世界はきっと輝いている
博美が眠っている。
ぼくはすっかり飼いならした草食恐竜の背を枕に寝たふりをしている。
ぼくの名前は八神ヒロシ。
義理の妹の博美とその愉快な仲間たちと旅をするようになって長い。
朝もやが残るなか、茂宮と物部が朝餉の支度を始めた。
普段ならそれに加わるはずの姫君はどうやら狸寝入りらしい。
僕もそうしたいところだがこの恐竜が水を欲しがるので水汲み兼ねて起きねばならない。
「おはよ~ヒロシさん」
「どもヒロシさん」
この二人は男色カップルなのだが最近そういうことをしていない。
料理が上手なので朝餉は大抵この二人がつくっている。ぼくも手伝うが火の管理がほとんどだ。
「今日は何だい」
「カレー」
朝からかい。その刺激臭で恐竜たちを刺激したらさぞ愉快な虐殺がはじまりそうだな。
そういう思考をしてしまうぼくは人の皮を被った魔物なのかもしれない。
もっとも、そういう理由であの不届きなる姫君とは嗜好が似ており、表向きは仲が良い。
博美が起きてきた。
相変わらず目脂をつけてなんともだらしない。
ハンカチを手にフォローしてあげると感謝してくれる。嬉しい。
世界はぐちゃぐちゃでドロドロでどうしようもないぼくみたいなものである。
そして世界は明るくてだらしなくて何か希望に満ちている義妹のようなものでもあるようだ。
もし私達に立ちふさがるものがあれば如何なる輩でも私が潰すだろう。
博美が明るく笑う。
わたしたちは車を進める。
世界はきっと輝いているのだ。
わたしにはそう見えないだけで。
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