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宇宙(とき)の果てまでこの愛を(BL注意)  作者: 鴉野 兄貴


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76/101

どうなの どうなの

 ククク。主人と離れて寂しいか。そのようなことを彼に告げるものはいない。ただ、うちすてられ風に任されるかのように放置プレイを強いられる。

 駅前には彼の同類たちが声なき怨嗟の悲鳴を上げ、罪なき同類に歩行者が蹴りを入れる。

『じゃまだ』

 風が吹き、あられ交じりの雨がその身を削る苦痛と快楽。周囲にたなびく安い酒場の臭い。じゃらじゃらと煩いホールの音楽。


 主人たちはどこに行ったのだ。

 大量の人々の前に生身を晒され、彼らは声なき絶叫を放つ。助けてくれ。見つけてくれ。放置プレイはやめてくれ。

 押しのけられ、倒れても誰も助けてくれない。


『今日はトータル勝ちだな』


 全然勝っていない。

 親切な女性や青年が倒れた彼に手を差し伸べるも、それ以上はしてくれない。

「しっかし」


 青い服の男たちが彼の身体を見聞する。


「うん。盗難届は出ていないみたいだな」

「点数稼ぎ乙」

「一番楽だからな」



 やがて彼らは大きなトラックに載せられ、無造作に山のように積まれて廃棄などと言われつつ実のところ廃棄ではなく主人と縁遠い国に送られる。二度と帰らない旅に。


 日本国における放置自転車は一日十二万台という。

 そのほとんどは駅前に集中し、駅前の盗難車を盗難してまた駅前に放置する関係で所有者を掴むことは難しい。読者の皆様は防犯登録を済ませ、紛失時は速やかに最寄りの警察に届け出てほしい。

 また、駅周辺の大型施設、パチンコ店など駐輪場を整備しないまま建設を行う関係で、所持者的には一時的においているだけと考えているがこれらの短期放置自転車の迷惑ぶりは言うまでもない。半分はパチンコ屋の入り口部分だったりするのでさらに性質が悪かったりする。

 半分だけ私有地に乗り入れている自転車は回収したくてもできないらしい。



 まさに放置プレイ。

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