青春の記憶
資金難から夢をあきらめ、一度はレースから去った彼はゲームの世界で一位を取り、それを切っ掛けに現実世界のレーサーになりました。
彼は今でも世界で戦っています。あなたの夢を聞かせてください。
夢をあきらめたあなたは、新しい夢と共に歩んでください。
懸命に生きるあなたは、いつか誰かの夢になります。
テレビゲームの世界から現実世界のレーサーとなった人物の実話より。
この縁石をうまく使って。うん。うまくいった。
素早いコーナリングを決める。
簡単に言うとカーブを曲がるのに成功した。
曲がると言っても自動車くらい重たいものがすばやくカーブするならテクニックって奴がいる。つまり技と知識さ。
物体にある慣性を計算にいれ、振動やタイヤの温もり具合を考えながらギアチェンジしていく。
タイヤが溶けていないのに無駄に回転数をあげてもちゃんと地面に吸い付いてくれない。
かといって溶けすぎていては動かない。ピットインの素早さも考えないとダメだ。
俺。ゲーマー。TVゲーム大会に出場するのが趣味。よろしく。
今回の大会は中々面白い趣向がある。優勝すれば実際のレースに特別参加させてもらえる。金が無くて子供の頃のカート遊びすらあきらめた俺が憧れのプロのレーサーたちと実際に走れるんだ。すごく心躍らないか?
実際、こういったゲームをすると身体を思わず傾けてしまったりしてしまう。ゲームとしてはタイムが落ちるだけなのだが、やってしまうほど没入感が高い。本来ならゲームでは表示されない背後の連中の動きまでわかってしまう。嘘だって? 本当さ。
他の連中の息遣いとか、『見られている』って感触とかあるんだ。わかるかい? わからないって? 残念。
この大会で優勝すると更にいいことがある。
子供の頃に憧れた引退レーサー達からの特訓を受けることが出来る。勿論実車。
心躍るだろ? すごいだろ? 俺がだぜ?
優勝できるのかって? するに決まってるじゃないか。
俺は夢を裏切らない。レーサーって言うのは夢を人に与えるんだ。だったら、人の夢を裏切らないのは俺の仕事だろ? はは。
俺の夢を裏切らないように、俺に夢を託した人の夢をかなえるから俺だ。
俺には見える。
現実の世界でも俺は入賞できると。
俺のなかの、俺たちの中の『ゲーム』はこれからだ。
しっかり、俺についてきてくれよ。俺の未来。君の未来。




