ファルコとピートの年越し
「さむい」
手のひらをごしごしする弟。
とはいっても腹違いだ。他人と変わらない。
「ほれ」
温めた小石を出す。別に用意してやっていたわけではない。
「ありがとう兄ちゃん」
「ばっか。たまたまだ」
ぼくたちは年越しの準備に忙しい街を連れだって歩く。はた目には幼児ふたり、親はどこだとか言われるのだろうけど、僕らは既に成人している。
マントを広げて奴の肩にかけてやる。暖かい体温が少し伝わってきた。
「お前は薄着なんだ。バカは風邪ひかないからな~。うらやましい~」
「むっか~。ピートのほうがバカじゃない」
そういう奴の顔はそれほど怒っているようには見えず、街中の珍しい商品の冷やかしに余念がない。
寒いのに冷やかしとはこれいかに。僕も冷やかすけど。
「ほら、マフラーまこう」
「こら、首が苦しい。やめろ」
抵抗する間もなく二人でマフラーを巻く羽目になる。
なぜ男同士、それも娘を持つ身同士でこんな。
「こういうのは彼女とやれ」
「ふぃりあす?」
「ありゃ娘だ」
「だね」
というか、誤解されるからやめろ。
こいつ、見た目は女の子と誤解されてもおかしくないし。
「ごかい? おさかなのえさになるね」
「違う」
ぼくらは買い物を終えて弟の家に帰ってくる。
両手を腰に当てて待ちわびていた姪っ子の説教を聞きつつ、僕は聖夜祭の飾りつけをするのであった。
「お父さんは『勇者さま』」の外伝




