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宇宙(とき)の果てまでこの愛を(BL注意)  作者: 鴉野 兄貴


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29/101

世界で一番賢い生き物

 イルカ、及びその同族とされるクジラは人間より脳が大きく、争いをせず、独自の言語を持っていて賢いという。

「の、だけどそれほど賢いわけでもないし、身体の大きさからいえば人間以上の知能があるとは思えないし、そもそも彼らは楽しみの為に同性を強姦し、群れから相いれない個体を遊び半分で殺すような生き物で優しいともほど遠いのよ」

 自称『友人』の女性がしたり顔で語っていた。すっと傾けた頬。鼻高々に呟き、綺麗な白い足を優雅に組む。

 男なら少なからず関心を寄せる容姿の彼女の実像は残念なことに我が実の妹である。外では内密にしているが。

 故に私の性欲を喚起するような事は無い。そもそも彼女の裸など成人するまでに幾らでも見ている。外では淑女だが家族にとってはマラで歩き回る残念な少女のイメージがこびりついているのだ。

「しかし、ある意味賢くないか」

「ん?」

 私の指摘に身を乗り出す彼女。頼むから合わない大きさのブラはやめろ。中身が丸見えだ。

 閑話休題。賢いというか、残忍と言うか、社会性があるというか、とにかく行動が人間に近い。同性を強姦したり、見物に来た人間女性を強姦しようとしたりする。あるいはイルカに癒しを求めて共に泳ぐ人間にその牙で噛みつき、戯れで人間を海に引きずり込んで殺そうとしたり。まるで人間そのものではないか。



「そうね。そのとおりね。お兄ちゃんみたいに男が好きな人もいるし」

「お前みたいにBLに萌える妹もいるかもしれん」

 なんという同類なのだ。我らは。

「つまり、連中のアレは」

 我らが職場の外で騒ぐ人々を我ら兄妹は眺めてウンザリ。

『クジラは賢い』『イルカは優しい生き物。苛めとかしない』『捕鯨絶対禁止。日本は自衛隊を解散しろ』

 自衛隊関係ない。我々は水産庁管轄だし。

『人種差別とイルカ差別を禁止する。愚かなる日本豚は尊きクジラやイルカを迫害するのを辞めろ』

 お前らが逆差別している。

 ため息をつく俺たちに合わせ珈琲の湯気も揺れる。

「大変だね。お兄ちゃんも」

「まぁなぁ」

 頭を抱える俺に残念なものを見つめるような目線の妹。彼女も俺の前以外では美女で通っているのだが如何せんこういうのが素であり、男もだいたい察するのか彼氏がいない。

『イルカの世界には差別はない』『鯨やイルカを虐殺する差別主義者の日本人は日本から出て行け』『捕鯨は現代のホロコースト』

 もういいよ。俺は書類をパラパラ指先で捲る。書類には何故かイルカの陰茎写真。ガタイがガタイだけにデカい。

「ある意味、人間よりイルカのほうが賢いのは真理だな」



「そう?」

 異論の余地があると言いだしそうな妹。


 あいつらにはイデオロギーとかなさそうだし。

 観察から基づく現実から目を逸らして理想を吐き続けるとかしないだろうし。

「ほら、差別とかを生存本能と定義してみろよ。苛めも差別も皆自然な行為じゃないか」

「だねぇ」

 それに目をつぶって正義だの悪だの莫迦らしいことを言うのは人間だけだろう。多分。

 差別があるなら戦えばいい。だがそれは人間の業に過ぎない。

 人類社会の発展を防ぐ悪と理想上の悪は違うと思う。

 俺は自分の見解をつぶやくと妹を隠し通路から逃し、乗り込んできたバカどもの相手をする。

「我らは強引な捕鯨に反対する!! 捕ゲイされる辛さを思い知れ!!」

 六尺ふんどしを締めた汗臭い男どもは妹に目もくれず、俺を組み伏せて俺の尻を掘り出した。いつもの事である。俺はその為に雇われている。


 クジラやイルカは人間より愚かかもしれない。

 しかし、彼らより賢くない生き物は人間の中に少なからずいる。

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