっただけだから気にしないでくれ。彼女たちは私の護衛を何時もお願いしている学園の卒業生だ」
「「「よろしくお願いします」」」
「「「よろしく」」」
この後数名の一般の移動客と同業の方を待って街を出発しました。
面倒なイベントが起きなければいいなと思いながら私たちの観光クエストは開始したのです。
~王城、謁見の間~
「良かったのですか陛下?あのようなクエストに参加させてしまって」
「あのようなとはどのようなモノだ?学園長」
「惚けないでください、あの馬車の護衛のクエスト。アレは最近話題になっている【勇者狩り】の出る地域です」
「おお!そんな危険な所を通るのか。私は全く知らなかったぞ!」
「陛下・・・」
「なに、気にするな。あの【冥土】が上手くやってくれる」
「ですが、万が一にでもティファニール様に怪我でもあれば・・・」
「その事も踏まえて【冥土】には言ってある。フラグ乙とかよく分からんことは言われたが、拒否はしなかったのだ。どうにかするだろう。それよりも俺はあのメンツを相手にする【勇者狩り】に同情するが?」
「ですが、上級の勇者数名が返り討ちに会っています。足で・・・ご友人を連れた状態では不利かと」
「え?無理かな???」
「楽ではないでしょう。【冥土】の働きに期待ですね」
王と学園長はこれから起こるであろう事件に思いを馳せた。
ある情報部兵士視点
俺はジラール国の情報部の兵士だ。
俺たちの仕事は他国の情報を集めたり、機密になるような情報の受け渡しが主だ。
今回は優秀な奴ばかりが揃う情報部の中で俺に白羽の矢が立った。
仕事の内容はお使いだった。
手紙を届ける、最も楽な仕事の一つだ。
当然、手を抜くつもりは無い。どんな簡単な仕事であろうと完璧にこなしてみせる!
それに出発前の陛下の態度がとてもただのお使いの時のモノでは無かった。
よほど重要なことが記されているのだろう。
目立たないように普通の旅人を装いコスカートの城を目指す。
事前の準備もバッチリでまごつくことなく城に入り、コスカート国の王へ陛下からの手紙を渡す。
イヴァン陛下が手紙を読んでいる最中も御前でジッと待機する。この手の仕事にしては珍しくそのまま答えをもらって来るようにと仰せつかっている。
イヴァン陛下は少し顔を歪めた後、返事は明日手紙に書いて渡すので今日は城へ泊っていけとの事。
私のような身分の者には過ぎた申し出だが、こんな機会は滅多にないので甘んじて受けておこう。
数日後、私はイヴァン陛下から受け取った返事をクロード陛下にお渡しした。
早速、手紙の内容を確認される陛下だが、顔を曇らせて盛大にため息をつかれた。
当然ながら俺には内容は一切知らされていない。
陛下のあのお顔を見れば良くないことが書かれていたのは明確だ。
これは近々、我々が動くことになりそうだな・・・。
何事にも多少裏はあるのです。
偉い人からのお願い事にはきっとあるのです。
化かし合いが日常なのです。
さあ皆!クッションの準備は大丈夫か?
現在みたくコンクリの舗装された道ではなく街は石畳、街の外・村はデコボコのあぜ道だぞ?
馬車にはディスペンションも何もついてないぞ?
絶え間なく続く振動との戦いが今、幕を開ける!?




