眠い時は心の中で策を超える執事を数えると良い
眠い。眠れない。不眠症だ。
そのくせ性欲はフルマックスな俺にヤツは眠そうにそう答えると勝手にスマートフォンをきりやがった。
くそったれ。羽毛布団をたたいてみても最近干していないなんともアレな手ごたえとほのかなイカ臭さしか感じない。ちょっと人には言えないシミもある。床で自分を慰めすぎた。ナニをしたかとか聞くな。恥ずかしい。
『眠い? そういう時は心の中で羊が柵を越える光景をイメージして、その数を数えてみな』
アドバイスを求めたら返事が。策を超えるのか。
あれか。今孔明な長身イケメンの軍師な執事が斜め上の策を見せるんだな。
「赤壁の戦い!」
「ならば我は赤壁をダムに沈めてみせよう!」
うむ。スペクタクルだ。
まず執事が一匹。
次はショタのキュートな執事がかわいらしく策を忠言しようとして何かに躓いてこけて泣く姿。うん。これは萌えだ。執事が二匹としよう。
その次はそうだな。ロマンスグレイの渋い爺執事が華麗なステッキさばきで仕込み杖を振り回して世の悪を人知れず討つなんてどうだろう。
その次はデブ執事が転げながらも『絶対にイカナイ鉾』を『絶対にイカス』とか。
翌日。
俺は垢じみ、憔悴しきった身体をふらつかせながら出勤した。
「寝れなかった」
「お前イカ臭いよ?! 風呂入って出勤しろよ?!!」
「いや、ちょっとネタが豊富すぎてな」
「何をしたんだ……」
人には言えないネタは。結構ある。




