出会い系サイトを擬人化してみる
「若くて美人なんかに会えるわけがないじゃないかッ お前のプロフィールを見てみろよッ 俺を見捨てないでよッ」
その『出会い系サイト』は必死で架空の女性からのメールを男に送り続ける。
紫煙の輝きの残る薄暗い部屋の中、舌なめずりをしながら男がつぶやいた。
「さて、300P使ったから一旦退会しようかな」
「やめてっ ちゃんとポイントを購入してッ」
「くくく。何を言っているのだね。聞こえんな」
体裁を捨て、次々と『タイプ』メールを送ってくる『出会い系サイト』に指先を伸ばし、退会処理にマウスカーソルを這わせる。
退会処理の寸前で寸止めし、プラウザバック。そしてまた退会処理に入る。
「あー。でもポイント少し残るんだよなぁ」
「だよっ?! 買おう。そうすれば弐ポイント余るんだッ」
「ククク。引き留めようと必死だな。可愛い奴め」
ゆっくりとした右手のマウスの動きがやがて激しく更新を連打し『出会い系サイト』を刺激し、サイト処理を重く鈍重にしていく。
「うあぁぁ。辞めて。今ならポイントプレゼントキャンペーン」
「なんだ。マイルが溢れているじゃないか。変態だな。貴様」
「女性会員ならメールのやり取りだけでマイルが貯まるよぉ」
「ふふ。あざとい奴め。お仕置きをしてやる」
「ああっ友達紹介ッ?! マイルが溢れちゃうッ」
「セフレ募集? ふざけるな。そんな都合のいい話があるか。マイル稼ぎだろうが。この嘘つきめ」
「ぼ、ぼくの所為じゃないよッ 男性に投稿を見てもらうのも、メールのやり取りでマイルを稼ぐのも仕様だよっ」
切なげに悶える『出会い系サイト』。タイプが光る。
「お願いッ! アクセスしてあげてっ」
「何言っているんだ。単純にページめくりの都合じゃないか。ポイントを使わせようったってそうはいかないぞ。ふふふ。夜はこれからだから……じっくりと可愛がってやる」
男は口の端を持ち上げて下卑た笑みを浮かべ、眼前の生贄に血走った眼を向けた。




