優しいお仕置き
ヒトの話を中途半端にしか聞かない奴はお仕置きなる名目を受けて俺は彼に呼び出された。
先輩である彼のいうことを聞いていると俺自身は思っているのだが暴走機関車のごとき行動が見に余ると彼は申しており。
狭い部屋に呼び出され、彼の体温を感じ乍ら俺は吐息を漏らす。
恥ずかしげもなく大声で叫び、思い通りにならない未熟な自分を思い知らされて何度も何度も身をよじらせながらダメな自分を自覚させられるのだ。
「先輩! 『島人ぬ宝』をかけ乍ら『大空と大地の下で』は歌えません?!!」
「我が文芸部伝統のお仕置きだ。もっとも俺の親父達の代ではBIGINと松山千春ではなく」
そういって言葉を切る彼。
「ペッパー警部って歌の振り付けでUFO歌えって抜かされて困ったらしい」
よくわからんが難しいらしい。
もしもしかめよカメさんよや水戸黄門でも困るそうだ。それを完璧にできるまでリトライの刑。どうしても歌い方が曲に引きずられ、気が付いたら間違える。
余談だが俺たち文芸部は一般生徒から合唱部として認知されている。
後日先輩は父上からお仕置きを受けたそうだ。
UFOで般若心経か水戸黄門かもしもしかめよを歌うのがオリジナルらしい。ぶっちゃけどうでもいい。
それより本来の文芸部活動をやるべきだと思いいたるがテストが迫っている。
たぶん今日も皆でカラオケに行くと思う。
今日は部員二十名で軍歌大熱唱大会。
ふと俺が窓のほうを見たら女学生十八名を含めた俺たちをおじいさんおばあさん、店中の人が覗いておりものすごく恥ずかしかった。
田舎のお嬢様方はお爺さまお婆さまの影響で軍歌を耳コピしており、祖父祖母たちの配属先や出身校等によって違う軍歌がメドレーされる様子は圧巻だったらしい。
後でオカンに何したと叱られた。
さて校外部活も終わったし、我が部活において最も重要とされる『水戸黄門チェック』を行ったら時代劇チャンネルを閉じて寝る。
テスト? なんとかなるさ。




