主人公の居ない日常
短いですが、ちょっとした閑話を。
年代的にはリザアース歴1020年~1021年辺りのお話です。
フェン視点
『ふぃ~。労働の後の風呂は実に良いのぅ』
『ですねぇ。
でも本当は、もう少し体が冷えてから入った方が疲労回復には良いそうですよ?
まぁリュウノスケくんの知らない事なんでしょうし、リュウノスケくんの世界ですからね。
彼の認識が優先されるこの世界では、関係無い事なのでしょうけどね』
「そうなのですか?」
『うん。そうらしいね。地球ではそういう学説が定説になっているみたい。
まぁどうにせよ、この世界では関係無いって事に代わりは無いけれどね?』
「なるほど」
『それよりも、もう少しでヒロアキくん達の分身体作成もモノになりそうですし、
今後は益々賑やかになりそうですねぇ』
『じゃが、陸達が問題じゃのぅ。やはり神でないと難しいのかのぅ・・・』
『そうですね。もういっその事、現状で可能な幽体離脱状態でOKとしておきませんか?
神では無い以上、分身体を作成する事は難しいのではないでしょうか?
神力由来の義体が作成出来ない以上、手詰まりでしょうし』
『そうじゃなぁ・・・』
今日は久々に始祖の神様方が来訪され、分体の育成に従事して居られました。
たまたまディーさん方のサポート役の当番日だった我々親子が、今日は接待役です。
『それはさておき、リューノが居らねば風呂酒が楽しめないのは残念じゃのぅ』
『フェンくんは何か持ってないの?』
「御座いますよ?が、酒器が御座いませんので・・・如何致しましょうか?」
『お!持って居ったのか!ならはよぅ出せ!
酒器なんぞ、ワシら身内しか居らんのじゃし、口飲みでええじゃろ』
「承知致しました」
亜空間収納から幻の酒を取り出し、
冷やしてからジンさんにお渡しします、続いてウルズさんへと回し飲み。
『っかぁ~。旨いのぅ』
『ぁあ~っ。やっぱりコレが無いと駄目ですねぇ。フェンくん、ありがと』
「いえ。お気になさらず。では失礼して私も・・・」
俺も一口頂きます。・・・あぁ旨い。
『ん゛~っ。はぁ~っ。実に気分がええわい。早く“酒豪”スキルを覚えんかのぅ。
そうすればもっと堪能出来るじゃろうに』
「お二方とも、スキルやステータスなどの調子は如何ですか?」
『“ぼちぼち”って感じだねぇ。
美の神や従達はともかく、私達は常に分体で居られる訳じゃ無いからね。
とりあえずはヒロアキくん達の分身体作成がモノになるまでは現状維持だろうねぇ。
それにしても、早く“神の試練”が終わって欲しいよ。それまでの我慢かな?』
『そうじゃのぅ・・・リュウノスケに頼んで、北極大陸の人類誕生を遅らせるか?
さすがにワシも“たかが人類”に下に見られるのは嫌じゃしのぅ』
『そうですね。今度頼んでみましょうか?』
『じゃな。
まぁあ奴も「20年程度で終わりますよ」と言って居ったし、その程度なら誤差の範囲内じゃろ』
「それで、ウルズさんの“銃”作成の方は如何ですか?」
『そっちは問題が山積しているねぇ・・・。
そもそも“武具作成”系スキルには“鍛治技術”スキルが必須になってくるみたいだしね。
ただの武具を作るだけなら問題無いんだろうけど、ちょっとリュウノスケくんに聞いてみたら、
“銃”を作るには“道具作成”系スキルも必須っぽいんだよねぇ。
まぁ物理的に発射する弾丸が必要になるんだから、言われてみれば確かにそうなんだけどね。
それじゃぁ“弾丸が要らない魔法銃だったら?”って話になるんだけど、
そっちを作るなら、それらとはまた別に魔法系スキルも上げなきゃいけないみたいだし。
ついでに言うと“魔道具作成”系スキルもだから、結局“道具作成”系スキルのレベルUPは必須。
さらに効率面で言うなら、“描陣”スキルが必要らしいから、難易度的にはさらに上になる。
そんな感じで、結局上げなきゃいけないスキルがあり過ぎて、今すぐには無理な話だねぇ。
それで言うと、大剣系で行くおつもりのジンさんは楽ですよね?』
『そうじゃな。まぁまだまだワシらが満足出来る装備品を自作するには、先が長いがのぅ』
『ですねぇ。
まぁその為のスキルレベルUP自体が楽しいからね。それも含めて楽しみつつぼちぼちやるよ。
基礎スキルの幾つかは既に習得出来たしね。今後に期待って所かな?』
******
リル視点
『リルちゃん?先程フェンさんからお酒を預かって居られた様ですが、早速頂けます?』
「はい。マグカップしかありませんけど、それで構いませんか?」
『構いませんわ。ちびちびとやりますから』
「では・・・どうぞ」
『有難う。御免なさいね?私だけで楽しんじゃって』
「構いませんよ?
もうあと数年もしたら、お父様から私達の飲酒許可も出して頂けるでしょうし。
それまでの我慢ですからね~。
ウィアちゃんとリセちゃんも、私と同じジュースで良いかな?」
『『良いよ~♪』』
フェン父様と交代で入浴中です。
今日はディーさん達と一緒に、裁縫系スキルと給仕系スキルのレベル上げをしていました。
珍しく来られていたジンさん達は、鍛治系スキルのレベル上げをしていたみたいです。
一応フェン父様が付き添って居たので、何か新しい装備でも作っていたのかな?
ちなみに私達は明日からはまた、管轄である南西ギルドに行ってギルドランク上げの予定です。
『はぁ~美味し。 ウィア達も早く成人して、一緒に飲める様になるといいわねぇ』
『『そうですね。楽しみです~』』
「成人で思い出したんだけど、ウィアちゃん?リセちゃん?将来の事って考えてる?」
『う~ん。特に考えて無いかなぁ。
“始祖の神様の愛妾になる”って聞いてるから、漠然とそれでいいかな~?って思ってるよ?
リセはどうなの?』
『お姉ちゃんと一緒かな?
生まれた時から決まっていた事だったし、別に始祖の神様の事が嫌いって訳でも無いからね』
「そうなの?」
『うん。神だから容姿なんて関係無いし、お母さんたちの事もあるから年齢だって関係無いしね。
ただ、ちょっと“口調だけは何とかして欲しいかな~?”とは思うけど』
『だよね~。あの口調は“爺臭い”よね~』
『ウィア?リセ?始祖の神様に“爺臭い”なんて言ってはいけませんよ?』
『『分かってるよ~。本人には言わないって』』
「・・・そっか~。私はどうしようかなぁ・・・」
『リルちゃんは好きな人が居ないのかしら?』
「昔は陸さん達が好きだったんですけけどねぇ。
さすがにお父様に躾られた時に、殺されるわ、全裸にされるわ、お漏らしするわで・・・。
「幻滅されたんじゃないかな・・・」って思っちゃうと、そんな気になれなくなっちゃって」
『『『あぁ、あの時の・・・』』』
「そう言うウィアちゃん達はどうなの?
ちっちゃい頃は大地くんの事が好きだったんじゃなかったっけ?」
『あぁ。そんな時もあったね~。
でもさすがにレナちゃん達に怒鳴られただけで、
おっきぃの漏らしちゃったのを見たら、あっという間に恋だって冷めちゃうよ?』
「その節は本当に申し訳ありませんでした・・・」
『ははは。いいっていいって。あの頃は仕方無かったんだしね。
その代わりにリルちゃん達も酷い経験をしたんだから、お相子って事で』
「本当にごめんね~」
『いいよいいよ。
それよりもさっきの話だけど、陸さん達は幻滅なんてしていないと思うけどなぁ』
「そうかなぁ・・・」
『そうだよ!
昔レナちゃん達と一緒に「陸お兄ちゃん♪」って呼んであげたら、
すっごく嬉しそうにデレデレしてたじゃん。アレって絶対脈ありだよ?』
「あぁ、そんな時もあったね~」
『『でしょ!』』
「でも最近は特にだけど、海さんと天ちゃんのガードがキツイんだよねぇ。特に天ちゃん。
それにあの頃の私達の事が“異性として”好きだったとしたら・・・ロリコンだよね?」
『『あぁ。確かに・・・』』
「あそこの家族はシスコン・ブラコンの巣窟だからねぇ。しかもロリコン疑惑まであるし。
“それを乗り越えてまで恋人になりたいか?”って言われると・・・正直微妙?」
『『そうなんだ。でも確かに・・・』』
「それに今後は陸さん達も、ランドさんやカインさんとしてこの世界で過ごすとなったら、
子供が作れないからね。
私、自分の子供が欲しいんだ~。だから他に良い人探さなくっちゃ・・・」
『『そうなの?』』
「あれ?知らないの?分体だと子供は出来無い体なんだって。
まぁ母様達や父様達から聞いた話なんだけどね~」
『『そうなんだ~』』
「うん。そうらしいよ?
だから母様や父様達は、お父様の分体であるリューノの方じゃなくて、本体を襲ったんだって。
母様達って肉食系だよね?」
『『ははは。そうだね~』』
「で、私達って、本当はお父様が望んで生まれた子じゃないらしいんだよね~。
まぁその当時のお父様にも色々とあったらしいんだけど、詳しくは知らないんだ~。
ディーさんは何かその当時の事をご存知ですか?」
『知ってはいますが・・・お話は出来ませんわねぇ。ごめんなさいね』
「ね?何か知っていそうな皆は、こんな感じで教えてくれないんだよ。
それでまぁ・・・それが原因なのかは分からないけれど、
私達って、皆。自分が愛した相手との間に子供が欲しいと思って居る子が多いんだよ?
まぁ今となってはちゃんとお父様に“愛されてる”って実感があるから、
もうその辺は気にしていないんだけどね?
と言うか、“愛されてる”って言うか“甘やかされてる”って言った方が正解かな?
お父様は私達には甘いからね~」
『『だよね~』』
「うん。それにこの世界だと、私だって神な訳だし・・・。出会いってあるのかなぁ?」
『ギルドマスターとして活動するのなら、出会いなんて幾らでもあるんじゃないかしら?
まぁレナちゃんだけは、そういう意味では可哀想だと思いますが』
「そう言うディーさんは、どうしてウルズさん・・・と言うか、魂の神様と出会ったんですか?
お互いに上級神なのに?
しかも美の神様って美を司るだけあって美人さんなんだから、引く手数多だったんでしょう?」
『そうねぇ・・・。
最初の出会いは本当に随分と昔になるけど、私の一目惚れから始まったのかしらねぇ。
まぁこれでも色々とあったのよ?色々と・・・ね? おほほほ・・・』
「その色々が気になりますけど?」
『うふふ。魅力的な女性には、秘密があるものなのよ? ウィア達も覚えておきなさい』
「『『は~い』』」