表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神言の詠み手  作者: 夕闇 夜桜
第一章:異世界召喚
2/8

第一話:召喚されて


第一章:異世界召喚



本編、スタート


見えない歯車が動き出す




「っつ……」


 目が覚めたら、白装束の集団に、周りを囲まれていた。

 降り注ぐ光のせいで反射もしているのか、余計に眩しい。

 涙の方は、いつの間にか引っ込んでいたんだけど……目、赤くないよね?


「俺は付き合ったんだ。もういいだろ」


 そう言いながら、白装束の集団のうちの一人にして、中心に居た青年が去ろうとする。


「ちょっ、殿下! 貴方の問題なのに、その張本人が居なくなるとか、何を考えてるんですか!!」

「勝手に付き合わせて、実行したのはお前たちだろうが」

「……」


 何だろう。仲間内で話が違ったのかな。

 というか、私は放置なんですね。


(それにしても……)


 私の召喚理由は何だろうか。

 ファンタジーの定番なら、勇者とか魔王とか巫女とかだけど、少しズレるなら……生贄、とか?


「あの、大丈夫ですか? 言葉は分かると思うんですが……」

「あ、はい。大丈夫です」


 ミルクティーのような髪色に緑色(字的にはおそらく『碧』か『翠』)の目を持つどこかふわふわとした少年……いや、少女か。そんな見た目の子が声を掛けてくる。


「ところで、そろそろ説明してもらえるかな?」

「あ、はい。魔導師団長様!」


 言葉が通じる件については、魔法陣に組み込まれているとか、私の付加能力(チート)とかだと思うことにしたので、スルーします。


「ああ、すまんな。無視してしまって」

「いえ、お気遣いなく……」


 さっきの少女に呼ばれた、やや長めの(ひげ)が特徴のーーさっきのやりとりから察するにーー魔導師団長さんは、何というか文字で表せば『お爺さん』というよりも『おじいさん』の方が似合うような人だった。

 確か、こういう人を好々爺(こうこうや)って言うんだっけ。


「事情を説明したいところだが、ここでは詳しく話も出来んから、場所を移動しようかの」

「あ、はい」


 そう返事をして、立ち上がろうとするのだがーー


「どうかしたかの?」

「……あの、すみません。申し訳ないのですが、手を貸してもらっていいですか?」

「ほっほ、こんなシワだらけの手で良ければどうぞ」

「いえ、そんなに気にしませんから」


 魔導師団長さん(とりあえず、そう呼ぶことにした)に手を伸ばせば、いきなり横から伸びてきた手に掴まれ、そちらに引っ張られる。


「ったく……ルティ。お前が側にいながら、何故止めない」

「す、すみません!」


 どうやら、この子は『ルティ』というらしい。愛称かもしれないけど。


「えっと……」


 とりあえず、立つことは出来たから手を離してほしいけど、そもそもこの人は一体誰なのだろうか。

 男の人で年上っぽいとしか分からないけど。


「あと、お前」

「は、はいっ!」


 いきなり話しかけられたので、びっくりしてしまった。


「不用意に、この祖父さんに触れない方が良いぞ。隙あれば尻を触ろうとするからな」


 えー……。

 この人の言うことを信じて良いのか悪いのかは分からないけど、頭の片隅には残しておこう。


「全く、何も知らない子に嘘を吹き込むんじゃない」

「嘘じゃねぇだろ。騎士団や魔導師団の女連中から話は来てるんだよ」


 うわぁ……そんな情報があるんだぁ。

 思わず警戒して、彼を盾代わりにしたけど……うん、初対面だからね。この人にも気を付ける必要があるか。


「あの、手を離してもらっても良いですか?」

「ああ、悪かったな」


 手の方はようやく解放されたけど、気を使ってくれていたのか、赤くはなっていなかった。


「にしても、あの王子にも困りもんだな。仮にも自分の婚約者になるっつーのに」

「ん?」


 聞き捨てならない情報が聞こえた気がする。


「ちょ、ヴィードさん!」


 ルティ……ちゃんが慌ててるけど、もしかして、まだ内緒のつもりだった?

 そっと私の様子を見てくるルティちゃん(はっきりするまでは一応これで)に、聞いてなかったと察せさせるために首を傾げてみる。

 それにしても、この人は『ヴィードさん』っていうんだ。まあ、この人もルティちゃんからそう呼ばれていたから、愛称的なものなんだろうけど。


「んあ? まだ話してなかったのか?」

「し、仕方ないじゃないですか。召喚が上手くいったと分かった途端に、殿下は出て行っちゃうし、他の人たちはこの人を置いて殿下を追いかけて行ったんですから。だから、この場に残っているのは我々魔導師団の者が大半なんですよ」


 ルティちゃんがそう説明する。


「つまり、私は説明すらされずに放置されたんですね」

「え、いや、ですから、今から説明するために移動しようと説明したじゃないですかっ」


 おろおろとするルティちゃんを見ていれば、どこからか視線を感じたけど、それも数秒だったのか、すぐに消えた。


「それで、どの部屋を使うんだ? 全部書類や実験道具で埋まっていた気がするんだが」

「そういえば、そうでしたね……」


 ヴィードさんの言葉で思い出したのか、ルティちゃんががっくりと肩を落とす。


「私は説明してもらえるなら、どこでも構いませんよ?」

「けどのぉ。君は我らの客人だから、君が構わなくとも、こっちが気にするんじゃよ」


 魔導師団長さんから、そう言われる。


「お気持ちは分かりますけど、場所が無いんですよね?」

「うぐっ」


 分かりやすい反応だなぁ。


「仕方ない。客間に通すか」

「最初からそうしましょうよ……」


 ルティちゃんが本気で疲れたのか、再度肩を落としていた。

 後半は突っ込んでいたもんね。


「それじゃ、移動するか。えっと……」


 そういえば、名乗ってませんでした。


葛葉(くずは)です。風霧(かざぎり)葛葉(くずは)。風霧が姓、葛葉が名前です」


 当て字で『かずは』と呼ばれることもあったけど、この事は別に言わなくても良いでしょ。

 それに、昔はこの名前が嫌いだったけど、今ではそんなこと思わなくなったし。

 だから、彼らにそのことを言う必要はないのだ。



ルティとヴィードのフルネームは次回かそれ以降に


あと、ルティが男の子か女の子かは今のところ決まってませんので、決まるまでは読者さんたちの自己判断ということで



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ