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宇宙(とき)の果てまでこの愛を(BL注意)  作者: 鴉野 兄貴


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28/101

ヒロイン全員が眼鏡っ子なギャルゲーの世界

 俺、茂宮栄一は眼鏡女が嫌いだ。理不尽かもしれないがあの眼鏡のツルを正面から殴りたくなるくらい嫌いだ。どんな美女でも可愛い少女でも眼鏡をつけているだけで嫌いだ。お婆ちゃんは別だ。席をどうぞ。

 具体的に言うと俺は眼鏡女が嫌い。何故嫌いかと言うと幼少時俺を莫迦にして苛めていた女が眼鏡女だったからだ。理不尽だと思うだろうが当時の俺が受けていた状況のほうが理不尽なのでこればかりはごめんなさい。トラウマには触れないでくれ。


 だから現在の状況はとてもとても困ったものだった。

「茂宮君。どうしたの」

 サラサラとした細い髪は春風にふんわりとなびき、高くはないが小鼻が小さく整った彫りの浅い顔の中央には大きな黒眼鏡。何故ずらしてつけている。やや近視気味の彼女はじっと相手をみる癖があるらしい。潤んだ瞳が俺に近づく。香水をつけているわけでもないのに女の子特有のいい匂いがする彼女から俺は慌てて目を逸らした。


 返答(30秒以内)

つ「おはよう。市川さん」

 「やあ。英子。爽やかな朝だね」

 「市川ちゃんおっす♪」


「どうしたの? 茂宮君」

「いや、市川さん。悪いんだけどちょっと離れて」


 頭の中に時々現れるようになった『選択肢』をガン無視して逃亡を図る俺。取り残される少女。



 美少女に湧き立つ本能に俺は必死で抗い、少女のうなじから全力で目を放し、足早に立ち去ろうとするのに後ろから声がする。

「茂宮君。待って。私何か知らない内に茂宮君に酷い事したの?」

「いや、市川の事が嫌いなわけではないぞ。ほら」

 俺は冷たさの残る廊下を校内用スリッパで軽く踏みしめて呟く。

「ここは春とはいえ寒いし、それに。アレだ。その。お前のうなじがここから見えてだなぁ」

 恥ずかしい。なんでギャルゲーの世界ってこんなアングルで女の子が近寄ってくるんだ? 痴女の集まりかよ。


「あっ」

 恥ずかしそうに首筋にその細い指先を回す市川嬢。俺内心苛々。


「そうだね。気を付けるよ」


(ぴこーん!)『市川英子』の好感度がアップしました。


 なんでじゃ~~!

 俺はシステムメッセージに絶叫の声を上げた。

 長々と申し訳ない。この世界は『登場人物すべてが眼鏡っ子なギャルゲーの世界』なのだ。

 この世界、『(^0_0^)(めがね)love!』の世界の女性はメガネを標準装備している。



 コンタクトレンズは無いらしい。視力が標準な子も伊達眼鏡をつけている。校則に『眼鏡着用の事』など『無い』ことから見るに、この世界で女性が眼鏡をつけている事は実に当たり前で普通の文化らしい。重たいだろうに。

「市川の事、嫌いじゃないんだろ。そんなに邪険にしてやるなよ」

 思い悩む俺に近づく女もまた眼鏡。すらりとした長身に少年のような無邪気な表情、ツルの入っていない細いレンズの眼鏡をすっと伸びた鼻梁に乗せ穏やかにほほ笑みながら俺の席に右ひじを立ててにこやかに話しかけている。


「嫌いじゃない」

 慌てて目を逸らす俺の頬を指先でつつく娘。

「じゃ好きなんだ♪」


「西田。お前今日ノーブラ」

「おうっ?!」


 小さ目の胸なのでうすい……結構綺麗な形で……そのあの……ハッキリ見えてしまった。さっきまで朝練をしていたであろう汗の匂いと柑橘系の消臭剤の香りが心地よい娘はうなじの処で長い髪を輪ゴム一本で結び、陸上用のショートパンツとシャツと言う実に過激な格好である。夏でも冬でも。

「み、み、みるなよ?!」

 ボーイッシュと言うが、魅了される男は多いと思う。



「お前が見せたんだ!? というか若い娘が無防備すぎるんだよ?!」

「う、うん……」


(ぴこーん!)『西田智美』の好感度がアップしました」


 なんでじゃ??! 選択肢もでとらんわ?!

 思わず関西弁でシステムメッセージにつっこみを入れる俺。西田は不思議そうにしていた。


 この世界では『リアル人間関係システム』を取り入れており、同時攻略は事実上できなくなっている。したくもないが。

 具体的に言うと女の子と仲良くなると周辺の女性の好感度も若干ながら上昇する。この世界に男はいない(背景らしく話しかけることすらできない)ため彼女たちの協力を仰ぎつつ、意中の女性と仲良くなる必要がある。

 同時攻略をしようとすると全ての女性から不興を買うし、何か悪意のある行動を行えば登場人物すべてから嫌われるのは明白。

 兎に角、攻略したい娘と違う女の子とも仲良くしつつ、一人の女性に操を立てて行動し、他の娘たちに協力してもらいながらイベントをこなす必要がある。


 しかし、俺は眼鏡っ子ばかりの世界では彼女を作るつもりはないわけで。

「青春だねぇ。両手に花ってか」



 そういって呆れ、俺をからかうのは俺の担任。『相模椎奈』御年二七歳。

 Gカップは余裕であるボインボインの胸をぶっ飛ぶ寸前の薄いピンクのカッターシャツに無理やり押し込み、セーターをその上から着用して強調。さらに白衣まで着て何故かミニスカートまでつけているという生徒の情操教育的に誠によろしくない容姿の女である。教師としては尊敬しているのだが。

 彼女は俺の前で綺麗に整った形を維持しているむっちむちの太ももを入れ替えてぼやく。

 こんなにムチムチなのに腰回りはびっくりするほど細いし、水着になったら腹筋の立筋も綺麗だ。メガネなだけで。

「先生。学校は恋愛の場ではありません。俺は勉強にしか興味が無いんです」

「そのくせ、零点取ったってか。テスト中に居眠りして」

 豪快に笑う彼女の胸はその動きと連動せずに何かにつけて揺れる。

 すっと高い鼻を突き上げた彼女の喉元、大きな胸に思わず視線がいくのをみて満足げに笑う相模教諭二七歳。

「先生。アラサーが将来ある高校生誘惑するんですか」「あのな。ちょっとふざけているだけだ」


「というか、本能的に見ちゃいます。好きで見てるわけではないですから」




 彼女の高い鼻に乗った黒ぶち眼鏡が軽くずれる。相模教諭はその眼鏡を抑える。そうするとその胸を肘で抑える事にもなる。

「まぁ。アレだ。良い子たちなんだから泣かせるなよ。以上」

「誠心誠意努力はしますが、不詳茂宮。学び舎は男女交際の場ではないと思っております」


 m(__)mぺこりと頭を下げて(一応言っておくがゲーム中の会話文で顔文字が存在するのだ)彼女の前を去る俺に。

「そういう硬い処がイイって奴もいると思うんだが」などとつぶやく相模先生。


 ぴこーん! と言う音が鳴ったが俺は無視した。

 流石に相模先生までデレ状態になったら収拾がつかない。

 しかし、この世界のヒロイン枠は幼馴染枠の市川や異性の親友枠の西川だけではないのだ!


 家に帰るとだな。 義 母 ま で い る ん だ 。

 俺は家に帰れない。帰るわけにはいかない。親父に殺される。

 というか、大人の女性枠は相模先生で充分だろ?! 親父?! ナニ一八の娘に手をだしているんだ?!!! 大人でも何でもないし?! 普通に可愛すぎるじゃないか?!!



「眼鏡がダメって言ってあげたら?」


 友人の物部武人が声を……あああ?!

「物部ッ?! 助けてくれッ?!」

「泊めろってか? 別にいいけどさ」

 俺は気づいた。女の子にそれなりにモテる物部は所謂ライバルキャラ兼親友。

 ルート次第では恋仇にも親友としてサポートもやってくれる唯一の男性キャラである。

「いや、眼鏡じゃない奴がいるじゃないか?! ひゃっほー!!!」

「おい。茂宮落ち着け」

 落ち着けるかっ?! 愛してるぜ物部?!

「なんか、身の危険を感じるのだが」


「いや、もう是非泊めてくれ! 物部君の手料理食いたいなぁ?!」

「悪いが野宿してくれ。じゃあな」


「待った!」

 俺と物部は色々あって付き合うことになった。隠しルートである。

 メガネの娘たちは若干ドン引きしながらも俺たちの恋路を応援してくれた。

 これで眼鏡女どもともおさらば。めでたしめでたし……なのか? 物部が完全デレモードで生きるのが辛い?! 助けてっ?!

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