ものすごい勢いで小説を書く方法
小説を早く書く方法を教えてください。
俺の弟子を自称し、居候を決め込むヤツの要望に対して俺は告げた。
「パソコン買えば良いじゃないか」
「面倒じゃないですか?!」
まぁ昨今はスマフォが普通だよなぁ。たまにガラケーしか使わないってヤツいるけど。
「てか。卒論何で書いているのさ?」
「スマフォですが」
「よくやるよッ?! そっちのほうが凄いよ?!」
早く書く分には問題ないと思うのだがどうやってそこまでスマフォで入力できるのかそっちのほうが偉いと思うが。
「フリック入力、けっこう早いですよ」
「いいなぁ。俺はギリギリパソコン世代だ。あとネットゲームも学生時代流行ったし」
「今のネットゲームとはちょっとちがうのですよね」
「うん。キーボードでコマンドとかあったし」
「EBレーザーとか言われてもわかりませんよ」
「そういうのがあった」
俺たちがやっていたゲームより更に二世代前だが現役らしい。
「まさか、お前タイピングできないなんて言うんじゃないだろうな」
少し世代間の差に恐怖を感じて問う俺。
「何言っていらっしゃるのですか?! できますよ」
奴に席を譲って見てみたらキーボードを眺めながらタッチタイピングしていた。
軽く世代の違いを感じてくらくら。
「お、お前入社したあとどうするんだ。メールとかわかるよな」
「ラインなら」
あ。ああ。これはヤバい。絶対上司わかっていない。
「アカウントとかわかるよな」
「なろうのアカウントなら」
よしよし。
「メールアドレスを変更するなら、先に変えておかないとなろうにアクセスできない理由もわかるか? 正確には設定変更しない場合ログインには旧メールアドレスが必要なのだか」
「え?」
えっ?! じゃない?!
戸惑う彼にまともな解説をせねばならん。考えろ俺。
「簡単に言う。お前の使っている通信アプリと違ってメールとアカウントは自動的に関連付けされるわけじゃない」
「なんでそんな面倒くさい仕様になっているのですか」
なんでって。ええっとどうして一緒じゃなければいけないのだろうか。
彼の主張を聞くとメールアドレスを変更したら自動的にすべてのサービスが対応してくれないのはおかしいらしい。
まぁそっちのほうが便利だと俺も認めるところだがたぶん事実上無理なのでは。
「というか、メールなんてほとんど使いません」
「だよな」
納得できる。
この間ナンパした女の子はメアドも教えてくれなかったけど、そういうことなんだなぁ。
「ちょっと。ぼくがいながら女にうつつを抜かすとはいい度胸ですね」
「あ? お前だってこの間出会い系サイトを見ていただろうが?!」
お互いの悪行はすぐにチェックできてしまう昨今。
簡単にお互いのアカウントの悪行における今まで黙っていたうっぷん晴らし。
悪態をつきながらシチューを煮込む俺。おかずを作るヤツ。
俺たちの押収は昼飯ができるまで続いた。
女の喧嘩と違って同居人同士の昼飯を作るほうがお互い優先である。
飯食ってたらどうでもよくなり、件のアカウントは消しあうことで合意した。
こういう点。男同士は楽である。




