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宇宙(とき)の果てまでこの愛を(BL注意)  作者: 鴉野 兄貴


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川島くんの白いミシン

 夢を見る。

 夢の中でしか会えない人がいる。


 カワシマくんは僕を虐めていた子だ。

 彼は彼いうところ特殊な地域に暮らしていて差別されていたと学校の教壇では泣きそうな顔で訴えていたが、普段の彼は暴君であった。


 意味なく楽しんで殴るし僕を虐めた。

 彼との関係は中学くらいで切れている。

 正直今ではくたばっているのではないだろうか。



 全ての差別をなくしたいと言う人ほど自身が排他的で差別的なことを顧みないし、正義が好きな人は踏み躙られる人の痛みなど考えないもんだと学ぶ機会にはなった。


 それでもあの教壇の上で、僕からから見てどこにあるのかわからない差別について論じる彼は何に泣いていたのか。


 多分、僕が踏み躙られないところを彼は持っていなかったのだろう。



 夢の中での彼はいつもミシンを縫っている。

 白いミシンをリズミカルに動かして、袋ものも衣装も日用品も綺麗に作ってしまう。

 難しいミシンの専門用語もごく自然に使いこなす。

 手芸には一家言あるが、そんなにうるさくない。


 いや、うるさい。

 とりあえず夢の中のぼくだってそれなりにできる方なんだよ。


 少なくとも夢の中のぼくは彼ほどではないがミシンを使える。

 コロナ騒動の時はマスクを配ることができる程度には達者だ。



 現実の僕はミシンに触れることもない。

 きっと母が使うミシンの知識と専門用語がぼくの意識下にあるか、どこか別の世界ではぼくとこの川島くんは本当に同居しているのだ。



 とはいえ、こちらの川島くんの方は年下ということになる。

 間違っても同級生ではない。



 夢の中でたまにぼくや友達は四国の入江に向かう。


 大きな洞窟、綺麗な砂浜、そして程よい深さの海。

 ぼくらだけの快適な場所だったここは前は色々化石が掘れた。

 ぼくや川島くんや他の友達(※そう、この夢の中では僕にも友達がいるのだ!)は海百合みたいなキモめの化石を掘ったり泳いだり岸壁の洞窟で気持ちよく過ごす。


 だけど最近ここが知られてきたらしい。

 この間行くとうるさい人たちが『危険だ』と洞窟内を補強のコンクリートで塗り固めてしまい、あちこちゴミで埋まっていた。


 ぼくは『毎年狭くなる』と愚痴る。


 川島くんや友達も同意してくれた。

 どうにもここにくる人のマナーが良くない。


 ここは夢の中にしかない秘密の場所なので、残念だけど君たちには教えることはできても案内はできない。

 夢の中で川島くんにあったらぼくに聞いたと言ってほしい。

 夢の中の彼はどうにも照れ屋で心無いことを言うかもしれないがとても親切だから『俺は直接行ってない』とか『汚すなよ』くらいは言ってもこの海岸に案内してくれるはずだよ。

 車に乗って国道の端に車を停めたら岸壁を降りていくんだ。

 水は浅いから子供でも溺れない。

 それに夢の中だから決して溺れないし、必ず楽しめる場所なんだ。



 夢の中の川島くんは手芸が得意で、自分に役立ちそうなものはなんでもサクサク自作できるのは述べた通りだが、現実の母の仕事と比較するとやや裏地が汚い。

 でも男性の手芸としてはかなりの腕と言って良い。



「何ニヤニヤみてんだい」

「いや、上手だなって」



 夢を見ている僕は川島くんのミシンを『上手だけど母よりは下手』と見ているのに、ぼくの耳に入るぼくの声は優しく、やや年下の彼に対する尊敬と親愛に満ちている。


 夢の中の川島くんはいつもミシンを使っていて、この部屋のミシンが動くことはない。

 ぼくは料理をする。幸いにも夢の中のぼくは母並みには料理は達者だ。



 川島くんはびっくりするほど綺麗にご飯を食べてくれる。

 そして必ず『美味しい』と言ってくれる。



 最近仕事が忙しいらしい。

 イベント企画に営業に大活躍らしい。

『川島くんが仕事しているなんて信じられない』

 ぼくは内心呟いたが、表には出さない。


 ちなみに掃除はお互い行き届いていて、だいたい白いこの部屋は主人二人の趣味に反してほとんど何もない。



 たぶんひとつ作ったらひとつ送り出しているのだ。

 夢とか悲しい記憶とか苦しいことや後悔などを白い糸として作り直せ。



 川島くんのミシンは動く。

 ぼくが淹れるコーヒーの香りがする。


 トーストを焼く。ゆで卵が熱くて舌を火傷しそう。



 少し進展してキスをしたら喜んでくれるだろうとお互いが知っている。




 目が覚めた。

 二度も見るのだから不思議な気持ちだ。


 カワシマくんは僕が当時のことを一切思い出せないくらい酷いことをしたのに、僕はあの世界のぼくと川島くんは幸せに暮らしているのだと理解し祝福できる。



 そして、もうぼくは、僕はきっと大丈夫だ。

 僕はカーテンを開き、朝日と共に部屋を出た。


 驚く母たちに輝くような笑顔で挨拶。


 バイバイカワシマくん。

 さようなら川島くん。



 僕は僕なりに幸せになるよ。一人でもね。

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