103ページ目 紅蓮の竜姫3
ルビア視点
「さて、決着を付けましょう!」
目の前のメイドは偉そうにそんなことを嘯く。
それは強者である私のセリフであり、死にかけのメイドのセリフではない。
しかし決着を付けるという事には賛成だ、今日は少し遊び過ぎた。
あまり遊びすぎると他の勇者は際限なく現れるようになり非常に厄介なのだ!
今日は十分に楽しめたと自然と笑みも零れた。
魔族を自分の装備とする戦い方には驚いたが、それだけだ。
いかに大陸魔王【鎧】リッターを剣として扱おうが私に完全なダメージは与えられなかったのだから。
メイドが剣に添えていた手を滑らせる。
それを追うように文字が浮かび上がるがあれは・・・?
メイドが再び剣を構えた時には剣から感じる威圧感は今までの比では無かった。
あれ?もしかしてあの術式は陣術かしら?
今ではエルフの村にしか存在しない忘れられた魔法。
遺物もいいレベルの技術なのだけれど、その効果は現在の魔法の比ではないのである。
廃れた理由は陣を描くリスクが大きすぎるからという理由のみ。
実際に大昔のエルフたちはこのスキルで同胞を数多く屠っている。
しかしそんな強敵は祖先が徹底して叩き潰した、今では精々耐久強化で家屋の補強くらいにしか使われていないだろうと思っていたけれど、まさか戦闘で使用可能なほど使い込んでいる人間がいるとは驚いた。
コイツは生かしておいてもやっても良いのでは?と思うくらいに。
しかし、陣術を発動させているだけで有効な効果を発動させているとは考えにくい。
古代のエルフ文字は大昔なら兎も角、現在では理解できるものはエルフの最長老くらいだろうし、気にする意味は・・・
私は剣に付与された効果を確認する。
・ドラゴンキラー
・アーマーブレイク
・属性追加:月
え!?ちょっと待って?
何?このピンポイントエンチャント。
まさに私を殺す為だけに付けたようなスキル。
コレ、忘れられた魔法なんだよ?
そんな都合よくその魔法陣だけ知っているなんて無いよね?ね?
混乱する私を他所にメイドが動く!
一瞬反応が遅れてしまったが回避は成功したけれど私の紅殻はバターの様に切り裂かれ、久しく感じていなかったハッキリとしたダメージを追った。
ドラゴンキラーはそのまんま、アーマーブレイクは防御ダウン。
じゃあ、あの属性追加:月って何よ?
メイドの攻撃を今度は斧で受け止めって・・・重!
ドラゴンである私でも受け止めるのがやっとなほど重たい!
堪らず横に逸らす様にいなすも、メイドは剣の重さをそのまま利用して剣で円を描きながら連続で斬りつけてくる!
どうやら【月属性】は物を重くする属性のようね。
大まかに当たりを付け、回避よりで戦ってみるけれど止まらない。
受け止めようが避けようがメイドの回転は止まらない!
剣の威力も段々とバカに出来ない威力になってきている。
私は魔力付与を斧に行いメイドと同じように円を描きながらメイドの剣に自分の斧を撃ち当てる。
ギギャン!
と思わず耳を塞ぎたくなってしまう大音が何度も訓練場に響き渡る。
何度も武器と武器の激突の末にお互いの獲物が吹き飛ぶ。
ニヤリ。
武器のトンデモエンチャントのおかげで押され気味だった私だけれど、武器を弾いてしまったのだからこのメイドに成す術は無い!
勝負はついたと前を見るとメイドは回転の勢いを殺さずに私の顔を目掛けてそのまま左腕を振るっていた。
私も咄嗟に左腕で振り抜かれる腕を防ぐ、ええいしぶとい!
この攻撃を防いだことで私は安堵してしまった。
もうこれ以上の攻撃は無いと・・・。
その一瞬の気のゆるみが決定的な隙となってしまった。
私はメイドの攻撃を左腕で防いだ、つまり左手と左手は直ぐ傍にあった為に服の裾を手前に引っ張られ前のめりに体勢が崩れてしまい、容赦なく首裏に残りの右腕が振り下ろされる。
ガツン!
と打ちつけられた一撃は人間の一撃では無かった。
何!?このメイド、ホントニ人間???
倒れかかるも隙を作らないように跳ね起きて確認したときには更に回し蹴りが顔前まで迫っていた。
容赦ないわね!チクショウ!!
必死に体を起こし、顔を上げた甲斐あって蹴りは私の顔のすぐ下を通過していった。
私は必死で後方へ下がる!
ただ、メイドもこれ以上追撃できなかったのか軽く構えをとってフラフラとしている。
「残念ね!私の勝ちよ!」
そう言って踏み込もうとした瞬間に視界が揺らいだ。
え?何?どういうこと!?
また攻撃を受けた?
そんなはずはない!他の人間は近くにいない、早く立って攻撃を!
何とか立ち上がるも体には全く力が入らない。
再び倒れ込んでしまうだけだった。
「ゴートさん、体と両手を一緒に縛る感じで拘束してください」
倒れている私は抵抗らしい抵抗もできずに拘束されてしまう。
舐めないでよね?こんなリボンくらい直ぐに・・・
と思うのだけれど力が入らない、翼も出ない・・・。
「貴女!何をしたの!?」
「竜封印です」
リボンに呪文が浮かび上がる!
「それも大昔にエルフが使っていた陣術じゃない!?貴女、エルフ?」
「いいえ、人間ですよ?」
「じゃあ、どうやって・・・」
「陣術はエルフさんに教えていただきました。術式は【図書館】に載ってますよ?」
載ってますよ?って普通は【図書館】なんて閲覧できないから!
出来たとしてもその時代頃の文章なんて意味不明な文で理解できないから!
などと内心で愚痴を言っている間に私はメイドの顔の高さまで持ち上げられ、向かい合う。
メイド服のリボンで拘束され、そのまま持ち上げられている私と見つめ合うメイド。
何とも笑える状態ね。
試してみたけれど、ブレスも使えなかった。
「あの、お願いがあるのですけれど・・・」
帰れというのなら直ぐに帰ろう、竜化して。
射程の範囲外へ出た瞬間にブレスで燃やし尽くそう。
「私の使い魔になってください」
私を?世界最強の竜である私を使い魔?
「何を言っているの?私が貴女の使い魔になんてなるはずが無いじゃない?」
「でも、私勝ちましたし・・・」
人間の・・・しかも女給の使い魔なんて笑えない!
「もし貴女が私を殺せるというのなら考えてあげなくも無いわ?」
「本当に?」
「ええ、本当よ?」
「封印されているのに?」
どうしよう、調子に乗って言っちゃったけど確かに今、スキル全部使用不可だわ!
何とか口八丁で切り抜けないと・・・。
「あ!?ええ、そうよ?貴女にそれだけの覚悟があるのかしら?もし私を殺せば貴女を殺しに世界中の竜がやってくるわよ?」
するとメイドは何を思ったのかトコトコと私の後ろへ回り込んで靴を脱がせて戻ってきた。
「これでもですか?」
「???意味が分からないわ?それにどういう意味があるの???」
トコトコ
再び後ろへ回るメイド、全く何がしたいのか。
「ちょっと、どうしようって・・・」
シュッ!
「きゃ~~~~~~~~~!!!!!くぁwせdrftgyふじこlp;@:」
何した?何した??何したぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
「白ですか、それに意外とカワイイ物をお履きですね」
「あば、あ、貴女、い、一体何を!?」
「ゴートさん、拘束場所を腰少し上くらいにしてください」
「ちょ、ちょっとまさか!?」
私を他所に背中をまさぐられる。
「チューブトップブラですか。手間が省けますね!」
私は両脇を必死で締めて抵抗するも、両脇をくすぐられポロン。
私は、下着を獲られた・・・。
しかし凌辱は止まらない。
「リッターさん、ハサミになってください」
ジョキジョキ。
私の自慢のドレスが無残に切り裂かれていく・・・。
長かったドレスのスカートは短く切りそろえられ、更に何ヵ所かスリットを加えられた。
服も胸がほとんど見えるくらいまではだけさせられている。
抵抗できない私はもう泣くしかなかった。
しくしく。
「クロ、流石にコレは酷いんじゃ・・・」
メイドの主人が見かねて助け舟を出してくれた。
ああ、救いの手がこんなところに!
殺すとか何とか言っててごめんなさい!お願いします助けて下さい。
「大丈夫ですよ!リーズお嬢様」
何が大丈夫なものか?私をコレだけ辱めておいて、主人に懲らしめてもらうがいい!
「今のこの服は鱗や皮が変化した物です!つまり竜は元々裸で生活しているのですよ?しかも今までに何度も人里に裸でやってきて暴れまわっている超ド級の変態(露出狂)ですよ?その変態行為にしたって相手が下等な人間だし気にしないって種族ですよ?なので今更この格好を気にすることも無いと思いますが?」
うん、そうね。
その通りなんだけど、その通りなんだけど!
言っていることは全て真実なんだけど、この格好で聞くとトンデモない変態にしか聞こえない!
今は誇り高いあの姿が恥ずかしくて堪らない!!!
恥ずかしい!少しでも動けばイロイロ見えてしまいそうで物凄く恥ずかしい。
「後はお城までゆっくり凱旋しようかと思っているのですが・・・」
凱旋?お城まで?街中を・・・歩く?
メイドの手には私の下着を括り付けた剣が握られている。
死ぬ!
こんな格好で街中を凱旋なんてされたら社会的に確実に死ぬ!
仮に後日逃げ出せて世界を滅ぼしても恥ずか死ぬ!
このメイドは確実にヤル!
確実に私を殺しに来ている!
「あ、あの~」
「何ですか?」
「貴女の使い魔になりますので助けて下さい」
「え~?ここまでしたんですし、ちょっとくらい・・・」
「お願いします」
「学内だけでも」
「ほんとお願いします、何でもしますから!」
「では学内を・・・」
バチン!!!
「クロ!そこまでよ!これ以上は見過ごせないわ!」
おおおお!流石は騎士志望!!何という清廉な意志!貴女なら背中に乗せてもイイ!!!
「とにかくサッサと契約しなさい!」
あの、出来れば私は貴女に・・・
私の意見は聞いてもらえず、メイドことクロ様と契約してようやく服を魔力で修復することが出来ました。
「あの、クロ様は何者なんですか?」
私の契約が終わり、半ば学校の生徒の見世物の様になっている状態で私はクロ様に尋ねたの。
私のこの質問には生徒たちや勇者も気になっていたようでクロ様の言葉を待っているわね。
「私ですか?私はリーズお嬢様の使い魔ですよ?後、最近になって大陸魔王【冥土】を拝命しました」
学生たちもうすうすは気が付いていたようだけれど、本人の口から出た言葉によって事実が確定。
大騒ぎになった。
が、誰も挑もうとはしなかった。
魔王と名の付く輩は片っ端から殺そうとする勇者ですら何か言いたげに見ているだけに止めていた。
誰も恥ずかしい恰好で街中を連れまわされたくはないよね。
【冥土】は正に冥府の王の様な存在だと噂が流れていたが、そのまま殺しにくる冥府の王の方がはるかに良心的で紳士的に感じてしまった。
「それでは陛下にご報告へ行きましょうか。あ、聖さんも同行お願いできますか?」
「ええ」
諦めきった勇者の顔に、私は同情を禁じえなかった。
王城への凱旋の途中。
別段アピールするわけでもなく普通に王城へ帰る者たちだけでまとまって歩く。
「ねえ、クロ様。私、分からないことがあるのだけれど」
「何でしょうか?」
「最後に渡し倒れたじゃない?あのとき何をしたの???」
「ああ、アレですか。今ルビアさ・・・んは人化されてますよね?」
「ええ」
「人化とは本来人外の者を人の形に押し込める魔法です」
「そうね」
「ですので、人化を使うとどんな種族も体の構造は人間と同じになってしまうのですよ」
「それでと無抵抗で倒れるのにどんな関係があるのよ?」
「人は脳を揺らされると少しの間自由に動けなくなってしまうのですよ、あの蹴り。実は顎をかすめていたんですよ?」
外れていたら危険でしたなんて軽々しく言いながら、歩いて行くクロ様。
他の皆もそうなのかと驚いている。
私と戦ってこの余裕、もう逆らう気も出ない。
【冥土】の凱旋は誰に知られる事も無くただ街中を数人で歩くだけのお散歩と化していた。
竜って尻尾斬られても治るんでしょうか(意味深
クロが真剣な眼差しでルビアの尻尾を見つめている。




