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どうして私はこんな所にいるのだろう。
解っている、自分の理解の無さが原因。
多少なりとも頭が回ればこの状態も予想できたはず。
でも、あの時の私は私たちは興奮してそこまで考えが回らず、二つ返事でこのお誘いを了承してしまったの。
だって仕方がないじゃない?一般人の私達には王城に出入りできる機会なんてまずないもの。
王様直々のお呼び出しとか少しくらい・・・いいえ。
盛大に喜んでもいいと思うの。
最も今はあの時の自分を恨んでいるわ、だって周りが王族・王族・王族なんだもの。
理由もしっかりと聞いている。
先日のルビア・ジェノ・バハムート襲来の時に奮戦?したかららしい。
私達はただ豪を守る為に豪に近寄っただけ。
戦いは途中からメイドのクロさんが全て一人でこなした。
なので讃えられるのは彼女だと思うのだけれど、彼女からの進言で私たちもお呼ばれとなったらしい。
皆様どうも初めまして。
ココット・ディディです。
今を生き残ることに必死な少女です。
ちなみに豪は今、聖さんと話しているわ。
豪はともかく聖さんもあまり王族の方には近づきたくないようね。当然よね?
私達は狼と同じ檻に入れられた子羊の様に隅で集まっているの、防衛本能ね。
「あら?貴女たち、こんな所にいたのね?」
「あ、シャル!」
助かった!
シャルも王族(直系)だけれど、学園が同じだから他の方よりは接しやすい。
あまり仲良くはないけれど今の私達からすれば天使の様な存在ね。
他の2人もホッとした様な顔をしている。
「こんな所に居ないでもっと真ん中に来なさいよ!今回の主役でしょ?」
「「「!?」」」
私達(豪以外)に衝撃が走る!
「いや、我々はこの辺りでいいよ」
聖さんの言葉に全力で肯定する私達。
「なんだよ?折角なんだし、もっと中心へ行こうぜ?」
豪!?バカ言わないでよ!こんな魔窟に入れだなんて貴方の頭どうかしてるの???
「あ!いたいた。おーい」
そう言いながらやってきたのはシャルの友達にしてコスカート国の王女でもあるティファさん達だ。
ティファさんも王族だからなのか、この中でも普通に振舞っている。
周りのリーズさんたちも普通にしている。
「よお!シャル」
「あ、フェリックス。皆も!訓練とかはいいの?」
「ああ、今日はコッチに参加しろって言われてる」
「まあ、一応一緒に戦った仲だしね」
今、私達の周りには勇者様、王子の方々、他国の王族の方が集まっている。
当然、他の王族の方々の視線も集まるわけで、更にその中心が私たちな訳で・・・
むりだよ~。こんなのどうすればいいか分からないよ~。
「落ち着いなさい、誰も貴女達を取って食いはしないわよ」
「あ、ありがとうございま・・・」
お礼の途中で私は固まってしまった。
だって仕方がないでしょう?私のフォローをしてくれたのが、あのルビア・ジェノ・バハムートなんだもの。
固まる私達3人を他所にルビア・ジェノ・バハムートは話し始める。
「そんなに怯えなくても大丈夫よ、私は暴れたりしないわ。貴女達も見ていたでしょうけどあのメイドに使い魔にされちゃったからね?ちなみに今日の私のお仕事は貴女達の護衛よ。安心なさい?バカな人間は私が蹴散らしてあげるから」
伝説の竜が護衛なんて全く安心できない!
むしろ拷問でしかない!
知らない内に私たちは陛下に何かトンデモない不敬を働いてしまったのではないかしら?
「それと、これから私の事はルビアでいいわよ?フルネームは長いでしょう?」
「う、うん。よろしくね?ル・・・ルビアさん」
「ええ、よろしく。では、中心へ行きましょう?」
なんで皆そっちへ行きたがるの~?私たちは隅っこでいいよ~。
「わ、私たちはここでいいよ。私達みたいなのが目立っちゃ・・・」
「何故?貴女達はこの私を前にはっきりと抵抗の出来た人間よ?その辺でガクブルと増えていた子羊とは違うのよ?」
「私たちが?」
「そう、貴女達は戦う事こそできなかったけれど、私の前に立ち塞がった人間よ。しっかりと自信を持ちなさない?」
「じゃあ、ティファたちは?」
「あの娘達は、どちらかというと感覚がマヒしている感じね。貴女達もあのメイドの正体を知っているでしょ?」
「はい・・・」
「そんなのに鍛えられてたら嫌でも慣れるわよ。きっと・・・」
改めてティファさんの方を見ると人の姿をした【鎧】リッターも居た。
あれ?この場所に最強と言われた大陸魔王と最強の竜ルビア・ジェノ・バハムートとその2人を倒した【冥土】クロが居るの?
あ、何だか王族の方がどうこうとか考えるのがばからしくなってきた・・・。
感覚がマヒしてきたと言うべきかもしれない、この3人のうちの誰かが少し暴れるだけで確実にこの城は墜ちるのだから。
私達は何かを悟った様な顔で会場の中心の方へと連れて行かれたわ。
そして陛下から直々にお褒めの言葉を頂いたの!
その後陛下から
「心からは無理かもしれんが楽しんで行ってくれ」
そうお言葉をかけていただいた、陛下もこの状況が私たちにとって辛いものだと分ってくださっているようで、何よりです。
「では!例の物を頼む!」
陛下がそう言うとメイドさんがたくさんのカートに煌びやかな食べ物?をたくさん乗せて持ってきてくれて配膳していく。
そこから漂うのは甘くていい匂い。
街のお菓子屋さんでだってこんなに甘いくて美味しそうな匂いはしない。
「ゴホン。では、無事にルビア・ジェノ・バハムートを降した勇者たちに乾杯!
「「「乾杯!!!」」」
こうして食事会が始められた。
何と、どれをいくつ食べても良いらしい。
私ははしたないと思われなかったかと周りを見回したけれど、心配なかった。
周りの皆も同じ状態だったから。
手近にあった黄色いフワフワした物に白くて甘い何か包んで白い何かで飾りつけのしてある物を1ついただいた。
「美味しー!」
思わず大声が出てしまった。
でも誰も気にしない、その暇があれば他の物に手を伸ばす。
食べ物はたくさんあるからゆっくり食べると良いと言ってもらったけれど、無理!手が止まらない!
プルプルとした黄色と茶色のソースの食べ物も、木の切り株の様な模様の食べ物も、真ん中に穴の開いた不思議な食べ物も、その他のたくさんの食べ物もどれも美味しい!
「おい!コレ作ったの誰だよ!?」
私が感動している中、豪の声が響いた。
見れば豪は薄い黄金色の少しひしゃげたような物を持っている。
アレは美味しくなかったのだろうか?
少しの間気まずい感じになったけれど、皆目の前の料理の誘惑に勝てずそのまま食事を続けた。
「豪、どうしたの?美味しくなかったの?」
「いや、そうじゃない!そうじゃないんだ・・・」
何かを思い詰めたように言う豪とすぐ隣にいる聖さんの元にメイドさんが別の料理を持ってきた。
ご丁寧に蓋が付いていて中が見えない。
メイドが勇者様達用との事ですと蓋を開けると、ソコにはパン?の間にお肉と野菜が挟まれたモノが乗っている。
「ハンバーガー!!!」
まだ何台かカートがあり、全てに蓋がしてある。
「おい!こっちはラーメンだ!」
「これは?・・・おにぎり!」
そして豪は泣きながらその食べ物を食べ出した。
聖さんも少し泣きそうになりながら食べている。
「ねえ、豪。その料理、泣いちゃうくらい美味しいの?」
もしそうなら私も是非食べてみたい。
「いや、そうじゃない。本来の味よりは下だけど、コレは・・・俺たちの・・・故郷の味だ!」
!?
そうだった、まだ豪がココに来て1年もたっていないけれど豪は別の世界から呼ばれてきたのだった。
それは聖さんも同じ、故郷の味なんだ。
「どう?美味しい?」
離れたところからシャルがやってきた。
「ああ、故郷の味だ!でもどうやって?このスイーツもそうだけど、この世界にこんな料理は無いはずだ!」
「当然、貴方達と同郷の人間が作ったからよ」
「なに?俺たちの他にもいるのか地球の人間が!?」
何だか、入り込めない無いようになってきたわね・・・。
「勇者ギルドには居るんじゃないの?」
「ああ、だがここまでの料理の腕を持った地球出身者はいないな」
「そうなの、作ったのはクロよ。聖さんはコッチに呼ばれてから長いって聞いたわ。ま、クロの心使いってことじゃない?」
この料理を全部クロさんが!?
「どうですか?お口に会いましたか?」
のんびりとやって来るクロさん。
「クロさぁぁぁぁぁん!」
飛びついて行った豪はそのまま地面に打ち据えられた。
「クロちゃん、ありがとう。とっても美味しいよ」
「それは良かったです」
「でも、良かったの?私たちにだけ・・・」
少し周りに目をやると羨ましそうな眼がコチラを見ている。
ハッキリと言って怖い!
「大丈夫ですよ、お夕食にお作りしますから。皆さんも気にせず食べて下さいね」
それからお開きになるまで私たちは談笑しながら色々な料理を食べた。
豪が言うにはこういう甘い料理をスイーツを言うらしい、意味は『甘い菓子』。
そのまんまだけれど納得ね。
この素晴らしい時間は直ぐに過ぎて行った。
結果
もう、無理・・・。動けない・・・。
食べ過ぎた。
あんなに美味しいのだから仕方がない。
周りの人たちも大体が同じ感じで食べ過ぎに苦しんでいる。
唯一違ったのがルビアさん。
「お腹3分目といったところね。でもすごく美味しかったわ!こんなのを味わったら今までの食事では満足できないわ!」
確かに、今までの食事では満足できなくなってしまいそう。
お家に帰ってご飯食べられるかしら?絶対に今日の料理と比べてしまう自信があるわ!
「っと皆さん大丈夫ですか?」
休んでいると片付けを手伝い終えたクロさんがやってきた。
「なんとか~」
私達はそういうのが精一杯だった。
食後のお茶も出してもらい、何とか落ち着いてきている。
「そう言えば、お三方は何人家族ですか?」
「え?えっとね・・・」
家族の人数を告げるとクロさんはアイテムボックスから箱と筒を取り出した。
「お土産です。中身は先ほど食べたケーキと紅茶ですので家族の皆さんでお食べ下さい」
私達はその箱をひったくる様に受け取ってアイテムボックスにしまった。
大変に失礼なのは重々承知している、しかしこの中にあのケーキが入っているとなると我慢できなかった。
お父さんとお母さんは心配しているだろうから、このケーキで許してもらおう。
「生ものですので3日・・・いえ2日以内に食べて下さいね」
大丈夫、このケーキなら今晩直ぐに消えるから!
それから私たちは体が動くようになるまで談笑した。
クロさんは夕食の準備という事で直ぐにいなくなってしまったけれど、他の皆とはグッと仲良くなれた気がする。
王子様達も話してみれば私達とほとんど変わりなかった。
日が暮れるころに私たちは帰路に就いた。
「ただいまー!」
「お帰り!ココット。大丈夫だった?失礼は無かった?」
「おお!無事だったかココット!」
「「お姉ちゃん、おかえり!」」
帰った私を家族は暖かく迎えてくれた。
感じを見るにとても心配してくれたようだ。
「さあ、ご飯よ」
私は食卓に着く、さっきまで食べていたばかりだからいつもの食事の量だと(もらったケーキを)食べられるだろうか?
出てきた夕食は白パンにお肉の入ったスープ、玉子を使ったサラダ、そしてメインにお魚。
「お母さん・・・」
「何?」
「無理・・・してない?」
「!? 娘がお城にお呼ばれしたんだから、これくらいわね?まあ、お城の料理には適わないだろうけどさ!」
うん、大丈夫。お城の料理もきっと今日出た料理には適わないから。
感謝をしながらお母さんが作ってくれた夕食を食べる。
今日出てきた料理には全然及ばないかもだけれど、凄く美味しかった。
皆食事が終わったので部屋から出ようとするのを強引に止める。
「皆待って!実は今日、お城から帰る時にお土産をもらったの」
「何だって!?おい、。どうする?何をどうお返ししたらいいんだ?」
お父さんが急に狼狽えだした。
「私だって分かんないよ」
お母さんも同じだ。
「あ、えっとコレは急に私を呼び出した謝礼だって。それでもっていうのなら今まで以上に体に気を付けて仕事を頑張ってだって」
シャルに教えてもらったもしもの時の言い訳、しっかり役に立ってよかった。
ケーキを箱から出してお母さんに切り分けてもらう。
当然、日持ちしないことも伝えてある、遅くとも明日には消える。
お父さん、お母さん、私には紅茶を、弟妹には家にあったミルクをついであげる。
弟妹は文句を言ったが紅茶を一口飲んで直ぐにミルクにした。
切り分けられたケーキが私たちの前に置かれる。
大きい・・・、お城で食べた物より幅が2.5倍くらいはある。
よく考えればお城で出された物はよりたくさんの種類が食べられるようにワザと薄く切られていたのね。
それによく見るとお城の時よりも豪華ね!
ケーキのスポンジ(というらしい)部分には果物が入っていて上面と側面にはクリーム(というらしい)で綺麗に飾り付けてあり、更に上面に赤い果物がこれでもかと存在を主張している。
「それじゃあ、食べましょう?」
しかしお父さんもお母さんも食べようとしない。
なので弟妹も食べようとしない。
「どうしたの?」
「こんな凄い料理、食べても問題無いの?後でお金を払えとか言われない?」
「ああ、こんな凄い料理何処に行っても出してないぞ?」
確かに出してないわね、クロさんオリジナルだって言ってたし・・・。
「お、お父さん、お母さん。食べよ?明日学園でシャル様に『昨日のケーキ美味しかった?』って聞かれたら私何て答えればいいの?」
「あ、ああ。そうだな。よし、食うぞ!」
振るえる手でフォークを持って角を切り落とし口へ運ぶ・・・。
「美味い!!!!」
その言葉を皮切りに皆急いでケーキを食べ出す。
私も自分の分のケーキをペロリと平らげる。
ああ、幸せ。
「しかし、陛下も太っ腹だね?私達にこんなに美味しいものまで下賜してくださって」
「ああ、そうだな!よし、俺も明日からは更に仕事に精を出さないとな!」
「ええ・・・そうね」
本当はクロさんが善意でくれた何て言えない。
「お姉ちゃん、コレもう無いの?」
「もっと食べたいよ!」
「ごめんね?でももう無いの」
「「は~い」」
聞き分けの良い弟妹はそう言うと部屋へ帰っていった。
私も明日から頑張ろう!
こうしてジラールも少しずつではあるが着々と侵食されていくのであった。




