きのこ たけのこ 論争
き〇この山とたけ〇この里はどちらが好きか。
明〇製菓の陰謀のような論争だが、この戦いは意外と根深く、時として激しい喧嘩の元になることもままある。俺(♀)と彼女(腐)のように。
「そもそもどっちが攻めでどっちが受けなのか」
ヤツの台詞に私は頭を捻らせた。
その発想は無かった。
「多分、キノコ」
ほら、見た目的に。詳しくきくな。
「たけのこだってギュンギュン伸びるわよ」
ごくり。
「青々として、ツヤツヤだよ」
それは竹だ。却下だ。たけのこは泥まみれで掘り出すのだから。そこまで反論して私は頬が染まるのを感じた。小鼻を膨らませてニタァと笑う奴のしたり顔に私は心なしか口元が引きつる。
「汚くまみれて、綺麗にしてもらって」
「良いわね。そそるわ」
つまり、たけのこは受けでイイことになるぞ。
「攻めに転じて」
「固く太く何度も何度も立ち上がり……って何言わせるのよ」
此奴は変態だ。彼氏が出来たら苦労するだろう。可愛いのにもったいない。
「キノコは粘着質よね。こうねちゃっと粘菌で蠢いて色々取り込んで食べちゃって」
「粘菌は良く知らないが、そうなのか」
意外と凶暴なのだな。
「適当」
「こら」
「でも粘菌って脳みそ無いのに頭脳派なのよ。食料を得るために最高効率手段を取ろうとするの」
「へぇ」
「その習性を活かしたプログラムも開発されつつあるのよ」
「なにげにあなた博学ね」
「粘着質に相手を追い詰めて、絡みついて取り込んでくちゃくちゃにして。やがて硬くそそり立って、胞子をばらまして周囲を犯していく……って萌えない」
一瞬此奴に感化されて不埒なことを考えそうになってしまった。思わない。
汚れたキノコを丁寧に彫りだし、優しく洗って。
「いいよねぇ。こう、まだ未熟な男の子を責めるタケノコ!」
タケノコにキノコって生えないな。そういえば。
「キヌガサタケとか、枯れた竹には生えるわ」
そうなのか。勉強になった。腐った竹さんにすっと菌糸をのばし、じわりじわりと絡め取るわけか。
「甘いわ。竹さんは他の植物を駆逐していくのよ。つまり森を犯す大物なの」
キノコの山そのものを犯すのか。やるな。
「タケノコの里と言うからには受けかと思ったがなかなかの奴だ」
「キノコだって怖いわよ」
処で私たちは何の話をしていたのだろうか。
私たちは残り少なくなった余り物のチョコレートを口に放り込み、その場を後にした。




