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宇宙(とき)の果てまでこの愛を(BL注意)  作者: 鴉野 兄貴


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79/101

デブのオカマは自分に対する甘え TSに萌える奴はホモな自分を認められない軟弱者

 工藤美香。四十三歳。OL。つまりオフィスレディ。好きなものはウイスキー。肝硬変を患う。というか、普通に死んだ。過労死である。

 所謂お局だが彼女にもいろいろ言い分がある。

 曰く、軟弱な草食男子が悪い。

 曰く、チャラチャラとして仕事を疎かにして若い子とデキ婚していく後輩が悪い。

 後輩が悪いかはさておき、交配自体は悪くないとは如何に。


 目を覚ますと見知らぬ白い空間。

 病室ではない。かといって異世界転生と言われても仕事一筋の工藤はなろう小説とは無縁であり、状況理解とは縁遠し。


「こんにちは。工藤美香さん」

「あなたはどなたでしょうか。私はどうしてこのような場所にいるのでしょうか」


「死んだからです」

「そうですか。悔しいなぁ。でも仕方ないですね。ああ。後輩のみんな大丈夫かな。私がいなくて」


「問題ないと思います」

「そうですか。そっちのほうがつらいかも」


「死んだら死んだでなんとか遺された人たちはやっていきます」



 それよりあなたのことを話したいのですと告げる謎の存在に耳を傾ける美香。

「あんた。処女ですね」

 不躾な質問。いや断言された。

「セクハラっ!? セクハラっ?! 訴えてやる!!」


「いや、そんなこといっても司法制度ないですから。私が法律です」

「横暴だ! 労働組合を作って抗議してやる!!」


「これだから更年期障害は」

「キーー?!」

 漫才どころではないとその存在は告げる。


「こう見えてもスキンケアにもダイエットにも気を付けて」


「でも独身でしたね」

 いちいち心をえぐる謎の存在にキレる美香。

 余談だが若いころからコツコツ貯金もしっかりしてきたので近日マンション購入予定だった。

「だいたい、男が草食系でアレだから駄目なのよ」


「ははは。そうですね。では思いっきり肉食系になって男を探してもらいましょうかね」

 謎の存在曰く、己をホモと認めない草食男どもが転生しまくったせいで、女の姿をした転生者がいろいろ騒動を起こしている嫌な世界があるという。



「具体的にはどうすれば?」

 イマイチ何をするために生き返らねばならぬのかわからぬ美香に謎の存在は命じた。


「男の素晴らしさを教えてやってください。肉食系になって」


 とか言われても美香は処女だし、男が素晴らしいとはこれっぽっちも思っていない。思っていたら結婚している。美香にとって異性は蹴落とすライバルであるか、性欲対象の若い新入社員である。


「では、早速その世界にいってもらいます」

「あ、ちょっとまって」

 そんなん、待つわけがない。

 謎の存在によって美香は転生した。

 むくつけき巨大なオーク(オス)に。

 オークの成長は早い。

 産まれてすぐに走りだし、三日で槍を手に取り、一週間で獲物を追い求める。

 言葉を覚える五歳になるころには、すでに戦士として部族に組み込まれている。

 言葉を覚え、意思疎通ができるオークはそれなりの地位につく。

 オークは武勇を尊び、臆病を恥とする。迷信より力を信じる。

 オークは野蛮で性欲過多、粗暴勝つ無謀だが彼ら独自の正義があり、それを厳格に守る。



「なんでオークなのに人間を襲わないのっ?! こんなの信じられないッ!? 私の性欲は前世分も合わせて都合五十年近くたまりまくりなのよっ?! 早く男を抱かせて!!!」


 危険な発言を放つオーク(オス)。

 もちろん言葉を覚えたばかりの美香である。

 地味に言葉を覚えるのに時間がかかった。

 オークの脳みその知識蓄積許容範囲は少ないのである。無駄に前世知識があるとかえってハングアップしやすいのだ。


「あ、はい」


 ドン引きのオーク仲間に更年期障害よろしくまくしたてる美香。いきなりしゃべれるようになった鬱屈を晴らす美香だがオークはおしゃべりを好まない。

 しかし美香はそんなの関係ないとオーク仲間を巻き込む。正直オークたちは半泣きである。


「(だってお前。人間の女とか。キモいし)」

「(なぁ。毛が生えてない女とかないよな)」

「あの折れそうな腰とかありえない」

「胸なんて全然大胸筋ないしな」


 ぼそぼそがあり得ない気持ちをはらんでどんどんでかくなるオークたちの声。基本的に暴力的で極悪な連中だが単純かつ誇り高いのがオークの気質である。



「もう貴様らとはやっていけん! 私は集落を出るぞ!」

「気を付けてな」


 結構親切なオークたち。

 部族精神は高い。彼らは旅立つ美香を生暖かく見守った。



 さて。


「こんな、こんな痛いのって」


 泣きそうな顔をしているのは現実世界の日本には存在しないメタリックな銀髪を持つ美少女であるが、中身は生前の時点で四十歳のおっさんであった。所謂転生者である。


「こんな、こんな男の子にドキドキするはずが」

「やかましいわ」


 むくつけきオークからすればガリガリのヒョロヒョロにしか見えないヒーローを殴り倒した美香。

 すかさず四十歳オッサン(見た目は美少女)を掘った。ガッソリ掘った。

 こうして、美香はまず一人目に男を教えることに性行、もとい成功したのである。

「ビィクゥトリー!!!」



 ナニに勝利したのか知らんが美香はこうして自らをホモと認めない草食系ホモを退治した。

 美香を送り出した存在はシャンパンを片手に大喜びしたという。



「こんな、こんな女の子の下着なんて着れないよぉ」


 ドキドキしながら下着を脱ぎ、それを身にまとおうとする赤髪の幼女(中身は20歳ゴリマッチョ)。

 そんなキモイ台詞を吐くゴリマッチョの背後に立つは、巨大な生まれもった槍装備オーク。美香だ。



「ふざけるな! 私など下着どころか褌だ!!」


 また掘った。掘った。掘りまくった。こうして敵転生者は消滅した。

 ちなみにどうして彼ら転生者が消滅するかというとロリホモ属性を自覚。絶頂、昇天。天に還るときが時が来たようだな状態で元の転移前空間に戻るらしい。

 そうして彼らは土下座して願う。もうTSなんて嫌だと。


 とある村に聖女としてあがめられる美少女「何が草食系だぁ! クソ男めええ!!」ダッシュして地響きを巻き起こし、砂塵とともに颯爽と現れた美香。

 早い! 肉食系オーク来た! これで勝つる!



「女は嫌いなのよ! なにそれ! 化粧?! どうせ顔の形も化粧で誤魔化しているんでしょう?! 私にはわかるわよ!」

 何気に無茶を言う美香である。


「ブログですっぴんさらしてまぁす(はぁと)とか言う奴が一番信用できないのよ! どうせ全身整形の癖に! DNA誤魔化してるんじゃないわよ!!」

 確かに転生者はある意味DNAどころか容姿誤魔化している。しかし、美香の言い分はいろいろ無茶苦茶である。

 どっちにせよ。掘る。がっそり。


「貴様らホモの草食どものせいで、私みたいなイイ女があぶれたんだ~~!」

 普通に危険回避する。

 何を言っているのだ美香さん。


 ちなみにTS趣味でホモ予備軍とはいえ、相手は現状女性の身体なのでどう見ても大変危険な絵面であり、細かいビョウシャをすると18禁になる。


 ~~ 私は誇り高きオーク。オークロード、略してOL。

 ふわりと弾む筋肉系。フルスクワットゆるかわ筋骨ガール(オス)。

 今、自称ホモじゃないホモ野郎の草食系を求めて異世界を全力競歩で駆け抜けている私は北山第三部族に所属するごく一般的なオーク。



 しいて普通のオークと違うところをあげるならオーク雌より人間の男が好きなことかなー。

 名前は美香でミカ。

 そんなわけで今日もとある町のとある教会の前まで来たのだ ~~


『良い男』


 思わず美香は襲撃の手を休めて呟いた。

 教会に立てこもる村人を守るべく飛び出した修道士はオークも見蕩れるほどの素晴らしい筋肉と脂肪の塊であったのだ。


『殺しあわないか』

『はい……』


 彼は修道士とは思えないほどの超絶な剣技の持ち主だった。その踏み込みのするどさ、その上腕二頭筋の躍動。背筋が生み出す素早い動き、すり足の絶妙さに美香は圧倒された。

「参りました。あなたの奴隷にしてください」


「俺は厳しいぞ」

 なんか、いろいろおかしい流れになった。作者でも制御不能。


 美香は倒した山賊を基に慣れない人肉料理に励み、彼の反応を想像してもだえる。



 でもオーク(オス)である。

 四十三歳元OLオフィスレディ。現OLオークロード献身に芽生えた瞬間である。

「山賊の肉で作った料理なんです」


「ほう。これはなかなか」

 食うのかよ。この世界の修道士パネェな。

「君も食べたい」

「ば、ばか」


 もと四十三歳お局さん。迫られると案外弱い。でも今はオーク(オス)である。広背筋がビクンビクン。


「こんな筋肉と脂肪の豚みたいな身体じゃダメかな」


 生前は均整の取れた美形だった美香。

 ガチで迫られダイエットを決意。


 しかしオークというものは皆ガチムキである。

 アッという間に脳みそに糖質が足りなくなってぶっ倒れた。もと四十三歳OL。女を捨てて初めて恋に目覚めた。でもオスオークである。


 餓死寸前のオークを介抱する修道士、アーベもお人よしだが美香だってちょっと人目を憚る姿である。

 彼に介抱される喜びに布団をかぶって幸せにもだえる美香。でもオスオーク。

 そして日が暮れ。



「やさしくして」


 うるんだ目で彼を見つめて身を固くするオスオークがいる。

 彼は二コリと笑って答えた。「もちろんさ」


 修道士アーベの正体が、転生者は男らしい男がいなくて悩むあの存在そのものであったことを美香がしるのは結構あとのことである。

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