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宇宙(とき)の果てまでこの愛を(BL注意)  作者: 鴉野 兄貴


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店長のスピーチ

 最近おかしい。どうにもお客さん相手にどもってしまう。

 なんとかしようと思うほど汗が吹き出し、喉が渇いてガクガクとしてしまう。これではバイトが続けられない。店長にシフト減らしてもらおうと思い相談してみたところ奇妙なことを命令された。


 彼はまだ若い。多分四〇前だと思うが正直同い年より少し上程度に見える。その鼻面が悪戯っぽく動く。子供みたいだ。

「じゃ、俺の名前一〇回バカヤローっていってみ?」

 言えるわけがない。

 お客様が見ているし給料減らす気だろ。そう思っていると彼はいいからいいから減給したりしないからとおどけて言う。

「○○のばかやろー」

 小声がやっと出た。


「よし、もう一回」

「ばかやろー」


「軽くステップ踏んでみよう」

 何をさせる気だ。

 珍妙な踊りを踊りだす店長。

「ばかやろー」

 素で出てしまった。恥ずかしい。

 彼はニコニコ笑いつつ俺に促すので仕方なく一〇回ほど言う。



「ばかやろー」「ばかやろー」「ばかやろー」「ばかやろー」「ばかやろー」「ばかやろー」「ばかやろー」「ばかやろー」「ばかやろー」「ばかやろー」

「どもらないじゃないか。これで大丈夫だ」


 肩を叩かれた。

 どうしてもお客さんに「有難うございました」と言えないと悩みを言うとあっさり彼は「言わなければいいじゃないか」と言いだす。良いのか。

「お疲れ様と言ってもバレナイだろ」

 アンタそれでも店長か。


 彼が言うに「後天的な吃音の多くは人間関係から発生するって言うからな。お前がどもるなら俺の所為だから気にするな。どうしてもどもるならまた俺の悪口でも言えばいい」らしい。

「ただ、他の人に示しがつかないから人前では言わないでくれよ。あと俺の前で言うのも不愉快だし。まぁバレナケレばいいさ」

 ニコリと笑う。

 なんとなく気が抜けた俺は結局そのバイトをしばらく続けることになった。


 店長が『英国王のスピーチ』と言う映画を見た帰りだと知ったのは後日の事であった。

 なんか騙された気がする。

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