さん てん いち……よん?
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上司はバブル崩壊後世代。
俺は絶賛ゆとり世代だ。
「なんだこの絶賛ゆとり世代っという文面は」
「ダメっすか」
「社用文書を提出する以上、口語は禁止。書き言葉で書くこと」
「そうだったんすか」
でも、おkって言ってくれたじゃないですか。
「おう。書き直したからな」
「俺の苦労は何だったんですか?!」
上司曰く『書かせなければお前が成長しない。お前が仕事出来るようにならないと俺が苦労する。故にお前にまず書かせた』だそうだ。
それって苛めですよね?! 訴えてやるぅ?!
「オマエ、上にお前の口語交じりの書類を提出してお前の評価落としてほしいのか」
「うううう」
「そうかそうか。楽できるな」
そういって彼はとぼけてみせる。
「今日から貴様は掃除隊長だ」
なんで掃除隊長っ?! 女の子いるでしょう?!!
「確かに掃除は誰でも出来る。だが正確さや速さ、手際の良さを突き詰めていけばお前にしか出来ない仕事になる!」
「やるっす! 掃除隊長やるっす!」
上司が掃除当番をサボったと女の子たちから聞いたのは後ほどだった。
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「給料上げてください」
「上司は何でもやらされる会社だけに、俺はお前の給料計算もたしかに行っているがそのような権限はない」
女の子と俺は一緒に同じ抗議を上司にする。
「じゃ、上司さんの給料を削って」
「おk」
ココでノリ重視の発言を上司がした処で変と思うべきだった。
「ほら。チョコパイは美味いだろう」
「……」「……」「……」
なんでも北朝鮮では貨幣の信用度が無くてチョコパイが裏通貨として流通しているらしい。
「ほれほれ。もっと食え。遠慮しなくていいぞ」
上司の実家が介護家庭だと知るのは後の事である。
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「オマエ将来ナニしたいの?」
「アメリカ大統領になるっす」
「良いな」
「あとアイドルにも成るッスね。ジャニーズ入って」
「おい。どっちになりたいんだ」
さぁ。どっちなんだろう。
「夢って言うのは寝ていても見れるが、オトナの夢は掴むものだぞ」
「へ?」
「オナニーなんて寝ていても出来るじゃないか」
「なるほど!」
流石我が上司だ!
「出来ることを失敗しても良いし、一〇の内一つしかできなくてもいい。一つずつをしっかりやれば後は俺がフォローしてやれるからな」
ようわからんが上司が責任取ってくれるらしい。
「だって俺責任職だもん」
上司が言うには。
アメリカ大統領になるにはアメリカの国民にならんといかんらしいので。
「海兵隊に入るとか良いぞ」
ちょっとそれは想定外だった。
しかし上司はいたって真面目な顔をしている。
彼は俺の妄言を冗談と受け取らなかったのかもしれない。
「マジっすか」
素で出てしまった。
「アイドルは何でなりたいと思ったんだ?」
「そりゃ、モテモテのチヤホヤじゃないっすか」
「つまり、皆に注目されて大事にされたいって事かぁ」「はい」
大人の夢は見るものではなく掴むものと上司は言う。
出来ることを冷静に見極め、先に予測して必要な能力やものを揃えておくだけの単純かつしんどい仕事だと。
「でも、例えば転記をするとかは俺でなくても出来る。俺が上司に叱られるだけで」
「ですよねぇ」
今だ転記なんて仕事がうちにはある。
「叱られるのが俺、転記がお前。俺は他に俺しか出来ない仕事が出来てハッピー。お前は仕事が出来てハッピー」
「ハッピーじゃねえっす。ぼうっとさせてください!」というか修羅場だし。
うちの上司はちょっととぼけたところがある。
「意外と分けていくと簡単なことがあるもんだぞ。全部出来ているように見えて実際に出来ている事なんて一割だけって事もある」
「へえ」
アイドルを目指しているなら歌を歌えるかといわれて俺は詰まった。そういえば歌えない。踊れない。学費どうしよう。
「取り敢えず、アイドル目指すなら仕事を頑張りながら声楽でも」
「カラオケじゃダメっすか」
「体験って言うのは常に新しいものでないと脳が同じものとして情報処理するらしいぞ」
「マジっすか」
バレエを薦められた。男なのにバレエ?!
「熊谷哲也になれるかもしれないじゃないか」
上司は大笑いする。
「いやいや、チンコこんもりとかどんな羞恥プレイですか」
「ステージの上で全国放送とかどんな羞恥プレイだよ。でも皆に元気を与えられる羞恥プレイだろ」
「うーむ」
ああいえばこう言う。
うちの上司は口が立つらしい。
「ぶっちゃけ、口パクできる程度のリズム感は必須だ」
「なんかうちの上司はぶっちゃけすぎる気がします」
彼は職場内では若い女の子に人気あるにも関わらず『女は二五までは逆玉のチャンスがある』とかいって自分の恋愛チャンスは逃しているんだよな。そういうところが良いのだろうが。
色々書いたけど。
結論。この職場楽しい。




