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【第七話】夜の街エール

_____________________________________


夕暮れ時に船は無事、エールに入港し、

乗組員たちがせっせと荷物を降ろしている。

夢の中のイラを背中に担ぎながら、ベルゼルガたちと共に船から降りた。


「ここが夜の街エール……。」


船から少し眺めたのだがエールの街はとても大きく、

建物の規模からもわかるように

アクアヴェイルと比べ物にならないくらい発展しているようだ。

しかし、街の大きさとは裏腹に、街からは物音一つ聞こえてこないし、

人も船から降りた乗組員と自分たちだけで、見渡す限りでは住民の影も形もない。

さらに、乗客も今はベルゼルガ達と自分しかおらず、

他の人たちは皆到着したと同時にすぐにどこかへと消えてしまった。


「さて、君たちはこれからどうするんだい。」

「自分たちは今晩は宿に泊まって、明日にグランマルスへの行き方を探そうかと。」

「今晩は泊まる……?」


ベルゼルガは不思議そうな顔をしている。

何かおかしいことでも言ったのだろうか。


「君達、エールがどういう場所か知らないのかい?」

「えっ、それはどういう……。」

「やっぱりか。エールというのは今も見てわかるように、

太陽が出ている内はみんな寝ていて、夜になったら活動を始める。

だから、情報とかは夜じゃないと収集できないし、

そもそも宿は朝しか開いていない。」


なるほど、夜の街という名前はそういうところから来ていたのか。

となると、今夜はどうすることもできないな。


「その様子じゃ、本当に何も知らないんだね。

まぁ、一つだけ教えておくよ……エールの夜は美しくも腐っている。」

「美しくも腐っている……?」

「後は自分の目で確かめることだね。

……それでは、僕らはそろそろ行くとしようか、ヘスティア。」

「はい、あなた……それではハクさん、ご武運を。

ご縁がございましたらすぐにでもお会いできるでしょう。」


ヘスティアがこちらを向いて丁寧なお辞儀をしてくるので、こちらも頭を下げる。

ベルゼルガは握手を求めるように手を差し出してきた。

しない理由もないので、素直に握手をした後、

二人は街の中の闇に包み込まれていくように消え去っていった。

ついには自分と背中のちびっ子だけになってしまう。


「ベルゼルガ達が言っていたことも気になる……。

あと本も確認しなければ。」


船の上で本は一度光ったが確認はしていない。

おそらく何か書き込まれているはずだ。

今はイラを背負っていて、本を読むどころではないが。

どこかこいつを降ろせて休める場所がないものか。


「……あそこなんかよさそうだ。」


辺りを見渡すと、少し港から移動し街中に入ったところにベンチが置いてあった。

イラをそのベンチに寝かせ、隣に腰を下ろす。

さっそくバッグから本を取り出し、内容を確認する。


“青年は魔術を使えず、小さい頃から同年代の子にいじめられていました。”


本には新たに文字と絵が描き込まれていた。

絵には小さい人の周りに同じぐらいの人が周りに囲み、

物を投げたり蹴られたりしている。


「今回は文字と絵が……。」


今までは文字と絵を交互に一つずつ描かれていたのに、今回は両方だ。

確かこの本が光ったのは魔術陣という言葉を聞いてからだったっけ。

魔術陣、この本と何か関係があるのだろうか。

マジマジと本を見つめていると、隣から小さい唸り声が聞こえてきた。


「う、うぅーん……はにゃ?ここはどこぉ……。」


完全に寝ぼけているのか、目をパチパチさせて若干呂律が回ってない。

ようやくお目覚めのようだ。

本当によく寝ていたな、こいつ。


「おはよう、イラ。」

「おー?……おっハク!おはよー!」


自分に気が付いたのか、完全に目を開きガバっと体を起こす。

キョロキョロと顔をあっちこっちに動かし、最後にこちらを見つめてきた。


「……ここはどこだ?」

「ここはエールだ。船の到着場所、お前が寝ている間に着いたんだよ。」

「なんだとぉ!!……おぉ、ここがエールかぁ!……しかし、静かだな?」


驚いたり感動したり疑問に思ったり感情が豊かで本当に忙しい奴だ。

しかしもう日も暮れてきて道も確認できないぐらい薄暗くなってきているので、

ベルゼルガたちの言うことが本当ならそろそろ賑わってくるはず。

そう考えていると、次第に家や外の明かりが灯し始め、声や音が聞こえ始めた。


「わぁ……!!!」


イラが感嘆の声を上げるのも仕方ない。

目の前に広がる街の夜景はとても美しく、まるでお祭りのようだったから。

_____________________________________


――エール街、酒場


何故にイラのようなちっさい子供がいるのに酒場にいるかって?

街を歩いていると、一番人の出入りが多く見えたからだ。

その方が情報の収集もしやすいだろう。


「んー!おかわり!!うまいぞこれ!!」


ちなみにこいつが飲んでるのはただのミルクだ、断じて酒ではない。

もちろん、飲ませる気もないが。

しかし、酒場の間取りはかなり広く、

50人ぐらいは軽く座れるほどたくさんのテーブルがあるのに、

ここは満席になるほど人気のようだ。

確かに、酒は飲まないのでわからないが、出てくる料理はかなりうまいらしい。


「ハク、うまいぞこれ!!うまいうまい!!」


らしいと言ったのは出てきた料理を自分が食べようとする前に、

こいつが一人で食べてしまうからだ。

ちなみに取ろうとすると犬のようにガルルと唸り睨みつけられる。

とにかく、いぬっころがお腹いっぱいになるまで何もありつけない。


「……まぁ、待つか。」


その間、エールのことを考える。

この酒場もそうだが、そもそもエールには街並みに恥じないぐらいの人口がおり、

道一つにしても人が溢れかえっている。

また、ゲームを運営しているような店と酒場が多く、そこが一番出入りも多い。

小さな子供でもこの時間に起きて遊んでおり、大人もみな表情は豊かだ。

夜になると活動を始め、昼には就寝するといった街か。

夜の街というのはどうやらこういったことからの所以なのだろう。

そうこう考えていると何やら扉の方から二人組がこちらに向かって歩いてきた。


「やぁやぁ、すまないな!!少し相席はよろしいか?」

「わっわっ。」

「相席……?」


いきなりムキムキのマッチョマンと小さなシスター服の女の子が声をかけてきた。

少し驚いたが、状況を確認すると自分たちは4人席に座っており他の席は満席、

空いているのはここしかないからここに座ると言ったことだろうか。

それならそうで断る理由もないし、

ちょうど情報交換をする人がほしかったところだ。


「えぇ、構いません。大丈夫ですよ。」

「はっはっは!感謝する!!」

「わっわっ、ありがとうございましゅ!」


自分が許可をするとすぐに男は座り、

その後にペコペコと頭を下げながら女の子も座った。

イラは相変わらず、飯に夢中でガッツいている。

にしても、この男性の隣に座ると熱気がすごい、筋肉もすごい。


「うむ、自己紹介がまだだったな!我は【白の騎士団】、団長!!

名は【スレイラックス=アンダーバー】だ!よ・ろ・し・く!!」

「わっわっ、私はっ、【シュルシュル=ハイシェル】とっ、申しますっ!」


かなり個性的な二人だ。

一人は暑苦しく、一人は緊張からか噛み噛みだし、

なんともアンバランスな二人組だろうか、人のことは言えないが。


スレイラックスの方は金髪をオールバックにして、

筋肉からいかつい顔になっているが全体的に優しい雰囲気を醸し出しており、

服装は見たこともないようなマントに薄着のシャツを着ている。

シュルシュルの方は黒い長髪をしており、身長はイラより少し高いで、

腕から見てもかなり細いスレンダーな体だ。

シスターの服を着ているが、修道女なのだろうか。

二人組が終わったところで、自分たちも自己紹介をする。


「自分はハクという……で、こっちの飯をガッツいてるのがイラだ。

ハルフィードというところから来た旅人だ。」

「ほう!旅人とな!!ハルフィードからというと先ほどの船で来たのか!」

「え、えぇ、そうです。なので、エールに来るのも初めてで……。」


_____________________________________


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