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首都高速にて

 BLです(たぶん。いやきっと)

 来るべき2020年の首都オリンピックに向けて拡張を続ける首都高速道路。しかし、『彼ら』は既に限界を迎えていた。

「お願いします! 通して! 通してッ?!」「会社に遅れるぅ?!」「ま、孫に逢いたいのじゃぁ」「は、はやくイカしてくれぇぇぇえっ?!」

 首都圏名物大渋滞である。地下鉄でもめくるめく濃密な物語が展開されているが今回は割愛する。


「丸の内から京橋、汐留までが通行止めだ」

「うわぁあっぁ」


「レインボーブリッジ前は塗装工事中だ。残念だったな」

 うら若きカップルの仲を引き裂き、車間距離を奪い取る彼。

「板倉から台場、勝島まで大渋滞だ。どうした? ゆっくりすすめ。車間距離を取れよ。そして新宿代々木のカーブのきつさに貴様らはついてこれるかな? ふふ。そこ、そんなに舐めるように……」

 冷酷な首都高速道路の宣言に右往左往するドライバーたち。

 湾岸線の竹芝付近のクロス合流の難易度は天然ドSだ。板橋JCTあたりもキツイ。

「上に登るのか? 上に乗りたいのか。そうかそうか。だが残念だ」

 信号機もない架橋にて排煙を噴きながら首都高を這いずるバイクたち。



 速くイキタイ。イカシテ欲しい。なのに何故こんなに意地悪なのだろう。

「どうした。もっと急げ。急げるならばな」

 焦りと共に右往左往と動くクラッチとブレーキ。時々たまらずエンジンが止まりかけて彼方此方で事故が起きそうになる。


 そ、そんなの入らないよ……

 やめ……入るわけな……ぐっ……あっ……

 ……割り込んでんじゃねーよ!


「どうした。焦りすぎだな。もっとゆっくり攻めろ」

 のろのろと彼の身を這う車どもに告げる彼。ため息のような甘い土ぼこりが舞う。

「おっと、○○でも渋滞が起きたな。悪い悪い。回避ルートはない」

 鬼である。

「東海JCTから大師JTC、綿糸町から枝川も大渋滞。まだまだあるぞ」

 叩かれるクラクション。焦りと喘ぎ。急かす豚どもに彼は呆れる。

「安心しろ。貴様ら豚の為にETCを。拡張工事を検討中だ」もっとも、高速料金をたっぷり取らしてもらうがな。

 現在の首都高速は建築理論的に増設出来ない路線が多いのだ。

 酷薄な笑みを浮かべ、彼はつぶやく。

「成功させよう。2020オリンピック!」



 その時は各国から大量のドライバーが押し寄せてくる。

「今から連中の阿鼻叫喚が聞こえるようだ」

 ETCを破壊して泥まみれの真っ黒な鉄の塊、屈強な過積載トラックが侵入してくる。

「くっ 過積載は犯罪だろ。そんな汚いものを俺に入れるなぁ」

 振動に首都高は、ただただ声も出せずに身を壊されるまで揺らされるのみ。しかし熱く黒く泥にまみれた車体は次々と彼の内部をピストン輸送でめくるめく。

 その隙をついて次々と入ってくる白い軽自動車。秋晴れに照らされその白く熱い塊たちはほとばしるように彼の内部を満たしていく。

「白くて、熱くてものがっ。たくさんぅっ! くぅ」

 それを追って同じく紅いランプを回転させ、暴れる白い車両群も。

 そして秘密の薬品や麻薬などを載せた車両が首都の血管である彼を汚していく。その振動が彼を揺らし、クラクションとエンジンの絶叫が彼周辺住民の安眠を妨げる。獣のように叫ぶ警察車両。人知れぬ絶叫(台風)が吹き荒れ、右往左往するドライバーたち。警察パトカーまでもが、その哀傷の身を嘲笑うように彼の身体を弄び、なみだが道路を濡らす。

 雨後の路面はたっぷりと水分を垂らし、滑りがいい。「ち、タイヤ交換の時期だな」

 薄くなった溝が良く食い込むように、少しスピードを落とすドライバー。




「もう(路面が)濡れているのか?」

 口元を釣り上げてドライバーは呟く。

 水溜りが大きく跳ね上がり、彼の恍惚を伝えた。

「そうか、これがいいか」

 ひび割れ始めたタイヤを強く押し当て、踏みつける車体。


 ギシギシと老朽箇所が悲鳴を上げ工事車両が行きかい、汚された身体を舐めるように掃除車が丹念に、丹念に、力尽きたかに見えた彼を磨き上げるように舐っていく。その優しい舐りに身を任せる彼。渋滞情報が少しだけ和らいでいく。

 穏やかな昼の陽が彼を照らし柔らかな通学車両の車内音楽が流れていく。


 ベイブリッジに灯がともる。

 乱暴に夜の闇を切り裂き彼の肌に蚯蚓腫みみずばれのようなブレーキ痕を刻むべく押し寄せるスポーツカーたち。『ふぇらーり』は赤くたぎりすぐにケツを振る制御不能の暴れ馬。淫乱なヤツ。


 これからは夜が始まる。

 そう。夜のお楽しみはこれからなのだ。

 首都高速道路しゅとこうそくどうろは、首都高速道路株式会社しゅとこうそくどうろが維持・管理等を行なっている、東京都区部とその周辺地域にある路線長322.5km(管理301.3km、新設21.2km)の都市高速道路である。「首都高」と略されることが多い。なお「首都高速」および「首都高」は、首都高速道路株式会社の登録商標である。

 道路法で定められている都県道(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)と市道(横浜市・川崎市)であり、道路構造令で「都市部の自動車専用道路」(第2種第1級・第2級)に区分される。東京都内で完結する路線には都道番号がつかないが、東京都と他県にまたがる路線には都県道番号がついている。

(Wikipedia日本語より抜粋)

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