IS(愛とスルメの)歌劇組織。『母校孕む』
『しゅごい。しゅごい~~』
彼らは呆然と空を見上げていた。
確かに彼らは日本人を拉致した。そして殺した。
しかし神の敵である連中を援助する国は同じく敵だ。
その敵の人間もまたもちろん敵だ。
『想像を絶するほど凄まじい報復』
『遺憾の意』
日本の『オタク』どもがつぶやくTweetは笑うほど無害なものであった。そう。そう彼らは先ほどまではそう思っていたのである。
『貴様らはオタクであり女である我ら仲間を敵に回した』『今日からグーグル先生の検索に乗らないよう、我らの全力をもって貴様らの活動を妨害してやる』
次の日から。
彼らの奉じる宗教系の学校の家屋が西洋風の学校家屋にレイプされていると称する謎画像がインターネット上で出回るようになった。
『愛とスルメの歌劇組織・母校孕む』
その活動内容は母校が他校に擬人化なしで性的暴行をくわえられる映像や絵画、小説を延々とインターネット上にアップしつづけること。らしい。
そもそも、これを性的暴行と呼ぶのかきわめて疑問である。
右に地震に揺れる彼らの母校になる家屋や施設。
もうこの時点で思考が停止する。彼らの国には地震という現象自体が珍しい。
左に日本家屋や西洋建築などが配置され、男性同士のポルノの音声が挿入されている。
おわかりになるだろうか。作者でも理解できない。
地震で揺れると共に絶頂に向けて叫ぶ揺れる家屋たち。
意味不明である。
そもそも本家である筈の彼らには偶像崇拝の概念がない。
でも、今や検索妨害の破壊力は拡散しまくっている。
日本製BLの破壊力と拡散力を侮ってはいけない。
エッフェル塔と東京タワーの受け攻め議論をフランス人とかわす程度にはグローバルである。いや知らないが。
「しゅごいしゅごい」
そういってぐらぐら揺れてひび割れる彼らの伝統家屋。『どうだ。俺の鉄筋コンクリートは丈夫だろう』とかぬかす西洋建築。『木造と侮るな。1000年持つ日本家屋の耐久性、耐震性を見せてやる。あえて揺れに身を任せて……あっ』そういって西洋建築との絡みを無理やり見せる日本家屋。『パルテノーン!!!!』そういって叫ぶ彫刻も意味不明。
『女の敵は我らの敵』
『貴様らを教化する。抵抗は無意味だ』
知らない間に彼らの妻や姉妹がこういった意味不明の画像を閲覧している事実に彼らは震撼した。
『建物だから偶像崇拝じゃない』『だが我らの伝統文化を貶める明らかな西洋文明による精神侵略である』『そもそも我らは女に対する就労や教育などという西洋の文明や文化の侵略に対抗するために立ち上がった』
凄まじい内部での議論に終始する彼らに更なる追撃が迫る。インターネットを封じても天空に広がる3D映画映像は防げなかった。
グッとサムズアップするのは各国から治安維持名目で派遣された特殊部隊たちである。同類は同類を呼ぶ。
『女性の学校を襲い、強制婚を強いる貴様らよ。
我らは全力で貴様らに報復する。
ただし、直接的にはやらない。
貴様らの母校が孕むまで、続ける』
『 母校は。
というか建物は孕まない。
妊娠しないから 』
「ああ。ツーバイフォー……」
彼らの空しい抗議をよそに、なぞの動画は拡散侵食し、彼らの文化を破壊しつくしていく。
「どうだ。木造軸組みの伝統的な技の快感を……夏は涼しく冬は寒く……中は熱いだろう」
「壁パネル木質住宅なんてほっておいて俺のところにこいよ……。俺のコンクリート工法に揺れな」
「鉄骨系ユニットの頑丈さを知れ」
「ははん。早漏じゃないか」
『孕むまでやる』
というか、男の人格あてられているけど、男はそもそも妊娠しない。かれらの混乱をよそに、BL本を買い漁る彼らの親姉妹。
こうして世界ジャンルが誕生した。偶像崇拝をクリアした『建物BL』である。
この物語はフィクションであり、現実の組織などとは一切関係がない。




