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宇宙(とき)の果てまでこの愛を(BL注意)  作者: 鴉野 兄貴


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ぷろじぇくとセッ〇ス

 前回登場の三崎薫君と司太郎君の過去のお話。

「あなたと性交したい」

 ――これは苦難と冒険の物語である――


 2014年。4月。

 明治以来の伝統を誇るお嬢様学校と大正時代からの文武両道を是とする男子校は合併し、新入生歓迎会の宴が繰り広げられていた。

 この物語の主人公、三崎薫もまた。「へい! そこのお嬢様! 俺と付き合おう!」青い性を放つべく、青い制服を着た男たちに連れ出されていた。


 ――ぷろじぇくとセッ〇ス 挑戦者――


「だから、俺は言いたいんだ。俺たちさ、なんでこんなボロ校舎の学校に入って来ちゃったの?」


 三崎薫は腐れ縁の友人、司太郎と歓談していた。

 司太郎は三崎薫と同じく高校一年生。短距離走のホープである。

 三崎薫は学業では振るわなかったが、長距離ランナーとして類まれなる才能があり、数々の引く手を蹴ってここ、旧雷鳴館高校傘下であった神楽坂高校大阪校舎にやってきた。

「お嬢様方はこっちにやってこないんだよ。三崎」

「そうと知ってりゃマトモな共学を目指したのにっ?!」


 頭をかきむしる三崎。苦悩の顔。



「俺は今年こそ彼女が欲しいんだよ。と言うか俺たちの学校では早い奴は早かったじゃないか」


 二人は大阪市のちょっとアレな中学の出身だ。授業なんて崩壊していた。二人が真面目に陸上部だけは頑張ったのはかの学校の陸上部の『練習』と称する活動がパシリとして実に先輩方に重宝されていたからに過ぎない。地味に色々奢ってもらったし。

「というか校舎ボロボロだし」

「このパンフレットの綺麗な校舎は兵庫県のだ」

 三崎は。泣いた。


 ――ぷろじぇくとセッ〇ス――


「というか、学校SNSではこの美少女先輩とか超有名で」

「当時三年生じゃないか」


 呆れる司に三崎の怨念のこもった言葉が漏れる。

 一度でいいからこんな美少女と付き合いたい。と言うか突き(自粛)。

 バカげた言葉を漏らす三崎を無視して司はクラスメイトの女子に声をかける。

 入学時教室が解らず迷いかけて一緒に教室を探した間柄である阿賀沙美由紀は華やかにほほ笑んだ。

「司君。どうしたの?」

「いや、三崎がね。彼女が欲しいって言ってやがるんだけど良い子いないかな」



 阿賀沙は少し考えるそぶりを見せてから司に告げる。

「毒島さんが募集しているって」

「……いいです」

 毒島は筋肉質でどうみても男性にしか見えない容姿であった。


 ――ぷろじぇくとセッ〇ス――


「アレだ。良い子だし阿賀沙に告白したらどうだろうか。三崎」

「ぼくに勇気を頂戴!!!」

 三崎はヘタレであった。


「というか可愛いじゃん。おっぱいもそこそこ」

「可愛すぎると勇気が出ないの! わかるだろ!!」


 大いに解るが毒島さんだっていい子だ。顔が酷いだけで。あと女子ボディビル部所属。

「あの油テカテカの笑みが怖いの?!」


「見たのかよ。毒島の大会ビデオ」

「抜いた」


「イケるじゃん」



 ――ぷろじぇくとセッ〇ス――




「毒島でいいじゃん。筋肉だけじゃないぜ。高校一年生離れした巨乳。Gカップどころか未知の数字Hカップだって噂だぜ」

「いや、筋肉じゃん」


「ウエストも引き締まってるし最高じゃないか」

「意味が違う?! 俺より多分太いよ?!」


 毒島の大会ビデオを見た三崎。彼は絶望した。他を圧倒する躍動的な肉体。

 輝く笑み。キビキビと優雅かつ華麗なポージングに。イケると思った。 

 大会ビデオを再生しながら行為に励む三崎の姿を見て。母は泣いた。


 ――ぷろじぇくとセッ〇ス――


「あれだ。オ〇ホを買ってそれで我慢するのはどうだ。三崎」

「エロ本だって恥ずかしいのにそれは無理だよ?!」


 司は三崎の将来を心配していた。

 この童貞脱出作戦が性交。もとい成功しなかった場合三崎は若くして性犯罪者となるのではないかと。

 三崎は変態だが善良な男である。二〇歳で弁護士と友人とグルになって逮捕状の間隙をついて逃走し、携帯電話片手に冬の川で警官に捕まるような末路は芳しくない。



 仕方ないので司は一つの可能性にかけた。

「バイトしようぜ。可愛い女の子のいそうなバイト先」「ほえぇ?!」

 実に現実的だった。


「ほら、この店なんて女子大学生のバイト多そう」

「大人だよ?! 大人なんて怖いよ!!」

 実に青い台詞だが三崎らしいセリフだった。

 フリーペーパーと言う名前のアレなあっせん情報誌を手に真剣に討論する二人。


「たこ焼きスタッフ募集。経験不問」

 コレだろ。之しかないという司に脅える三崎。三崎は泣いていた。


 ――ぷろじぇくとセッ〇ス――


「キミたち、中学生?」

「いえ。ちょっと童顔で。良く言われるけど大学生なんです」

「ははは」

 待機中のお姉さんたちのそばでたこ焼きを焼く二人。

 お姉さんに0.1秒でお茶を注ぎ、出来立てのたこ焼きを振る舞う。

「うん。美味しい」

 ところで。お姉さんは司にウインクした。

「司君。ちょっとお姉さんたちとどこか遊びに行かない。終わってから」



 三崎は。誘われなかった。


 ――ぷろじぇくとセッ〇ス――


「ううう。裏切り者めええ」

 司の首を締め上げる三崎。

 どうしたと呆れる陸上部先輩方。

「聞いてください。司がリア充で死んで欲しいんです」

「そうか。それより聞け。陸上部は無期限活動停止だ」


「は?!」


 驚く二人に先輩たちは告げた。

「部室のコンクリの壁の穴にチンコを突っ込んでふざけていたらテニス部の女の眼鏡を汚しちゃってさ」

「いやぁ。停学喰らった。悪い悪い」

 というか、テニス部の女共が覗くのは良いのかよ。学校め。


 ――ぷろじぇくとセッ〇ス――


 夢破れ、気力体力尽きた三崎は誰もいない部室で泣いていた。

 最早陸上で身を立てることも適わず、婦女子の前でたて(自主規制)。

「なぁ。泣くなよ。俺も陸上できなくて悲しいけど、ほら、他の学舎の連中と合同すればなんとか大会だけは出れるじゃないか」



 三崎を慰める事しか出来ない司。

 その時。三崎の頭に天啓がひらめいた。


 ――ぷろじぇくとセッ〇ス――


「ヤろう。司」

「何を? 新入部員さがしか?」


 三崎は涙の残る自らの頬をそっと拭い、妖艶な笑みを浮かべた。

「決まってるじゃん。お前って優しいし、その。お前ならいいぞ」

 なにするやめろ。司の悲鳴が響いたが、隣の部室には誰もいなかった。

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