誰かを好きになるとき(※若干真面目にBL)
俺は幼馴染の一人が好きだった。
親元から離れて保育園に預けられた俺は母親を求めて大泣きを始めた。
その時に瞳の中を占拠した存在がいた。可愛らしい同年代の女の子。彼女と初めて会ったとき胸が大きく動き、さらに涙が止まらなかった。
それが恋と言うモノだということなど解る歳ではなかった。だが彼女は俺にとって特別なヒトだということは少し解った。彼女の前で泣くのが嫌だと強く思いつつ、俺は涙を止めることが出来ずにお漏らしをしていたからだ。
俺の所謂本命は彼女だが、他にも異性の幼馴染がおり、彼女の家に遊びに行ったときカッコいい年上のお兄さんと彼女は遊んでいた。俺は彼女のことなどどうでもいいと思っていたが。不意にそのお兄さんを殺したくなった。嫉妬というものを知ったのだ。
母に「火薬を作れ」と言うと彼女は火薬ご飯を作ってくれた。
とても美味しかった。
ナンカチガウと思ったものだが。
月日が流れ、股間から怪しげな尿のようなものが漏れて戸惑ったり、胸や股間の違和感に苦しめられたり、それが悦楽になっていく自分が嫌になったりしながらも、年相応に大人の厭らしさに興奮し、卑猥な画像を求めてしまったり。性の目覚めと言うモノだろう。
だが、俺は少し特殊だった。
男でも女でもドキドキしてしまうのだ。
そんな自分が嫌で、世界その物がなくなってほしいと心の内で切に願っていた。
もし、俺がときめいているこの胸の動きを知られたら。この鼓動を聞かれたら。彼の香りのするうなじを。濡れた唇に触れたらどうなるのだろう。忌まわしい。
そう思うから、俺はスポーツに打ち込み、雑念を払おうとした。だが、スポーツと言うモノは当たり前だが同性の着替えをよく見る機会がある。
俺の前で遠慮なく脱ぐ友人たちをうっとおしく思いながらも魅入ってしまう自らを密かに責める日々が続く。眠れぬ夜には彼らに忌まわしいことをする妄想にふけってしまう自分に朝は呪いと共に目覚める。
俺の青春は地獄だと思う。人から見れば充実し、学業も優れたものだったろうが。
悶々とした日々が流れ、俺は大学生になっていた。
「あんまり肩肘張るなよ。気楽になりな」
そういって仲間が笑う。不意に許されたような気持ちになった。胸が少し疼いた。
この気持ちを彼は受け入れてくれるだろうか。否、無理だろう。彼だって彼女が欲しいと言っていたじゃないか。男なんでダメだろう。俺もダメだ。
ダメなのにダメなのにダメなのに。
どうして彼が好きなのだろう。
どうして俺は男なのだろう。女なら良かったのに。
「気楽になりな」
俺は友人の話として彼に思いを告げてみると彼はそういった。
「男なんだろ。だったら自分の思いに覚悟があっていいじゃないか。俺はそいつの考えに賛成するよ。まぁ理解はしたくないけどなっ」
そういって彼は俺の背中を何度もたたいてくれた。
俺の恋は破れたが、俺はきっと今度こそ誰かを好きになれるだろう。何故なら、たった今、俺は俺自身をスキになることができたのだから。




