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雨の日の憂鬱

作者: くろめんぼう

雨が降る。

空が黒い。

小雨から大粒の雨に変わる。

世界が変わる。

風景が変わる。

見方が変わる。

私が変わる。

色んなものが変わっていく。

雨は変化そのものである。

曇りのち雨。朝のお天気お姉さんがそう言っていた。

雨はふらず、雲が街を覆い尽くしていた。

昼になっても雲のせいで暗いままで、私は退屈していた。

外に出ようにも雨が降りそうで出るに出られない。

かといって家の中でもすることは無い。

家族は私以外旅行に行っている。

暇だ。

私は退屈紛れに友だちに電話した。

「もしもし?」

友達はすぐに出た。私は現在暇なことを伝えた。

「ああ、なるほどね。実は私もそうなのよ」

彼女は明るい声で笑った。

「だから今外に出ようかなって思ったの」

「外?雨が降りそうじゃん」

「だからこそよ。雨が降れば私は雨宿りするわね?それから暇を潰すじゃない。そうすればその日1日のやることが出来たってことになるじゃない?」

「はー」

なるほど。考え方が違うのか。

「まあ、そもそも貴方は雨に濡れたくないんでしょうけどね」

「うん、だから私の家にこない。雨が降ったら雨宿りすればいいし」

「それって家に出るのがめんどくさいってのもあるよね?」

ごもっともです。

「まあいいわ。支度したら向かうから」

「ん、じゃーまた」

私は電話を切った。

やることが出来た。これで私は暇じゃなくなる。

彼女も私といることで暇じゃなくなった。お互いウィン・ウィンの関係になったという事だ。

外は薄暗く、その暗さは夜とはまた違った感じだった。

「早く雨が降らないかなぁ」

そうすればまたきっかけができる。

友達とのきっかけが。

「足りない訳じゃないんだけどね」

私は独り言を言った。

足りないわけじゃないが、余るわけでもない。

あればあるだけ良いのだ。

「ま、いいか」

私はリビングのソファーに座りぼーっとしてみた。

テレビもつけてないので家は静まり返っている。

「なんとなーく、なんとなーくですが」

私は独り言を続ける。

「まさか友達が私のことを本当の友達と思ってると思ってるの?」

私は自分の言った質問に答える。

「正解は分からない。分からないから曖昧なままで接している。他人の本心なんて分かるはずもなくて分かりたくないから」

一人ため息をつく。

「馬鹿馬鹿しい」

私は窓を見る。

少し雨が降ってきたようだ。

「あ、雨だ」

タオルを用意しなきゃ。私は干してあったタオルをとってきた。

「あーあ、みんな死なないかなぁ」

家の中ではどうしても独り言を言ってしまう。

「でもみんな死んで欲しくないなぁ」

特に意味を持って喋ってる訳では無い。ただなんとなく。とりあえず声を出してみるといった感じで声を出しているのだ。

「私以外の人が死んだら私は全員が死んだことを悲しまなきゃいけないよね。そしたら多分10人目で飽きて来る。段々と適当になってくる。とするならば、命の価値はそれに比例して軽くなるのかもしれない」

タオルを持って来てやる事がないのでまたソファーに座る。

「1人だったら悲しいわけで、100人だったら悲しくない」

悲しいって言うのは当事者が少なければ少ないほど強くなる。逆に多くなればなるほど弱くなる。

「いや、違う。結局のところは」

結局のところは。

と、チャイムがなった。

「今出るよ」

私はそう言いながら玄関に向かった。

結局のところは。

結局のところは、どうなんだろう。

当の本人の私が、そう思った。



曇のち雨だったので書きました。あんまり雨は好きじゃないです。

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